ダイアゴン横丁から帰ってきてから数日後にニンバス2001が家に届いた。これほど素晴らしい箒が目の前にあるというのに、飛ばないという選択肢を選ぶことは出来ず、届いたその日からドラコと平原で空を飛び回った。競争をしたり、キャッチボールをしたり、チキンレースをしたりなど、楽しくて仕方が無かった。
あまりに箒にはまってしまったせいで、宿題が終わっていないことに気がついたのは夏休みが終わる一週間前だった。
そんなわけで宿題を片付ける為に徹夜をしていた俺は、8月31日の夜は何も考えずにベットに飛び込んで熟睡することが出来た。
十一時になって、汽車が発車した。ハリーとロンが列車に乗ってくる姿は確認出来なかったが、ドビーは何もしないと言っていたので大丈夫だろう。
「お前ら、夏休みの後半何してたんだ?手紙が来なかったんだけど」
席の真ん中で足を組んでいるノットが尋ねる。クラッブとゴイルは他のコンパートメントに乗っているので、ノットは一人で席に座っているのだ。
「聞きたいか?聞きたいだろう?」
ドラコがニヤニヤしながらノットを見る。ノットは若干引き気味だった。
「ずっとニンバス2001で飛び回っていたんだ。あと、宿題な」
「ば、ばか!何で先に言うんだよ!?」
ドラコが襟元をつかんで揺らしてくる。ドラコの自慢はめんどくさい。
「本当かよ!?すっげぇ……。なぁ、今度俺も乗せてくれよ」
「あぁ、いいぞ」
ドラコが手を離し、胸を張った。
「よっしゃ!選抜試験は勿論受けるんだろ?じゃあ、絶対応援行くから二人とも頑張れよ」
原作だとドラコは選ばれていたけど俺はどうなるのか。まぁ、ホグワーツで事件が起きたら試合が中止になるんだけど。
そろそろホグワーツに着くことを知らせる放送が聞こえたため、本を閉じる。ロックハートが書いた本だ。
この本は教科書には向いていないが、自分のことを持ち上げるシーンに目をつぶれば、この本は十分満足出来る内容であり、面白い。
しかし、この本を完成させる為に人の記憶が奪われていると考えると複雑な気持ちになってしまうが。
汽車がプラットホームに到着すると、通路が生徒達で埋まった。汽車を降りて外に出ると、ハグリットの一年生を呼ぶ声が聞こえてくる。
勿論今年はハグリットにはついていかず、上級生の案内に従って別ルートで移動した。やはり、一年生以外の生徒は安全で早い道を使うようだ。
何事も無くホグワーツに到着する。
大行列で玄関ホールを抜けて、大広間に入り、生徒は寮ごとに別れて座った。
しばらくして、不安そうな表情の一年生が大広間に入ってきて、組み分けが行われる。
組み分けが終わったのを見届けたダンブルドアが立ち上がり、新学期のあいさつと闇の魔術に対する防衛術の先生にロックハートが就いたことを発表した。
ロックハートは立ち上がり生徒たちに爽やかな笑顔を振り撒き、大きく手を振る。それを見て一部の女子生徒が黄色い声を上げた。
ロックハートは前に出て何やらやろうとしていたが、マクゴナガルによって止められた。
ナイス判断だ。ロックハートに魅力を感じていない者にとっては、彼の演説などどうでもいいことで、それよりもお腹が空いていることの方が重要なことなのだ。
ダンブルドアの合図で、テーブルに様々な料理が並ぶ。みんなは急いで自分の皿に料理を取った。
「ねぇ、ロックハート先生って素敵だと思わない?ほら、見て。食べ方も上品……。完璧な人ね」
少し離れた席に座っている一年生の女の子が隣りの女の子に話しているのが聞こえる。
教員席を見ると、ロックハートはフリックウィット先生になにやら熱心に話しかけていた。んー、上品にはとても見えない。
恋は盲目ってやつかな。女子生徒の一部にかかっている魔法が解けるのはいつなのか見物だ。
新入生の歓迎会が終わり、寮に戻るとすぐに俺は夢の世界に入った。寝不足のうえにお腹いっぱいで眠気が半端なものではなかったのだ。
スリザリンの二年生以上の生徒は朝食の時間に遅れずにやってきた。
去年はダンブルドアによって寮対抗杯はグリフィンドールに奪われてしまったが、今年は寮対抗杯を奪い返してやると燃えているからだ。減点されるような隙は作らないし、授業で得点を貰えるように予習もしっかりしている。
スネイプが大量の紙を持って、スリザリンの席に歩いてくる。上級生から紙は配られていった。スネイプが渡してきた紙は時間割表だった。
「おい見ろよ、この時間割!グリフィンドールとの合同授業ばかりじゃないか」
ドラコの言った通り、グリフィンドールとの合同授業は多かった。魔法薬、闇の魔術に対する防衛術、薬草学の三つだ。
「今日はほとんどグリフィンドールと一緒だ。楽しい一日になるな」
俺の皮肉にドラコが顔をしからめた。
「まさか、年々増えていくとかじゃないだろうな?」
スリザリンとグリフィンドールの二年生の気持ちを表しているかのように、大広間の天井にはどんよりとした灰色の雲が浮かんでいた。
薬草学の授業は三号温室で行われるらしい。今まで一号室でしか授業をやってこなかったから中がとても気になる。
スプラウトが大きな鍵で温室のドアを開けた。中に入ると甘い匂いと肥料の匂いが混ざった感じの匂いがした。かなり不快だ。
温室の真ん中には簡易ベンチが置かれ、そのベンチの上には耳当てが置いてあった。そして、温室の片隅には鉢がたくさん並べられていた。
「今日はマンドレイクの植え替えをします。マンドレイクの特徴が分かる人は?」
スプラウトが問いかけた瞬間、俺とハーマイオニーが手を挙げる。スプラウトはハーマイオニーを当てた。ハーマイオニーは見事に答えることができ、グリフィンドールは十点加点された。それに対して、グリフィンドールは小さく歓声を上げ、スリザリンは呻き声を漏らした。
スリザリンとグリフィンドールの合同授業を行うのは失敗だろ。この合同授業に対抗心が生まれるが、その対抗心が勉強に繋がらない気がする……。
「マンドレイクは大抵の解毒剤の主成分になります。しかし、危険な面もあります。何故か分かりますか?」
今回も俺とハーマイオニーは同時に手を挙げた。今度は俺が当てられる。
「マンドレイクの泣き声を聞いた者は死んでしまうからです」
「その通り。スリザリンに十点。」
今度はスリザリンが喜び、グリフィンドールが悔しがった。
スプラウトからマンドレイクの植え替え方法を聞いたあと、四人組になって一つの苗を植え替えることになった。
植え替えの途中でドラコがマンドレイクの口に指を突っ込んで噛まれた。そのときのドラコの顔が面白くて大きな声で笑ってしまった。みんな耳当てをしているからバレないと思っていたのだが、スプラウトに見つかり怒られた。何を言っているか分からなかったが。
説教が終わり鉢を見た時には鉢の半分が土で埋まっていた。マンドレイクの植え替えは土を入れるだけで終わってしまった。しかし、汗まみれの泥だらけの人達を見るとやらなくてよかったかもしれない。
薬草学の次の授業は妖精の呪文だったが、ほとんど一年生の後半の授業の復習だった。夏休みの間に忘れてしまった人がたくさんいたのでフリットウィックの判断は正しかったが、少し退屈な授業だった。
昼食の時に、昼休みは中庭で過ごそうという話になったので大広間から中庭に来たのだが、中庭の石段付近にポッターがいるのを見てドラコが足を止めた。
「ーーそれから、写真にサインしてもらえますか?」
カメラを持った少年がハリーに熱っぽい視線を送りながらお願いした。
「サイン入り写真!?ポッター、サイン入り写真を配っているのかい?」
ドラコの声が中庭に大きく響いた。中庭にいた生徒達が何事かとこちらに注目する。
「みんな、凄いぞ!ハリー・ポッターがサイン入り写真を配ってくれるそうだ!」
ハリーが真っ赤になって言い返す。
「僕はそんなことしてないぞ。黙れ、マルフォイ!」
カメラの少年とハリーとドラコの三人が何やら言おうとする前に石段に座っていたハーマイオニーが「気をつけて」と、ささやいた。
「いったいどうしたのかな?サイン入りの写真を誰かが配っていると聞こえたが」
ロックハートが軽い足取りでこちらに近づいてくる。
「聞く必要はなかった!ハリー、また会ったね!」
ロックハートにハリーが絡まれるのを見届けると俺たちはハリーに背中を向けて歩き出した。めんどくさい人間はハリーに任せてしまおう。
闇の魔術に対する防衛術の教室に行くと、既に前の席と後ろの席が埋まっていた。なので不自然に空いている真ん中の席に座ったのだが、持ってきた教科書をどこに置けばいいのかでテンパってしまった。持ってきた教科書七冊は分厚く、重ねて置いてしまうと完全に見えなくなるのし、広げておくと机が狭くなってしまうのだ。
授業開始のチャイムが鳴り終わった瞬間、教室の二階にある部屋のドアをバンッ!と勢いよく開いてロックハートが現れた。
ロックハートは桃色のマントを手で払い、颯爽と階段を降りてきた。それから生徒の顔を見渡そうとして失敗した。教科書のせいだ。
「ウーン、教科書は机の上に広く並べて欲しい。君たちのキュートな顔が見えなくなってしまうからね」
ロックハートはウィンクしたあと、ネビルの席に近づき、ネビルの教科書を取り上げた。
「私だ」
……うん、そうだな。どうして彼がこんな図太い性格になったのか知りたい。
それからロックハートは自分の輝かしい経歴をスラスラと生徒達に話した。この話は何回も喋っていることが推察出来た。
「ーーバンドンの泣き妖怪バンシーをスマイルで追い払ったわけじゃありませんしね!」
ロックハートの感覚がズレているのは知っていたが、身近で聞くと辛いな。
それからロックハートはテストペーパーを配り、ミニテストをやらせた。自分に関するテストだ。自分を前に出せるところは尊敬出来ますね。最初の方は真面目に答えていたが、段々面倒くさくなり、三十分程ボーとしていた。
「ふむふむ、皆さんの一部にはもう少し 「狼男との大いなる山歩き』を読まなければいけない人がいるようですね。」
みんなの答案を見ながらロックハートは言った。
「おや?おぉ、素晴らしい!ハーマイオニー・グレンジャーが満点です!私のひそかな大望も知っていましたね。ミス・ハーマイオニーはどこにいますか?」
ハーマイオニーが手を振るわせながら上げた。前の方の席に座っていた人はハーマイオニーのことを睨んでいたが、後ろの方に座る人はドン引きしていた。いくらなんでも全問正解は怖いからな。
「さあ、皆さん注目してください。この籠には恐ろしい悪魔が入っています。捕らえたばかりのコーンウォール地方のピクシー小妖精ですよ。ーーおおっと、馬鹿には出来ませんよ?この連中は狡賢く、脅威的だ。今から布を取りますが、決して悲鳴を上げないように……それっ!」
教卓に乗せられていた籠の中には、身の丈二十センチ程で群青色をしたピクシー妖精が大量に入っていた。
籠から出ようと飛び回ったり、ガタガタ籠を揺らしている。大量のピクシー妖精が一斉にしゃべりまくるのでうるさくてたまらない。
「さあ、それでは、君たちがピクシーをどう扱うか見てみましょう!」
ロックハートが籠の戸を開く。すると、ピクシー妖精がロケットのように勢いよく籠から飛び出した。
二匹のピクシーがネビルの耳を引っ張ってシャンデリアに吊り上げる。その他大勢のピクシーは教室のガラスを叩き割ったり、生徒の教科書を奪い取って投げつけてきたり、墨汁を撒き散らしたりした。教室の外に飛び出していったピクシーも数匹いた。彼らの破壊力は尋常なものではなかった。
生徒は走り回ったり、机の下に隠れたりしたが、あまり意味は無かった。
「さあ、さあ。捕まえなさい。たかがピクシーでしょう……」
ロックハートが腕まくりをして杖を振りかざす。
「ペスキピクシペステルノミーーピクシー虫よ去れ!」
呪文の効果はいつまでたっても現れない。そこに一匹のピクシーが現れ、ロックハートの杖を奪った。それからその杖でシャンデリアと天井を結ぶ鎖を杖で破壊し、杖を窓の外へ放り投げた。シャンデリアが落ちた時、ネビルが奇跡的に無傷で机の上に着地するのが見えた。
混乱が少し収まるのを見届けてから、俺は杖をローブから取り出した。
「イモビーラスーー不動せよ!」
呪文はきちんと効果を発揮し、教室にいるピクシーの動きが止まった。みんなはそれを見て逃げるのはやめたが、終業のチャイムがなるとすぐに教室を飛び出した。ピクシーの動きが止まったとはいえ教室内は酷い状況だし、逃げていったピクシーが帰ってくる可能生や再び動き出す可能性を考えたらこんなところにいたくなかったのだろう。
「いや、いや。よくやったよ、君!まぁ、私なら違う魔法でもっと上手く対処していましたがね」
ロックハートが乱れた髪型を直しながら話した。
「やはりそうなんですか!偉大なロックハート先生なら簡単に対処出来ると思っていました。教室がこんな状況なのに申し訳ないんですが、先生の部屋で先生の武勇伝を聞かせてもらえませんか?先生の大ファンでして是非直接お聞きしたいんです」
「いいでしょう!あの状況を対処したことへのご褒美です。これは特別なことなので自慢してはいけませんよ……。聞いた者が嫉妬してしまいますからね。君たちもだよ!」
ロックハートがハリー達に声をかける。今残っているのは彼らだけだ。頷いたのはハーマイオニーだけで、ハリーとロンはうんざりした顔をしていた。
「では、行きましょうか。まずは何から聞かせてあげましょう?レッドキャップの群れに立ち向かった話がいいかもしれません。あれは恐ろしい化け物でしたね……」
清々しい笑顔を見せながらロックハートは自分の部屋へと続く階段を上り始めた。
ロックハートって魔法の才能がないと思っていたんですけど、ググったら平均以上の才能があるって書いてありましたw
幼少期のエピソードも書いてあって凄く興味深かったです。気になる人がいたらロックハート 才能 で調べてみてください。多分出ます。
閲覧ありがとうございました!
内容に関する批評頂けると嬉しいです。批評ってかなり難しいんですけどねwwwそこを是非お願いします!