真剣で狙撃手に恋しなさい!   作:神喰いの王

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第四射目

 

「ったくやっと着いたぜ・・・」

 

あの風間ファミリーとの出会いから約一ヶ月後、クロムとマルギッテは日本の基地にきていた。

その基地の滑走路に着陸した輸送機の一機から降りながらクロムは愚痴をこぼした。

 

「愚痴を言うのは止めなさい。我々はクリスお嬢様の陰ながら見守ると言う重要な任務を授かっているのですよ」

 

そんなだらしのないクロムにマルギッテはこれからの任務に気合を入れる。

 

「ンな事言ったってよォ。ここは平和な日本だぜ?幾らなんでもお嬢に万が一がある訳でもないしな~」

 

そんなマルギッテを見ながらクロムは疲れたように肩を落とす。

 

「だからこそです。中将殿もお嬢様への干渉も有事の時以外はなるべく控えろと仰られていた。まだ若い我々に学校生活を楽しむ事も重要だと・・・」

 

「・・・・っまいいけどね」

 

マルギッテの言葉にクロムは苦笑しながら肩をすくめる。

 

「それじゃあ、さっさとここの基地長に挨拶して学校に行きますか、相棒?」

 

おどけた様に笑いかけるクロムにマルギッテも穏やかに笑いながら、

 

「ええ、行きましょう。相棒」

 

そう言って二人は肩を並べて基地内に入っていった。

 

 

 

因みに基地長へ挨拶しに行く時、

 

「所で、流石に学生服は着なくていいよな?」

 

「安心なさい。軍からの寄付金により私たち二人は軍服での登校が許可されています」

 

「そいつは良かったぜ。この年で学生服は勘弁だ。・・・お前の学生服姿は見たかったがな?」

 

「からかうのは止めなさい!」

 

ドゴスッ!

 

「グホッ!?」

 

このような会話がされていたのが関係ない話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~川神学園~

 

クロムとマルギッテは基地長への挨拶を終え、川神学園に向かい2-S担任の宇佐美巨人に案内されながら廊下を案内されていた。

 

「マルギッテ分かってると思うが川神百代とは戦うなよ?」

 

「分かっています。確かに戦ってみたくはありますが上からの命令ですし、何より貴方にこれ以上説教を言われたくはありません・・・」

 

「うん。素直でよろしい(頭ナデナデ)」

 

「ッ!?あ、頭を撫でるのは止めなさい!!?」

 

「あ~お前さん等、それは今だ一人身のオジサンに対する当てつけか?それとも見せつけてんのか?」

 

クロムが優しく頭を撫でるのをマルギッテは顔を真っ赤にしてその手を払いのける。そんな二人の様子を巨人はやってられないと言った感じに言った。

 

「ん?なんだ、Teacher宇佐美。羨ましいのか?」

 

「そうじゃねーよ。と言うか何?お前さん等二人は付き合ってる訳?」

 

「なっ!?いきなり何を言うのですか!そんな訳は無いでしょう、訂正しなさい!!」

 

「お、おおう。そうなのか?そいつは済まんな・・・」

 

付き合う、と言う単語にマルギッテは顔を真っ赤にして必死の形相で巨人に詰め寄り、巨人はあまりのマルギッテの形相に巨人は顔を引き攣りながら訂正した。

 

「おいおい。そこまで否定しなくていいだろ~?俺とお前の仲じゃん」

 

「・・・だから、気安く肩を組むんじゃありません!!ハァッ!」

 

ドゴスッ!!!

 

「グボッ!?み、鳩尾はダメだろ・・・」

 

自身に肩に腕を回すクロムにマルギッテはその手を払いのけ、鳩尾に拳を叩きこんだ。その時、彼女の頬が若干赤みを帯びていたのは気のせいだろうか・・・。

 

「やっぱりお前ら付き「(ギロッ!!)」あ、やっぱ何でもないです。フゥ~ほら、ここがお前さん等の教室だ」

 

巨人はそんな二人のやり取りにやっぱり付き合ってんじゃないかと言おうとしたがマルギッテの眼光にあっさり負けて2-Sの教室の前に立つ。

 

「そんじゃあ、オジサンが先に入るから呼んだら来いよ」

 

「わかりました」

 

「オーライ」

 

そう言って巨人は教室に入っていった。

 

「・・・マルギッテ。気付いているか?」

 

「ええ、この教室の中にかなりの手練が数人いますね・・・」

 

「その中で一人、どうにも見知ったことのある気配がすんだが・・・」

 

そう言いながらクロムは教室の中の気配に心当たりがあるがそれが何処の誰の気配か思いだそうとしている時、

 

「オジサンも終いにゃ怒るぞ。・・・・まあいい入れ」

 

巨人が入るように施しクロムとマルギッテは教室に入る。

 

「マルギッテ・エーベルバッハです」

 

「クロム・R・バレッティアだ。」

 

「どうやら、カタギじゃないみたいだな」

 

軍服を着ている二人に禿頭のロリコンこと、井上準が呆れながらツッコミを入れた。

 

「この二人はドイツからの留学生でな。F組のほら、この間来た留学生・・・・そうだクリス。彼女の関係者でもあるらしい」

 

「よろしくお願いする」

 

「よろしく頼むぜ」

 

「よ~し質問がある奴は挙手」

 

巨人が言うや否やかなりの人数が挙手する。

 

「日本語は?」

 

「私とバレッティア共々全て完璧です」

 

「はいは~い!!その服は許可貰ったの?」

 

「軍から川神学園へ多額の寄付金が出ている。よって制服は規定の物で無くとも構わない。いつでも有事に備えるためと理解しなさい」

 

「まあ、流石に二十歳過ぎて学生服は遠慮したくてね(ボソッ)」

 

「なるほど制服問題は私と同じ解決方法かぁ。・・・・マルギッテさんとクロムさんの成績はどうなんですか?」

 

「二人とも抜群だぞ。このクラスでおそらくベスト3とベスト4に入れる。なおクロムとマルギッテの加入により滝川と中村はSクラス落ち」

 

Sクラス落ちと聞いて教室内が騒然となった。Sクラス落ちとはSクラスは学年上位50番以内に入らなければ即座にSクラスから外されるという決まりである。

 

「お二方は素晴らしい能力の持ち主なのですね。私は葵冬馬」

 

そう言いながら二人の前に歩み寄って来たのは川神学園でエレガンテ・クアットロの一人に数えられている褐色肌のメガネ美男子、葵冬馬。

 

「クロムさんとマルギッテさんの大切なものは何ですか?」

 

「自分だ。当然のこと」

 

「俺はフリードリヒ一家だな。色々と恩義があるし・・・」

 

それにマルギッテも入ってるけど・・・と心の中で付け足すが言わぬがいいと判断し、即答で言い切る相棒にやれやれと肩をすくめながら言うクロム。

 

「尊敬する人は?」

 

「自分だ。当然のこと」

 

「フランク・フリードリヒ中将だな。あ、因みに親バカモードが入って無い状態だな」

 

「貴方達の主張は?」

 

「自分は正しい。自分こそは絶対正義」

 

「特になし。あえて言うなら勝てば正義」

 

「素晴らしいですね。お二人ともまさにSクラスに相応しい・・・それに」

 

「おおっと!悪いがあまり人の女に色目を使わないでくれないか?」

 

そういってマルギッテに近寄ろうとする冬馬にクロムが割って入った。が、

 

ドゴッ!?

 

「ぐおっ!!?~~~~ッ!!」

 

「だ、誰が貴方の女ですか!!」

 

マルギッテに拳骨を落とされクロムは後頭部を押さえながら悶えた。

 

「おやおや、大丈夫ですか?」

 

「お、おう・・・って顔が近いぞ!?」

 

心配そうに顔を覗き込んでくる冬馬にクロムは返事をするがあまりの顔の近さに驚いて飛びのく。

 

「その・・・とうとうツッコムけど本職は軍人?」

 

「ああ。だが学校では学生としての規則は守る」

 

「そこん所は上にかなり厳しく言われてるからな」

 

「何のために学校に通うのじゃ?」

 

着物姿の少女、不死川心が至極当然な質問をした。

 

「日本を学ぶため。そう言う事にしておきなさい」

 

「ま、詳しくは聞かないでくれや」

 

娘が心配だから、なんて理由できたら流石に恥ずかしいからなとクロムは内心で苦笑した。

 

「・・・・軍人系でキャラかぶってるぞおい」

 

「私は、元傭兵ってだけです!」

 

「このような平和な場所で会うとはな“女王蜂”」

 

「っつか、マジでメイドやってたんだなオイ」

 

コソコソと話している準とあずみに、というよりあずみに視線を向けながら二人は懐かしい顔に声をかけた。

 

「中東以来ですか。運命のいたずらですね”猟犬”、“鷹の目”。それとも“赤の双璧”と呼んだ方がいいですか?」

 

「ほう、あずみの戦場での異名を知っているとは」

 

“女王蜂”という言葉に金の学生服に額にバッテン傷のある九鬼英雄が関心の声をあげた。

 

「面白いのじゃ、どちらが強いのか戦ってみぃ」

 

「うむ。久しぶりに小太刀の舞がみたい」

 

「了解です。英雄様ーーーー!!!・・・つーことだ猟犬、鷹の目。どっちでもいいから相手しな」

 

「いいでしょう、私が相手になります。相手にとって不足はありません。構いませんね、バレッティア?」

 

「おう、いいぜ。川神百代以外で今のお前が負けるはずねぇしな。何より女王蜂を相手にするのは面倒臭い」

 

既にやる気満々なマルギッテにクロムは困ったようなそれでいた楽しんでいる様な表情で了承した。

 

「ん?お前はどうするんだ?戦わないのか?」

 

「ああ、いいのいいの。気にしなさんな」

 

問いかける準にクロムは手を振りながら遠慮した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、クロム達は教室から出てグラウンドに足を運んだ。

 

「そいじゃあ、始めるぞ。あくまで手合わせって事だからな?HRが終わればそれで終了。いいな?」

 

「了解です!」

 

「わかりました」

 

巨人の言葉に二人はそれぞれの得物を同時に構えた。

 

「そんじゃあ、はじめ!」

 

「ハァッ!」

 

「行きます!」

 

キィンッ!!

 

マルギッテとあずみは同時に駆けだし、お互いの得物がぶつかり合う。

 

「はーコイツはまたスゲーな、おい」

 

「うむ、あずみと互角とはやるではないか!」

 

準と英雄が言う様に、マルギッテとあずみの力量は今のところ互角。攻撃の激しさや一撃の重みはマルギッテが、技の多彩さや相手を翻弄する動きはあずみが勝っていた。

 

「さっすが、女王蜂。メイドになっても強さは変わらずか・・・」

 

「おや?どうしました、クロムさん。マルギッテさんが心配ですか?」

 

手を顎にあてて二人の攻防を見ているクロムに冬馬が近づき話しかけてきた。

 

「そうだな、確かに心配だ」

 

「たあっ!」

 

ドガッ!

 

「グッ!?」

 

遂にあずみの脚がマルギッテを蹴り飛ばした。

しかし冬馬は続くクロムの言葉に驚きを隠せなかった。

 

「あいつが熱くなりすぎて女王蜂が病院送りにするかもしれないからな・・」

 

「え?」

 

目を見開く冬馬は釣られる様に試合をしている二人に視線を向けた。

 

「Hasen・・・・」

 

「・・・?」

 

吹き飛ばされたマルギッテは立ち上がっているのを見ながらあずみは違和感を覚えた。太陽の反射の所為か、心なしかマルギッテのトンファーが光っている様な・・・。

 

「Jagd・・・!!!」

 

「さあここからが一苦労ですねっ!・・・・ッ!?」

 

あずみは迫りくるトンファーを小太刀で受けようとしたが、突然の悪寒が走った。

太陽の光の反射ではなく、彼女の持つトンファー自体が淡く発光しているのだ。そして、あずみの長年戦場で培ってきた感がそれはヤバいと確かに警鐘を鳴らした。

あずみはそれに従い、小太刀で受けるのではなくかわそうとしたが既に遅かった。

 

バキィッ!!!!

 

「なっ!?」

 

あずみの小太刀がマルギッテのトンファーに当った瞬間、小太刀の刃が粉々に砕け散ったのだ。

その事に一瞬あずみは硬直するもすぐさま体制を立て直そうと後ろに跳ぶが、マルギッテはそれを追撃し始めた。

 

「おいおい、どうなってんだ一体?」

 

「ぬぅ、あずみがああも防戦一方とは・・・」

 

「クロムさん。これは一体どういうことでしょう?」

 

冬馬の質問に2-Sの主要人物達の視線が一斉にクロムへと注がれた。

 

「おいおい。味方の手の内を晒すと思ってんのか?・・・と言いてぇが、どうせ女王蜂あたりが気づくだろうし別にいいか」

 

「もったいぶらずにさっさと教えるのじゃ!」

 

「はいはい。まぁどうもこうも、マルギッテのトンファーを見てみろ」

 

「・・・・早すぎてよく見えないが・・・なんか微妙に光ってね?」

 

「おー本当だー。ぽわぁって光ってるねー」

 

「あの現象は一体・・・」

 

「あれはトンファーに気を込めてんだよ」

 

冬馬の疑問にクロムはシレッと答えた。

 

「気を・・・?」

 

「武術家でもそれなりのレベルなら全身、あるいは体の一部に気を巡らせて身体能力や防御力を高められる。マルギッテはそれをトンファーにやって強度を高めてんだよ」

 

「なるほど・・・」

 

クロムが説明している中、二人の特にマルギッテの攻めは更に苛烈になっている。あずみも小太刀一本でなんとかマルギッテのトンファーをいなしていくが、二本ならともかく一本では彼女の攻めを捌ききるのは不可能。徐々に小太刀の刃がこぼれ、皹が入ってきている。

そして、マルギッテが更に攻めようとしたが時間切れで引き分けとなった。が、誰が見てもマルギッテ優勢だったのは明らか。2-Sの誰もがマルギッテのことを認めた。

 

「時に、バレッティアよ」

 

「ん?なんだ、えーと不死川だっけ?」

 

マルギッテとあずみがお互いの健闘をたたえ合っている中、心がクロムに話しかけてきた。

 

「うむ。あそこのマルギッテの実力は分かったがお主自身の実力はどうなのじゃ?」

 

「俺の実力?」

 

心に続き冬馬までクロムの実力に関心を示しだした。

 

「ああ、確かに気になりますね。マルギッテさんがあそこまで強いのでしたらクロムさんも相当なものなのでしょう」

 

「おいおい。おにーさんを煽てたって何にも出ないぞー?」

 

「ふざけてなくていいからさっさと見せてみるのじゃ!」

 

「・・・生憎と俺の戦い方はR指定がかかってるから、お子様にはちょっと刺激が強いんだよ。それに、男はミステリアスな方が魅力があるだろう?」

 

「なっ!?なんじゃそれは?」

 

「なるほど。とてもよくわかりますね」

 

「葵くん!?」

 

「何を騒いでいるのです?」

 

そんな三人に戻って来たマルギッテが声をかけてきた。

 

「いやなに、俺の実力はどれ程のモノかってのが知りたいっていうだよ」

 

「なんだ、そんな事ですか・・・」

 

マルギッテは呆れたようにため息を吐き心に向き直る。

 

「不死川心、安心しなさい。バレッティアの実力はこの私が保証します」

 

「なぬ?なぜお主が保証するのじゃ?」

 

「決まっている。バレッティアとは幾度も戦場で背中を預けた仲、その私が彼の腕を保障すると言うのですからそれ以上明確なものは無いと知りなさい」

 

「ぬ、ぬぅ・・・何故か説得力があるのじゃ・・・」

 

自信満々に胸を張るマルギッテに心は何故か気圧され納得した。

 

「フフックロムさんはマルギッテさんに愛されているんですね?」

 

「おっわかっちゃう?」

 

「ええ、妬けてしまうほどに」

 

「生憎と男は受け付けてねぇんだよ」

 

そう言いながら笑いあうクロムと冬馬に顔を真っ赤にしたマルギッテが割って入って来た。

 

「だ、誰と誰が愛し合っているというのですか葵冬馬!!出鱈目を言うのは止めなさい!!」

 

「おいおい、ンな悲しい事を言うなよ」

 

「バレッティア!軍人たるもの恋愛に現を抜かすなど言語道断です!」

 

「ええっ!?いいじゃねぇか、折角中将も青春を謳歌せよって言ってんだぜ?」

 

「貴方は女性にだらしがなさすぎる。この学園に身を置いている中はそこを重点的に指導するので肝に銘じておきなさい」

 

そう言って、マルギッテはさっさと教室へ戻ってしまった。

 

「お、おい!・・・行っちまったよ。やれやれ、楽しい学園生活になりそうだな」

 

そう言って、クロムはこれからの学園生活を思い出し苦笑した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケ・その頃の2-F

 

「しかし、あの九鬼のメイドを圧倒するなんてどんだけ~」

 

「フフフッ・・・アレがマルさんの実力のすべてだと思ったら大間違いだぞ!眼帯を外すと本気の本気なんだぞ!」

 

「強さが三段階あるとは。お前とどっちが強い?」

 

「む。眼帯を取られると勝つ自信が無いな・・・。それに眼帯ありでも今の試合を見る限り分からないな」

 

「じゃあ、二段階目から結構なもんってわけか・・・そうかぁ」

 

「それに、マルさんとクロが組んだら敵無しなんだ!“赤の双璧”って呼ばれてるくらいだからな!!」

 

「ん?って事はクロムさんもかなりの実力者って事でいいのか?」

 

「ああ!狙撃においては今だドイツの最高記録保持者だ!」

 

自信満々に胸を張るクリスに数人のクラスメイトは体育祭で強敵が二人も同時に現れた事に軽く気落ちしていたが、割と関係ない話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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