スキンヘッドの男に連れられて応接室に入ると、そこには金髪の美女が待っていた。
「待たせたなエミ。つーか、俺が面接の事を忘れてそうって思うならよ、もう一度教えてくれれば良かったじゃねぇか」
「
「うるせぇな、今日は調子が良かったんだよ。俺のトレーニングボリュームに
「やれやれ、相変わらずの脳筋具合で安心しましたわ」
部屋に入るや否や、スキンヘッドの男とエミと呼ばれた美女の軽口の応酬が始まった。どうやらこの2人は随分と気の置けない関係らしい。
それにしてもこのエミさんという女性、とてつもない美人だ。肩まで伸ばした
特に目を引くのはその体型だろう。女性にしては明らかに太い腕と脚に、筋肉質で引き締まった胴体。女性らしい丸みとしなやかさを兼ね備えたシルエット。
一見相反する要素が見事に調和し、芸術的な美しさを醸し出している。まるで御伽噺の
「貴方が牧野さんですわね。先程は本当に申し訳ありません。うちの脳筋が貴方を誤射してしまった様で…。お怪我はありませんか?」
「ふぁっふぁい!大丈夫です!」
エミさんが俺に話しかけてくる。俺は美人に話しかけられた緊張で、上擦った声を出してしまった。
「ふふっ。貴方、中々面白そうな方ですわね。それでは早速、面接を始めさせていただきますわ。SSジムのトレーナー兼、スクワット警察オペレーターの
エミリーさんは上品に笑うと、面接の開始を宣言する。名前からしてヨーロッパ系のハーフなのだろうか。とても気になる事柄だ。
「俺はSSジム会長兼、スクワット警察長官の
スキンヘッドゴリラは、随分と偉い役職のゴリラだったようだ。ぶっちゃけ、俺からすればどうでもいい事項だ。
兎にも角にも採用面接が始まった。いや、始まってしまったというべきか。こんなにやる気のでない面接は始めてだ。
こんな危険なジムには絶対に採用されたくない。まさか、落ちるために面接を受ける日が来るとは。
「牧野圭介さんでしたわね。まずは、自己紹介をお願いしますわ」
早速エミリーさんから質問が飛んでくる。声まで美しいとか、もはや天使なのだろうか。
だがしかし、このバイトには絶対に採用されたくない。エミリーさんには悪いが、テキトーな返事をしてさっさっと不採用になってしまおう。
「はじめまして。牧野圭介と申します。本日は面接のお時間をいただき、ありがとうございます。現在、駒泉大学学部2年生で、大学では心理学を専攻しております。大学入学から1年間、牛丼チェーンでのアルバイトをしていた経験があり、丁寧で迅速な接客に定評がありました。こちらのアルバイトでも、丁寧で迅速な仕事を心掛けてまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願い致します」
気がついたら、事前に考えておいた面接対策用の自己紹介が口から出ていた。
男という物は美人の前ではカッコつけてしまう生き物なのだ。紀元前よりも前の遥か昔から変わらない、不変の真理である。
「丁寧な自己紹介をありがとうございますわ。他社でのアルバイト経験がある方ですと、私共としても心強いですわ」
「どっかで聞いたことのある、取り繕った自己紹介だな。俺はもっとムキ出しのお前さんが知りたかったな」
エミリーさんが自己紹介を褒めてくれた。嬉しい。横のゴリラがしょーもないコメントを付けてきたが、努めて無視をする。
「次は志望動機を教えてほしいですわ」
エミリーさんから次の質問が飛んでくる。これも想定内の質問だが、今回は落ちるための面接だ。テキトーな返事をしてさっさっと不採用になってしまおう。
「学生のうちに多くの事を経験をしたいと考えているからです。こちらのジムは、様々な世代のお客様が来店されるため、臨機応変な顧客対応が学べると思いました。また、健康増進のためのトレーニングにも強い関心があります。精一杯頑張りますので宜しくお願い致します」
思わず事前に考えておいた面接対策用の志望動機が口から出てしまった。
男という物は美人には良い印象を持たれたい生き物なのだ。紀元前よりも前の遥か昔から変わらない、不変の真理である。
「向上心を感じられるとても良い動機ですわ。私共も、貴方の様に日々向上心を持って仕事に励みたい物ですわね」
「顧客対応ねぇ。お前さんが本当にうちの顧客とムキ合えるかどうか、
エミリーさんが志望動機を褒めてくれた。すごく嬉しい。横のゴリラがまたしょーもないコメントを付けてきたが、努めて無視をする。
「次は貴方の短所を教えて欲しいですわ」
エミリーさんから更に質問が飛んでくる。またしても想定内の質問だが、今回は落ちるための面接だ。テキトーな返事をしてry。
「私の短所は計画性がないところです。計画を立てて行動することが苦手で、例えば、大学のレポート提出期日が1週間後に迫っていても、直前まで手をつけず、そのせいで単位を落としそうになったりして、苦労した事もありました。今ではその時の反省を活かして、自分なりの期日を設けて行動する事を心掛けています。この経験を活かして、仕事を行う際も期日を意識して行動していきたいと思います」
またしても、事前に考えておいた面接対策用の自分の短所が口から出てしまった。
男という物は美人にデキる男だと思われたい生き物なのだ。紀元前よりも前の遥か昔からry。
「自分の短所はそこそこ分かってる様だな。まぁ、人にはムキ不ムキがあるか――」
「お前さっきからムキムキムキムキうるせぇよ!!それっぽいコメントをするふりをして、『ムキ』ってワードを言いたいだけじゃねーか!!」
俺は叫んだ。2度までなら無視出来たが、3度目は無理だった。
「えっ俺がムキムキ?」
筋条は上着を脱ぎ捨てサイドチェストのポーズを取り、これ見よがしに見せつけてくる。
「やかましいわ!!」
筋条たしかにムキムキだったが、この場面ではすこぶる鬱陶しい。
「なぁエミ、茶番はもういいだろ。ここからは俺に任せな」
「ふふ、確かに彼の本領はこれでは分かりませんわね。後は任せましたわ、厚さん」
ここからは筋条が面接官になるようだ。正直全くやる気が出ない。何を聞かれるか分からないが、テキトーに返事をしてしまおう。
「えー、今から面接官が変わってやる気の無くなっている貴方にとある映像を見せます。映像の途中で投げかけられる質問に、適切に答えて下さい。なお、やる気の無い返答をした場合、コイツが次の面接になりまーす」
筋条は間延びした声で面接内容を伝えると、背中に担いでいたバズーカ砲を構えて砲身こちらに向けてくる。
「心を読むなよ!!やりますから!ちゃんとやりますから、それしまって!!」
俺は両手を上げ、慌てて答えた。もう砲撃は勘弁だ。俺の態度はそんなに分かりやすかったのだろうか。
「説明も終わったので初めまーす。VTR、チェケラ!」
チェケラなんてきょうび聞かないな。そんな思いも束の間、モニターに映像が流れ始めた。
俺のトレーニングボリュームに