キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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講師達との出会い アカペラの練習開始

パート分けが終わって解散した後、また少しの時間を挟んで週末の朝。影人達は今現在、キラキランドの出張所にやってきていた。

 

「いよいよだね!アカペラの練習会!」

 

「こころ先輩、頑張りましょう!」

 

「はい!夢乃ちゃんとやれるなんて嬉しいです!」

 

「あれ?そういえばレイ君は?」

 

今現在、揃っているのは影人、夢乃、うた、なな、こころ、プリルン、メロロンのアカペラを練習するメンバーである。そのため、レイの姿はここにはいない。

 

「レイなら田中さん達と先に中にいるよ。一応今回の講師陣の方々と話を付けてるみたい」

 

それを聞いて全員が固まる。それはつまり、プリキュアに関係ない人達に自分達の正体を晒す事になってしまう。また、夢乃の方も赤の他人に身バレする事が確定という話になる。

 

「それは大丈夫なの?」

 

「……田中さんや姫野さん曰く大丈夫らしい」

 

そうでなければ普通は了承しないだろう。何しろ、無関係の人間に正体バレなんて女王様ことピカリーネが知ったら何をされるかわかったものじゃないからだ。

 

「ひとまず、時間も迫ってるし入るぞ」

 

それから影人を先頭に中へと入る。すると影人達を田中と姫野の二人が出迎えた。

 

「お待ちしていましたよ、皆さん」

 

「準備は大丈夫みたいですね」

 

それから二人に連れられるままに移動するとそこにあったのは会社とかにあるような会議室に似た空間であった。

 

「失礼します」

 

影人が先頭でそう言って挨拶をする中、他の面々も後に続く形で同じように挨拶していく。

 

「凄い、出張所の中に会議室みたいな空間が……」

 

「田中さんや姫野さんがこれを全部やったんですか?」

 

「いえ、一部はレイさんにも手伝ってもらっています」

 

「田中さん、時間がありませんのであまり余計な話は」

 

姫野としては一回のレッスンでできる限り先に進みたいと思っているためにそこまで長々と余計な時間を取りたく無かった。

 

「プリ〜。うた、この部屋を色々と見ても……」

 

「ダメです。もう講師の方がお見えになりますので」

 

プリルンの言葉に姫野がすぐに否定の意を示す。プリルンは好奇心を我慢させられて多少膨れたが、それでもまずは話を聞かないといけないので講師陣を迎える事になる。

 

「それでは、レイさんに続く形で講師陣の方四名が入られます」

 

田中がそう言うと影人達は先に自分達が座る予定の席の後ろに立つ形で待機し、プリルンとメロロンはサイズの関係で椅子を用意できなかったので机にちょこんと座る形であった。

 

それから程なくして、レイが入って来るとその後ろから四人の講師の面々が姿を現す。

 

「こちらにどうぞ」

 

「アイドルプリキュアの皆さん、及びドリーム・アイさんこと夢乃さん。この度はアカペラ指導の講師として呼ばれました山上です。主にリードと総監督を担当していますね。キラキランドではヤマガミーンと言う名前でやってますのでこれからよろしく」

 

そう言って挨拶したのは姫野よりも少し年上くらいに見える女性であった。彼女は茶髪のロングヘアであり、雰囲気から周囲を纏められそうなカリスマ性を感じられた。そして、彼女の自己紹介からどうやらキラキランドの妖精らしい。そして、彼女の両隣にいる三人も次々と人間としての名前及び、妖精としての名前も合わせて名乗り始める。

 

「パーカッション担当の南です。妖精としてはミナーミと言いますね」

 

「コーラス担当の環木です。妖精としての名前はそのままタマキになります皆さん、よろでーす」

 

「ベース担当の仙石。……妖精としてはセンゴークって呼ばれてます」

 

南は丁寧そうな雰囲気の女性であり、おおらかな雰囲気をしていた。環木は割とフレンドリーな話し方の女性である。この様子から彼女は周りに馴染むのが単純に上手そうであった。

 

逆に仙石は無口な男性であり、そこまで自分からは主張しなさそうな感じを見せている。

 

「以上、四名が今回の講師陣だ。山上さん達はうちの事務所で働いているキラキランドの妖精さん。彼女達は昔この四人プラス二人でアカペラを実際にやっていて、名前のある大会の予選を突破。本戦に出た事もあるくらいには上手い。だから指導とかは全然できるから安心してくれ」

 

ちなみに残りの二人は普通の人間で他の四人が妖精である事は知っているが、それぞれの道に進むために引っ越してはなみちタウンにはいない。加えて、アイドルプリキュアの正体やドリーム・アイの正体をそういうキラキランドとは無関係の一般人に知られてはいけないのでここには呼べなかった。

 

ただ、影人達はその事実をレイの口から聞けて安心する。元々アカペラをやっていたプロであれば先生としては十分に教えられるという事だろう。

 

「さてと、次は影人達の自己紹介だな。頼むぞ」

 

「じゃあ、俺からな。黒霧影人、ベース担当です。今回はご指導の程よろしくお願いします」

 

影人を筆頭にまずはプリルン、メロロン以外の五人が次々と丁寧な挨拶をしていく。普通だったらもっと気さくな雰囲気を与えるうたさえも影人がマジで挨拶をしているのを見てこの現場が真剣な気持ちで参加しないといけないものだと改めて実感。彼女も緊張感のある挨拶をする事になる。

 

「じゃあ次はプリルンとメロロ……」

 

「プリ!プリルンはプリルンプリ!リードをやるプリー!」

 

そんな風に気の抜けた挨拶をしたプリルン。その瞬間、影人は凍りついてしまう。今回はプロ相手にこちらから指導をお願いする立場なのだ。だからこそ事前にプリルンにはちゃんとした挨拶をするように指示しておいたのだが……やはりプリルンには通じなかったらしい。

 

「(頼むからこういう時くらいちゃんとした挨拶してくれ……。山上さん……怒ってないよね……)」

 

影人が恐る恐る山上の方を向くとそこまで怒った様子では無かった。この辺りは山上自身がキラキランド出身の妖精という事もあってどうにかなったらしい。影人からしたら先程のプリルンの対応は胃が痛くなる案件なので勘弁して欲しい所だったが。

 

「メロロンメロ。パートはボイスパーカッションなのメロ。よろしくお願いするのメロ」

 

一方、無邪気なプリルンとは対照的にメロロンは落ち着いた様子で丁寧に対応する。これも影人が事前にメロロンへと頼んでおいたのだ。

 

メロロンも当初はあまり良い顔をしなかったが、影人の頼みだった事もあって了承。こうやってまともな挨拶をしたのである。

 

こうして、お互いの自己紹介が終わった所でまずは簡単な座学へと入った。ここではアカペラについての概要を改めて説明するのだ。影人から話を聞いているとはいっても、流石に影人の教えた分だけでは偏りがあるというのと復習の意味も込めて実施されたのである。

 

「なるほど、俺の知ってる事だけじゃ結構偏りありそうだなこれ……って、プリルン……真面目に話を聞けって」

 

影人がそう言う中でやはりと言うべきか案の定と言うべきか……プリルンには難しい話は向いていないのか、そこまでちゃんと聞けていないらしい。この辺りはプリルンの精神年齢が幼いのが原因だろう。

 

「どうしよう……」

 

「まぁ、後から私の方でプリルンにもわかりやすいように言い換えて教えておきますよ」

 

「すみません田中さん……」

 

というわけで取り敢えずプリルンへの座学は後から田中がやってくれるとの事でひとまずは座学を一通り終える事になる。そのタイミングで総監督の山上はその場を取り仕切るようにある事を言い出す。

 

「ここからはパートごとに別れての練習にするけど……その前に、君達の今の実力を見たいね。だから、まずはウォーミングアップをした上で一度合わせてみましょう。

 

その瞬間、プリルンを除く影人達に緊張感が走る。いきなり投げられた実践。しかもアカペラのプロを前にしてだ。そうなると緊張するのも仕方ない。

 

「そんなに硬くならなくても大丈夫よ。理由はさっき言った通り。まずは単純な君達の能力を見て、それを最大限に伸ばすための指導をする。そのための準備ってだけよ」

 

「プリ?うた達は何でそんなに緊張してるプリ?歌って良いって言われたんだからもっと喜ぶプリ」

 

そんな中で状況が全く分かってないプリルンによる言葉が余計に影人の神経を逆撫でする。影人はプリルンへと苛立ちを募らせる中で雰囲気を壊さないように気持ちを落ち着けた。先程からプリルンが不用意な発言をしまくっているせいで影人の気持ちが多少暴走気味なのだ。相手はアカペラ界のプロ勢。しかも自分達は生徒だ。

 

「(プリルン、お願いだから大人しくしてくれって……)」

 

影人がそんな風に内心で思う中、この思考は影人にも悪い所がある。山上は先程から硬くならなくても良いと言っている。そう考えると影人のこの考えは少し影人が神経を張り詰めすぎなのだ。

 

「ただ、合わせるって言ってもパーカッションのメロロンは一緒にはできないから……」

 

「そうね。私とメロロンちゃんはここからは別行動って所かしら」

 

山上の言葉に南は反応するとメロロンへと目配せして促す。それから彼女はフワリと浮かんだメロロンと共に別の部屋へと移動する事になるのだった。

 

「ねえたま、影人、行ってくるのメロ」

 

「よろしくね、メロロンちゃん」

 

「よろしくなのメロ」

 

メロロンがやるボイスパーカッションに関してはそもそもコーラスをやるのとでは勝手が違いすぎる。そのため、最初はバラバラで練習をした上で後から合流する形を取るべきということだ。

 

それからメロロンがいなくなったために早速残っている六人はまずウォーミングアップという事で喉を開くための発声練習をした。これをしないと上手く歌うことができないからだ。スポーツ選手が競技をする前にストレッチやウォーミングアップをしないと100%の力が発揮できないように、歌にもその行為が必要なのである。

 

「「「「「「あー」」」」」」

 

それから六人は三人の講師の指導の元、簡単なウォーミングを進めていく。

 

「ウォーミングアップ一つ取っても入念ですね」

 

「それをしないと喉を壊しちゃうかもだからねー。例えばこれをやらずに高い音を出しちゃうと喉を痛めちゃって声が出なくなったら歌手としては終わりだから」

 

環木はサラッと言い切るが、この意味をよくよく受け止めるとゾッとする話だ。歌手とか声を仕事に使う人にとって喉は生命線。絶対に守らないといけないのである。

 

「そろそろ大丈夫かな。ウォーミングアップはこの辺にして、早速やりましょう」

 

山上がそう言うと喉を壊さないようにするためのウォーミングアップが終わり、一同はお試しで歌う事に。一応それぞれの譜面を見ても良いとの事で六人は譜面を持つと最初は元の曲を小さめに流しながらやる事になった。

 

「じゃあ、行くわよ。3、2、1、はい」

 

それから曲が流れ始めると六人による歌が始まった。ただ、流石に音楽有りであればそれなりに揃った歌になっている。そのためにこのままなら多少ズレが起きている音程が揃えば完璧に見えた。その後、曲を歌い終わると山上が何か気になったのか声を上げる。

 

「……プリルン」

 

「プリ?」

 

「今の歌い方のままで少しテンポを早めにできない?」

 

山上は六人が同時に歌う中でプリルンが多少他の五人よりも歌うペースが遅めだと感じたのだ。

 

「プリ、ちょっと難しいけどやってみるプリ」

 

「あ、それとね。こころちゃんかな」

 

「はい!」

 

「多分だけどうたちゃん寄りかな。少しそっち側に歌い方が寄っちゃってるね。こころちゃんのやってる2ndは上にも下にも音がある状態だから引っ張られちゃうのはわかるけど、そこで引っ張られないようにしないとだから頑張ろ」

 

「わかりました!」

 

環木こころの音が上や下に引っ張られているせいでズレが大きいと感じ取り、彼女へと適切に指摘する。たった一度。しかも六人全員が歌う中でそれらの誤差を山上や環木は聴き取ったのだ。やはり彼女達は講師だけあって相当な実力を持っているという事だろう。

 

「………」

 

「あれ?仙石も何か気になるの?」

 

仙石はコクリと頷くものの、特に強めには何かを言わない。そんな中、山上が彼の元に行くと彼から何かを感じ取ったのか代わりに代弁する。

 

「今は特に言わなくて良い?オッケー。じゃあ一旦次に行きましょうか」

 

講師達からのアドバイスの時間が終わり、一回目の合わせは特に致命的な問題は無かった。このまま行けば上手く合うのも時間の問題……のはずだったが、現実はそう簡単に上手くいかない。

 

「次はバックミュージック無しでやりましょうか。今のはあくまでミュージック有りの場合。アカペラはこのミュージックすら無いからね」

 

そう。アカペラをやる上で重要なのは曲のテンポを合わせるためにあるバックミュージックが無い。これらを全て声で表現しないといけないのだ。

 

「テンポに関しては最初だからゆっくりでも構わないわ。一回やってみましょう」

 

それから六人がミュージック無しによる合わせをやったのだが……約五分後。歌い終わった一同はげんなりとした顔つきだった。

 

「うーん……やっぱりまだ初心者って感じね。タイミングが色々とバラバラ」

 

先程までは音楽というリズム感やテンポを明確に示す物があったためにちゃんと歌えていたが、それが無くなった瞬間にリズム感やテンポはあっという間に崩壊。全員がバラバラで歌ってしまうとアカペラとは言い難い状況になってしまっていた。

 

「タイミングがズレてるから音程とかもメチャクチャになっちゃったわね。特にさっきの山上さんからの指摘にもあったけど、プリルンちゃんは歌うのが他の五人と比べて遅めだから……この辺は精神年齢の問題だと思うけど」

 

影人が前に危惧していたのはこれだ。歌う際に音楽という明確な指標が無くなったために全員が上手く纏まらずにバラバラになってしまった。勿論、多少合う部分もあったにはあったが、これでは話にすらならない。

 

「まぁ、気にしなくて良いわよ。それを直すための私達だから。それじゃあ、ここからはパートごとでの練習。行きましょうかしら」

 

山上の指示と共に六人の歌の最初の実力がわかった所でパートごとに別れるとそれぞれのパートで講師達の指導の元、練習に入る事になるのであった。




また次回もお楽しみに。
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