徹夜で遊びまくった俺たちは、少し遅めの朝食を摂りに、眠気と戦いながら大広間に向かった。
そしてその途中で、細長い包みを抱えたハリーとロンに出くわした。
ドラコはその包みからあるものを連想し、ハリーから包みをひったくった。
「やっぱり箒だ……。ポッター、退学は確実になったな」
外から触り、中身を確認したドラコは、憎々しげに呟くと包みをハリーに投げ返した。
「これはただの箒じゃないぜ。なんてったってニンバス2000だぜ。君、家に何型の箒があるって言った?コメット260かい?」
ロンはニヤッとハリーに向かって笑いかけた。
「君に何が分かる、ウィーズリー。柄の半分も買えないくせに。小枝を一本一本集めて作らなきゃいけないくせに」
ドラコに応戦しようとロンが口を開きかけた時、ドラコの肘あたりからフリットウィックが現れた。
「君たち、言い争いじゃないだろうね」
フリットウィックは俺たちの顔を見上げながら、キーキー声で問い質した。
「先生、ポッターたちが箒を学校に持ち込んだんです」
「あーなるほど。いやーいやー、そうらしいね。マクゴナガル先生が特別措置について話してくれたよ。ところで、その箒は何型かね?」
ドラコがフリットウィックの言葉を聞き、困惑と苛立ちで顔をしからめる。
「ニンバス2000です」
口元をピクピクと動かし、必死に笑いを抑えるハリーが答えた。
「実は、マルフォイのおかげで買っていただきました」
ドラコの顔は怒りで真っ赤に染まる。
フリットウィックが俺たちから離れたのを見届けた後、勝ち誇ったように階段を上る二人に言い放った。このままじゃ負けっぱなしで悔しかったのだ。
「ポッター、ネビルにお礼を言ったか?お前は、箒を貰えたのはネビルが怪我をしてくれたからだと思っているんだろ?」
すぐに二人は階段を駆け下りてきた。
「そんなわけないだろ!」
ハリーが勢いよく反論した。
「どうだか」
ドラコがニヤニヤしながら鼻で笑った。
「だまれ、マルフォイ!昨日は、僕に負けた上に泣いてしまったらしいじゃないか?一人じゃ何も出来ないんだな」
すかさずドラコは言い返す。
「僕一人だってお前をこてんぱんにしてやれるさ!何なら今夜だっていいぞ。魔法使いの決闘だ。杖だけを使用し、相手には触れない。どうしたんだ?もしかして魔法使いの決闘なんて聞いたこともないんじゃないか?」
「もちろんあるさ。僕が介添人をする。おまえのはそいつか?」
ロンが口を挟み、俺をジロリと睨む。
「ああ、俺がやろう」
「じゃあ、真夜中でいいな?トロフィー室だ。いつも鍵が開いているからな」
二人と決闘の約束をした俺たちは大広間に向かった。
「本当に今夜決闘しに行くのか?」
ノットが大きな欠伸をしながら尋ねた。
「まさか。僕たちは夜遅くまで騒いでこんなに眠いんだぞ?その時間にはグッスリ睡眠中だ。でも、あいつらは眠れない夜になるだろうな。真夜中のトロフィー室に誰かが現れるってフィルチに告げ口しといてやる。いい方法だと思わないか、セルス?」
「ああ、素晴らしい方法だ。あいつらになんと思われようが構わないからな」
食パンに齧り付きながら、ニヤリとドラコに笑いかけた。
次の日の午後、いつもの席で本を読んでいるとハーマイオニーが現れた。
「昨日はあなたたちのせいでとんでもない目にあったわ!一体何があったと思う!?」
ハーマイオニーは席に座るなり、捲し立てた。
「ハーマイオニーも行ったのか。何があったんだ?」
笑いながらハーマイオニーに問い返す。
「あなたたちフィルチを呼ぶだけで来なかったでしょう!……まぁ、それはいいわ。スリザリンらしいと言えるもの」
褒める気はまったくないようで、皮肉気な口調だ。
「それよりも重要なのは、ダンブルドア校長先生が入っては行けないっておっしゃってた、四階の隅の部屋に三つの頭を持った化け物がいたことよ。その化け物は何かを守っていたようだったわ。足の下に隠し扉があったの。一体何を守っているのかしら……」
彼らは順調に賢者の石に近づいているようだ。これならクィレルの俺に関わろうとする動きさえ注意してれば、安心して自分のことに集中できそうだ。
毎日たっぷりと出される宿題を片付けたり、図書館でためになる本を読んだり、必要の部屋で閉心術の練習をしたり、友人たちと簡易版クィディッチで遊んだりと、暇な時間が一切ない毎日を過ごしていたら、いつの間にかホグワーツに来てから二ヶ月経ち、ハロウィーンの日になっていた。
本来なら、今日はクィレルがホグワーツにトロールを招き入れ、ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人で、そのトロールを一緒に倒し、友達になるはずだった。でも、この世界では違うルートになると思う。
何故なら、この世界では既に三人は友達であり、簡単に思いやりの無い言葉を言って、傷つけ合うような関係ではなかったからだ。
俺というイレギュラーが変化をもたらしたのだろう。
原作知識が使えなくなるかもしれないという不安があったが、ハリーとロンと楽しそうに話すハーマイオニーを見ていると、多少の変化なんてどうでもいいなと思えた。
パンプキンパイを焼く美味しそうな匂いがホグワーツ一杯に広がり、生徒たちは夕食のごちそうを想像してソワソワしていた。
ホグワーツのハロウィーンは、みんなの想像していたものよりも凄かった。
大広間はハロウィーン仕様に飾り付けられ、壁や天井では千は超えているであろう数のコウモリが羽をばたつかせ、もう千羽のコウモリが低くたれこめた黒雲のようにテーブルのすぐ上まで急行下し、くり抜いたカボチャの中の蝋燭の炎をちらつかせた。
みんなは「トリックオアトリート」と言い合い、お菓子を交換した。持ってない生徒は、下級生であれば顔にいたずら書きされる程度であったが、上級生は臭くなる魔法をかけられたり、鼻を豚の魔法に変えられたり、なかなかハードなイタズラをされた。
仮装した上級生は、美味しいお菓子を大量にくれるので、周りに下級生が集まっていた。
みんながある程度はしゃいぐことに満足した時、ダンブルドアが立ち上がり、手を叩いてよく響き渡る音を出した。
次の瞬間、新学期の始まりのときのように、金色に輝くお皿に乗ったごちそうがあらわれる。
みんなはすぐに席に着き、ハロウィーン仕様のごちそうを自分のお皿に盛りつけ始めた。
チキンに齧り付こうとした時、クィレルが部屋に全速力で駆け込んできた。まったく、食事ぐらい食べさせてくれてもいいのに。
クィレルは見事な演技で怯えてる振りをし、ダンブルドアの席までかけよった。
「トロールが……地下室に……お知らせしなくてはと思って……」
クィレルは喘ぎ喘ぎでダンブルドアに報告すると、その場で倒れ込み、気絶した振りをした。
俺からすれば自演行為だと分かっているので馬鹿らしく見えるが、事情を知らないものからすれば、何か恐ろしいことが起きているんじゃないかと思えた。
生徒たちはパニックになり混乱を巻き起こす。しかし、ダンブルドアの素早い冷静な対応により、大混乱になる前に収束することができた。
これはクィレルにとって予想外のことだっただろう。クィレルの予定では、生徒たちをパニック状態にして大混乱を生み、誰にもバレずに四階に行こうとしていたのだから。
クィレルが四階にバレずに行くためには、先生たちがトロールを倒しに行く僅かな時間を利用するしか無くなった。
「監督生よ。すぐさま自分の寮の生徒を連れて寮に帰るのじゃ」
重々しいダンブルドアの声が響いた。
「スリザリン生!僕はここだ!僕に従ってついてきてくれ。冷静に騒がずに行けば安心だ!さあ、ついてきて!」
監督生に従ってスリザリンの寮へと歩き出す。
「どうしてトロールが入ってきたんだろう?大丈夫かな……?」
青白い顔をしたノットが不安そうに尋ねた。
「さぁな。森から迷い込んで来たのかもしれないな。それに、先生方がすぐに対処してくれるから心配ないさ」
一年生は恐怖を紛らわすために固まって移動した。
トロールという名前を知っていても、見たことがある奴なんていないだろうから怖いのは当たり前だ。俺も実際に遭遇したら冷静に立っていることなんて出来ないだろう。
一年生でトロールに立ち向かったハリーとロンは、やはり相当の勇気を持っているんだな。流石はグリフィンドールだ。
先程まで怯えていた生徒たちは、寮につくなりすぐにバラけて騒ぎ始め、個人個人好きなことをやり始めた。
寮の談話室には、お菓子やごちそうが置いてあったのだ。ダンブルドアの計らいだろう。こんな状況なら先程の出来事なんて綺麗さっぱり忘れ去ってしまえる。
騒いでいるみんなから離れ、周りに誰もいない場所で地図を取り出す。
地下の女子トイレ付近には教師がいるだけで、ハリーたちの名前は無かった。四階を見ると、スネイプはフラッフィーのいる部屋におり、クィレルは四階から急いで離れているのが分かった。
上手いことクィレルのハロウィーン騒ぎは収束したようだ。
安心した俺は、みんなの輪に潜り込み、ハロウィーンの続きを楽しんだ。
原作が変わってきていますよっていう話でした。