名状しがたき触手でホラーなTS悪役令嬢   作:第616特別情報大隊

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邪神様と生贄

……………………

 

 ──邪神様と生贄

 

 

 私は強い確信を抱いて地下へ降りている。

 

 この先にフリーダが囚われているはずだと。そして、私は彼女を救出することができるのだという確信を抱いている。

 

 螺旋階段を下り続けること永遠とも思える時間が過ぎ、私とメイドさんは地下室に降りたった。カビと汚物、腐敗臭が漂う嫌な空気だ。

 

 地下室には魔法陣のようなものが刻まれており、それは旧校舎にあったものと類似していた。つまり、ここもカルトの潜伏地で間違いないということです。

 

「行きましょう」

 

「はい、お嬢様」

 

 私たちは前進し、地下室を奥へ奥へと進む。

 

 何かを讃えているかのような、しかしそんな意味などなくただ狂ったように声を上げているような、そんな不気味な唱和が奥から響いてくる。それから不気味は青白い灯りも見えてきた。

 

 私たちはそれがカルトたちだと確信して前に出た。

 

「おお、おお、おお! 腐肉の女王がいらっしゃった! 讃えよ、讃えよ!」

 

 私とメイドさんが現れると、そこにいた人間たちが一斉に声を上げる。

 

 その場の構造は神殿というより、古い時代の演劇場のようだった。石造りの舞台があり、それを囲むように階段状の席がある。周囲にはやはり異端の偶像が見下ろすように鎮座していた。、

 

 その異端の場には体に入れ墨を入れた半裸の男女が9、10名程度おり、さらに舞台には私に生贄を捧げることを告げた女性司書が。

 

「フリーダ!」

 

 そして、私は舞台に設置された祭壇のような場所に、意識を失ったフリーダが鎖で拘束されているのを発見した。

 

「讃えよ、讃えよ! 我らが腐肉の女王、玉座に蠢く闇を! 讃えよ、讃えよ!」

 

「讃えよ、讃えよ! 我らが腐肉の女王、玉座に蠢く闇を! 讃えよ、讃えよ!」

 

 はあ~。迷惑な人たちだけどどうしようか。

 

 やっつけるのは簡単だ。私はとても強い邪神様なので、自分の力でも、眷属の力でも、彼らをひとり残らず殲滅することができるだろう。マリーのときと違って、意識を失わせるだけでなく、殺してしまうこともできる。

 

 正直、友人を狙われたのだから、それぐらいしても心は痛まない。だが、安易に人を殺すのはどうにも邪神ムーヴしてる気がして、カルマが気になります。

 

 というわけで、ここは穏便に片付けよう。可能な限り。

 

「讃える、ですか? あなた方は私を探求するのではなかったのですか?」

 

 私は超美少女スマイルでそう問いかける。

 

「讃えるのは無知への降伏。本当の私の信徒であるならば、探求せよと言うべきでしょう。あなた方は所詮はただの肉の塊に過ぎないのですね。真の知性に、真実のおぞましさに、目覚めてはいない」

 

 私がそう言うのにカルトたちが黙り込んだ。困惑しているようだ。

 

「わ、私たちは……」

 

「黙れ。お前たちには私を崇める権利はない。探求せぬものに、知識を追い求めぬものに、事実を知る覚悟のないものに、私の名を口にする権利はない。ネズミと変わらぬ愚かで下等なものたちよ。目覚めぬならば、口を閉じて永遠に眠っていろ」

 

 最高に決まった~。まあ、半分はクラウディアさんの受け売りですけど~。

 

「おお、おお……! どうか我らをお許しください……! 慈悲を、慈悲を!」

 

 狂信者たちがそう叫び始めました。何だが某ちりめん問屋が印籠を見せた感がありますね。効果は抜群です。

 

「ふひひっひひ! そう、そうです……! あなた様に近づくには知らなければならない。挑戦しなければならない。暗闇の中にどれだけおぞましい事実が隠れていようとも、それを知らなければならない。そうであるならば……」

 

 しかし、舞台にいるあの女性司書だけは例外だった。

 

 彼女は何かしらの詠唱をしたかと思うと、舞台の上に魔法陣が浮かんだ。

 

 そこから現れてきたのは緑色の粘液に包まれた不定形な怪物。眼球のような器官が形成されては溶けるように消滅し、どろどろと舞台に滴りながら、舞台の上に広がった魔法陣から降りてくる。

 

「私はあなた様に挑戦しましょう、腐肉の女王! さらなる高みを目指すために! ひははっははは!」

 

 召喚された怪物は舞台を囲むカルト信者たちを飲み込みながら進む。怪物に飲み込まれた人間は酸で溶かされたように焼けただれ始め、おぞましい悲鳴を響かせた。

 

「もー。穏便に済ませたかったのですが」

 

 こうなってしまっては戦うよりほかありません。

 

「お嬢様。私はフリーダ様の救出を」

 

「ええ。任せます。私はあの怪物と召喚主の撃破を」

 

 メイドさんは拘束されているフリーダの救出を目指し、私はどろどろの怪物とそれを召喚した女性司書と対峙する。

 

「眷属ー!」

 

 私は手袋を外し、そこから眷属を召喚。赤黒い肉が指先から蠢き、眷属が現れた。眷属は蠢きながら質量保存の法則を無視したかのように膨れ上がり、どろどろの怪物に立ち向かっていく。

 

 実に可愛くないモンスターバトルである。

 

 とは言え、そこらの怪物風情に邪神様の眷属である肉塊君が負けるわけもなく、ぶよぶよの怪物は意味不明な鳴き声を上げながら、必死に眷属を攻撃するも無意味。眷属は一瞬皮膚が爛れてもすぐに再生し、怪物を追い詰めていく。

 

「このまま!」

 

 眷属はついに怪物を舞台まで押し戻した。

 

「ひひひひっひっひ! これが、これがあなた様の力! 実に素晴らしい! これが知識の源! 我々の知性の始まり! ふひひっひっひ!」

 

 そして押し戻されたぶよぶよの怪物が後ずさりしたことで、女性司書が怪物の体液に飲み込まれ、そのまま酸で溶かされるようにして死んでいった。皮膚が爛れ落ちていき、白い骨が見え、その骨すら溶けるというグロテスクな最後であった。

 

 そして、召喚主を自ら殺してしまったが故に、ぶよぶよの怪物も魔法陣に吸い込まれてしまい、この世界に残ろうと足掻いたものの消えていった。

 

「終わった、終わった~」

 

 残されたのはカルト教徒の溶けた死体だけ。眷属はすぐに私の元に戻り、酸の刺激臭と腐った肉の臭いだけがそれを思わせるものとして、この場に残っている。

 

「お嬢様。フリーダ様は無事です。薬で眠らされているようですが、問題なく目覚めるでしょう」

 

「助かりました。では、地上に戻ってここのことを報告しましょう」

 

「報告されるのですか?」

 

「ええ。何か問題が?」

 

 メイドさんが無表情に疑問を呈するのに私は首を傾げた。

 

「ここには霊的なエネルギーが眠っています。このエネルギーはお嬢様が利用することもできます。無論、偉大なるあなた様にとっては些細なものかもしれませんが」

 

 ここはスピリチュアルな場所だから私たちのものにしてしまおう! ということなのでしょうか。まあ、せっかく手に入れた場所だけど、ここ一応学園の敷地なので……。

 

「不法占拠して余計ないざこざを産みたくありません。それに私は今は特にエネルギーがどうのと困っておりませんので」

 

「分かりました。お嬢様の御心のままに」

 

 というわけで、私たちは学園の地下を出て、地上へと戻った。

 

 しかし、地下にこんなのがあるのでは、それは学生寮の人が悪夢を見るわけです!

 

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