3月、そう聞くともう春になったような気がしてくるがまだまだ冬の寒さは健在な今日この頃
私―葛城リーリヤは授業を終え、事務所の教室に向かっていた。
うぅっ…教室は暖房が聞いていたけど、流石に廊下に出ると寒い…
指先の温度が下がっていくのを感じながら、私は教室に向かう足を速めるのであった。
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「失礼します。」ガチャ
「おや、授業お疲れさまでした。」
「ふぅ…暖房が効いててあったかいです…」
「教室ではついていないんですか?」
「いえ、廊下が寒くって…」
「なるほど。とはいえ葛城さんの地元よりは暖かいのでは?」
「確かにスウェーデンの方が寒いですけど、その分暖かくする方法も向こうの方が良い物なので。
――あれ?センパイ、ここにこんな人形って置いてありましたっけ?」
「あぁ、それは今朝置いたんですよ。今日は3月3日、ひな祭りですからね。」
「ひな祭り…って何ですか?」
「日本の伝統行事です。詳しい説明は難しいので簡単に言うと、女の子の健やかな成長と幸せを願う行事ですね。ひな祭りではその人形――お内裏様とお雛様を飾るんです。」
「なるほど…」
「本来であれば他にも色々と飾るものはあるのですが、流石にそこまでは準備ができませんでした。
――なのでこちらをどうぞ。」
「えっと、これは?」
「甘酒とひなあられです。ひな祭りの日はこれを食べるのが定番なんですよ。」
「お、お酒ですか!?
それって飲んでも大丈夫なんですか…?」
「安心してください。確かに甘酒にも微量のアルコールが入っていることはありますが、滅多なことがないかぎり大丈夫ですよ。」
「そうなんですね…」ホッ…
「ではいただきますね。
わっ、ひなあられってカラフルなんですね。」
「えぇ。ピンク・緑・黄・白がそれぞれ春・夏・秋・冬を表しているそうです。」
「へぇ~…あっ、おいしいです!」
「おいしさのあまりつい食べ過ぎてしまわないように。と言っても葛城さんであれば心配はいらないでしょうが。」
「セ、センパイ…!//」
「俺も休憩ついでにいただくことにしましょう。」
「あ、はいっ!」
こうして私たちは美味しいお菓子を食べながら談笑するのだった。
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「…これ以上は駄目ですよ、葛城さん。」
「…どうしてですか?
私、もう欲しくて堪らないんです…」
「それは――
貴女がどう見ても酔っているからです。」
「えぇ~?
そんなことないれすよぉ~//」
「呂律がきちんと回っていませんよ。
それに顔も赤くなっています。」
「大丈夫れすから~//
おかわりくださ~い!」
「困ったな、葛城さんがここまでお酒に弱かったとは…
甘酒を渡したのは迂闊だった…いや、何か問題が起こる前に知れてよかったと前向きに考えよう…」
「ん~?」
「ともかく、今紫雲さんに連絡を入れたので彼女が迎えに来るまで大人しくしてください。」
「は~い//」
「いい返事です。ふぅ、これでなんとかなりそうか…」
「ところで~、この部屋ってなんだか暑くないですか?」
「いえ、恐らく葛城さんがアルコールを摂取したからだと思われますが…
ちょっと待ってください、何をするつもりですか?」
「何って…上着を脱ぐだけですよ?」
「葛城さん、それだけはアイドルとして駄目です。
というかアイドル以前にうら若き乙女として駄目です。」
「でも暑いですし…」
「今暖房を切ります。なのでその服を上にあげようとする手を止めてください。」
「もう我慢できません!脱ぎます!」
「くそっ、どうしてこういう時だけ思い切りがいいんですか!
こうなったら力づくで止めるしか…!」
「止めないでください!もうこうするしかないんです!」
「駄目です!プロデューサーとして看過できません!」
「ぐぬぬ…」
「頼む、早く来てくれ紫雲さん…!」
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「お待たせ~。いやぁ~、ちょっと友達に捕まっちゃってさ~。
プロデューサーさん、遅れてごめんね~?」
「いえ…こちらこそ…急に連絡してしまってすみませんでした…」
「…えっと、どうしてそんなにぐったりしてんの?」
「葛城さんのアイドル生命を守っていました。」
「ホントに何があったの…?
リーリヤは寝てるし…」
「恐らく疲れてしまったのでしょう。
取りあえず女子寮までは俺が運ぶのでそこからはお任せしてもいいですか?」
「ん、オッケー♪
にしてもまさか甘酒で酔うなんてね~。
メッセージが送られてきたときは半信半疑だったけど、この顔を見たら信じるしかないね~…」
「紫雲さんも気を付けてください。酔っている時の葛城さんは普段の3倍はわがままですので。」
「へぇ~、ちょっと見てみたいかも。
今度飲ませてみようかな…?」
「やめた方がいいです、本当に。」
「あはは、目が笑ってないや…」
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「う、うぅ~ん…?」
「あ、リーリヤ起きた。
大丈夫?意識はしっかりしてる?」
「あれ、清夏ちゃん…?
私は確か…」
「覚えてない?リーリヤ、甘酒飲んで酔っちゃったらしいよ?
で、私とプロデューサーさんが協力してここまで運んできたってわけ。」
「……あっ」
「おっ、思い出し―「あぁぁぁぁ~~~~~~///!!!」うわっ、ビックリしたぁ…」
「あんなことしちゃうなんて…うぅっ…」
「ど、どったのリーリヤ…?」
「清夏ちゃん…私、もうお嫁にいけないよ…」
「えぇっ!?
ねぇ!ホントに何があったの!?」
この後、清夏ちゃんに物凄く宥めらたのちセンパイに謝り倒した私なのでした…