ハリーポッターと3人目の男の子   作:抹茶プリン

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予兆

 ドラコを殴り、ハーマイオニーに謝ったあの日から、俺の周りは変化し始めた。端から見ればノットと喧嘩しただけの些細な出来事に見えたかも知れない。だが、確実に俺の周りは変わっていった。

 

ノットは俺に友達は止めると告げた後、部屋にあった荷物を別室に移動させた。ドラコが必死に説得したが、まるで聞く耳を持たなかったらしく、さっさと友人の部屋に引っ越してしまった。それ以来ノットは明らか様に俺を避け始め、一切しゃべろうとしなかった。

変わったのはノットだけではない。

スリザリンの上流階級の生徒達は、今まで俺にベッタリだったが、今は、敵対行動をとるというほどではないが、少し距離を置くようになった。不穏な気配を感じ、俺と一緒にいてもあまり得にならないと考えたのだろう。代わりにドラコにさらに纏わりつくようになった。

家柄を自慢出来ない側の生徒達は俺との関わり方をあからさまな変化させた。今までは上流階級の生徒がたくさんいたため、こういった生徒が俺に付け入る隙など無く、俺と関わることはほとんどなかった。しかし、今の俺にはそんな人間はいないので簡単に近づくことが出来るため、うんざりするぐらいに接近してくるようになった。そんな訳で、マルフォイ家の威光に目を輝かせる”友人”が増えた。

 

変わらなかったのは、ドラコとクラッブとゴイルだけだった。クラッブとゴイルは全く状況を理解していないからだとは云え、今までと変わらない態度で接してくれるのは本当に有り難かった。今まで仲が良かった人間が、冷たい目線で俺を見てくるのは、本当に辛かったからだ。体が痛いと思ってしまうぐらいに。

だからだろうか?尚更ドラコを守りたいと思った。

 

 

 

 

 

 城の東側の通路を抜け、禁じられた森への入り口がよく見える丘に出る。ここはハグリットの小屋を見下すことができる場所だ。

丘の淵に突き刺さるように立っている大きな石に背中を預けて座り込む。それから俺はローブにしまっていた地図を取り出し、パッと開いた。

 

「…よし。ちゃんとジニーはグランド方面からハグリットの小屋に来ているな」

 

ジニーは、ばったりハリーと会うことを期待して来ているんだろうが、残念なことにハリーは珍しく図書館にいる。ハリーとロンだけなので、勉強では無いのだろうが。

 

ジニーが確実に小屋に向かっているのを確認した俺は、冷たくて座り心地が全く良くない地面から腰を上げた。少しの時間くらい立っていれば良かった。

周りに人がいないのは知っていたが、何となく周りを確認してから、一段一段高さが違う階段をゆっくり降り始めた。ハグリットの小屋に先に到着するのはジニーの方が望ましい。

 

タイミングはバッチリだったようで、俺が階段を降りて歩き出したときには、特徴的な燃えるように真っ赤な髪をした少女が小屋の周りをウロウロしていた。

小屋の中を覗こうと窓に張り付いていたジニーが、こちらまで聞こえてくるほどに大きなため息をついて肩を下ろした。お目当ての人どころか、ハグッリットすらいないからな。

諦めて城に帰ろうとしたであろうジニーが振り返り、自分を見ていた俺に気がつく。最初は自分の行動を見られたことが恥ずかしくて顔を髪の色のように真っ赤に染めたが、エメラルド色のネクタイと俺の顔を見て、すぐに顔色を変えた。

 

「なんで、あなたがここにいるのよ!」

 

ウィーズリー家の勇ましさをしっかりと引き継いでいるようで噛み付いて来たのだ。

 

「俺がここにいる理由を君に話す必要があるか?まぁ、言うけど。カボチャを見に来たんだ」

「カボチャを見に来ているの?」

 

ジニーは目を丸くした。カボチャをわざわざ見に来るなんて、ただの変人だからな。

 

「そうだが。じゃあ、君は何をしにここに来ているんだ?」

「た、ただ来てるだけよ!」

「ふーん、そうか、そうか。なるほどな。君はポッターに会いに来ているんだろう?」

 

ジニーは俺の言葉を聞いて、まるで不意を突かれた人間のような反応をした。

 

「ち、ち、違うから!理由は言えないけど!そうじゃないから!あ、あたし、か、帰るから」

 

ジニーは俺にそう言い放つと、クルリと体の向きを変えるとカチコチな動きをしながら城に向かって歩き出した。

 

「ポッターなら諦めた方がいいかもしれない!ポッターは他の寮に好きな人がいると聞いたことがある!」

 

ジニーは振り返り、俺を鋭い目で睨むと、城に向かって駆けていった。

 

その姿を見届けてから、俺は大きなため息を吐いた。 この行動が俺の望むことに繋がるのか、その結果が本当に正しい行動なのか、それが分からなかったからだ。

確信を持てなかったが、それから俺は、お互いが一人のときを見計らって(ジニーは基本一人であった)ジニーに話しかけるようにした。

それは、ジニーに取って全く嬉しくない出来事であっただろう。スリザリン生でマルフォイ家の息子の時点で嫌悪感を抱くだろうし、会話の内容がジニーを追いつめる物だったのだから。

 

 

 

 

 

10月は湿った冷たい空気を引き連れながらやってきた。

 

「ハックション!」

 

そして、その急激な温度の変化は、先生も生徒も関係なく風邪を大流行させた。

 

「セルス大丈夫か?」

 

心配げに尋ねてきたドラコ自身が、熱っぽくて赤らんだ顔をしていて、まったく大丈夫そうでは無かった。こんなに寒くて大粒の雨が降る日にクィディッチの練習をすれば誰だってこうなるんだけど。

フリントは雨の日であってもお構いなく、厳しい練習メニューを行った。勿論、彼はかなりの批難を浴びていたが、意志を曲げることは無かった。

俺も不満はあったが、厳しい練習のおかげでいつの間にかチームメンバーとの間に合った溝を埋めることが出来た。彼は見た目に反して色々考えているようだ。フリントが狙って行ったという確信は無いのだけど…。

 

「ああ…あまり大丈夫じゃないな…早く戻って暖まろう…」

「そうだね…」

 

城に入る前に泥と水を適当に落としてから、寮に向かって廊下を歩いていると反対側からノットが歩いてきているのが見えた。

 

「おい、ノット!」

 

ドラコが手をあげて呼びかける。

こちらに気がついたノットは、俺を一瞥するとさっさと来た道を引き返した。

 

「ッなんだよ…あいつ!訳が分からない!」

 

ドラコが言うようにノットの行動は訳が分からなかった。ノットの行動はプラスになるどころか、マイナスにしかならないからだ。俺はノットが離れていったこと以外は対してダメージを受けていないが、ノットはスリザリンで浮いた立場になってしまい、友人も減ってしまっていた。本当にノットは何を考えているのだろうか…。

 

「やっぱり人を理解するのは難しいな…」

 

 

 

 

 「トリック オア トリート!」

 

大広間にやってきた皆がこの言葉を口にした。10月31日、皆が待ちわびたハロウィーンの日がやってきたのだ。

去年はトロールのせいで騒ぎ足りなかったことに加えて、今年はダンブルドアが余興用に『骸骨舞踏団』を予約したという噂が流れたために、誰もが大広間に集まり、騒ぎ回った。

近くに座っていた人からお勧めされた、パンプキンの皮を皿として利用したグラタンを自分の皿に載せる。そして一口齧りついたのだが、その味に驚いてしまった。美味しいとか不味いとかではなく、甘さ控えめだったからだ。去年のハローウィンの料理は全て甘かったので、毎年のことなのだと考えていた。

 

ある程度料理を楽しむと、みんなはおしゃべりの方に力を入れ始めた。そんな中俺は、周りの人間が大広間の飾り付けを見て評論家のように様々な感想を語るのを聞き流しながら、考え事を始めた。ハローウィンは楽しい日だが、原作を知っているとホグワーツのハローウィンを心の底から楽しむことが出来ないのだ。

 

バジリスクに襲われる回数は全部で五回。

一度目は、フィルチのペットであるミセス・ノリスが襲われる。これは今日だ。

二度目は、コリンが襲われる。

三度目は、ジャスティン・フレッチリーとほとんど首無しニックが襲われる。

四度目は、ハーマイオニーとレイブンクローのペネロピー・クリアウォーターが襲われる。

五度目は、ハリーが襲われる。そしてこの時、バジリスクはハリーに殺される。

 

これが原作での流れだ。今日はほとんどの生徒が一カ所に集まっているという事件を起こすのにぴったりな日なので、ミセス・ノリスが襲われるのは原作と変わらないだろう。

しかし、それ以降の流れは、俺というイレギュラーな存在によって大きく変わっていくだろう。犯人を知っているとはいえ、油断してはいけない。見知らずの生徒が死ぬのは別にかまわないが、原作に関わる人間が死んだり、リドルが肉体を得てしまったりすれば、本当に取り返しのつかないことになる。

俺は、ジニーが秘密の部屋に囚われてしまったという流れを原作よりも早く起こすために、ジニーに日記を多く書かせようとしているが、同時にハリー達が事件の真相に辿り着かせるのも早めなければいけないのだ。ロックハートが本当に使い物にならない無能だと気がつかせるのも。

 

 

 

 

 

 「皆、楽しめたのかの?『骸骨舞踏団』を招待するのに一苦労したのにつまらなかったと言われてしまってはたまらんがのぉー」

 

ダンブルドアがニヤリと笑うと、大広間に大歓声と爆音のような拍手が響き渡った。噂は本当だったようで、パーティーの途中から『骸骨舞踏団』が演奏してくれたのだ。彼等の演奏は最高で、今の俺の気持ちでさえ高ぶらせ、このパーティーを盛り上げてくれた。

 

「良く食べ、良く騒ぎ、皆は満足したじゃろう。さぁ、就寝時間じゃ。駆け足!」

 

ダンブルドアの言葉を聞いた監督生が立ち上がり、一年生を集め始める。

 

「早く寮に戻ろう。もう少しすれば大行列の中に取り込まれてしまう」

 

ごちゃごちゃと並ぶ一年生を見てドラコが顔をしかめた。

 

「そうだな。さっさと引き上げた方が良さそうだ」

 

早歩きで大広間を出たが、同じことを考える生徒はたくさんいたようで、結局人ごみの中に取り込まれてしまう。流れに従って階段を上り、廊下に出た時、突然前の生徒が立ち止まった。先頭の生徒がミセス・ノリスを発見したのだ。

ざわめきが前の方から聞こえ始め、それが次第に後ろに拡散し始める。

 

「なんだ、これは?…フィルチの猫?おい!セルス行くぞ!」

 

人垣をかき分けて前に進むドラコの後を追うと最前列に飛び出た。人ごみの中でポカリと空いた空間には、ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人が顔を青くしながら呆然と立っていた。そして、三人の前の壁には、

 

『秘密の部屋は開かれたり 継承者の敵よ、気をつけよ』

 

松明の光に照らされてチラチラ光る真っ赤な文字が書かれている。この文章を理解出来る生徒は少ないだろう。それでも、何か恐ろしいことが起きていることは気がついていた。

 

「継承者の敵よ、気をつけよ…」

 

ドラコがボソッと壁の文字を読むと、壁から目を離し、生気のない顔でこちらを見つめてくる。

 

 

 

 

 

 

静寂を打ち破る者はやってこなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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