十一月に入ると、コートを着ないで外に出れば、凍り付いてしまうのではないかと思えるほど寒くなった。
しかし、そんな環境であっても子供たちは元気で、鋼のように固まった湖でスケートをしたり、自分の寮のクィディッチチームを応援しに練習場に駆けつけた。
そろそろ、クィディッチ・シーズンなのだ。
初戦が永遠のライバルであるグリフィンドールなため、練習場には多くのスリザリン生がやってきた。
俺もこの時ばかりは、勉強と閉心術の練習を控えめにした。自寮が頑張っているなら応援したかったし、クィディッチは、やるのは勿論のこと、見るのも好きだったからだ。
試合当日の土曜日は、カラッと晴れた試合日和の日だった。
今日も寒い日であったが、スリザリン生が固まって今日の試合について熱く語り合うので、それほど寒くは感じなかった。
十一時には学校中がクィディッチ競技場の観客席に詰めかけた。それほどクィディッチは人気で興味引かれるスポーツなのだ。
「おい、大統領って何だ?ほら、あの大きな旗に『ポッターを大統領に』って書かれてる」
望遠鏡で周囲を見渡していたノットが尋ねた。
「ああ、マグルの偉い奴だ。魔法大臣みたいな」
「ハッ、ポッターにはお似合いだな」
ドラコが吐き捨てるように言った。
ハリーがシーカーになっているのが気に入らないのだ。このことはドラコだけじゃなく、他の寮の一年生も同じで、みんな不満を持っている。
誰だって自分が活躍したいと思っているのだ。
原作では勝てたから英雄となったが、この世界では彼はただの目立ちたがり屋になるだろう。
今日勝つのはスリザリンだ。
スリザリンの選手とグリフィンドールの選手が入場してくる。
観客は彼らを大歓声で迎えた。
マーカス・フーチは注意事項を選手達ーーフリントの方を向いていたーーに告げると、選手達をポジションに着かせた。
ポジションに選手達が着いたのを確認したフーチ審判は、銀の笛を高らかに吹いた。
選手やクアッフルが空中を行き交い、たまにブラッジャーが物凄い勢いで選手に襲いかかった。
「あぁ、クソッ!」
グリフィンドールのアンジェリーナによって先取点が取られる。
スリザリンの席からはため息とヤジが上がった。
「さて今度はスリザリンの攻撃です。チェイサーのピュシーはブラッジャーを二つかわし、双子のウィーズリーをかわし、チェイサーのベルをかわして、物凄い勢いでゴール!……あれ?あれはスニッチか?」
リー・ジョーダンの実況を聞いた観客席がザワザワし、金のスニッチを見つけようと周りを見回す。
スリザリンのシーカーであるヒッグスとハリーが金のスニッチを見つけ急降下する。追いつ追われつの大接戦だ。
観客もチェイサーも固唾をのんで二人の勝負に注目した。
ハリーがヒッグスを引き離し、もう少しでスニッチ取れるという距離に来た時、ハリーにフリントが体当たりした。
スリザリンは歓声を上げた。グリフィンドールにフリー・シュートのチャンスを与えてしまったが、負けるよりはマシだ。
試合が進み、フリントがゴールを決めた時、ふと、上空を見るとハリーの箒が妙な動きをしているのが確認できた。
双眼鏡で教員専用観客席を確認すると、スネイプとクィレルがハリーから目を離さず何やらブツブツ呟いているのが分かった。
それにしてもクィレルは何がしたいのだろうか。この高さから落ちても死にはしないのに。
ハリーが安全なことを知っている俺は、ハリーが復活する前にヒッグスがスニッチを取ること祈った。
スリザリンの談話室はお通夜状態だった。
あの後、スリザリンは70対170で負けたのだ。原作通り魔法がとけたハリーはスニッチを口で取り、そこで試合が終了した。
負けるということは原作知識で分かってはいたが、必死に練習する先輩達を見ていた者としては先輩達が負けるとは思いたくなかった。必死に応援すれば勝ってくれる、そう信じたかった。
勝利したときに祝おうと準備していたごちそうやジュースは滑稽だった。
「すまなかった……」
フリントが代表して謝った。
「謝る必要なんて無いさ。お前らはよくやったよ。それに、まだシーズンは終わってないぞ?次こそ必ず勝とう」
上級生のダレンは、そう言うとテーブルの紙コップをフリントに渡し、カボチャジュースを紙コップに注いだ。
それからフリントの肩を軽く殴った。
スリザリン生はダレンの行動とクィディッチ選手の頑張りを讃え、大きく拍手する。
スリザリンの結束が壊れるなんてことはありえなかった。
それから次の戦いに備えて、スリザリン生はごちそうやお菓子を腹一杯食べた。
十二月のなかば、ついにホグワーツに雪が降り積もった。
珍しく朝早く起きた俺は、そのことに気がつくとすぐさま友人達を叩き起こし、雪合戦を行った。大人数でのチーム対抗雪合戦は憧れだったのだ。
渋々だったみんなもすぐにはしゃぎ始めた。
途中で高速で雪玉を作れる魔法を使いだした俺は、そのときだけであるが、確実にヒーローになった。
雪合戦で体を冷やした俺たちは、体を暖めるために暖炉のある談話室に急いで帰った。
暖炉の目の前にあるソファーに座り、体を暖めながら先程の雪合戦について話していると、三人の女の子が近づいてきた。
「ドラコにセルス〜、ちょっとお願いがあるんだけどいいかしら?」
パンジーが何処か媚びるような口調で話しかけてきた。
「なんだい?僕らに出来ることならいいけど」
ドラコが気取った口調で尋ねる。
「本当!?私たちマルフォ……」
パンジーの後ろにいた女の子がパンジーに睨まれ、口を閉じる。
何だか内容が分かってきた気がする。
「あのね、二人の家のクリスマスパーティーに招待してほしいの。大きくて素敵なパーティーなんでしょう?」
あぁ、やっぱり。マルフォイ家のパーティーには大物や地位の高い家の跡取りが来るからな。家柄が微妙な彼女達やその親からすれば、マルフォイ家のパーティーは心の底から行きたい場所なんだろう。
「あぁ、我が家のは規模も大きいし、様々な業界の大物がやってくる。そうだな、君たちのことは父上に話しておくよ」
ドラコはそのことに気がついていないようだが。まぁ、これから学んでいけばいいだろ。
「ありがとう!クリスマスパーティー楽しみにしているわ!」
三人は、はしゃぎながら女子寮へと向かう階段を軽やかに駆け上がっていった。
地下牢のにあるため寒くて仕方が無かった魔法薬学の授業を終えた俺は図書館に向かった。クリスマス休暇の間に読む本が欲しかったのだ。
『呪いの書=四年生編』と『魔法使いの戦い方』という本を借りた。
四年生とあるが、これは一年生編と二年生編に書かれていた魔法が微妙だったからだ。一体どこで、輪ゴムを当てられたような感覚をさせる魔法や靴ひもを一瞬で固く結ぶ魔法を使うのか……。
『魔法使いの戦い方』という本は、魔法をある程度使える人を対象にしていたが、とてもためになりそうになりそうな本だったので借りた。
もう少し休暇中に読めるかなと思い、新たな本を探していると、ロンの姿を見つけた。
ニコラス・フラメルについて調べているのか。
ふと、ニコラス・フラメルについて話した方が、早く問題が解決されるんじゃないかと思ったが、訳の分からないことになるかもしれないし、ハリーがみぞの鏡を見つけることが無くなると思いやめた。あそこでみぞの鏡と決別出来たのは将来的にハリーの力になったのだから。
それに、俺が何者なんだっていうお話しになるしな。
無駄な喧嘩するのは嫌なのでロンに見つからないように、そっとその場を離れた。
汽車がキングズ・クロス駅に到着する。
プラットホームには、久しぶりに自分の子供と再会するために、ソワソワしている親で溢れ返っていた。
「ドラコ、セルス!こっちよ!」
ナルシッサがこちらに大きく手を振る。そして、自分のところに息子達が駆け寄ってくるのを確認すると両手を開いた。
「父上、母上、ただいま!」「父上、母上、ただいま!」
俺とドラコは、ルシウスとナルシッサとハグしてもらった。
「ああ、お帰り。問題はなかったか?」「お帰りなさい。体調を崩さなかった?ホグワーツは寒かったでしょう?」
ルシウスとナルシッサは笑顔で尋ねた。
「はい、大丈夫でした」
「おい、問題はあっただろう。父上、ポッター贔屓が凄いんです」
「その話は後で聞こうか。そろそろ屋敷に戻ろう。少し慌ただしくなるからな」
ルシウスは、ドラコの話をやんわりと制すと、そう提案した。
ドラコも俺も、手紙では書き切れなかった学校生活を両親に早く話したくて、屋敷に戻るまで始終落ち着かなかった。
クリスマスがやってきた。
ベットの横にはプレゼントの箱が積まれていた。両親以外のプレゼントには全て手紙が着いていた。
ノットからは魔法のオルゴールが、クラッブとゴイルからはお菓子を送られた。
オルゴールは、魔法で音符が飛び出してくるし、色々な曲が聴ける素晴らしい物だった。お菓子は、特に珍しい物ではなかったが、あの二人が食べるのを我慢して送ってきたと思うと嬉しかった。
他にも親しい人やスリザリンの先輩から送られてきていた。プレゼントを整理しているとハーマイオニーから来たプレゼントを見つけた。
手紙は急いで机の引き出しに隠した。彼女から送られてきているのがバレたら家族会議になってしまう。
プレゼントは本だった。ハーマイオニーらしかった。
両親のプレゼントはどれも素晴らしい物だった。
珍しい生物が載っている『魔法生物図鑑』、小さいものならたくさん入れることが出来る魔法の小袋、香りのいい木で出来た新しいチェス版、エメラルド色の手触りの良いマフラー……。その他色々な物があった。
部屋の扉がノックされる。
俺の許可を貰い、両親が入ってくる。
「メリークリスマス、セルス。プレゼントは気に入ったか?」
「メリークリスマス、セルス。プレゼントはルシウスと選んだのよ」
「メリークリスマス、父上、母上。ええ、気に入りました。どれも素晴らしいものですから」
二人は顔を見合わせ、微笑み合った。それを見ていると俺も嬉しくなった。
「そうだ。そろそろパーティーの身支度をしなさい。今日始めて我が家にやってくる方々にお前達を紹介しなければならないからな」
「はい、わかりました」
俺の返事に頷いたルシウスはナルシッサを引き連れて部屋を出て行った。
挨拶か……。パーティーは好きでも挨拶回りは嫌いなんだよな。
正装に着替えるために衣装部屋に向かう。
衣装部屋には既にドラコがいた。
「メリークリスマス。俺のプレゼントは気に入ったか?」
「メリークリスマス。うん、本当に気に入ったよ!来年のシーカーは確実に僕だな」
ドラコにはスニッチを贈った。勿論本物じゃないので、動きは少し遅いが。
「僕からのプレゼント。直接渡したいなと思って」
小包を渡してくる。
「開けていいか?」
「勿論さ」
中身はクィディッチの戦略について書かれている本だった。
「考えてることは同じだったようだな」
静かに笑い合った。
「皆様、今日は我が家のクリスマスパーティーに来てくださり、誠にありがとうございます。どうぞ、楽しんでいってください。では、メリークリスマス」
ルシウスの挨拶でパーティーが始まる。
まず始めは挨拶回りだ。
顔見知りであればすぐに終わるが、始めての人であれば自己紹介とあからさまなおべっかを聞かなくてはならない。
大体挨拶回りが終わった頃にはヘトヘトになっていた。
こういうところではドラコは頼もしく、未だにピンピンしており、挨拶回りをしていた。マルフォイ家はパーティー慣れするDNAでもあるのだろうか。
「セルス、お疲れさま。未だに慣れないのね」「メリークリスマス、セルス。昔からそうよね、ドラコは平気なのに」
部屋の隅で休んでいた俺に双子の姉妹が話しかけてくる。ダフネとアステリアだ。
彼女達はグリーングラスという純血の家の娘なので、会うことが多く、昔からの知り合いだ。
「合わないんだよな、こういうの。あれ、そういえば話すの久しぶりじゃないか?」
「そうよ!同じ寮なのにまったく喋ってないわ」
「セルスのことあまり見かけないからね。見かけても男の子たちで固まってるし」
時間がないから談話室で過ごすことが少ないからな。でも、彼女たちは媚びてこないレアな存在であるし、話も面白いから交流すべきなんだよな。結局時間の問題になるけど。
「悪いな。結構いそがしいんだ」
「ふーん。あっ、そうだわ!勉強会を開きましょう!」
「は?」
「姉様それはナイス、アイディアよ!セルスは頭がいいし!ドラコも入れて勉強会をしましょう」
「ちょっと待て!俺は忙しいって言っただろ!?」
おいおい、本当に時間が無くなってしまうんだ。
「忙しいのだって勉強しているからでしょう?みんなでやった方がはかどるわ」
「じゃあ、決定ね。それじゃあ、毎週金曜日の放課後にやりましょう!約束破ったらあなたの父上に言いつけるからね!」
二人は唖然とする俺を放置して、ドラコの方に走っていった。
最後の望みをドラコに掛けたが、ドラコは頷き、二人が飛び跳ねて喜んでしまった。
どの予定を削ればいいのか……。
勉強会にクラッブとゴイルを呼べば中止になるかもしれないと思いながら、俺は予定の優先順位を考え始めた。
こうして
名残惜しい思いをしながら、俺たちはホグワーツ特急に乗り、再びホグワーツへと帰った。
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面白い小説を書けるように、これからも頑張ります!
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