「ぼく、あおいちゃんすき!けっこんしよ!!」
◯がつ☓にちきんようび。てんきくもり。きょうは、ほいくえんのおともだちのあおいちゃんに、ぷろぽーずをすました。
あおいちゃんとは、いつもいっしょにおままごとをすています。きっと、あおいちゃんもぼくのことがすきなはず!!
「や!!だってけんたくんのほうがやさしいもん!あおい、けんたくんとけっこんするの!!」
◯がつ△にちどようび。てんきはれ。おかしいな、きょうははれてるのに、あめがふってるぞ。
***
なぁ
帰りの通学路で、俺は同じ6年3組のクラスメイトの芽衣ちゃんに一世一代の告白をした。
芽衣ちゃんとは同じ「いきものがかり」で、一緒にウサギの世話をした仲である。芽衣ちゃんは、笑うとかわいいから好きだ。
「正直、牧野君はタイプじゃないかな。ごめんね」
後で知った事だが、芽衣ちゃんはサッカースクールに通ってる佐藤が好きだったらしい。理由は佐藤がフォワードでカッコいいからだとか。
何が快速ストライカーだ。何がハットトリックだ。大体サッカー選手なんて、グラビアアイドルをオフサイドして、夜のハットトリックを決める事しか考えていない様な連中じゃないか。
玉をゴールにシュートしているのか、棒をグラビアアイドルにシュートしているのか、分かったもんじゃない。童貞を守り続けるゴールキーパー、牧野選手の気持ちも考えろよ糞が。
とにかく俺はサッカーが嫌いだ。そもそも男ならバドミントンで勝負をするべきだろう。俺は枕を濡らして眠りについた。
***
「ねぇ
中学校の校舎裏で、俺はバドミントン部の後輩の結衣ちゃんに一世一代の告白をした。
結衣ちゃんは俺の事を「先輩」と呼んで慕ってくれている。一緒に居残り練習をして、スマッシュを教えた事もあるのだ。
「ごめんなさい牧野先輩、私彼氏がいるの…」
後で知った事だが、結衣ちゃんは野球部エースの岡村と、こっそり付き合っていたらしい。岡村の野球に対する
何が怪物スラッガーだ。何がホームランだ。大体野球選手なんて、女子アナウンサーを盗塁して、夜のホームランを打つ事しか考えていない様な連中じゃないか。
昼の打率は3割の癖に夜の打率は10割かよ。随分、腰のバットを振るのが上手いんでしょうね。こちとら全打席ファールの童貞スラッガーじゃ糞が。
とにかく俺は野球が嫌いだ。そもそも男ならバドミントンで勝負をするべきだろう。俺は雨の中、傘もささずに帰路についた。
***
「
高校の校舎の屋上で、俺は軽音部の梨花ちゃんに一世一代のry。
梨花ちゃんと俺は同じ文化祭実行委員だ。文化祭を成功させるため、これまで二人三脚で頑張って来た。この前なんか一緒に買い出しに行って、帰りにクレープだって食べたのだ。
「ごめん牧野っち、あーし男なら間に合ってっから」
後で知った事だが、梨花ちゃんは歌の上手い男が好きだったらしい。軽音部で男を漁っては彼氏を取っ替え引っ替えし、影ではマイクの女王などと囁かれていた。
何がファンキーだ。何がモンキーだ。大体ミュージシャンなんて、口では純愛ラブソングを
お前らは何股かければ気が済むんだ。八股か、ヤマタノオロチか。俺の草薙剣は未だに納刀状態なのに、お前らと来たら一体全体どういうつもりなんだ。
とにかく俺はミュージシャンが嫌いだ。そもそも男ならバドミントンでry。俺は冷たい潮風を浴びながら、海に向かって叫んだ。バカヤローと。
***
さっきから、何かがおかしい。何故か過去の事ばかりを思い出す。そもそも俺は何をしていたのだろうか。
そうだ……。俺はバイトの面接を受けに行って、そこで砲撃に巻き込まれたんだ。つまりこれは、俺の人生の走馬灯なのだろう。俺の人生って…俺の人生って……。
「フラれて…ばっかじゃん……」
頬を伝う雫と共に意識が覚醒する。はじめに目に飛び込んで来たのは、瓦礫の山と化したフロアだった。
よく見ると、先程の金髪の青年が瓦礫に紛れて気絶している。青年の服は至る所が破れており、スボンに至っては、お尻の部分が破けて半ケツの状態だ。
この悲惨な光景が、肩パルト砲とやらの凄まじい威力を物語っている。
正直、生きているのが不思議な状況だが、自然と身体に痛みは少ない。むしろ走馬灯のせいで心の方が痛いくらいだ。
「対象の殲滅を完了ってな。兄ちゃん達、覚えときな。ダンベルサイドレイズはダンベルスペースでするもんだぜ」
野太い男の声が聞こえてくる。倒れたまま、横目で声のした方を確認すると、そこには俺達を砲撃した男がいた。この男、やはり凄まじい風貌だ。
スキンヘッドの頭に、男らしい顔つき。額に黒いサングラスを掛け、上裸の上から袖の破れた迷彩柄の革ジャン羽織るという奇抜な格好。背中には巨大なバズーカ砲を担いでいる。
そして何より、服からはみ出した尋常ではない筋肉。肥大した肩はメロン。胸はケツ。広がり過ぎた背中は戦闘機。割れ過ぎた腹筋は6LDK。太過ぎる腕と脚は丸太の如しだ。
「って聞こえちゃいえねぇか。とりあえずお前らはネオサイドレイズの刑だ。安心しろ、最高の目覚めをプレゼントしてやるぜ」
スキンヘッドの男は不穏な事を呟くと、気絶している青年を軽々と肩に担ぎ上げ、こっちに向かって歩いてくる。
「うわぁぁぁ―――ッ!!!」
俺は飛び起きると、大慌てで逃げ出した。ネオサイドレイズが何なのかは分からないが、この男に捕まったら酷い目に合う事だけは分かる。
「なんだよ、起きてやがったのか。悪いがスクワット警察からは逃げられねぇぜ」
スキンヘッドの男は担いでいた青年を放り捨てると、バズーカ砲を構え、砲身をこちら向けた。
「ちょ、待っ――」
俺は全身全霊で身を投げ出した。その瞬間、空気が爆ぜたかの様な轟音と共に、俺の身体に衝撃が走る。
「はいばッ!!」
俺の身体は宙を舞う。偉大なるライト兄弟は言った。「飛びたいという欲望は、空という無限の高速道路を自由に飛翔する鳥たちを、うらやましげに見ていた私たちの先祖達によって、受け継がれてきたものなのだ」と。
俺は思った。「モテという欲望は、女子大生という無限の可能性を自由に食い散らかすテニサーの連中共を、うらやましげに見ていたバドミントンサークルの先輩達によって、受け継がれてきたものなのだ」と。
とにもかくにも俺の身体は宙を舞い、そのまま鳥の様に自由な空へと羽ばたく事など当然無く、部屋の壁に衝突して、夏の終わりのセミのように地面に落下した。
「このセリフも2回目だな兄ちゃん。動くな、手を上げろ。動くと撃つぜ」
仰向けになった視界に、スキンヘッドの悪魔が映り込む。もう逃げる事は出来ない。完全に追い詰められてしまった。
「手を上げないネ。それじゃ、発射で」
手を上げてもさっき撃ったじゃん。そんなツッコミが頭を過ったその瞬間――
This ain't a song for the broken-hearted ♫
男の胸ポケッスマホトから着信音が鳴った。
「俺だ。わざわざ電話で何の用だ、エミ。こっちは今、絶賛取り込み中だ」
男はバズーカを構えたまま電話に出る。スピーカーからは女の声が聞こえて来る。
『無線で呼びかけても応答が無いので、電話で伝えますわね。ごめんなさい、犯人の人数と特徴を伝え忘れていた事を思い出しましたの。犯人は一人、特徴は大きめのピアスを着けた金髪の男ですわ』
「あっ、無線機のスイッチを押し間違えてたわ。ん?、ならこのモジャモジャはどこのどいつだ?少なくとも、うちの会員じゃねーだろ」
『貴方の事ですから、どうせ忘れてると思ってましたけど、今日はアルバイトの面接の日ですわよ。その子が応募してきた牧野圭介君ですわ。面接の準備は出来ていますので、さっさと応接室まで連れてきて下さいまし』
女は要件を簡潔に伝えると、あっさりと電話を切った。言いようのない沈黙が空間を支配する。しばらくして、若干気まずそうな顔と共に、男が口を開いた。
「あー…悪かったな兄ちゃん。どうやら人違いだったみてぇだ。まぁそんじゃ、これから面接すっか」
「するわけねぇだろうがぁぁぁ!!!」
俺は心の底から怒りの叫び声を上げた。心が叫びたがっていた。
「あ、何でだよ?兄ちゃん、うちのアルバイト志望だろ」
筋条は、心の底から意味が分からないといった顔をしている。
「さっさまで自分が何をしていたのか考えろよ!!勘違いで殺されかけたわ!だいたいどんな方法でマナー違反の注意してんだよ!いきなりヘリから攻撃とか、おかしいだろーが!!」
「まぁまぁ落ち着けよ兄ちゃん、結果的に生きてたんだからいいじゃねぇか。それに、あの手の輩は暴力で分からせるのが一番手っ取り早いんだよ」
筋条は気怠そうに返事をしてくる。その様子に反省の色は微塵も見られない。
「良い訳あるかこの暴力ゴリラ!!マナー違反なら口頭で注意すればいいだけだろーが!!」
「ゴリラ?そんなに褒めなよ。だいたい話し合いなんてそんな野蛮な方法、兄ちゃんよく思いつくな。俺には穏便な暴力しか考えられねぇぜ」
男は照れくさそうな仕草を見せた後、耳糞をほじりながら返事をする。
「褒めてねぇよ馬鹿!!つーか穏便な暴力ってなんだよ!穏便って言葉、一回辞書で調べてこいや!!」
男は胸ポケットからスマホを取り出すと、何やら画面に文字を入力し始めた。どうやら本当に穏便という言葉の意味を調べているらしい。
「ほう、穏便ってのは、角が立たず穏やかである様を言うらしいな。ならやっぱり俺の行動は穏便だったじゃねぇか。この穏やかな光景を見ろよ。立ってた角なら、全部綺麗に削れてるぜ」
男は瓦礫の山と化したフロアを見渡しながら満足気に言った。己のジムを自らの手で破壊したにも関わらず、その表情はとても清々しい。
「これのどこが穏やかな光景だ!!削れるどころか全部粉々だろーが!あーもう付き合いきれるかぁぁぁ!!!」
俺は再び心の底から怒りの叫び声を上げた。心が叫びたがっていた。
「兄ちゃん、さっきから中々のツッコミじゃねぇか、悪くねぇ。やっぱり面接受けてみろよ」
男は何かに関心した様子を見せると、再度面接への勧誘をしてくる。
「い や で す !こんなイカレたジム、こっちから願い下げですから。面接は結構です、今日はありがとうございました!」
俺は全く心のこもっていない感謝を告げると、明確に拒絶の意志を示し、踵を返すように背を向けた。
「おいおい待てよ兄ちゃん、つーか本当にそんな格好で帰るつもりか?」
男は珍妙な物でも見たかの様な表情で問いかける。
「はぁ?何言って……」
俺は自分の身体を見回した。そこで始めて、自分がいかに珍妙…というか、チン妙な格好をしている事に気がついた。
「全裸じゃねぇかぁぁぁ!!!」
俺は全裸だった。紛うことなき裸一貫である。
「服なら爆発で消し飛んじまったぜ」
男はサムズアップのジェスチャー共に、にこやかに言った。
「何で綺麗に服だけ消し飛んでんだ!おかしいだろ!だいたい爆発に巻き込まれても、下半身は露出されないのがフィクションのお約束だろーが!!」
「フィクションだかハクションだか知らねーが、このジムにお約束なんて通じる訳ねーだろ、露出パーマ。まぁ、そんなにその格好で帰りたいなら俺は止めねぇぜ。じゃあな露出パーマ、風邪引くなよ」
男は後ろ手で右手をヒラヒラ振って別れを告げてきた。
「誰が露出パーマじゃ!おい待て、服よこせよ!お願い、待ってぇぇぇ!!」
「お前さん、面接受けねぇんだろ?ならもう他人じゃねぇか。生憎、うちの服は他人に貸せる程安くは無いな」
男の背中はどんどん遠ざかる。本当に全裸のまま俺を帰す気だ。俺は叫ぶしかなかった。
「受けるから!面接受けるから!服ぅぅぅ!!」
飛行機のような背中を作ることは難しいが、不可能ではない。(ライト・ウェイト兄弟)