夏休み終わり、新学期が始まるので、マルフォイ家はキングス・クロス駅にやって来た。
デカいトランクとふくろうの入った鳥かごが乗ったカートを押してだ。とても怪しい格好だ。ナルシッサの魔法で軽量化されているので楽だが、どうせなら軽量化だけじゃなくて荷物ごと小さくしてほしかった。
一応文句は言ったが、伝統、ならわし、と言い方は違うが同じ意味で却下された。
キングス・クロス駅は魔法を使えない人間が作ったものだ。つまりマグルがそこらへんにたくさんいる。我々は彼らからしたら非日常そのものであり、注目を集めまくっていた。
純血主義の者からしたら、それは不愉快極まりなく、俺以外の者はかなりイライラしている。
「ここに来るたびに腹が立つ!何故我々がマグルの作った場所に来なければならない。九と四分の三番線ホームに直接移動出来るようにするべきだ!」
ルシウスがその青白い顔の額に青筋を浮かべながら怒鳴った。その文句を言う声が大きいものだから、さらに注目を集めるという悪循環を発生している。
「だから、荷物を小さくするべきだったんだ……」
「その話は何度もしただろう!”しきたり”だ!」
文句を言ったのだが、ルシウスに頭ごなしに叱られた。余程機嫌が悪いらしい。
一家は何とも気まずい雰囲気の中、九番線と十番線の間にある柱の前に来た。
「ドラコ、セルス先に行きなさい。」
ドラコが一瞬戸惑った後、勢いよく柱に向かって走り出す。壁にぶつかるかと思われた瞬間、何も抵抗ないように壁をすり抜けた。
すり抜けられることは間違いが無いようなので、小走りで柱に向かった。一瞬、頭の隅にドビーの顔が浮かんだが、それを打ち払いスピードを緩めず壁に突進する。
やはり、何の心配はいらなかったようで、霧の中をすり抜けるような感覚で壁をすり抜けた。
目の前には紅色の蒸気機関車が、ホグワーツに通う生徒とその保護者達がごった返すプラットホームに停車していた。
「クラッブとゴイルと待ち合わせしている。向こうに行くぞ」
後ろから出てきたルシウスが何処か疲れが取れたような口調で言った。ようやく魔法族の世界に入れて安心したのだろう。確かこの蒸気機関車もマグルから譲り受けたものであった気がするが...。
全体的に体がしっかりしているというか、太っている二組の家族がいる。クラッブ家とゴイル家だ。
親は親で固まり、子供は子供で集まる形に自然となった。
親は楽しそうに談笑しているが、子供の方はドラコが基本的にしゃべり、たまに俺が口を挟んでいた。クラッブとゴイルは、理解しているのかしていないのか分からない顔で、ボーと話を聞いていた。お腹が空いているようでたまに腹をさすっていもいた。
話が終わり、荷物を列車に乗せた後、それぞれの家族に別れ、別れを惜しんだ。
「ホグワーツに行っても怠るなよ。頑張ってこい」
「体に気をつけるのよ?手紙は必ず送るわ。」
ルシウスは堂々としていたが、ナルシッサは目を潤ませていた。
「行ってきます、父上、母上」
「寮が決まったらすぐに手紙を出します」
家族と別れをした俺たちは、蒸気機関車に乗り込み、空いているコンパートメントに入った。
後から入ってきたクラッブとゴイルは俺たちの座る席の反対側に座った。少し窮屈そうにしていたが、二人を見ていると替わる気にはなれず、何も言わなかった。
これから成長したらどうなってしまうんだろうかと不安になった。
「クラッブ!ゴイル!ハァ...車内販売はまだ来ないぞ。だから体を揺らすのは止めろ!なんだか、列車まで揺れている気がしてくる。それより、俺たちの寮はどこになると思う?無論スリザリンだがな」
なら聞く必要ないじゃないかと思いながら俺は口を開いた。
「ん〜スリザリンかレイブンクローかな。俺結構勉強好きだし」
「レイブンクローか……。そういえば家で教科書読んで勉強してたもんな。それに理屈っぽいところがあるし。でも、セルスはスリザリンだと思うぞ?血筋的に言って。でもそっかー。セルスと別れる可能性があるのか……」
血筋か……。ドラコは知らないが、俺にはルシウスとナルシッサの血が流れていないから、そこら辺はわからないんだよな。
レイブンクローであればいいが、ハッフルパフやグリフィンドールに入ってしまったら家族との関係にヒビが入るだろうな……。
他の生徒にとっても俺にとっても組み分けの儀式は、重大なイベントだな。何だか不安になってきた。
俺たちが談笑していると、汽笛がなった。そろそろ出発するらしい。
もう一度汽笛が鳴り、汽車が走り出した。
プラットホームでは生徒の家族が大きく手を振っていた。その中に小さく手を振る両親の姿があった。
列車がカーブを曲がって、プラットホームが見えなくなる。窓から見える風景が変わり、街中の風景になった。すごい勢いで後ろに流れていく家々が少なくなり、緑が増える頃、クラッブが声をかけてきた。俺は窓から目を離し、目の前に座るクラッブの方に顔を向けた。
「お腹がペコペコでさ、お菓子を買いに行きたいんだ……」
「もうか?朝飯は食べてきたんだろ?」
ドラコが呆れたように喋った。
「食べたんだけど……」
ゴイルがお腹を擦りながら、情けない声を出した。
二人の様子が何だか可哀想そうだったので、俺は立ち上がるとコンパートメントの扉を開けた。
「俺も少し腹が減った。少し早いけど車内販売している人を探しに行こう」
俺の言葉を聞くと二人は破顔した。食べ物のことになると表情が豊かになる二人が可笑しくて軽く吹き出してしまった。
「なら、僕も行くよ!」
慌てて立ち上がったドラコは俺の後に続いてコンパートメントを出た。
車内販売しているおばさんは先頭車両にいた。そこで大量のお菓子を買い自分たちのコンパートメントに帰ってきた。
色々なお菓子を食べ、百味ビーンズで美味しいものだけを選ぼうと頑張ったり、百味ビーンズ五個を一気にゴイルに食べさせたりして、楽しい時間を過ごした。初めて買ったカエルチョコレートが、ただのカエルの形をしたチョコレートでがっかりしたが。
クラッブとゴイルがすままじい勢いでお菓子を消費し、そろそろお菓子が無くなりそうになった時、コンパートメントの扉が開いた。
「ここにいたのか。探したんだぞ」
そう言って入ってきたのは、黒人の少年、ブレーズ・ザビニである。昔開かれたパーティーで知り合った。その際、彼の母親を見かけたがすごく美人だった。しかし、刺があるようで彼女に手を出した男性は必ずさされてしまうらしい。これまでザビニの7人の父親が亡くなっている。
「ザビニどうしたんだ?」
「それがさ、なんとだ、なんと、この列車には”ハリーポッター”が乗っているんだ!さっき顔を見ちゃったよ!」
俺の問いかけに、ザビニはハリーポッターの部分を強調し、自慢げに答えた。
「ハリーポッターだって!?」
それを聞いたドラコは大きな声を出して驚いた。
ドラコの反応に満足したのか、ザビニはすぐに出て行った。他の知り合いに自慢しに行ったのだろう。
「なんであいつが僕より先に知っているんだ」
ドラコは不満げな顔をしながら腕を組んだ。
ドラコとザビニは仲が悪いのだ。お高く止まっているところが似ているので反発してしまうのだろう。身内補正がかかっていないザビニは俺も苦手だ。長い間つきあっているだけあって、ドラコの良いところはよく知っているしな。
ウーン、ウーン唸っていたドラコが、あっ!と声を上げた。
「そうだ!僕は直接話せば良いんだ!よし、行くぞ!」
ドラコが立ち上がった。
それを見た、クラッブとゴイルは慌てて口にお菓子を詰め込むと立ち上がった。既にお菓子は無くなっていた。
「俺はいいや。そんなに興味ないし」
よっぽどハリーが気になるらしく、俺を説得することなく、分かったとだけ告げ通路を歩いていった。
ドラコの後を追おうとする二人に菓子のゴミを渡し捨ててくるように言った。本当にゴミが多かったのだ。
暇になった俺はトランクから「基本呪文集(一学年用)」という本を取り出した。暫く読んでいたのだが、視界の隅にお菓子のゴミにちらついていることに気がついた。
便利だから家で必死に使えるようにした掃除の呪文を唱えようと杖を取り出した時、ドアが勢いよく開いた。
栗色の髪の毛をした女の子と、丸顔の顔の泣きべそをかいた男の子が入ってきた。
「ヒキガエルを見なかった?ネビルのがいなくなったの」
威張った感じがする話し方だった。
この子がハーマイオニー・グレンジャーか。で、後ろにいるのが、ネビル・ロングボトルか。
「いや、見なかったよ」
ハーマイオニーは俺の答えを聞いていないらしく、俺の杖をじっと見ていた。
「魔法をかけるの?さっき会った人は失敗したのよね。じゃあ、見せてもらうわ」
ハーマイオニーはそう言うと、俺の隣に座った。前の席は汚いから座りたくなかったのだろう。
この自分勝手さはハリー達と出会うことで丸くなっていくのか。
ネビルはドアの側に立っていた。
「まぁ、いいんだけどさ...。んんっ……『スコージファイ!きれいになれ!』」
呪文を唱えつつ、ゴミを払うような動きを杖で再現する。
すると、お菓子のかすが一カ所に集まり、パッと消えた。
それを見たネビルはすごいっ!と声を出した後、小さく拍手した。
「あなたも家で勉強してきたのね!私もその呪文を成功させたわ。あなた他にどんな呪文が出来るの?私は簡単な呪文なら成功させたわ。教科書も勿論全部暗記したわ。あなた、『魔法族として必「悪いな、そろそろホグワーツだろ?もう着替えたいんだ。そろそろいいか?」そうね。この話はまた今度にしましょう。そういえば自己紹介してなかったわね。ハーマイオニー・グレンジャーよ。よろしく。」
話の途中で割り込むのはマナー違反だが、長くなりそうなので遮らせてもらった。
「セルス・マルフォイだ。よろしく」
俺の名前を聞くとハーマイオニーはコンパートメントを出て行った。
ネビルは俺の名前を聞いた瞬間、ビクっと体が反応した。そして、ハーマイオニーに続いて出て行こうとする。
「じゃあな、ネビル」
出来る限り優しい顔をしてネビルに別れを告げる。
ネビルは何度も顔を頷かせて慌てて出て行った。
ホグワーツの制服に着替え、再び教科書を呼んでいた時、ドラコたちが帰ってきた。
ドラコはドサッと勢いよく座り込むと矢継ぎ早に話し始めた。
「今、ポッターのところに行ってきた。あいつは無礼すぎる!何があったと思う!?」
「あー、その話は後で聞くから、早く制服に着替えちまえ。そろそろホグワーツだ」
ドラコは窓をちらりと見た後、トランクから制服を取り出し着替え始めた。
「おい、クラップ。その指はどうしたんだ?血が出ているじゃないか」
「ポッターのコンパートメントにウィーズリー家の奴がいたんだ。そいつのペットのネズミに噛まれたんだ」
憎しげにドラコが答えた。クラップに聞いたんだがな……。
トランクから傷薬を出す。何かあったときに使えと渡してくれたのだ。俺とドラコが使うのを想定してるんだろうけど、別にいいだろ。
蓋を外し、クリームを手で掬い傷に塗ってやる。すると、みるみる間に傷が塞がった。小さな傷はすぐに治せる効果はあるようだ。
「ありがとう」
「どういたしまして」
3人が着替え終わった時、車内に響き渡る声がした。
「あと五分でホグワーツに到着します。荷物は学校に届けますので、車内に置いていってください」
汽車は徐々に速度を落とし、ついに停車した。
通路には人が溢れかえっており、押し合いへし合いしながら、小さな、暗いプラットホームに降り立った。
暖かい場所にいたので外は身震いしてしまうほど寒く感じた。
「イッチ年生!イッチ年生はこっちだ!」
少し離れたところにランプを掲げたハグリットがいた。ハグリットを確認したドラコはクソッと声を漏らした。
「さあ、ついてこい。足下に気をつけろ。いいか!イッチ年生、ついてこい!」
ハグリットについて行くと、険しくて狭く薄暗い小道に入った。
足下が見えないので、木の根っこと思われるものにつまずいたり、水でぬれる地面によって滑った。
それが六度目になった時、思わず舌打ちした。ランプを生徒にも持たせればいいし、そもそもこんな危険な道を通ることが腹立たしいからだ。
先輩達の方は楽な道を通ってホグワーツに向かっている。俺たちは、先輩達が席につき、組み分けの準備をする為の時間を作る為にわざわざ険しい道を歩かされている訳だ。
それなら待たされた方がマシだ。
「みんな、ホグワーツがそろそろ見えるぞ」
前方からハグリットの声が聞こえた。
狭い道を曲がった瞬間、道が大きく開け、大きくて黒い湖のほとりに出た。向こう岸には山がそびえ、その頂上には壮大な城が建っていた。
数々の窓から光りが溢れ出し、その光りが星空の光りと共鳴し、幻想的な光景になっていた。
皆もその光景には感動したようで、あちらこちらから「うぉーー!」という声が上がった。
「四人ずつボートに乗って!」
ハグリットは岸辺につながれたボートを指差す。
列車のときと同じように座ろうとしたのだが、クラッブとゴイルのほうにボートが傾いてしまうため、慌てて場所を交換した。
ボートはハグリットの掛け声で一斉に動き出す。
崖下の近くに来た時、ハグリットが頭下げー!と大きな声を出した。城の方を見ていた皆は、一斉にに頭を下げる。
地下の船着き場で降り、ハグリットのランプの後に従って歩き、石段を登った先には城の巨大な門があった。
「みんな、いるか?」
後ろにいる人にも聞こえるように大きな声で確認を取った後、ハグリットは城の扉を三度叩いた。
さぁ、ホグワーツだ。
本当はこの話に組み分けの儀式も加えるはずだったんですが、汽車の話が長くなりすぎたんで次話で書きます。
次話は文章が短くなる気がする...。
感想お待ちしています!
※血筋云々の文章を変更しました。