キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
影人達がアカペラの練習に励む中、チョッキリ団アジトでの事。ここ最近アジトに帰って来ずに姿を見ないスラッシューをチョッキリーヌが考えていた。
「スラッシューの奴……バイトに行くと言って行ったきり音沙汰が無いが……何故ここに戻ってこない」
普段ならフラッと出かけても数日以内には帰ってくるスラッシューがその数日を超えてもチョッキリ団のアジトに顔を見せなかったのだ。今現在の彼女は天城切音として文字通りグリッターに勤めるバイトとして働きつつ生活しているのだが、チョッキリーヌ達にはそれを何も伝えてないので彼女が気になるのも仕方ないだろう。
「本当に彼女は何を考えているのかわからないのが不気味だね」
するとそのタイミングで部下二人であるカッティーとザックリーがチョッキリーヌの前に姿を見せる。
「チョッキリーヌ様」
「只今参上したのですぞ」
「カッティー、ザックリー。アンタ達、ダークイーネ様から貰った力を全く活かせてないじゃないか。しかもキュアソウル一人に圧倒される時もあって……悔しく無いのかい?」
チョッキリーヌとしては団の中での出世のライバルであるスラッシューがいない今がチャンスと踏んでおり、上手い事手柄を得るべく部下の二人に喝を入れたのだ。
「そんな事言いましても、ザックリ言ってアイドルプリキュアは……キュアソウルは特に強いんすよ」
「アレをどうにかするには前みたいに連携をカッティングするくらいしか……」
「……ちなみにカッティー、ザックリー。お前達は偶に外に出ているが……スラッシューは見たか?」
カッティーやザックリーは一応このアジトで生活するための必需品とかも得るために偶に外へと出ている。そのためにスラッシューを見たかとチョッキリーヌは問いかけた。
「スラッシュー様ですか?ザックリ言って見てないっすね」
「うーむ……自分は確か……どこかでそれらしい人を見た気が……」
その瞬間、チョッキリーヌはカッティーへと詰め寄ると意を決したのか彼へと命令を下す。
「良し、カッティー。今日はお前が出るんだよ」
「自分がですか?」
「今回は無理にクラクラの真っ暗闇にしなくて良い……と言うよりプリキュアに察知されるからするな。街中に溶け込んだスラッシューを探し出すんだよ。居場所がわかるだけでもこっちは連絡を通しやすいからね」
「イェス!ボス!」
どうやら今回カッティーに課されたチョッキリ団としての任務はスラッシューの捜索らしい。チョッキリーヌは何だかんだでスラッシューの居場所を探す辺り、彼女の事を気にしている証拠だろう。ただし、それは彼女の心配をしているのでは無く抜け駆けが嫌だからだが。
そんな風なやり取りがチョッキリ団の内部である中、出張所ではメロロンが南の指導の元ボイスパーカッションの練習をしていた。
「こうメロ?プスッ……プスッ……」
「うーん。やっぱりメロロンちゃんは妖精のままだからかな……。声の空気圧が足りて無いって感じ。私は“プスッ!”だけどメロロンちゃんは“プスッ……”ってみたいに最後の方の圧が薄いわ」
「メロ……どうしたらそれが直るのメロ?」
メロロンは自分の力が足りない事を気にしているのか、南へと質問をすると彼女は少し考えるとメロロンへと返す。
「まずは肺活量を増やすトレーニングをする事かな。ボイスパーカッションってずっと音を連発して出さないといけないから単純に息を沢山使うんだよね。例えばそうね、息を思いっきり吸って少しずつ出すとかして腹の筋肉を鍛えるとか」
「筋トレ……」
「まぁ、一番手っ取り早いのはメロロンちゃんも私達みたいに人間の姿になる事かしら。それが出来るなら今よりも肉体がサイズアップするから肺活量や空気を一度で送れる量が増えるし」
とは言っても、今のメロロンに人間になれるだけの力は存在しない。そう考えるとやはり地道な努力の積み重ねだけがどうにかする鍵と言えるだろう。
「でも、少なくとも私はメロロンちゃんには才能があると思うのよね」
「そうなのメロ?」
「うん。メロロンちゃんは単音としてなら良い音がすぐ出せるようになったし、私が初心者だった頃はそれだけでも習得にもっと苦戦してたからなぁ」
南はメロロンにボイスパーカッションの才能があると判断すると彼女を褒める。メロロンは少し気恥ずかしそうにする中、内心で影人やプリルンの役に立てると喜ぶ。
「じゃあまたさっきの繰り返し練習ね」
「メロ」
メロロンはこのように真面目そうに授業を受ける。普段の彼女なら積極的な授業への参加は嫌がりそうな物だが、こうしてまともに受けてるのはひとえに影人やプリルンの力になりたいと強く思ってるからだろう。そうで無ければメロロンがここまで集中することは無い。
それからメロロンは南の指導の元、更に練習を進める事に。同時刻、コーラス練習をするうた、なな、こころの三人。尚、夢乃はプリルンと共にリードの練習をしている。夢乃のパートは一応1stにはなるが、リードの部分もそれなりに多めだからだ。
「それじゃあまずはリズムキープの練習からだねー」
「「「……リズムキープ?」」」
「ほら、さっきの合わせの時さ。皆バラバラな時間が多かったのにたまーに合ってたタイミングあったでしょ?つまり、個々の間でもリズムが統一されてないの。普通、バラバラな時間が多いって事は絶対タイミングは合わないはずなの。でも、偶に合うタイミングがあった。って事は個人個人のリズムがブレブレって事になるからさ」
それから講師である環木が出したのはスマホの画面にはリズムを一定間隔で刻んでくれる機能が出てくる。
「このリズムに合わせて手拍子してみて。ただ、途中で音を消すから手拍子のタイミングをそのままキープ。再度音が鳴った時にタイミングがピッタリならリズムキープに成功してるって事だから」
それから早速三人はリズムキープの練習をする……が、やはり最初はなかなかタイミングが合わない。
「あーっ!また合わなかった!」
「うぅ……やっぱり難しいです」
「最初は皆そんな物よ。あ、でもダンス経験者のこころちゃんは特にこういうリズムキープは得意みたいね。さっきの合わせの時も音程は釣られてたけど、リズムは一番キープできてたし」
三人共がリズム練習をする中で少し経つとリズムキープがそれなりに出来るようになってくる。
「さてと……じゃあそろそろ裏拍……行こっか」
裏拍とは。リズムの音源から音が鳴るタイミングを表拍と言うのだが、音が鳴るタイミングはずっと連続する訳では無い。音が鳴らない間の時間も当然存在する。その間の時間の事を裏拍と言う。
「えっと、次は音が鳴ってないタイミングで手を叩くんですよね?」
「うん。でも、表拍で慣れてる体で裏拍について行けるかな〜」
環木がそう言うと彼女の言葉通り、三人はミスを連発。やはり表拍のタイミングが体に染み付いた瞬間を狙った裏拍には三人共体が付いていかなかった。
「難しすぎですよー……」
「思わず表拍のタイミングにズレちゃいますね、これ……」
特に三人の中でもうたはミスの回数が二人よりも多めであった。そんな中、環木はそろそろ休憩が必要と感じたのかそれを提案する事になる。
「まぁまぁ。これも段々できるようになれば良いからね。少しだけ休憩を挟んでまた次に行こっか」
場面はまた変わり、リードの二人へ。夢乃とプリルンが山上に教えを受けている。
「プリルンちゃんはひとまず歌のテンポを早めることかな。プリルンちゃんのペースに皆が合わせるのは曲調的に難しいし」
「プリ!これでも頑張って早くしてるプリ!」
「ごめんね……正直な所、それでもまだまだ足りないんだ」
プリルンはまず歌うペースをどうにかしないといけない。その際に隣にいる夢乃がプリルンへと声をかける。
「私も最初、お兄ちゃんに矯正されるくらいには歌うの遅めだったし、歌うのが遅いっていうのはちゃんと直せるから……一緒に頑張ろ?」
夢乃はVtuberにて配信をする際にドリーム・アイという大人の女性という姿を演じるために影人によって色々と子供っぽい喋り方や直してもらっていた。勿論歌ってみたもやっているので歌い方も矯正している。
だからこそプリルンの現状はどうにかできるという事を彼女へと伝えていた。
「夢乃さんは全体的に音は割と大丈夫だから次は歌う時に周りのタイミングに合わせることや音程の方を直していこうか」
それからプリルンが自分の課題点である歌う速度を直そうとする間、夢乃の方は先程歌って見た際に発生した課題点を一つずつ無くすべく歌詞を一部ピンポイントで指摘してもらう。
「アイドルのサビ前の夢乃さんがリードの部分って色々と質問されてると思うんだけど、それに対して答えを返してる部分があるの。ここは夢乃さんがドリーム・アイとして質問されて答えちゃいけない時にのらりくらり躱している時みたいな感じで歌ってみて」
「はい、やってみます」
そんな風に夢乃への指導が進む中、プリルンは少しずつ自分で歌を矯正する中で胸に苦しさを感じ始めていた。
「プリ……プリルンは、頑張ってもダメなのプリ……?速度が直るまでちゃんと見てもらえないプリ?」
プリルンの方を見るために着いてきた田中が今にも泣きそうになったプリルンを見てフォローしようとすると、そんな様子に気がついた夢乃はプリルンの頭を優しく撫でる。
「夢乃……」
「大丈夫。私も最初はプリルンと同じだった。悔しくて何度も泣きそうになりながら特訓したよ。……だからこそ今の私がいる。プリルンは皆と一緒に歌いたいんでしょ?」
「そうプリ……」
「大丈夫、皆ちゃんと待ってくれるから。プリルンはプリルンのペースで上手くなれば良い。そうしたらきっとこのアカペラが楽しいって思えるから」
夢乃はドリーム・アイのような落ち着いた話し方をして泣きそうだったプリルンの心を落ち着けた。山上は夢乃がしっかりとプリルンを落ち着かせたのを見て彼女の力を感じ取る。
「……夢乃さん。まだ小学生なのに……しっかりしすぎでしょ。ここまで育てた影人さんの手腕がどれだけ凄いか……どうりで音崎社長がマネージャーとして欲しがるわけね」
「プリルン……キュアアイドル達と歌うためにもっと頑張るプリ」
また場面は変わり、ベースを練習する影人と講師の仙石。仙石はあまり多くを口にしない。
「……影人君」
「はい」
「プリルンのこと、気にしてる?」
「……まぁ、プリルンはまだ幼いので色々と失礼を働いて無いかなと」
影人がそう返すと仙石は少しだけ考えてから影人の言葉に対してある事を返す。
「……逆に言えば、まだプリルンは幼い。あのくらいは仕方ない事。むしろ、縛り過ぎ。プリルンが可哀想」
影人は仙石からそれを指摘されて目を見開く。そう、プリルンはまだ幼い。それこそ自分の影響で実年齢以上の能力を手に入れた夢乃へと影人が初めて指導したあの時よりも。
仙石が先程感じ取って言わなかった事はこれだった。プリルンは幼いが故に無邪気で勝手な行動も沢山取る。しかし、それはプリルンの精神年齢の子であれば至極当然の反応でもあった。夢乃への指導開始は少なくとも小学生に入ってからに対して今のプリルンは園児ぐらいの精神年齢なのだ。
そんな彼女を無理に縛れば心が壊れてしまう危険があるのは火を見るよりも明らかである。
「……でも、これは遊びじゃ無いんですよ。皆が真剣にやらないと……」
「……アカペラを楽しんでやる事は悪い事じゃ無い。むしろ、影人君は凝り固まり過ぎ。歌にもそれが出てるよ」
影人はそんな指摘をされて言い返せなかった。仙石からの指摘は全くもってその通りなのだ。加えて、影人は神経を張り詰め過ぎているせいで歌にも悪影響が出ていた。
「勿論練習は真剣に受けないとだけど、歌う時くらいは楽しんだ歌い方をしても良い。楽しんでやらないとただ辛いだけだから」
「……わかりました。気をつけます」
「まぁ、影人君の気持ちもわかる。プリルンは無邪気だからこそ色々やらかしも多いから」
そう言われて影人は仙石からの言葉に対して小さく頷く。ただ、仙石からの指摘の影響でプリルンへと向けられていた影人の負の感情はある程度軽減されていた。
アカペラ練習はこのように進んでいくと昼休憩の時間となり、一同はまた最初の場所に戻ってくると昼食を摂る。このタイミングで全体的な交流を行い、講師陣と影人達生徒でコミュニケーションを取って繋がりを強くしていった。
同時刻、街中にいるカッティーは一人命令を受けてスラッシューを捜索中である。
「チョッキリーヌ様の指示とは言ってもかように人が多いと目的の人を探すだけでも一苦労ですぞ」
そんな風に呟きながら歩くカッティー。一応人混みに入ってしまえばチョッキリ団の服装はちょっと変わったスーツ姿として捉えられるので化け物扱いはされない。
そんな中だった。タイミングが良いのか買い出しをし終わった所のスラッシューこと天城が出てくる。
「む!あれは……」
カッティーが慌てて追うと天城は何かに気がついたのかカッティーを見た。
「あら、誰かと思ったらカッティーじゃないの」
「チョッキリーヌ様がお探しでしたぞ、スラッシュー。人間界のどこで働いているのですぞ?」
カッティーからの問いかけに対して天城はあまり答えたく無いのか答えを濁す事にした。
「……さぁ。その辺でバイトしてるんじゃない?」
「真面目に答えるのですぞ!」
カッティーに詰められて天城は多少不機嫌になる。彼女としてはカッティーに場所を教えてしまうとそこにチョッキリーヌ達が来てアイドルプリキュアと鉢合わせもあり得てしまう。そんなハイリスクな事をやりたく無かった。
「私の働き場所を知りたければ自分で探す事ですわ。それと……私の潜入の邪魔をしたらどうなるか……わかってるのでしょうね?」
天城に鋭い眼光で睨まれるとカッティーは僅かにたじろぐ。すると天城はカッティーにある事を要求した。
「……そういえばカッティー。今日は珍しくクラヤミンダーを呼ばないですわね」
「それはチョッキリーヌ様からの指示で」
「……私に一つ策がありますわ。クラヤミンダーを呼びなさない」
「し、しかしですぞ……」
カッティーの上司はあくまでチョッキリーヌ。そのため彼女以外からの指示で変に動くのはカッティーの主義に反する。加えて、個人的にも天城に利用されるのは良い気持ちじゃ無かった。
「仕方ないですわね」
天城がテレパシーで何かを伝えると彼の脳内にダークイーネの声が響き渡る。それは彼に協力を指示するものだった。
『カッティーよ、スラッシューへの協力を命令する。クラクラの真っ暗闇の世界の実現にこれは必要な事である』
「ぐぬぬぬ……スラッシュー様、卑怯ですぞ」
チョッキリーヌの指示が無いカッティーがスラッシューからの指示で動けなくとも、ダークイーネからの指示であれば動かざるを得ない。
「卑怯?……世界をクラクラの真っ暗闇にする。そのために手段を選ばないのは当然の事ですわ」
カッティーは仕方なく言われるがままにクラヤミンダーを召喚するための水晶を出す。
「じゃあ、やるのですぞ……」
「……ちょっと待ちなさい。少しだけ手順がいりますわ」
その直後、スラッシューが何かの丸いタイプの水晶玉のような物体を出すとそれをカッティーに預けると同時に何かを指示して概要を説明。それからカッティーはクラヤミンダーを召喚する。
「お主のキラキラ、オーエス!」
「きゃああっ!?」
「カッティーン!」
カッティーの力によって女性と思われるとある誰かのキラキラが抜かれるとカッティーは容赦無くキラキラを切断。クラヤミンダーを召喚した。
「出でよ!クラヤミンダー!世界中をクラクラの真っ暗闇にするのですぞ!」
「クラヤミンダー!」
そのクラヤミンダーは買い物籠のような体をしており、その場に降り立つ事になる。そのままクラヤミンダーは街中で暴れるの開始するのだった。
また次回もお楽しみに。