のんびりな生活を求めたかった…はずなのに。   作:RAMMAR

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ポリゴンを使い果たした適合者がここに。


フラグは最高のご褒美とはよく言ったもので…

 適合者がまた活躍した。

 

 それを知ったのは、今から数日前に掲載されたとあるネットの切り抜き記事である。何でも、超ウィザード級に認定されていたとあるハッカー集団を苦戦の末に鎮圧したらしい。

 

 「適合者さん、どうやらまた活躍したみたいですね。ニュース見ましたか!!」

「後追いの切り抜き程度だけどね。すごいハッカー集団をとっちめたんだっけ?」

「凄いですよね〜!!コストが高くて強い先輩方の力を借りて、部下諸共バッタバッタとなぎ倒していったとか!!」

「ビジュネルは適合者さんにお熱だねえ〜」

 

 ビジュネルは適合者さんに昔お会いして、一緒に敵と戦った事があった。その際、何度かピンチを救ってくれた事を一時期話をしていたな。何でも高身長イケメン…?いや…かっこいい人だったが、性別までは分からなかったらしい。

 

 適合者とは、仮想世界ALICEに巣食う暴走システム…通称「ハートの女王(以下、女王と省略)」に対抗するための最大戦力の存在、言わば最強の切り札であり、ALICE最大の有名人である。

 元々、女王はALICEを外部からのハッキング等から護るために設計された史上最強のAIとして長年人間に従事してきたが、いつしか人間こそが最大の悪であると定義してしまった。

 現在はその存在を暗ませており、いつ人間への報復行動を起こすかが分かっていない。そこで、女王を退けるべくアカデミアの先輩方が用意した存在が、適合者という人物である。

 

 おっと、このストーリーにおけるバトルシステムについても触れておかないとな。

 ALICEには、バトルシステムという、赤・青・黄・緑の四属性に分類して戦闘を行うというものがある。分類されたものには、属性によって相性が決まっている。

 例えば、赤属性は緑属性からの攻撃が効きにくく、逆に赤属性からの攻撃がよく通る。反対に、青属性からの攻撃には弱く、ダメージ量が増えてしまう…とか。それぞれの属性には、それぞれに有利な属性が一つ存在し、同時に不利な属性が一つ存在している。

 僕がアカデミアに招聘された時点からのシステムなのでなぜ採用されたのかは分からない。だが、相性の関係から無差別に人を傷付ける存在は滅多に居ないので、結果的に異端集団を無力化するというところに落ち着いている。

 バトルシステムは、全員の持っているコストの合計を考慮しながら最大4人でパーティを結成して、それを適合者さんが戦闘に合わせて指示を出していくというものである。司令塔のような役割を担っていると考えていいだろう。もちろん、適合者さんも場合によっては戦うみたいだね。僕は会ったことがないから、その辺はなんとも言えないけど…

 

 コストとは、ヒトやAIが仮想世界ALICEに初めて受肉したときに得られる、言わばレア度に相当するものだ。

 VRMMORだったら、レア度がより高い武器やモンスターの方が価値が高くて、尚且つ強力だからみんな欲しいだろ?ALICEでは、コストが高ければ高いほどに、その存在が持っているスキルやアビリティが強い傾向がある。どのようにしてコストの高低が決まるのかは、仮想世界にどんな媒体でログインしているかによるらしい。携帯端末からの簡易的なログインだとコストが低く、逆にフルダイブ型デバイスからのログインだとコストが高くなるシステムになっている。

 

 因みに、僕のコストは60、ビジュネルのコストは70である。ビジュネルは外の世界でも天才ぶりを発揮しているので、ログイン端末にはそれなりの資金をつぎ込んでいる。なんだったら、僕達は外の世界でも面識がある。

 

 話を戻そうか。ここで疑問なのだが、コストが低いと戦闘に不向きで出番が無いのか?それは違う。最近、パーティの合計コストが一定の値に下がらないと適合者諸共お陀仏になるようなシステムを一部のハッカー集団が悪用しているのである。どんな仕組みなのかはアカデミア内でも見解が分かれていて、その実態は掴めていない。

 だからこそ、属性の相性を考え、尚且つコストに見合った人選を行いそれを指揮する存在が不可欠なのである。それが適合者さんというものだ。

 

 また、個々人が持っているスキルやアビリティにはそれぞれ固有のものがあって…

 

 「あの、師匠?誰と話しをしてるんですか?」

「…読者に説明していたんだよ。」

「……?」

 

 しまった、つい話をしてしまった。まあ、ここまでの話はだいたい合っていると思う…多分!!

 せっかくのお茶会に水を差すのは良くないな。今現在もそうなのだが、ビジュネルと世間話をしながら紅茶と茶菓子を分け合うことが日常になりつつある。彼女は忙しい。毎日とはいかないが、仕事の合間を縫って僕の研究室を尋ねてくるのだ。

 

 「ところで師匠、ニュースで報道されていたハッカー集団の大頭なのですが、どうやら今朝逃亡したらしいんですよ。」

「逃亡?それはまた物騒な。」

「しかも、ディザスターに関する機密データも、一つ盗まれたってアカデミアの先輩方が騒いでいましたよ。」

「なんだって?…あれはアカデミア内で管理をしていた機密事項、言わばトップシークレットだろ?何重にもプロテクトをかけていたはずなのに、それを突破したというのかい!?」

「当時着任していた管理部のアカデミアの属性相性は良かったんですが…お邪魔パネルとハッキングには対応していなかったらしくて、ゴリ押しでやられたとか?」

「で、その結果データが盗まれたと。」

「盗られたのは分類番号ⅩⅧ " ラヴィジ " と聞いています。」

「滅の象徴か…絶対面倒なことを企てているな。」

 

これは後から聞いた話なのだが、主に盗まれたデータは、ラヴィジ初顕現時の状況や当時の対処記録に関する文書、加えて基礎体力や攻撃パターン等の攻略に関する内容だった。

 特定の儀式さえすれば、無機質で無意識に破壊と殺戮を繰り返す恐ろしい存在、通称 " 災害類(ディザスター) " を、人為的に呼び出せるという事ができてしまうのだ。当然、あってはならないことである。

 

 「ですから、師匠も気を付けてくださいね?」

「僕から首を突っ込むことは絶対にないから、大丈夫だよ。心配してくれているのはとても有難いけど。」

「そう言って、な!ぜ!か!いつも事件に巻き込まれているんですからね!?」

「あれは事件の方から寄って来ているんだよ?僕は何もしていない…」

 

 不本意ながら、僕は事件や事故に巻き込まれやすい体質のようだ。ビジュネルを巻き込んでしまったことも何度かある。

 

 「おっと、そろそろ職場に戻らないと。師匠も、くれぐれも気をつけてくださいね?」

 

 そう言い残し、彼女は研究室を出て行ってしまった。もう少しゆっくりしていってもいいのに…全く。うちの後輩は働き過ぎなんだよ…

 え?お前はもっと働けって?

 むっ、失礼だな。これでも定期的に掲示サイト ピクリスに自作のナゾトキを投稿して、収益を得ているのだよ!ニートちゃうし!アカデミアの本職はサボっているけど、決してニートではないからね!!その昔、ピクリスランカーの称号を手にしたことだってあるんだ!本当だ!信じてくれよ〜

 

 僕も、そろそろ冷蔵庫の作り置きが無くなってきたので、街に繰り出した。外はまだ肌寒いのできっちり着こなしている。ここが仮想世界であり、現実とは違うのを忘れてしまいそうだ。

 

 そろそろ、桜が見られるだろうか?

 そう考えていた時、突如…

 

…大音量の奇声と共に地面が割れた。




アンゴスキーは、サボり魔のよわよわアカデミアです。周りからの評価はあまり良くなく、本人もそれは自覚している。しかし、自身の研究成果をALICE発展に貢献できるような材料ではないと考えているため、中々現状打破とはいかない。

与えられたコストも60と、アカデミアとしては比較的低い部類なので、バトルシステムでの活躍の場が現状無いのも痛いところ。
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