(DEMO版)TS転生結月ゆかりはポケ愛が強い   作:グランド・オブ・ミル

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 前回の投稿からさらにたくさんの評価と感想をいただけて嬉しいです。
 日間ランキングにも載っているのを確認してびっくりしました。

 皆様のコメントにはなるべくGoodを付けるようにしているのですが、1作品中のコメントには1日5件までしか送れないようで、対応できていないコメントもありますがご了承ください。

 いただいたコメントはいつも楽しく読ませてもらってます。


リーフ、ゆかりさんと練習バトル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タケシはニビジムのジムリーダーである。通称「強くて堅い”いし”の男」。その通り名の通りいわタイプのポケモンを専門とするトレーナーで、その頑丈さを武器に様々なバトルに勝利してジムリーダーまで昇りつめた。ニビジムはカントーリーグから第1のジムとして定められているが、そう簡単にバッジを渡すほど彼のバトルは甘くない。

 

 そんなタケシはニビシティの住人からの信頼も厚く、よく仕事を手伝っている。今日は朝からおつきみやまへ、化石発掘に行ってきた。今日の成果である化石や鉱石を博物館へ持っていくため、タケシはピッケルと麻袋を担いでニビシティの道を歩く。

 

「……ん?」

 

 その途中でタケシはふと公園に目がいった。バトルコートがたくさん用意されていて、よくトレーナー達がバトルをしている公園だ。そのコートの中の一つが気になったのだ。

 

 

「いけっ、スピアー!」

「ぶおぉっ!」

 

 タケシから見て遠くの方に立っていた少年トレーナーは、スピアーを繰り出した。どくばちポケモンらしくスピアーは登場するなり羽を威圧的に鳴らし、両腕の針をカチカチと鳴らして好戦的な態度を見せる。

 

 対して手前側に立っているトレーナーの様子が妙だった。何せ位置に着いているトレーナーが二人いる。一人は水色のノースリーブと赤いミニスカートをはいたロングヘアの女の子、もう一人は紫色の髪をおさげにした黒いパーカーの女の子である。

 

 リーフとユカリだ。二人はリーフが前、ユカリが一歩後ろに引いたところでコートの位置に着いていた。そしてユカリの頭にはバタフリーが留まっている。何とも珍妙な光景だ。

 

 

「お、お願いね、コハク」

「ふりゃあ~」

 

 リーフが声をかけるとバタフリーはユカリの頭から飛び立ち、ひらひらとコートに舞い降りた。そのタイミングでユカリがリーフに何かを囁く。

 

「___、__」

 

 何を言っているのか、タケシには聞こえなかった。しかしリーフはこくり、と頷き、意気込んだ顔でコートに向き直った。

 

 

「スピアー、”みだれづき”!」

 

「コハク、”かたくなる”!」

 

 少年とリーフの指示はほぼ同時だった。スピアーが勢い勇んで突進し、バタフリーはその場で羽を畳んで丸くなって防御を固める。スピアーは両腕の針で何度も突きを繰り出すが、ぼうぎょの能力が上がったバタフリーには然程ダメージになっていないようだ。

 

「”エアスラッシュ”!」

 

 バタフリーが大きく羽を羽ばたかせて飛び立つ。上空で空気の刃を作り出してスピアーに飛ばした。効果抜群のひこうタイプの技を喰らってスピアーは大きく後退する。

 

「耐えろ、スピアー!」

「ぶうぅぅんっ!」

 

 大ダメージではあるが倒すには至らなかったようだ。スピアーはぶんぶんと首を振って何とか体勢を立て直す。

 

「スピアー、”どくづき”!」

 

 再びスピアーはバタフリーへ突進した。今度は右腕の針を毒エネルギーで紫色に染めて突き出す。バタフリーはまともに喰らったが、先ほど”かたくなる”で防御力を上げていたことが活きて倒れることなく耐える。

 

「もう一度、”エアスラッシュ”!」

「ふりぃっ!」

 

 もう一度効果抜群のひこう技で反撃し、今度はスピアーも耐え切れずダウンした。リーフの勝ちである。

 リーフは自分が勝ったことが信じられないのかしばらく呆然と立ち尽くしていた。ユカリが声をかけても反応がない。

 少し時間が経ってようやく勝利の実感が湧いてきたらしい。余程嬉しいのか感極まって思い切りユカリに抱きついている。

 

 

「へぇ、面白いバトルをするな」

 

 その一部始終を見ていたタケシはふむふむと頷き、感心した様子を見せた。今のバトル、普通ならばひこうタイプを持つバタフリーの方が有利。だからリーフは初手からひこう技を撃つものだと予想していた。

 だがリーフが指示したのは”かたくなる”、防御を固める選択をした。その選択は正しかったようで、スピアーの攻撃を二度も耐えた上で勝利している。そのスピアーも一度はバタフリーの攻撃を耐えていたことから、もしタケシの予想通り最初から”エアスラッシュ”を繰り出していたら負けていたのはリーフの方だったかもしれない。

 

 まるで相手ポケモンの特徴が分かっているかのような試合運び。それを可能にしているのは間違いなく紫髪の少女のアドバイスだろう。

 

「リーフちゃん、いい仲間に出会えたみたいだな」

 

 タケシはリーフのことを知っていた。つい先日自分のジムに挑戦してきたばかりで記憶に新しい。あの時のリーフは一人ぼっちで、自信なさげにおどおどしていた。バトルもタケシのポケモンを一体も倒せずに終わって、お世辞にも優秀なトレーナーとは言えなかった。

 しかし、勝利に大喜びしている今のリーフは以前とはどこか違うように見えた。まるでポケモンが進化する前兆のような、大きな可能性を感じられる。きっとあの紫髪の少女に手ほどきしてもらって強くなろうとしているのだ。

 

「……ふふ、次に会う時が楽しみだな」

 

 口角を上げたタケシは再び博物館に向けて歩き出す。トレーナーが成長していく様を見るのは気持ちがいい。その日、タケシは一日中気分が良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やった! ユカリさん! 私勝ったよ!」

「ちょ、分かりましたから落ち着いてくださいリーフ!」

「嬉しい…! 嬉しいよユカリさん! 私こんな気持ち初めて!」

「く、首…! 首絞まってますから…! 力抜いて…」

 

 ユカリさんからバタフリーを借りて挑んだ練習バトル。私はそこで念願の初勝利を手にできた。

 嬉しい…! すごく嬉しいっ……! あまりに嬉し過ぎて思わずユカリさんに抱きついてしまった。目頭が熱くて涙が流れてるけどこれは嬉し涙だ。だって今の自分が今までで最高の笑顔を浮かべていることが分かるから。

 

 ベンチで応援してくれていたフシギソウとイーブイも飛び跳ねて喜んでくれている。唯一ユカリさんのピチューだけは焦った様子で何かを叫んでるけど何だろう…?

 

「ふりゃっ!」

「いたっ!」

 

 その時バタフリーが私の頭をポカッと蹴った。そこでようやく私はユカリさんが苦しがっていることに気づく。

 

「わっ! ご、ごめんなさいユカリさん! 私、感極まっちゃって……!」

「げほっ、ごほっ…、いえ、大丈夫です。それよりリーフ、おめでとうございます」

「うん! ユカリさんのおかげだよ! ありがとう!」

 

 バトルが始まる前、ユカリさんは私にこそっとスピアーの種族値について教えてくれた。スピアーはこうげきとすばやさが高めのアタッカータイプ、ただ同時にとくぼうも高い種だからバタフリーの攻撃は耐えられてしまうかもしれないって。その情報を基に私は最初に防御を固める戦術を使ってみたけど、それが上手くハマったみたい。やっぱり種族値ってすごい! ユカリさんもすごい!

 

 ユカリさんから借りたバタフリーの技構成は次の4つ。

 ぼうぎょを上げる”かたくなる”。とくこう、とくぼう、すばやさを上げる”ちょうのまい”。相手を眠らせて隙を作る”ねむりごな”。そしてひこうタイプの特殊攻撃技”エアスラッシュ”だ。

 これらの技とユカリさんから与えられる情報を用いてバトルを進め、シンジ型のバトルの基本を身につけることがこの練習バトルの狙いなんだそうだ。

 

 

「では、この調子でどんどんやっていきましょうか」

「うん!」

 

 そこから私は次々と、色々なトレーナーを相手にバトルを続けた。相手がポケモンを繰り出してくるとその度にユカリさんが種族値を教えてくれる。

 

「ぅぼっ!」

 

「ウツドンですね。こうげきととくこうは高いですが、耐久面や素早さが低いです」

「コハク、”エアスラッシュ”!」

 

 

 

「…どーん」

 

「ヤドンですか。ぼうぎょが高いポケモンですがHPの値も高いので特殊耐久もそれなりにあります」

「”ちょうのまい”! それから”エアスラッシュ”!」

 

 

 

「ぐおぉっ!」

 

「サイホーンはこうげきとぼうぎょが高い反面特殊方面は極端に低いです。ただいわタイプですのでひこう技の効きが悪いですね」

「”ねむりごな”で眠らせて! その隙に”ちょうのまい”をしてから”エアスラッシュ”!」

 

 

 バタフリーと相手ポケモンの種族値を比べて、そのまま倒せそうな時は単純に”エアスラッシュ”を撃ち、特殊技に耐性があったりひこう技が効きづらい相手なら”ちょうのまい”で威力の補強をして、バタフリーが苦手なタイプが出てきたら”ねむりごな”で隙を作る。

 

 バタフリーの技が次々と決まり、今までが嘘のように勝ちを重ねていく。それはもちろんユカリさんが助言をしてくれることと、バタフリーの力のおかげだ。だけど私はこのシンジ型のバトルに確かな手応えを感じていた。

 

 

 今までの私の思考は取っ散らかっていた。ユカリさんが褒めてくれたようにバトル中様々な点に目がいって色々な可能性を考えられるけど、それはただ考えられるだけ。膨大な選択肢を前にどんな基準で何を選んでいいのか分からず、こんがらがってしまっていた。

 

 だけど今は違う。種族値という基準があるおかげで自分が何を考えるべきか、何を指示するべきかがはっきり分かる。自信を持って選んだ答えを素早く指示できて、それにバタフリーが応えてくれるからすごく気持ちよくバトルができている。

 

 

 

 楽しい…! バトルがすごく楽しいっ……!!

 

 

 トレーナーになって初めて味わう気持ち。ポケモンと一つになって戦うことができている一体感。心の奥底からドクドクとマグマのように、ワクワクドキドキといった心を躍らせる感情が湧き上がってくる。もっと…、もっとこの気持ちを味わいたい。この楽しい時間が永遠に続いてほしいっ!

 

 そんなことを考えながらバトルに夢中になっていた私。気づいたらもう何時間も経っていて、辺りはどっぷり日が暮れて夜になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ごめんなさいユカリさん。私が夢中になり過ぎてしまったせいで……」

 

「気にしないでください。時間を忘れるほど熱中してくれたなら教える側としては嬉しいもんです」

 

 すっかり遅くなってしまったので、私達はニビ科学博物館の隣にあるホテルに泊まることになった。ポケモンセンターにはトレーナーのための宿泊施設も用意されていて、そこなら私のような新米トレーナーにも優しいすごく安い値段で泊まることができる。だけどポケモンセンターはすごく人気なので早めにチェックインしないとすぐに部屋が埋まってしまう。

 

 今回は私のせいで夜遅くなってしまったのでこのホテルに泊まることになった。博物館へやって来た観光客向けのリゾートホテルらしく、お値段もかなり高い。街にある安めのホテルは軒並み満室だったため、ここしかなかったんだ…。しかも私の財布にはこんな高級ホテルに泊まれるほどのお金があるはずもなく、宿泊費もユカリさんが負担してくれることになっている。

 

「…本当にごめんなさい……、私ユカリさんにお世話になってばかりで……」

 

「あ~もう、辛気臭い顔しないで。遠慮せずに先輩の胸にどーんと甘えなさいな」

 

 どんっ、とユカリさんに押され、私の身体がベッドに沈む。リゾートホテルのベッドはふわりと私を受け止めてくれて途端に目がとろんと蕩ける。すごく気持ちいい…。

 

「さ、のぞみとコハクも。せっかくなんで思いっきりくつろいじゃいましょう」

「ぴちゅ~♪」

「ふりゃぁ♪」

 

 隣のベッドにピチューとバタフリーが飛び込んだ。ふかふかのスプリングでぴょんぴょん飛び跳ねて遊んでいる。いつの間にかフシギソウとイーブイもボールから出てきて混ざり、4匹で仲良く遊び始めた。その様子を微笑ましく眺めていると、フシギソウの後ろ足の湿布が目に留まる。今日ポケモンセンターで貼ってもらったものだ。

 

「あ、そうだ。フシギソウの湿布貼り替えないと」

「ふしぃ?」

「そんな顔しないで。すぐに終わるから」

 

 遊ぶのを邪魔されて不満気なフシギソウを抱っこして、部屋の中のソファに腰かけた。古い湿布をぺりっと剥がして新しいものを貼る。薬品のスーッとする感覚にフシギソウはぶるっと震えた。

 

 

「コハク、今日はいっぱいバトルしましたし、マッサージしましょうか」

「ふりゃ!」

 

 同じタイミングでユカリさんはバタフリーを呼んだ。声をかけられたバタフリーは嬉しそうに鳴いた後、ごろんとベッドに横になる。イーブイはそれを不思議そうに眺め、ピチューは羨ましそうに見ていた。そんなピチューの頭をユカリさんは撫でる。

 

「大丈夫、次にのぞみにもやってあげますから」

「ぴちゅ~? ぴちゅ、ぴちゅ!」

 

 ユカリさんはバタフリーの羽の付け根部分に親指を当てると、そのまま体重をかけてぐいっ、ぐいっと押し始めた。押される度にバタフリーが気持ちよさそうな声を上げる。

 

「ふっ、ふゃ、ふや~…♪」

「お客さん、こってますね~。この辺はどうですか?」

「ふりゃ~♪」

 

 バタフリーの身体のあちこちを押して叩いて揉んで…、その度にバタフリーが蕩けるような声を出す。

 

 

「ユカリさん、それは……?」

 

「見ての通りマッサージです。ポケモンも生き物ですから、使った筋肉はこうしてほぐしてあげないと負担や疲労が溜まる原因になりますからね。ベストなコンディションやパフォーマンスを保つために欠かせません」

 

 ユカリさんが言うにはポケモンの体調管理の一環としてなのだそう。バトルで出したポケモンやその日頑張ったポケモンがいたらご褒美とケアを兼ねて定期的にやってあげているみたい。

 

 ポケモンのケアか…。そんなこと考えたことなかったな…。

 

 スクールで教えられたのは定期的に健康診断を受けさせることと、何か異常があったらポケモンセンターへ行くこと、そしてジョーイさんの言うことをよく聞くことだ。それ以上のより細かい、ポケモン達のコンディションとかパフォーマンスとか、そういうことを気にしている人は周りにいなかったし、私も言われるまで気づかなかった。考えてみればそうだ、ポケモンだって生き物なんだからやってあげた方がいいに決まってる。

 

「この辺りのことも追々リーフに教えていきますね。今は私がやってあげますから」

「……うん、お願いします」

「ふふふ、何ですか急に畏まっちゃって。私は貴女の先生なんですから大いに甘えちゃってくださいよ」

 

 ユカリさんはすごいなぁ…。種族値の事といいケアの事といい、ポケモンのことを本当によく考えてる。きっと世界中の誰よりもポケモンのことを見て、ポケモンのことを大事にしている人だ。今はすごく遠く感じるけど、いつか私もユカリさんみたいなトレーナーになりたい…。

 

「あ、そういえばこのホテルって洗車場があるじゃないですか。後でみくを洗ってあげませんと」

 

 ユカリさんの手持ちになったポケモンはすごく幸せなんだろうな……。

 

 

 

 

 

 






・ゆかりさん
 TS転生主人公。愛弟子のために奮発した。ポケモンを何よりも第一に考える人。この後ミライドンをピカピカに磨き上げる。

・バタフリー♂(NN:コハク)
 リーフの練習バトルに付き合ってあげた。リーフのことは手のかかる後輩とか妹みたいに思っているらしい。


・リーフ
 シンジ型のバトルを体験し、バトルの楽しさに目覚める。ユカリさんすごいと尊敬の眼差し。
 この度ユカリさんに対して強い憧れの感情を抱いた。目標は遠く感じるけど、より一層熱心に学び始める。


・タケシ
 「つよくて かたい いしの おとこ」。リーフのバトルを偶然見かけて成長を感じる。
 ちなみに服装はHGSSのもの。





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