銀河の彼方、そのどこか
無限の宇宙が広がりゆくそこに、ポツンと浮かぶ「何か」が一つ
ピー・ピ・ピ・ピ・ピー…………
静寂を切り裂くパルス音
点滅する赤いランプ
一つの宇宙船は、ゆっくりと船体を回転させながら漂っていた
『……リーダー、もう諦めましょう…』
宇宙船のコクピットの中、船員の1人が弱気な声を漏らす
鱗ある肌を持つ爬虫類系種族ープタイラ星人の船長は必死に信号の送信を繰り返しながら、同種族のその船員の言葉を聞き項垂れる
船長が振り返った先には、負傷した別の船員と数名の小さな子供たちがいた
『まだだ、まだ!諦めてたまるか…あの子たちを送り届けると決めたんだ…それに、この船に乗ったお前らを生かして帰せないで、何が船長だ!!!』
船長は諦めずに信号を送り続ける
船体が更に軋み、そこかしこの回路がスパークしていく
ーリャアッ!!!
宇宙船近くの宇宙空間が歪み、眩い光のゲートが開く
そこから現れたのは銀色の体にオレンジと青のラインが入った巨人
銀色の瞳で宇宙船を捉えた巨人は、右手で握り拳を作って左胸に当てる
『ーギャラクシーレスキューフォース、現着しました!!!』
銀の巨人ー若きウルトラマンは宇宙船へと急行してくる
その姿を見た船内の隊員たちが歓喜の声を上げる
『ギャラクシーレスキューフォース!来てくれた…!!』
ギャラクシーレスキューフォース
銀河で助けを求める命を救う為に駆けつける精鋭たち
その若き隊員の出現に船内が安堵に包まれる
その時船体が大きく揺らぐ
ーギュイィィィィィィィィィッ!!!
影となっていた船体下部から、巨体が飛翔してくる
4枚の巨大な翅を揺らしながら飛翔してくるそれは、甲殻に覆われた巨大な昆虫怪獣
『宇宙害昆虫カトレトス…‼︎コイツに襲われたんだな‼︎』
ーギュイィィィィィィィィィィィィッ!!!
ーリャアッ!!!
カトレトスと若きウルトラマンが衝突
節足で掴みかかるカトレトスにウルトラマンもしがみつき、チョップやアームハンマーを撃ち込むが、カトレトスの甲殻には歯が立たない
ーギュイィィィィィィィィィッ!!!
カトレトスが節足からエネルギーの稲妻を放つ
ーグォオァァッ……!?
ウルトラマンがもがく
苦し紛れの攻撃もカトレトスには通じない
『クソッ、ビクともしねぇ……ッ!?』
その瞬間、カトレトス越しに宇宙船が見える
ウルトラマンの超視力を通した先に見えるのは、宇宙船の中の怯えた船員たち、そしてー怪我をして横たわる人々
ーグ、ォ、オォォォォッ!!!
ギシッ、とカトレトスの節足が軋む
ウルトラマンが力強く握りしめ、稲光を放つそれを体から引き剥がしていたのだ
『ー諦めるかよ…諦めてたまるかよ!』
『誰よりも先に、手を伸ばす…オレが、助けるんだろうがッ!!!』
ーリャアァァッ!!!
裂帛の気合いを込めた咆哮と共に、カトレトスの節足が吹き飛ぶ
ーギュイィィィィィィッ!?!?!?
カトレトスが狼狽え、身じろぎをする
が、すぐにその複眼に怒りを宿し、渾身の力を発揮した故に肩で息をするウルトラマンが構え直すのを待たずに飛来せんとする
『ースプレッダーロッド!!!』
ウルトラマンの脇をかすめ、飛来した一条の光のロッドがカトレトスの胸部に突き刺さる
ーギュイィィィィィィッ!?!?
『あのロッドは……‼︎』
ウルトラマンが振り返る
『基本を思い出せ!甲虫型怪獣には弱点があったはずだ』
後方の宇宙空間に新たな巨人が姿を表していた
銀の体に赤い模様が入った巨人は、ウルトラマンのことを見て頷き檄を飛ばす
『リブット師匠…‼︎そうか、弱点ッ!!!』
新たな巨人ーウルトラマンリブットから助言を受け、ウルトラマンは振り返る
ロッドの一撃を食らった勢いでカトレトスがひっくり返り、その腹部が見えていた
それを見据えてウルトラマンは円を空に描くように腕を回し、両手を横一文字に開いてエネルギーを貯めて十字に構える
『ーアールディウム光線ッ!!!』
ーリャアァァァァァァァァッ!!!
オレンジと青の光が渦巻く必殺光線がカトレトスの腹部を捉え、爆散させる
肩で息をしながら構えを解くウルトラマンの肩をリブットが支える
『君の真っ直ぐさは美徳だが、前を見すぎてしまうのはまだまだ課題だな…』
『師匠……かたじけない、ッス』
リブットに向き合い、ウルトラマンが両手を開いて武道のように一礼する
ギャラクシーレスキューフォースに所属する仲間であり、未熟な自分の師匠でもあるそのウルトラマンーリブットはそれに頷き、宇宙船の方を向く
『……この船が求める助けに、真っ先に駆けつけたのはキミだ。私よりも、無論他のギャラクシーレスキューフォースの隊員たちよりも』
『でも、オレは結局……何もできていません…師匠が来ていなかったら…』
『見てごらん、彼らを』
リブットに促され、若きウルトラマンが振り返る
姿勢制御を取り戻した宇宙船が船首をウルトラマンたちに向け、通信回線を開く
『ギャラクシーレスキューフォースの方、ありがとうございました!』
『あなたが来てくれたおかげで、我々は諦めずに生き残ることができた』
感謝の意を伝えるかのように、シグナルを赤と青に点滅させる
『オレが……来たから……』
リブットが向き直る
『レスキューは、助けることももちろん大切だ。だが、それ以上に私たちの存在は助けを待つ者の希望にも繋がるんだ』
『誰よりも助けを求める声に気づき、誰よりも早く手を伸ばしにいける。キミのその才能は、キミにしかない大きな力だ』
リブットが若きウルトラマンの肩を力強く掴み、頷く
『師匠……』
若きウルトラマンから少し距離をとったリブットがその手に光り輝く何かを取り出し、若きウルトラマンに向けて飛ばす
光はすぐに形を変え、若きウルトラマンの身にサイレンのような装飾が着いたジャケットのようなアーマーとなって纏われる
『これは…!?』
『ギャラクシーレスキューフォースでソラが主導となって開発した我々ウルトラマンに向けた新装備だ。今はまだ使いこなすには遠いだろうが、きっとキミの力になる』
『名付けて、アールジャケット。私たちからキミへの贈り物だ』
ジャケットを興味深そうに触る若きウルトラマンに向け、リブットが告げる
『キミに特命を与える』
『特命…!?』
『ある惑星に危機が迫っていると、科学部隊のメンバーが発見した。本来なら、私が主導して向かうべきところだが……私はアブソリューティアンの動向を追う任務も担っている』
『キミは、まだ半人前だ。だがキミが持つ熱い魂なら、迫りくる危機もきっと乗り越えるだろうと私は確信している。師匠である身としては、何とも不甲斐ない言い分かもしれないがね』
若きウルトラマンが拳を握る
『師匠が……オレを信じて…⁉︎』
リブットが頷く
若きウルトラマンは顔を上げ、師たるウルトラマンを見据える
『その星は、どこなんですか⁉︎』
リブットは右手にエネルギーを集め、宇宙空間に放つ
光のゲートが開き、空間の裂け目の向こうに目指すべき青い星が現れる
『その星の名は、地球。キミも知っている通り、我々ウルトラマンにとって、第二の故郷とも言えるかけがえのない星だ』
『これが、地球……』
『ー頼んだぞ、ウルトラマンアール!!!』
若きウルトラマンーウルトラマンアールが握り拳を左胸に叩きつけ、力強く頷く
『分かりました。行ってきます、師匠!!!』
光のゲートに向けて青とオレンジの光が飛んでいく
その師たるリブットはそれをゲートが閉じゆくまで見送っていた
光の道を往くアール
ジャケットの左胸に付けられたエンブレムを握りしめ、正面の青い星を見据える
『待ってろよ、地球!オレが、絶対に守ってみせるからな!!』
ーリャアッッッッ!!!!
今、新たなウルトラマンの戦いが、始まろうとしていた