「人間は愚か」
いくら頭が良くて魔法が得意で運動が出来るからって、 男爵家の貴族の分際で、そう突き放したように言って王子達をも見下すセレスはやべー奴だった。
いつだって手抜きしてるのが丸わかり。それでいて成績は上位。ほんとムカつく。
半年我慢して、我慢できないのと、心配半分にとうとう俺は奴に突っ込んだ。
だって、そういう嫌な態度は、セレスのみならず、セレスの家族や領民の首を絞めるのだ。器のでかい殿下達だって、限度や外聞がある。
そして、セレスはとんでもない魔法を使った。
グラウンドに花が咲き乱れ、花びらが舞う。
なんて美しくも神々しい姿。
とても売り言葉に買い言葉の産物とは思えない。
豊穣魔法。
グラウンドを花畑にして見せたそれは、とんでもない。
例えば、これがムギだったらどうだろう。
食糧事情に革命が起きる。
あっさりとそんな術を使ってのけて、セレスはまた人間は愚かだって言った。
お前、人間じゃねーの? 拾われた子だったわけ?
魔族の教師。
魔法は優しいけど、ツンツンしている所とかがすげー魔族ってイメージに合う。
魔族なんて神話にすら出てこない、フィクションの産物だと思ってたけど。
とにかく、セレスはグラウンドを花畑にして行ってしまった。
「どうするの? これ」
「収穫してから刈るしかなかろう。しばらくは食卓が華やかになるぞ」
殿下がいう。
そうだよなぁ。はぁ。俺も煽ったし、仕方ないかぁ。
みんなで夕食までに後始末をなんとか終えて、迎えに行く。
本当に世話が焼ける。
でもまあ、ちゃんと謝ったからよし!
セレスはちゃんと話せば、ちゃんとわかる奴だった。
そして、魔法を教えるのがめちゃくちゃ上手かった。
一回教えてもらっただけで、俺は水を出す魔法をマスター出来ていた。
行軍なんかにも役立つ、一生物の魔術だと思う。
魔族の先生すげぇ。
でもなんか、セレスだけを基準にするなら、滅ぼされるのも納得って感じだった。
ツンツンしている割に、人の悪意や欲に無頓着なんだよなぁ……。
先生達はこんなにも裏でフィーバーしてセレスを利用し尽くすつもりだと言うのに。
まあ、1番大事な軍事力を育てなかった魔物の国なんぞお察しである。
話を聞くに、魔族達は優しく有用でのんびりしていたらしい。
侵略されないはずがないでしょ。
ってことで、授業である。
留学生達が、有形無形の巨額の対価を払って来た。
しばらく我が国は安泰だ。
魔族の国の授業は、魔がつくだけあってレベルが違った。
俺達の国の魔術は、今で思うと不思議に思うくらい、攻撃特化。
でも、魔国の技術は他分野に及んでいる。魔法の関係しない産業がないと言った方がいいくらい。
でも、肝心要の軍事力に力を注がず滅びた事は忘れず心に刻んでおきたい。
にしても、魔国の男尊女卑は面白い。
結構な男尊女卑だったとセレスは言うが、女の子が傷を治すのが仕事なら、男は女に頭が上がらないと思う。
あと、マナー講習も良かった。女の子の呪い合戦に男は絶対に関わってはならない、ってマナーも面白い。
家事魔法を女の子の前で、女の子より上手く扱ってはならないとか。女子の前でのスマートな失敗の仕方とか。女の子への頼り方とか。
やっぱり魔国の男は女に頭が上がってないじゃん。
そして、授業の男女差別が試験的に撤廃されたが故に、男のマナー講習は女でも受講できる。男の涙ぐましいマナーを女子がガン見しているのが面白い。男のマナー講習は男女関わらず、結構な人気である。
反発して女の子向けのマナー講習に突撃してみたけれど、これもまた凄かった。魅了の術とか、誘惑の仕方とか、お預けの仕方とか、殿方のさりげないサポートとか、色々。やっぱり女の方が強いじゃん、魔国。
そんな魔国のマナー講習について、男目線女目線で話し合い、それぞれの国のマナーや風習と比較するのが楽しかった。
合同授業の時には、それぞれの国のマナーや風習について議論したりレポートを書いたりした。楽しかった。
セレスが初めに女の子にも魔法を教えることを希望したことに最初はびっくりしたけど、魔法の対象が攻撃呪文だけではないのなら納得。
どさくさに紛れて、女の子が攻撃魔法を受講してたけど、考えたら武術ならともかく、魔法に男女は関係ねーよな。
そんなこんなで、学校では女子と男子の仲はすこぶる良いし、勉強はめちゃくちゃ楽しい。出来る事が加速度的に増えていく。
最も、宿題があるので、どんなに頑張ってもセレスの授業は五つまでしか取れないだろう。実際に身につけるとしたら二つがちょうどいいかも。
総合的に教えてもらえるサバイバル学は学ぼうと思っている。
そして、最後の授業がテイマー学だった。
なんと、扱うのは魔物!!!
おとぎ話の住人だ。それも、代表的なスライム!!!
箱の中に乱雑に突っ込まれた色とりどりのスライム達。
俺は水属性が1番強いので、水色のスライムを取った。
魔力を発すると、寄ってきて可愛い。
「スライムはダンジョンの掃除屋です。この子達は綺麗ですが、基本、ごみを消化して綺麗にしてくれます。トイレや排水溝で育てられてるのがコイツです。幼児のペットや簡単な賭けレースの対象、素材としても人気で、基本、昆虫程度の知能ですが、きちんと育てれば人語も魔法も習得します。魔物の中で最も格差のある生き物です。一週間に一度、餌をあげれば死にません。更に言うなら、餌が腐っててもよし! 動物や植物を世話させる前に、最初に幼児達に与えるのがスライムです。スライムを飼えない奴はあらゆる生き物の育成に関わってはなりません。スライムを育てられないヤローがサボテンを育てられると思うな!」
セレスは気合を入れて、スライムを飼える事が生き物を飼う最低限の資格なのだと繰り返した。
餌は本当に多彩で、魔石、植物、肉、排泄物、動物の死骸、水、なんでもOKらしい。
しかも、餌代を確保してあり、餌やりは一日一回で良し。
これで死なせたらほんとお前って感じなのはわかる。
流石に排泄物はアレなんで、果物と水、青の魔石や俺の魔力をやる。
喜んでくれているようで嬉しい。
プルプルと震えるひんやりしたボディ。
可愛いスライムに、餌をやりすぎても仕方ないと思う。
1日3回、りんごを一個ずつなんて許容範囲だよな。
一応、生存で合格だけれど、コンテストをするから頑張って育てるつもりだ。
まずは簡単な芸でも覚えさせてみようか。