夏休み
ドラコから学期末パーティーの話を聞いたルシウスは、夏休みが始まってすぐに、ダンブルドアを校長の座から引きずり落とそうと、様々な人に手紙を送ったり、色々な場所を駆けずり回ったりした。
魔法大臣のファッジにも手を回そうとしたようだが、うまくいかなかったようだ。
ファッジは、ダンブルドアはホグワーツの校長をやめたあと、魔法大臣の座を狙うと考えているらしく、重大な問題じゃない時は黙認するとスリザリンの友人から聞いた。
それに、あのハリーポッターが英雄らしいところを見せたのに、わざわざ魔法大臣が出しゃばってきて釘を刺したという話が広がると、支持率が下がってしまうかもしれないという不安もあったのだろう。
他の人も上手くいかなかった。
英雄として多くの人々の関心を集めるハリーを叩きにいく行為は、自分にも火の粉が降り掛かる可能性があるので、簡単に手を差し出せることではなかったのだ。
周りからの掩護射撃を受けられないまま理事会でダンブルドアを解任するかどうかの話し合いが行われ、多数決によってダンブルドアを解任しないことが決定した。
そのことに対するルシウスの怒りは尋常なものではなかった。
そのため、家族に八つ当たりしてしまうのを可能性を考え、ルシウスは自分の仕事部屋にこもった。食事は屋敷しもべ妖精が部屋に届けていた。
四日経ってルシウスは仕事部屋から出てきた。出てきたときの顔は素晴らしいことを考えついたような、そんなワクワクした表情だった。
原作知識を持つ俺には、闇の帝王の日記をホグワーツに持ち込むことを考えついたのが分かった。ホグワーツの校長という肩書きをダンブルドアから奪う為に、ウィーズリー家の子共がマグル出身の子供を殺すという大事件を起こさせる為に自分できっかけを作ることにしたのだ。
ルシウスが仕事部屋から出てきてから、ドビーの様子がおかしくなった。マルフォイ家の人間を見ると怯え、いや、それはいつものことか。問題なのは俺の姿を見ても体を震わせるのだ。
つまり、闇の帝王の日記をホグワーツに持っていくことを知り、そのことをハリーに知らせようとしているということだ。俺の前でおかしな態度をする理由はそれぐらいしか無い。
ハリーと会う前にドビーに伝えなくてはならないことがある。
ドビーを屋敷の端にある物置部屋に呼び出した。
ドビーは、何故自分がこんな所に呼び出され、そして何故俺がこんな所に一緒にいるのか分からず、不安そうに部屋にある物をキョロキョロ見ていた。
この汚い物置部屋には屋敷しもべ妖精しか入ってこないからな。つまり、この家の人間に万が一にも話が聞かれる心配が無い場所だということだ。
「ドビー、単刀直入に聞くぞ?マルフォイ家を裏切るような行為をしようとしているな?」
ドビーは、大きな目をさらに大きくすると、体を痙攣させた。
「ち、違うのです、セルス御坊ちゃま!ただ、ドビーはハリー・ポッターに危険を知らせ……」
自分が余計なことを言ったことに気がつき、慌てて細い手で自分の口を押さえる。
「ポッターに危険か……。闇の帝王の所持品のことかな?」
「な、なぜそのことを!?」
暗い部屋なのにも関わらずきらきらと光る不思議な目で、俺をじーと見つめる。
「たまたま父上の仕事部屋の前を通りかかった時に聞いてしまってな。で、俺がドビーに言いたいことは一つだけだ」
ごくりと唾を飲み込む音が部屋の中で響く。
「ポッターに危険が迫っていることを知らせるのは構わない。俺もポッターが傷つくのは嫌だからな。でも、ホグワーツに行くのを無理矢理邪魔するのだけはやめろ。自分から行きたくないと思っているなら話は別だが」
「どうしてですか!?学校に来なければ、ハリー・ポッターは安全なのですよ!?」
「学校にいれば俺がポッターを助けることができる。それに、家にいれば安全なんて誰が言ったんだ?危険はそこらに転がっているぞ?」
ドビーが何かに気がついたようで慌てて俺に喋る。
「セルス御坊ちゃまがご主人様に止めてくださればいいのでは?」
「父上はしらばっくれるだろう。他の人にだって言えないし。父上を捕まる手助けなんて出来る訳が無いだろう?」
解決方法を考えるドビーを残し、部屋の出口に向かう。そして、まるで今思いついたかのような口調でドビーに話しかけた。
「あっ、そうだ。ポッターを守りたいのなら俺の命令を聞いてもらえるか?俺たちが力を合わせれば全てが上手くいくと思うんだ。協力してくれたら父上にお前を自由にするように頼むよ。自由に憧れているんだろ?」
部屋の扉を閉める瞬間にチラリと見えたドビーは、ぼんやりとした表情で虚空を見つめていた……。
ドビーは、友人からの手紙が来なければ学校に行きたくなくなると考え、ハリーへ届く手紙を全て回収したらしい。でも、ハリーに危険を知らせる際にうっかり口を滑らせてしまい計画は失敗した。原作と同じだ。しかし、ケーキをお客様にぶつけることはしなかったようで、ハリーは部屋に監禁されなかった。
ここまでドビーから話を聞いた俺は、ウィーズリー兄弟のハリー救出作戦はなくなったと思ったのだが、どうやら原作通り車でハリーを連れ去ったらしい。
原作でハリーを救出したのは、ハリーを心配しているというよりも、単純に車を運転したかったからなのかもしれない。面白そうなことを優先するようなところがあるし。
そういうわけで原作通りハリーはウィーズリー家で夏休みを過ごすことになった。
ウィーズリー家を見張っていたドビーの話では今日ダイアゴン横丁に行く予定らしい。そして、今日ダイアゴン横丁に行くのはマルフォイ家もである。ズレなくてよかった。
煙突飛行ネットワークを利用して
ルシウスは何も言わずに奥に向かって歩いていたが、ボージン・アンド・バークスという周りの店と比べると立派な店の前で足を止めた。そのことから、ここが目的地だと気がついたドラコが店の扉を開き中に入った。
「二人とも一切触るんじゃないぞ」
店の奥へと移動する俺たちにルシウスが釘を刺した。
「プレゼントを買ってくれると思ったのに」
「競技用の箒を買うと言ったんだ」
ルシウスがカウンターを指で叩きながら言った。
「寮の選手に選ばれなきゃ、そんなの意味無いだろ?」
ドラコが不機嫌な顔になる。
「なんだよ、ドラコは選手に選ばれないと思っているのか?」
すぐさまドラコが言い返す。
「選ばれるに決まっているだろ!」
「じゃあ、いいじゃないか」
俺たちの会話を聞いてルシウスが苦笑する。
「マルフォイ様、また、おいでいただきましてうれしゅうございます」
カウンターの奥から猫背の男が現れた。ボージンだ。
「恐悦至極でございますーそして若様たちまでー光栄でございます」
ボージンに軽く頭を下げると、使えそうな物がないか陳列棚を再び眺める。
ドラコが『輝きの手』を買って欲しいと強請った時に、指にはめた者の記憶をごちゃごちゃに掻き混ぜる指輪を発見した。一体どういうことだろうか。絞首刑用のロープは触った者に自殺願望を植え付けるらしい。どれも強力すぎて使えそうにない。
ドラコがキャビネット棚を開こうとした時に、商談を終えたルシウスが声をかけた。
チラリとキャビネット棚を見てから、店の外に出た。
「ボージン君、お邪魔したな。明日、館の方に物を取りにきてくれるんだろうね」
ボージンが頷くのを確認したルシウスは店のドアを閉めた。
店の箒棚には様々な種類の箒が飾られていた。軽くて素早いのが特徴であるクリーンスイープの最新型も販売されていたが、ドラコはニンバス2001を選んだ。ハリーの箒よりも優れている箒であることが気に入ったのだろう。
俺もニンバス2001の見た目が気に入っていたことと、ニンバス型は乗り心地がいいことを知っていたことから、ニンバス2001を買ってもらうことにした。
ルシウスは箒を管理する為の道具も一緒に買い、それを家に届けるようにと店員に頼んだ。
高級クィディッチ用具店を出たルシウスは、お金を俺たちに渡し、フローリシュ・アンド・ブロッツ書店に行っていろと言いつけた後、数人の集まっている場所に歩いていった。知り合いを見つけたようだ。
書店につくまでかなりの時間がかかった。店が売っている様々な商品を眺めたり買ったりしていたからだ。
書店に着いた俺たちは二階に上がった。一階はロックハートのサイン会に集まった人でごちゃごちゃしていたからだ。
ルシウスが来るまでの暇な時間は商品の本を読んで過ごした。拍手と歓声が聞こえ、二階の手すりから下を見下ろす。ロックハートのサイン会が始まった。
ロックハートのサイン会が始まって少ししてルシウスがやってきた。ルシウスは書店の騒がしさに眉を潜めながら、教科書を買ってくると俺たちに言い、店員の方に歩いていった。
一階がより一層騒がしくなる。ハリーが見つかったようだ。
ロックハートは無理矢理ハリーを引き寄せると、自分とのツーショットを日刊予言者新聞のカメラマンに撮らせた。ハリーと一緒なら新聞の一面に載れると思ったんだろう。自分でも言っていたし。
最後にロックハートがホグワーツの闇の魔術に対する防衛術の担当教授職についたことをファンと記者に発表した。ダンブルドアは人を見る目があるのか無いのかどっちなんだ……。今回ロックハートを教員にしたことは俺にとってはプラスの出来事になりそうだが。
人混みを何とか抜けてきたハリーはジニーの大鍋に、ロックハートから無料で貰ったサイン付き本を入れた。
ドラコが階段を降りる。
「いい気持ちだっただろうねぇ、ポッター?」
完全に馬鹿にしている口調でドラコがハリーに言った。
「有名人のハリー・ポッター。ちょっと書店に行くだけで一面大見出し記事かい?」
「ほっといてよ!」
ジニーがハリーの前にずいっと出てきてドラコを睨んだ。
「ポッター、ガールフレンドかい?」
ドラコがせせら笑う。
「なんだ、お前か」
ロックハートの本を抱えたロンが、ゴミを見るような目でドラコを見る。
「ハリーがここにいて驚いたのか、え?」
「ウィーズリー、君がここにいるのを見てもっと驚いたよ。そんなに本を買って家計は大丈夫なのか?」
ロンが殴り掛かろうとするが、ハリーとハーマイオニーに止められた。
「ロン!」
ウィーズリー家の主がこちらにやってくる。
「何しているんだ?早く外に出よう」
「おぉ、これは、これは。ウィーズリー」
ルシウスが俺とドラコの間に立つ。
「ルシウス……」
「ここ最近お仕事が忙しいようだが、しっかりと給料は払われているのかね?そんな……味のある?本しか買えない所を見るとそうでもないようだが……」
ウィーズリーの父親は顔を真っ赤に染めた。
ルシウスの目が、成り行きを心配そうに見つめるハーマイオニーの両親だと思われる人物に移る。
「こんな連中と付き合うとは……。一体どこまで落ちれば気がすむのかねぇーー」
とうとうウィーズリーの父親が切れ、ルシウスに跳びかかった。周りを巻き込んだ喧嘩の始まりだ。その喧嘩はハグリットによって止められたが、二人の怪我は酷かった。本で叩きあったんだから当たり前だ。
「ほら、君のだ。君の父親がなけなしの金を使って買った本だ」
ルシウスが落ちていた本を拾いジニーに渡した。
本の中には、黒い革の日記が入っていたことをしっかりと確認した。
「セルス降りてこい!行くぞ!」
ルシウスがドラコを引き連れて店を出て行く。
下にいた人達は誰も俺のことに気がついてなかったようで、ルシウスの言葉を聞いて二階を見上げた。
俺は一階に降りるとウィーズリーの父親とグレンジャー夫妻に軽く頭を下げた。それから店内の惨状を見て困った顔をしている店員にすみませんと謝り、店を出た。
当たり前の行為ではあるが、このようなマルフォイ家の人間がしないようなことをしたのは、こちらを見ていたロックハートに真面目な少年という印象を与える必要があったからだ。
新学期まで、あと一ヶ月。
これから少しずつ原作が変わっていきます!
注目はロックハートさんですかね。彼を上手く利用したい。
閲覧ありがとうございました!