(DEMO版)TS転生結月ゆかりはポケ愛が強い   作:グランド・オブ・ミル

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ゆかりさん、リーフに解説

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ポケモン達があちこちに生息する夢のような世界で、”結月ゆかり”の身体で生きること幾ばくか…。この世界のポケモンバトルを見て常々思っていたことがある。”サトシ型”のバトルをするトレーナーが大多数であるということだ。

 

 いったいどういうことなのか、定義から順を追って説明していこう。

 

 

 

 ポケモンバトルにおけるトレーナーの戦術は、大きく2種に分類できると考えている。それが”サトシ型”と”シンジ型”、端的に言い表すなら”努力派”と”理論派”だ。

 

 

 

 サトシ型は努力派なバトルを展開するトレーナーを言い表す言葉で、名前の由来は長年アニポケの主人公を務めたサトシから頂戴している。トレーナースクールなどで教えられているバトルの基本的なやり方であり、考慮すべき点はポケモンのレベルとタイプのみ。とにかく努力と根性でポケモン達を鍛え上げてレベルを上げ、相手に相性の良いタイプの技をガンガンぶつけて勝利を狙っていこうね、という戦術だ。ゲーム本編で旅パを育成する感覚と思ってくれればいい。

 

 これがこの世界のトレーナーのほとんどが採用しているオーソドックスなスタイルである。このスタイルの利点は何と言っても扱いやすさ、初心者でもベテランでも非常に取っつきやすいところにある。

 

 何せトレーナーが考慮すべき点がレベルとタイプの2つしかない。ほのおタイプのポケモンが出てきたらみずタイプをぶつけよう、くさタイプが出てきたらこおりタイプの技を叩き込め、いつ強い奴と戦うことになっても良いように常日頃から鍛えてレベルを上げておくんだ、というように、単純(シンプル)かつ脳筋チックな理屈で成り立っているのがこのバトルスタイルだ。

 まさにアニポケのサトシ君がやっているのと同じバトルをしているわけだ。

 

 単純(シンプル)であるが故に、このやり方だと素早い判断が可能になるという魅力もある。考えることが少ない分トレーナーが次の行動を決めるための判断材料も少なくなるので、瞬時に指示を飛ばすことが可能になる。その特徴からキュウコンやストライクのような素早い動きが売りのポケモンと相性が良い傾向があって、その辺もサトシ君と同じだ。

 

 

 

 一方のシンジ型。これは理論派の名前の通り、数字と論理に重きを置いたバトルを信条とするスタイルである。名前の由来はアニポケのダイヤモンドパールシリーズでサトシのライバルを務めた”シンジ”というキャラクターで、彼が作中で行っていたバトルをするのがこのやり方だ。

 

 ポケモンのタイプとレベルを考慮するのはもちろんのこと、ポケモン一匹一匹の特徴を種族値レベルまで頭に叩き込み、努力値や個体値をこだわって育成し、性格や特性まで勘案した上で戦術を組み立てていく。対戦相手の実力や特徴に合わせて手持ちポケモンを細かく調整する他、使用するポケモンも”サポート型”、”攻撃型(アタッカー)”、”耐久型(タンクやく)”のように役割を分け、緻密かつ堅実で隙の少ない戦法で勝ちを狙いにいく。

 

 予め用意したゲームプランや読みを駆使して戦うこのやり方は、ネットでのガチ対戦を生業としている現実のプレイヤーのそれと非常に酷似している。非常に高レベルなバトルを実現できるので、習得すれば無類の強さを発揮できるのだが、残念ながらこの世界ではこのスタイルを採用しているトレーナーはほとんど見かけない。それはやはり習得難易度の高さや高度な知識を要求される点にあると思われる。

 

 前世ではちょっとネットで検索すれば当たり前のように取得できた種族値や個体値などの知識も、こちらの世界ではほとんど知られていない。ポケモン研究の権威である各地方のポケモン博士でさえも恐らく知らない知識だ。どのように育てれば理想通りの能力を発揮できるポケモンが育成できるのか、ジムリーダーやチャンピオンでさえもそのことを分かっていないのが現状だ。何も分からない、誰も教えてくれないこの環境下で、シンジ型のバトルをするトレーナーが大成する可能性はほぼ皆無だろう。

 

 加えてバトル中、常に高度な判断を要求されるという点もトレーナーを遠ざけている。サトシ型と違って、自分と相手のポケモンの種族値、技構成、素早さ順、火力、耐久、周りの環境…、あらゆる側面から思考を巡らせ、最適解を選び続ける必要がある。それに耐え得るトレーナー側の器も重要なスタイルなのだ。

 

 

 

 さて、このサトシ型とシンジ型。どちらが正しくてどちらが間違っているなんて言うつもりはない。ただ、個人的な考えを述べると、最終的にどちらが強くなるのかという話となれば、圧倒的にシンジ型であると思う。

 

 サトシ型は確かに万人に分かりやすく、親しみやすい戦法ではあるのだが、如何せんポケモン側に依存している部分が大きすぎるきらいがある。レベルと相性でガンガン攻めて相手を倒していこうという戦術なわけだから、ひとたび太刀打ちできないくらい高種族値、高レベルなポケモンが現れると途端に失速してしまう。じゃあもっと鍛えれば良いかといえばそうではなく、ポケモンのレベル上限は100なわけだからどうしても限界は訪れてしまう。加えてタイプ相性は基本的に覆せないものなので、どんなに鍛えたところで勝てない相手は存在する。取っつきやすいが故に不安定さも抱えているのがこのスタイルなのだ。

 

 一方のシンジ型はあらゆる側面から勝利の可能性を見い出し、道筋をパズルのように組み立てるというやり方なわけだから、通常では考えられないジャイアントキリングをも可能にする。前世ではピカチュウのような決して種族値が高いわけではない一般ポケモンで伝説のポケモン達を相手に無双するという動画がたくさんネットに掲載されていたが、あのようなことが現実でも可能なのだ。やり方次第でタイプ相性もレベル差も、何もかもひっくり返すことができる。戦術によってどんなポケモン相手でも、どんな状況下でも勝ちを狙っていけるという、シンジ型にはそんなサトシ型にはない無限の可能性が秘められているということだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「__とまあこういうわけで、トレーナーとして高みを目指すなら後者。シンジ型のバトルスタイルを習得することが必須なわけです」

 

 バトルが終わってから私はキャンプ用の椅子に座り、ユカリさんから戦術の授業を受けていた。どこから取り出したのか分からないホワイトボードにペタペタ写真や資料を貼ったり書き込んだりするユカリさんの説明を、お腹に抱っこしたイーブイと一緒に聞く。フシギソウは難しそうな話に興味がないのか、私の足元ですぴすぴと気持ちよさそうに寝ている。

 

 

「…はぇ~、すごい。初めて聞くお話ですごくびっくりした……」

「ぶぃ~…」

 

 トレーナーのバトルスタイルにも種類がある。そんなこと考えたこともなかったのですごく新鮮な気持ちだった。スクールで教わったのは確かにユカリさんが言うところのサトシ型のやり方、レッドとグリーンもタイプ相性で技を素早く決めてガンガンバトルを進めていたから当てはまってる。ネットやテレビで見たジムリーダーや四天王の人達のバトルもこれだ。

 

 今まで私はバトルのやり方をこれしか知らなかったから、これが正しいバトルのやり方なんだ、これしかないんだって信じてた。まさか全然知らないバトルのやり方があって、しかもそっちがより強くなれるやり方だなんて思いもしなかった。こんなことを考えられるなんてやっぱりユカリさんはすごいトレーナーなのかも…。

 

 

 ………でも

 

「ユカリさん、今のお話と私の才能に何の関係があるの? 私、そんなに難しそうなバトルやっていける自信ないよ…?」

 

 どんなにすごいやり方を知っても、私ができないんじゃ意味がない。難易度が低いサトシ型のバトルもできない私じゃ、チャンピオンの人ですら実現できないようなバトルができるとは思えない…。

 

 不安になる私にユカリさんは、ちっちっ、と指を振った。

 

「ところがどっこい、そうじゃないんですよ。むしろ貴女こそシンジ型のバトルを習得するに相応しい適性を持っているんです」

 

「え……?」

 

「この2つのスタイルをよく見比べてみてください。見事に正反対の特徴をしているんです」

 

 サトシ型のバトルは努力や根性といった精神論が主体。強くなりたいという思いで愚直に鍛え、真正面から相手にぶつかっていくやり方。

 シンジ型では対照的に、真正面ではなく相手の弱点を突く。鍛えはするものの精神論はあまり採用せず、様々な角度から理論的に攻めていく戦術。

 

 確かに見事なまでに正反対。身体を動かすのか頭を動かすのか、そういった違いが感じられる。

 

「正反対であるが故に、得意不得意がはっきり分かれるんです。文系と理系みたいなものですね。シンジ型が合わない人はサトシ型で大きく力を伸ばす傾向がある。逆にサトシ型が苦手な人は__」

 

「シンジ型に適性が…ある……!」

 

 震える声で私が呟くと、ユカリさんがニコリと笑った。ユカリさんはホワイトボードから写真や資料を剥がし、文字を綺麗に消すと再び私に向き直った。

 

 

「シンジ型に必要な素質は大きく3つ。1つは観察眼。バトル中あらゆる箇所に目を向けて、様々な側面から思考を巡らすことができること」

 

「………あっ」

 

「言ったでしょう? 貴女の思考癖は天与の才能なんですよ」

 

 今まで私を悩ませていた悪い癖。バトル中に色んなことが頭によぎって色んな可能性を考えてしまって判断が遅れてしまっていた…、あれこそが強くなるのに必要な素質だとユカリさんは言う。

 

「2つ目は学習意欲。膨大なポケモンについての情報を記憶し、理解してバトルに活かせる力。リーフはポケモンについてしっかり勉強できるみたいですし、これもクリアしていますね」

 

 学校の勉強はできない私だけど、大好きなポケモンについてはいくらでも調べられた。だからカントー地方のポケモンはもちろん、他の地方に住んでるポケモンのこともある程度知ってる。種族値…? とか個体値…? のことはよく分からないけど、強くなるために必要な知識なら知っていきたい。

 

「最後に育成のセンスです。手持ちのポケモンが最大限力を発揮できるように育てられる力…」

 

 ユカリさんはイーブイやフシギソウに目を向ける。2匹の身体つきを改めて観察して満足そうに頷いた。

 

「ずぶとい性格のフシギソウはしっかり体力や防御力が高まるよう程良い筋力と脂肪が蓄えられ、むじゃきな性格のイーブイは素早く走るために体幹がブレないように訓練されている…。初心者の育成とは思えない出来栄えですよ。これを何の知識もなく無意識に施せたのだとしたらとてつもない天才です。リーフは神童ですよ神童」

 

 何度見ても惚れ惚れしますね、とユカリさんがイーブイの頭を撫でる。イーブイが照れくさそうに笑った。

 私はもう一度ホワイトボードを見る。

 

 

1.観察眼

2.学習意欲

3.育成のセンス

 

 

 そこには今ユカリさんが説明してくれた3つの素質が書かれている。ジムリーダーやチャンピオンも知らない、一流のバトルスタイルを身につけるために必要な才能。そのすべてが、ユカリさんが絶賛するくらい高水準で私に備わっている……!

 

 思わず自分の手を見つめる。興奮なのか緊張なのか分からないけど小刻みに震えていた。ユカリさんの方を見ると笑顔で私の反応を待っている。

 

 

「…ユカリさん……!」

 

「はい、ゆかりです」

 

「ユカリさん…! 私、強くなれる……?」

 

「えぇ、もちろん」

 

「バッジ集めて…、カントーリーグに挑戦できる………?」

 

「楽勝ですよ」

 

「……チ、チャンピオンとか、目指せる…かな……?」

 

「目指しましょう目指しましょう。何なら夢はでっかく世界チャンピオンとかになっちゃいましょう」

 

 ガタリッ、と大きな音を立てて立ち上がった。気がつけば私はユカリさんに顔を近づけて詰め寄っていた。

 

「私ッ、強くなりたい! 自分を誇れるような、すごいポケモントレーナーになりたいっ!」

 

 そんな私をユカリさんは優しく抱きしめてくれる。薄紫色の髪から甘くて安心する香りがした。

 

「…なれますよ、私が保証します。一緒にもう一度ポケモンバトルを知っていきましょう」

 

「っ……ゔんっ!」

 

 こうして私は、ユカリさんという同年代のトレーナーの生徒になった。ここからユカリさんともう一度旅をやり直す。旅の最後がどうなるかはまだ分からないけど、マサラタウンを出た時よりずっとワクワクするし、これからの旅がすごく楽しみだ。

 

 ここから私の本当の旅が始まるんだなって、そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、早速レッスンを始めたいところですが、まずはフシギソウのためにポケモンセンターに行きましょう」

 

 テントや椅子を片付け、出発する準備を整えたところでユカリさんはそう言った。フシギソウは元気そうにしているもののもしもの事があったら困るので、できるだけ早く検査してもらう必要がある。後は川に落ちてしまったせいで食料品とかモンスターボールとか、色々ダメになってしまったものも多いので買い足しておきたい。ここから一番近い町はニビシティだろうか。

 

「じゃあトキワの森を抜ける必要があるね。歩きだとちょっと時間がかかっちゃうけど」

 

「ふふん、その心配は無用ですよ」

 

 得意気な顔をしたユカリさんはモンスターボールを一つ取り出して投げた。ポンッ、という音と共にポケモンが現れる。

 

「ぎゃおっす!」

「出番ですよ、みく。お願いしますね」

 

 それはどの本でも見たことのない、初めて見るポケモンだった。紫色の金属チックな身体をした竜のような生き物で、胸と後ろ脚のところに電気でできた車輪のようなパーツが付いている。バイクとドラゴンを足したような不思議なポケモンだ。

 

「ユ、ユカリさん、このポケモンは……?」

 

「ミライドンのみくです。可愛いでしょう? 役に立つうちのライドポケモンです」

 

「ミライドン…」

 

 ユカリさんが言うにはミライドンはでんき、ドラゴンタイプのポケモンで、パラドックスポケモンという分類らしい。バイクのような見た目らしく人やポケモンを乗せて走ることが好きなポケモンみたいで、ユカリさんもよく乗せてもらってあちこち走り回っているみたい。バトルの方もすごく強くて、チャンピオンのワタルさえもこの子一匹で完封できると豪語していた。確かに身体も大きいしすごく強そう…。

 まだ全国のポケモン図鑑に登録されていない非常に珍しいポケモンであるとも言っていた。ユカリさんが知る限り、ミライドンはこの子一匹しか発見されていないんだとか。何でそんなポケモンをユカリさんは持ってるんだろう…。

 

「便利なんですよ~。この子がいれば陸海空どこにでも行けちゃいますからね。おまけに本物のバイクと違って排気ガスを出しませんから環境にも優しい」

 

 ちょっと大飯食らいなところが玉に瑕ですけど、と言いながらユカリさんはミライドンの背中に荷物を積み込んだ。そして運転席のような部分に乗って私に手を差し出す。

 

「さ、リーフも」

 

「う、うん」

 

 その手を握ってユカリさんの後ろに乗り込んだ。乗り心地はけっこういい感じ。ただこのミライドンというポケモンがどれほどの速さで走るのか分からないので少し怖い。

 

「さて、行きますか。みく、出発です」

「ぎゃおっ!」

「あ、あの…安全運転でお願いね…?」

 

 私の願いも虚しく、ミライドンは勢いよくロケットスタートを決めた。

 

 

 

 

 

 






・ゆかりさん
 TS転生主人公。この世界に来て学んだトレーナーについての独自理論を展開。もちろんゆかりさんはシンジ型のトレーナー。
 何故かミライドンを所有している。パルデア地方出身というわけではない。この辺のエピソードを公開するかどうかはまだ未定。

・ミライドン(NN:みく)
 ゆかりさんのライドポケモン。この子一匹で陸を走り、空を飛び、水上も移動できるという優れもの。CS特化で育てられているため、本気でバトルすると鬼のような強さを発揮する。


・リーフ
 ゆかりさんからバトルスタイルについて説明を受けた。まだ見ぬ自分の可能性にワクワクしている。


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