仮面ライダービルドIF「仮面ライダービート」   作:暇人の鑑

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2話です。



第2話 シュレディンガーの命

 戦兎さんに連れてこられたのは、nacitaと言うカフェだが……正直,ここのコーヒーはあまり評判が良くない。

 

…‥まあ,甘党な俺はあんまり足を運ぶことはないけど,それでも口コミの大半はコーヒーに対して酷評しているのだ。

 

 で、そんなカフェに連れてこられた俺は,目の前の景色に惚けるしか出来なかった。

 

 

「スッゲェ‥‥思いっきり秘密基地だ」

「ほう…この内装をスゴいとは、わかってるじゃねえか」

「まさか冷蔵庫が入り口だなんて」

 エプロンを付けたマスターが肩を組んでくると、それに対抗してなのか。

「この天才物理学者の発明品よりもこっちに引かれるとは……見る目ねえなぁ」

 どこか残念そうに口を尖らせる。

 

 そう、冷蔵庫を開けたら階段が出てきて、それを降りたら広がる秘密基地だ。

 

 小さい頃、公園で施設のみんなと遊んだごちゃごちゃの遊具を思い出す。

 

「……おい、そんなこといいから早く話進めろよ」

 

 と,そんな一幕を終わらせたのは、どこかイラついた様子の万丈龍我。

 

……ん?

「そういえば,どうしてここに脱獄犯が?まさかここ,なんかのヤバい組織じゃ……」

なんてこった、闇バイトに捕まったのか⁉︎

 

 慌てて逃げるべく螺旋階段に向かおうとしたが。

 

「逃げられる訳ないし……うるさいし………刻むよ?」

 

 いつの間にかいたダウナーな感じの人が、ハサミを片手に物騒なことを言い出す。

 

「こうなったら多少強引にでも……!」

 

「カブトムシ男」へと変身すべく、深呼吸しようとした時。

 

「ちょっと落ち着いて!……話が進まないから、本題に入っちゃわない?戦兎君も響君もお互いのこと知りたいんでしょ?」

 この中で唯一まともそうな、キャリアウーマンっぽい人が割って入ってきた。

 

 

 nacitaの看板はcloseを示し、冷蔵庫の扉は閉められる。

 

 そうして先ほどまでの茶番が嘘のような空気の中、俺たちはそれぞれの情報を共有した。

 

「つまり……戦兎さんが噂の仮面ライダー…「ビルド」で、あのロボ人間…「スマッシュ」を倒してるってことですね?」

「そう…理解が早くて助かるよ。で、その中で無実の罪で捕われてたのから逃げてきたのがこの万丈ってわけだ」

「成程……なかなか大変ですね」

「おう、分かってくれて助かったぜ」

 筋トレをしながら答える万丈さんを横目に缶コーヒーを啜る。

 

「で、そのスマッシュは通常自我がない筈だけど、なぜか俺にはあって…それに2人を人体実験したコウモリ男の組織「ファウスト」が絡んでるかもしれない、と……」

「そういうことだ」

 

 俺のまとめに頷いた戦兎さんが、やっと終わったと伸びをしたかと思えば……俺に向けていたボトルを引っ込める。

 

「よし、これでお前の中にあった成分をボトルに移すことができた」

 

 すると,あの小さなボトルの中にはもやみたいな物質が溜まっていた。

 

「なんだか汚れみたいですね」

「まあ、ネビュラガスは人体にいいものじゃないしな。これを浄化してやれば、変身しなくてもあの馬鹿力は使える。前よりも安全性は高い筈だ」

 

 そう言ってさっき俺を脅してきたひと……「石動美空」さんにボトルを渡すと、彼女は壁一面に埋め込まれている機械の中に入っていく。

 

「……その浄化はこれで?」

「そう。スマッシュの成分をこの機械と美空の力を使って浄化してやれば…俺達が使っているフルボトルになるって話だ」

 

 そうして動き出した機械の駆動音をBGMに、また話は変わっていく。

 

「で、そんなものを使って俺たちはスマッシュとの戦いを繰り広げてるってわけだな……で、俺はイケてるマスターの石動惣一だ。こいつらの戦いのサポートをしてる」

「私は美人ジャーナリストの滝川紗羽。主に情報面でサポートしてるわ」

「コーヒーがまずい事と崖っぷちで泣きついてきた事が抜けてんじゃねえか……ってえな!何しやがんだよ」

 

 万丈さんの補足に紗羽さんとマスターが叩いて抗議する。

 

 そんな茶番を話しつつの顔合わせは、ボトルの浄化作業の終了と共に終わりを迎えるのであった。

 

 

 翌日

「珍しいな。お前が昼起きてたなんて」

「最近やっと治療の効果が出てきて……なんか、初めて夜にぐっすりと眠れたような気がする」

 

 同級生と会話してる中で、早速俺は成分抜き取りの効果を実感していた。

 

 あの成分は、変身能力だけを与えるわけじゃなく……味覚が異常なほどの甘党になったり、昼よりも夜の方が元気になったり、光に釣られてしまうなど、カブトムシのような体質になってしまうものだったらしい。

 

……まあ、マスターのコーヒーは味覚が普通じゃない時でも不味かったけど。

 

「後は、それに体を慣らしていけば……」

 因みに、浄化したフルボトルでも体に吸収口を当てるなどして、直接成分を入れれば変身できるらしい。

 と、何気ない雑談をしていると、教室の扉が開き。

 

 教師が緊張した面持ちでやってきた。

 

 

 いつも適当な教師が緊張を顔にちらつかせていた理由。

 

 それは……うちのクラスの生徒が1人、行方不明になってしまったことだった。

 

 その知らせにみんな顔を曇らせるが、最も表情を翳らせているのは。

 

「………」

 その生徒の親友である「羽生 優花」(はにゅう ゆうか)であり……実は俺の想い人だ。

 

 そんな人が表情を曇らせているのは心苦しいものがあるので、なにか気休めでも言えれば良いんだけど……

 

 

 何か言えそうな言葉はないかと頭を働かせている俺の前で皆んなが部活や帰路へ向けて動き出したその時。

 

 

「おい!校庭になにかいるぞ!」

 

 

 そんな声がしたかと思えば、その校庭の方から悲鳴と爆発音がした。

 

 

 

 

side優花

 校庭の方を見ると、そこには最近噂になっている怪人が校舎に近づいていた。

 

 生徒達はみんな逃げ惑い……先生たちは取り押さえようとするが、全く歯が立たない。

 

 そうして倒れた先生たちを見て、校内が阿鼻叫喚の大パニックになる中で……私は嫌な胸騒ぎがした。

 

「早希(さき)の声……よね?」

 

 怪人の声に聞き覚えがあり………先ほど行方不明と言われていた親友のものだったからだ。

 

 胸騒ぎが抑えられず、周りの喧騒に紛れて,急いで昇降口に向かい……校庭に向かう。

 

 

 そして、その怪人に向かって……叫んだ。

 

「早希‼︎」

 

 もし違っていたら、私は死んでしまうかもと慌てて現実に戻るが……その怪人は動きを止める。

 

 まるで、その声が届いたかのように………。

 

 

 でも、こっちを向いたからと言って何を話せば良い?

 

 異常事態に混乱した頭のまま,なんとか言葉を紡ごうと口を開いた時。

 

 

「Urrrrrr‼︎」

 

 雄叫びと共に怪人が現れ、飛び蹴りを見舞っていた。

 

「早希⁉︎」

 

 

side響

 浄化されたフルボトルの成分での変身のためか、前よりも強くなった状態で蹴りを叩き込んだ俺は、羽生とスマッシュの間に割り込むように位置取るが。

「早希⁉︎」

「どう言うことだ…?あれが潮田(しおた )…?」

 

 羽生の言葉に俺は自分の耳を疑った。

 だが……今は向こうに意識を向けさせるわけにはいかない。

 

「戦兎さん達が北都から戻ってくるまで,ここは俺がやるしかないんだ!」

 羽生は怪我をさせまいと戦いながら、くぐもった声でのうめきを聞くと………確かに,どこか潮田早希(しおたさき)のものに似ている気がする。

 

 だが……今は戦うしか出来ない。

 幸い、戦兎さんからエンプティボトル……スマッシュの成分を抜き取るボトルをもらっている。

 

 なんでも、それより前は俺が倒したスマッシュの成分抜き取りはやってきた戦兎さんがやってくれていたらしい。

 

 なんだか申し訳ないが……まあ、倒した後のやり方なんてわからなかったんだから仕方ない。

 

 そうして更なる攻撃を喰らわせようとしたその時。

 

 

「おーおー、精が出るねぇ!」

 

 どこか人を食ったような声がしたかと思えば、足元に銃撃が飛んできた。

 

 

 慌ててそこから飛び退き、銃を撃った方を見ると……そこには深紅のボディに、コブラを思わせるようなバイザーをつけた異形が。

 

 

「な、なんだ……⁉︎」

「スマッシュの突然変異が現れた,って話は本当だったみたいだなぁ……?俺はブラッドスターク。お見知り置き頼むよ」

 その名前に,俺は度肝を抜かれた。

 

「ファウストの幹部…⁉︎」

「んぉ?なんだか物知りだなぁ……ビルドと会ったか?アイツは俺の知り合いでねぇ」

「何がどうなってるんだ……?でも、邪魔はさせない!アイツを倒さなきゃ学校がヤバいんだ!」

 

 正直,そんなビッグネームに俺が勝てるとは思わないが……ここで俺がやられたらみんなやこの場所がめちゃくちゃになってしまう。

 

 その為にも‥…ブラッドスタークをまずはなんとかしないといけない。

 

 思い立ったら吉日と殴りかかるが、相手は嘲笑うようにそれを避ける。

「おいおい、血の気が荒いねぇ……でも、せっかくだからいい事を教えてやるか……!」

 そして,俺の動きをがっちりと止めたかと思えば、まるで蛇の毒牙のように。

 

「スマッシュへと改造するときに、ネビュラガスってもんを体に浴びせるんだが……運のいいやつと悪いやつがいるんだ」

「なんの話だ…⁉︎」

「ネビュラガスの影響で改造されただけで、成分さえ抜き取れば無事なやつと………ネビュラガスを浴びた時点で死んでいて、成分を抜き取ろうもんなら、その時点で肉体と魂が消滅するやつだよ!」

「⁉︎な,なんだと……!」

「おいおい……話はきちんとしておくもんだろ、戦兎のやつ」

 つまり、スマッシュは元々人間で……アイツがその運のいいやつか悪いやつかって言うのは…

 思わず動きが止まった俺を突き飛ばしたスタークは、思考を読んだように。

「倒すまではわからねぇなぁ………じゃ、後は頑張れよ。チャオ〜♪」

 

 

 爆弾を置いて、煙幕を貼り……あっという間にその場から消えていった。

 

「シュレディンガーの猫……いや、シュレディンガーの命って事か⁉︎」

 

 

 




いかがでしたでしょうか?

浄化されたフルボトルでハードスマッシュみたいなことができるのかは謎ですが、まあ、NEVERのドーパント組みたいなものと思っていただければ幸いです。

 それと人物紹介を。

羽生優花(はにゅうゆうか)
 オリヒロ。
 響が密かに想いを寄せる人物で、成績優秀。しっかり者でありクラス内で不動の人気を誇る。

潮田早希
 優花の親友。
 ハザードレベル1の状態でスマッシュに改造されてしまった。

 今回は主人公と戦兎達の初対面でした。
 次回は本格的に戦兎陣営に加わるまでを書きたいなと思います。
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