名状しがたき触手でホラーなTS悪役令嬢   作:第616特別情報大隊

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邪神様、魔女について知る

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 ──邪神様、魔女について知る

 

 

 生徒会室にみんなが集まった。

 

 生徒会メンバーのクラウス、フェリクス。学園調査隊のエミリアさん、レオンハルト。そして私の親友のフリーダ。それからエリザベスさんとマティアス先生。

 

「まずエミリアさんとレオンハルト殿下は初めて聞くことになると思いますが、私の正体について話さなければなりません」

 

 私はみんなを前に告げる。フェリクスは心配そうにこちらを見ていた。

 

「私はこことは別の場所から来た邪神なのです。今まで黙っていましたが、皆さんと同じ人間ではありません」

 

「ええ……っ!?」

 

 私の言葉にレオンハルトが盛大に驚く。エミリアさんは険しい表情だ。

 

「つ、つまり、これまでの事件の原因も……?」

 

「はい。そうなります。恐らくは私のせいです」

 

 まだ完全に私のせいだと決まったわけではないと悪あがき。私が『発狂しろ!』とか『自殺しろ!』って命じたわけでもありませんし、と。

 

「やはりそうだったのですね。以前にもイリスさんからは何か奇妙な感触を感じていましたから。あの図書館で出会った最初の日から……」

 

 そう言えばエミリアさんは最初に握手したとき気分を悪そうにしていましたね。

 

「しかし、それでもイリスさんが邪悪な存在だとは思えないのです。本当に邪悪な存在だったとしたら、あんなに人間臭くて、友達を思いやる愛情があって、少し抜けてるようなことはありませんから!」

 

「ぬ、抜けてる……」

 

「い、いい意味でですよ! いい意味で!」

 

 私がショックを受けるのにエミリアさんがフォローしてくれたが、私は抜けているように見えていたのか……。そうか……。そうなのか……。

 

「それで今ここでイリス嬢の正体を知らせた理由は?」

 

「彼女に魔女協会の魔女が接触してきました。魔女協会はイ=スリ・リス崇拝、というより探求を行うカルトのひとつであり、人間であることを止めてでも知識を探求することを選んだ狂信者たちです」

 

「そのようなカルトが帝国に存在るのか……」

 

 レオンハルトはエリザベスさんの言葉に考え込んでいる。

 

「魔女、ですか。危険な存在ですね……」

 

「エミリア嬢。君も魔女と接触したことがあったのだろう?」

 

「はい。以前の事件で、ひとりの魔女と会いました」

 

 クラウスがそこで尋ね、エミリアさんが答えた。

 

「聞かせてもらえないか、エミリア嬢? 君が体験したことを」

 

「ええ。話しましょう」

 

 エミリアさんは、そして語り始めた。

 

「私の実家の傍には以前から魔女の集会の噂がある山がありました。もちろんかなり昔からの言い伝えで、実際に魔女の集会を見た人がいるわけでもなかったのですが。ですが、ある日、私たちの暮らす街にひとりの女性が現れたのです」

 

 エミリアさんはその名の通り、リッターバッハの街に暮らしていて、その街で育ったと語る。決して大都市ではないが、人々は明るく、犯罪も少ない街だったとエミリアさんは回顧していた。

 

「その女性は街にある古い建物で暮らし始めたのですが、そこで夜に奇妙な物音や光の点滅がするという知らせがいくつも報告され始めたことが、事件の始まりです」

 

 女性が街にやってきてから怪しい事件が起き始めたとエミリアさん。

 

「街の外で飼育されている家畜が腹を裂かれて死んでいて、獣医さんが調べるとそれは鋭利なナイフによるものであって獣に襲われたものではないと分かったり。街のあちこちにいたネコたちがいつの間にがいなくなっていたり……」

 

 他にもカラスの数が異常に増えたり、酔っ払いの路上生活者が不意に姿を消したり、街に暮らす芸術家などが悪夢を見るようになったりと事件は続いたそうだ。

 

「それから無視できない事件が起きました。子供が行方不明になったのです」

 

 ある家の子供が行方不明になり、警察が捜査に乗り出した。そこで浮上してきた犯人が、他でもなく街に越してきた女性だったのだ。

 

「他でもなく女性が怪しいのではないかとお父様に言ったのは私なのです。何度か彼女には会ったことがあるのですが、彼女からは怪しい雰囲気を感じていたのです」

 

「以前からそうだったのですか?」

 

「ええ。前にも行方不明になった人の居場所を当てたりしていたので、今回ももしかしたらとお父様は警察に助言したのです。そして、そこから私も子供の失踪事件の捜査に加わることになりました」

 

 私が尋ねるのにエミリアさんが頷いて続ける。

 

「女性の暮らす古い建物に警察が押し入ったとき、そこに女性はおらず、もぬけの殻でした。ですが、そこからは怪しげな魔法陣や祭壇、偶像などが見つかったのです。それから行方不明だった路上生活者の死体と思われる白骨死体も」

 

 女性の家に残されていた異端の信仰の証拠に、警察官たちも騒然となったそうだ。

 

「そして、私もそこで魔導書を見つけました。異端の魔導書です。残されていたメモから中身を解読し、魔女が儀式を行う方法を突き止めましたが……」

 

「どうなったんだ?」

 

「解読にかかわった警察の人々が次々に発狂して、自殺や自殺未遂を起こしたのです。今も精神病院に収容されている人がいます」

 

 なるほど。魔導書を探すときにエミリアさんが中身を理解してはいけないって言っていたのはそのためだったんですね。

 

「私たちは解読した魔導書の情報を元に、山に入り、行方をくらませた女性と依然として行方不明の子供を探しました。そうして見つけたのです。かつて魔女の集会が噂された山の中に、女性の隠れ家を……」

 

 それは山の斜面に掘られた洞窟で、入り口には怪しい魔法陣があったそうだ。

 

「それから警察がそれを包囲し、数名が先遣隊として中に入ったのです。しかし、先遣隊の悲鳴が聞こえ、それから彼らはもう二度と戻って来ませんでした。だから、私たちは本格的な突入を行うことになったのです」

 

「それは成功したのだろう?」

 

「結論から言えば、そうです。私たちは魔導書に記されていた魔除けの紋様を刻んだお守りを持ち、中に突入しました。そこで見たものは今でも忘れられません」

 

 クラウスが質問するのにエミリアさんが身を震わせて答える。

 

「女性はやはり魔女だったのです。隠れ家からは屋敷にあったのと同じ魔法陣や異端の偶像が見つかり、それから生贄にされた子供が見つかりました。遺体の損傷はとても酷く、思い出したくないぐらいです」

 

「そ、それで魔女は捕まえたのかい?」

 

「はい。女性は殺人の容疑で逮捕され、そののち死刑判決が下って、そのまま刑が執行されたと聞いています」

 

 今度はレオンハルトが尋ねるのにエミリアさんはそう言った。

 

「これが私の体験した魔女の話です」

 

 エミリアさんは語り終えて、私たちを見渡す。

 

「魔女と言うのは恐ろしい存在のようだ。子供を生贄にするとは……」

 

「ええ。彼女たちは冒涜的な知識を探求し、おぞましい行為を繰り返してきました。それでもエミリアさんが体験した例はまだ対処できるレベルです。より悪質かつ高度な魔女であれば、もっと被害が出たでしょう」

 

 フェリクスがそう呟き、エリザベスさんがそう説明した。

 

「そんな魔女の中でももっとも性質の悪い高位魔女が俺たちを狙っているわけなんだけどな。覚悟はいいか、ガキんちょども?」

 

 マティアス先生はそう茶化すように言う。嫌な感じ~。

 

「ああ。覚悟はできているとも」

 

 フェリクスはそうはっきりと告げて、私の方を見た。

 

「皆さんにはご迷惑をおかけしますが、どうかよろしくお願いします。私としても誰も犠牲にならないことを望んでいます」

 

 私はそう言って頭を下げたのだった。

 

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