(DEMO版)TS転生結月ゆかりはポケ愛が強い   作:グランド・オブ・ミル

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 いつの間にかたくさんの方に読んでいただき、またお気に入り登録や温かく面白い感想の数々もありがとうございます。自分の書きたいもの100%の、趣味全開の作品なのでここまで好評いただけたことに驚いています。

 よろしければこれからもよろしくお願いします。


ゆかりさんのレッスン、種族値について

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トキワの森。

 

 トキワシティとニビシティの間に位置する迷宮のように入り組んだ森だ。主にキャタピーやビードルのような虫ポケモン達が生息している森であり、たまにピカチュウやフシギダネといったレアなポケモンの姿も見られることが有名なスポットだ。

 

「うりゃ!」

 

 そこに一人のむしとりしょうねんがいた。彼の名はタケル。麦わら帽子と虫取り網を装備し、肩から虫かごをぶら下げている名前通りの虫好きな少年で、このトキワの森に虫ポケモンを捕獲しに来ていた。木の枝に留まっているキャタピーにモンスターボールを投げて当てる。キャタピーは光と共にボールの中に吸い込まれていった。

 

 _……ボンッ!_

 

「ぴやぁっ!」

 

「あっ、待って!」

 

 モンスターボールはその場で数回揺れ、あと少しで捕まえられるというところで勢いよくキャタピーが飛び出してきた。捕獲失敗だ。キャタピーは急いで木を登ってタケル少年が届かない位置に移動して逃げる。

 

「…う~ん、残念。中々難しいね、ビードル」

「ぶぅ~」

 

 肩に乗せたビードルと一緒に肩を落とす少年。しかし、トキワの森には虫ポケモンがたくさんいるのでがっかりする必要はない。すぐに切り替えて次のポケモンを探し始めた。

 

 

 _…………ブロロ…_

 

 その時、遠くの方で何か音が聞こえた。森で聞き慣れた虫ポケモンや鳥ポケモンの鳴き声ではない、重厚感のある音だ。

 

 _ブオォンッ! ブロロロ……!_

 

 その音はだんだん近づいてきている。さっきよりもより鮮明に聞こえた。その音は車のエンジン音によく似ていて、かなりのスピードでこっちに来ているようだ。怖くなってきたタケル少年は身を守ろうと慌てて草むらに隠れた。

 

「ビ、ビードル、何なんだろうね?」

「ぶぅ~!」

 

 ビードルは小さな主人を守ろうと、お尻の毒針を振り回して戦闘態勢だ。

 間もなくして、音の正体が勢いよく飛び出してきた。

 

 

 

 

 

 _グオォンッ! ブオォンッ!_

 

「ひゃっほ~!」

 

 

 

「な、なに!?」

「ぶびっ!?」

 

 それは少年が見たことのない、紫色の巨大なポケモンだった。3mは優に超えているそのポケモンは全身がメタリックで金属質な身体をしていて、ポケモン型の機械のようにも見える。竜とバイクが合体したようなそのポケモンは胸と後ろ脚部分に電気エネルギーで光るリングが付いていて、それが高速で回転してバチバチと稲妻を迸らせていた。

 そしてそのポケモンには女の子が二人乗っている。ポケモンのハンドルのような部分を握って操縦している紫髪の女の子と、その子に必死に抱きついている白い帽子にロングヘアの女の子だ。

 

 ミライドンに乗って爆走中のユカリとリーフである。

 

「どうです、リーフ? 気持ちいいでしょう?」

「ユ、ユカリさん! もっとスピード落として!」

「大丈夫大丈夫、すぐに慣れますから」

「そういう問題じゃない~!」

 

 とても楽しそうなユカリと落ちないように必死なリーフ。茂みから飛び出してジャンプしたミライドンは、ギュルルルッ、とドリフトを決めて颯爽と走り去っていった。

 

 

 

「…何だったんだろう?」

「……ぶびぃ」

 

 その場に残されたタケル少年とビードルはポカンと呆けていた。何が何だか分からないタケル少年だったが、あのポケモンの大きな体躯とスピード、そしてそれを乗りこなす紫髪の女の子には少年心をくすぐられ、何となくかっこいいなと感じた。

 

 

 数年後、むしとりしょうねんからバイクずきな男に転向し、ミライドンを彷彿とさせる紫色のバイクに乗って17番道路のサイクリングロードを走るタケルの姿が目撃されたという…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、フシギソウの診察が終わりましたよ」

「ありがとうございます」

 

 何とかニビシティに辿り着いた私は、ポケモンセンターでフシギソウを診てもらうことができた。ジョーイさんに預けていたフシギソウが帰ってきて、それを抱っこで迎えてあげる。

 

「足を捻挫していたけど、すぐに良くなるくらい軽いものでしたよ。応急処置が適切だったおかげですね」

「そうですか。良かったね、フシギソウ」

「ふっし~」

 

 ユカリさんがしてくれた手当てのおかげでフシギソウの怪我は大分軽いもので済んだようだ。特に問題なく治るようでほっとする。ジョーイさんからは2日分の湿布薬を処方してもらった。

 

「ではお大事に」

「はい、ありがとうございました」

 

 ジョーイさんにお礼を言って別れた。診察室を出てエントランスの方へ向かう。出入口付近に置かれたソファの方に行くと、ユカリさんとミライドンがぐったり横たわっていた。

 

「ユカリさん、終わったよ」

「お~、そうですか…。それは何より…」

「ぎゃお…」

 

 どことなく疲れた様子のユカリさん達。それもそのはずで、この二人はついさっきまでジュンサーさんからお説教を受けていた。

 ミライドンのおかげで短時間でニビシティのポケモンセンターまで到着できたものの、あの河原からトキワの森を通ってニビシティまでフルスロットルで駆け抜けてしまったわけで、あの爆走が危険運転と見なされてしまって見事にジュンサーさんに捕まってしまったというわけだ。聞けばお説教から解放されたのはほんの数分前みたい。私がポケモンセンターに到着してから待ち時間を過ごして診察を終えるまでだから、大体1時間近くもこってり絞られたことになる。

 

「何度も同じことをぐちぐちと…どこの世界もマッポってのは口うるさくてかないませんよ」

 

 田舎の運転が荒いタクシー運転手みたいなことを言い出すユカリさん。どうやら反省するとかそういうことはないみたい。ミライドンでの移動は最初は怖かったけど、最後の方は私もちょっと楽しくなってきてたのは内緒だ。

 

「それは仕方ないよ。他の人から見たら暴走族みたいな走りだったし…」

「失敬な! 私は無事故無違反、ゴールド免許の優良ドライバーですけど!」

「…………」

 

 それはミライドンがすごいスピードで駆け抜けちゃうから現場を抑えられてないだけなんじゃ……、そう思ったけど口に出さないようにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ニビシティはカントー地方の北の方、山間部に位置する街で、自然豊かでとってものどかな場所だ。ニビ科学博物館という人気スポットもあるためか街の中はかなり人が多い。その中でもポケモントレーナーの比率が高いのは、やっぱりこの街にはニビジムがあるからだろう。

 

 ニビジムはタケシさんがジムリーダーを務めるいわタイプ専門のジム。カントーリーグ挑戦のために旅を始めたトレーナーが、最初に挑戦することを推奨されているジムなので、たくさんのトレーナーがニビシティに集まるというわけだ。

 そのため街の中の公園にはトレーナーのためにいくつかバトルコートが用意されていて、ジムに挑戦する前にたくさんのトレーナーがそこで練習バトルを行っている。

 

 私はそんなバトルコートを見渡せる公園内のベンチに座り、ユカリさんからレッスンを受けていた。今回のテーマはポケモンの”種族値”について。

 

「種族値とは何ぞや。端的に言いますと”ポケモンの能力を種族ごとに数値化したもの”です」

 

「種族ごとに…数値化?」

 

 これまたスクールでは習わなかった新しい概念。私は首を傾げる。

 するとユカリさんはノートを取り出し、さらさらと何かを書くと私に見せた。

 

「例えばピチューの種族値はこういう値になります」

 

 

HP:20

こうげき:40

ぼうぎょ:15

とくこう:35

とくぼう:35

すばやさ:60

合計:205

 

 

 ノートに書かれていたのは可愛いピチューのイラストと、その横にある7つの数字だ。

 

「ポケモンにはHP、こうげき、ぼうぎょ、とくこう、とくぼう、すばやさの6つの能力があることは知っているでしょう? ではどのポケモンがどのくらいそれぞれの能力を持ち合わせているのか、それを数値化したデータが種族値ってことです」

 

 ちなみにイーブイの種族値はこうです、とまたユカリさんはノートにペンを走らせて書いたものを見せてくれる。イーブイのイラストと共にまた種族値のデータが書かれていた。

 

 

HP:55

こうげき:55

ぼうぎょ:50

とくこう:45

とくぼう:65

すばやさ:55

合計:325

 

 

「これが、イーブイの能力?」

 

「そうです。こうして見るとイーブイという種は、ピチューに比べてすばやさは劣るものの、こうげきやぼうぎょの能力に優れていることが分かりますね」

 

 今まで私の足元に座っていたイーブイが、ぴょんと私の膝の上に飛び乗ってきた。自分の能力と言われて興味が湧いたのか、ノートの中の数字をしげしげと見つめている。

 

「例えばいわポケモンは硬くて打たれ強い、ひこうポケモンは素早いのが多い、みたいな何となくのイメージはあったでしょう? あれを数字で表すことでより明確にしていこうと生まれたのがこの種族値という概念なんです」

 

 ユカリさんの話を聞いて私はサイドンとピジョットを思い浮かべる。全身が岩の鎧で覆われたサイドンと大きな翼で大空を舞うピジョット。

 サイドンの防御力の堅さは有名だ。あの鎧の皮膚は大砲の弾さえも弾き返してしまう程頑丈でちょっとやそっとの攻撃ではびくともしない。半面岩の身体はかなりの重量があって動きはそんなに素早くない。

 一方のピジョットには防御力はあまり備わっていない。空を飛ぶために体重が軽めだし、あのふわふわな羽毛では強力な攻撃を受け止めることは難しいだろう。だけどピジョットにはサイドンにはないスピードがある。大きな翼で自由自在にびゅんびゅん飛び回って相手を翻弄する姿が、テレビやネットのバトルで印象的だった。

 

 それまでは個人の印象で何となくでしか捉えられなかったポケモンの特徴を、数字で表して誰にでも明確に分かるようにしたのが種族値ということか。なるほど…、理論と数字のバトルが信条のシンジ型らしい考え方だ。バトルに勝つためとはいえ、たくさんいるポケモンを種類ごとに1つ1つ数値化していくのってすごく大変そう…。

 

 

 ……ん? あれ、ポケモンの能力が種類ごとに分かる? それって……

 

「…これ、もし相手のポケモンの種族値が分かっていたらものすごい有利になるんじゃ……」

 

「お、気づきましたか? さすが、飲み込みが早いですね」

 

 例えばあっちのバトルを見てください、とユカリさんが近くのバトルコートを指差す。そこではまさに今からバトルが始まろうとしていて、マンキーとニドラン♂が向かい合っていた。

 

「種族値的に見ると、マンキーは高速アタッカーな数値をしていまして、こうげきとすばやさが高い反面耐久面は紙ペラです。ニドラン♂は未進化ポケモンらしく全体的に数値が低め、ですがこうげきの数値だけはリザードに匹敵する程高い。このことが分かっていれば、マンキー側は”みだれひっかき”なり”ずつき”なりでさっさと攻撃してしまうのが正解です」

 

 しかしユカリさんの言葉とは裏腹に、マンキーのトレーナーは”きあいだめ”を指示した。マンキーは攻撃することなくその場で構えて気を溜める。どくタイプに対してかくとうタイプの技の効果が薄いから、その威力を補おうとしたんだろう。実際スクールではそれが正解だと教えられてきた。だけどユカリさんから教えてもらった種族値を基にして考えると……

 

 

「いけっ、ニドラン! ”どくづき”!」

「らぁっ!」

 

 マンキーが気を溜めている隙に、ニドラン♂が毒のエネルギーを角に纏わせて突進してマンキーを吹き飛ばした。防御力の低いマンキーはその攻撃を受け止めることができず、目を回して倒れた。ニドラン♂の勝ちだ。

 

 そのバトルを見届けてユカリさんが、ご覧の通りです、と言った。

 

「種族値を理解してポケモンの力が分かっていればタイプ上は不利でもそれを覆して勝つことができます。逆にこれが分かっていないと本来勝てるはずだった勝負を捨ててしまうことになるのです」

 

 では次はこっちのバトルを見てくださいと、今度は反対のバトルコートを指差す。そこではモンジャラとコダックのバトルが行われていた。

 

「モンジャラのとくこうの種族値は100と非常に高い。これはチャンピオンワタルのポケモンとして有名なカイリューと同じ値なんです」

 

 しかしそんなことを知るはずもないモンジャラのトレーナーは、物理攻撃技の”つるのムチ”を使っていた。モンジャラから伸びた緑色の触手がびしばしとコダックを叩くが、コダックはダメージは負ったものの倒れることなく立っている。効果抜群の攻撃をしたのにも関わらず。

 とくこうが高いモンジャラだけど、こうげきはその半分程度の55しかないらしい。だからせっかくの効果抜群の攻撃を耐えられてしまったみたいだ。ユカリさんが言うには”メガドレイン”を使っていれば一発でコダックを倒せていたとのこと。

 

 見ているのは見慣れた何の変哲もないバトルのはず。だけど種族値という新しい情報を知っただけでまったく違うように見えた。

 食い入るようにバトルを見つめてしまっている私にユカリさんは、すごいでしょう? と笑いかける。

 

「相手の種族値を知ることで自分が取るべき行動が明確になり、自分のポケモンの種族値を知ることでするべき育成や戦い方が見えてくるというわけです。ま、中々このすごさを分かってくれる人はいないんですけど…」

 

 これが、ユカリさんの教えてくれる新しいバトルスタイル……! 私は思わず興奮してしまっていた。

 

「ユカリさん! 種族値のことをもっと教えて! 私色んなポケモンの種族値知りたいっ!」

 

「おっと、落ち着いてくださいリーフ。いきなり全部のポケモンを覚えるのは無理ですよ。カントー図鑑だけで151匹もいるんですから」

 

 焦らず少しずつ知っていきましょう、と言われて少し落ち着いた。確かにちょっと気が早っていたかも。反省…。

 

 

「それに座学ばかりというのも飽きて来るでしょう。なのでここからはちょっとした実戦練習です」

 

 ユカリさんがモンスターボールを一つ取り出し、投げる。ポンッ、と音がしてポケモンが飛び出してきた。

 

「ふりゃあ~」

 

 ちょうちょポケモンのバタフリーだ。ボールから出たバタフリーはひらひらと私達の周りを飛び回り、やがて満足したのかユカリさんの頭の上に留まった。

 

「この子、コハクを使ってバトルしてみてください。ちょうどここには練習相手がたくさんいますしね。私はリーフの後ろで種族値について助言します」

 

 

 

 

 

 

 






・ゆかりさん
 TS転生主人公。種族値についてリーフに教えた。熱心に聞いてくれるので可愛く思っている。
 ミライドンの操縦の腕はかなりもの。ただし、スピード違反には変わりない。

・ミライドン(NN:みく)
 この度ジュンサーさんに見つかって怒られちゃった。でも主人同様反省も後悔もしていない。思いっきり走ると気持ちいいからね、仕方ないね。

・バタフリー♂(NN:コハク)
 ゆかりさんがカントーに来て初めてゲットしたポケモン。現在”ねむりごな”から”ちょうのまい”を積んで全抜きを狙うエースとして育成中。


・リーフ
 ゆかりさんの可愛い生徒。種族値のことを聞いて目から鱗。もっともっとたくさん知りたいとふんすふんすしている。


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