1.世界の終焉
すべてが、消えていた。
都市は崩れ去り、大地は砕け、空は闇に溶けた。
風は止み、音は消え、生命の気配すらない。
——ただ、一人を除いて。
ウェディングは、そこにいた。
ゼロ計画は完遂し、世界は「ゼロ」へと還元された。
秩序は完成し、争いも苦しみも、すべてが無に帰した。
それなのに——彼女だけが残っていた。
なぜ、私はここにいる?
彼女はゼニス。
完全なる存在となり、世界の理そのものとなった。
しかし、その力を振るうべきものは、もう何もない。
見渡す限りの無。
地平線はなく、空は黒く閉ざされ、何もない空間が永遠に続く。
世界は消え、すべては終わったはずなのに、彼女だけが“その後”を生きている。
これが……ゼロの果て……?
2.無に残されたもの
彼女はゆっくりと歩き出す。
だが、何も変わらない。
歩いても歩いても、世界に変化はない。
空は暗く、地は静かで、風さえ吹かない。
永遠に続くこの空間で、彼女はただ一人、歩き続けるしかなかった。
(私は……このままずっと……)
その考えが浮かんだ瞬間、背筋が冷たくなる感覚があった。
もし、この世界が永遠ならば?
もし、この孤独が終わることなく続くのなら?
彼女は神であり、ゼニスとして世界の外側へと至った存在。
もはや老いることも、死ぬこともない。
それならば——
この静寂は、永遠に続くのではないか?
ウェディングは立ち止まり、静かに息を吐いた。
終わらない孤独。
痛みも、苦しみも、怒りも、喜びすらもない。
ただ、何もない空間を歩き続けるだけの存在。
これこそが、完全な秩序の果てなのか?
3.問いの答え
ふと、耳の奥で声が蘇る。
——「どれだけ粛清すれば、世界は本当に平和になる?」
異端者の言葉。
その問いに対する答えは、すでに出ていた。
粛清は、平和を生まなかった。
秩序の完成は、ただの無を生んだだけだった。
ウェディングは空を見上げた。
暗闇。
光のない空。
かつての世界には星があった。
しかし、それすらもゼロ計画の中で消滅した。
(もし、もう一度選べるのなら——)
彼女はそう考え、すぐに否定した。
選び直すことなど、できはしない。
世界は終わった。
もう誰もいない。
「もし」なんて、無意味な問いだった。
4.永遠の歩み
それでも、彼女は歩き出す。
どこへ向かうのかは分からない。
いや、どこへ行こうとも、何も変わらない。
それでも、足を止めてしまえば、本当に全てが終わるような気がした。
だから、彼女は歩く。
終わりのない道を、ただ一人、永遠に。
もう言葉を交わす相手はいない。
誰かと出会うこともない。
それでも、彼女の足音だけが、静かに響き続ける。
これが、彼女の“ゼロの果て”なのだから。
終わり。