みみのこ・ファイト・クラブ 作:アキ
「よーし、バトロワ頑張りますよー!」
『それでは、ガラス消します! 3、2、1……』
「あっシロさんそこ!」
「え、なんですかソラニンさん───」
『スタート!』
「落ちます!!!!」
「あっ」
ということがあった銅バッジ戦、バトロワ後のトーナメント。
一回目のバトロワで無惨に敗退したシロは、先日Redとソラニンから教えてもらったコツを元に戦っていた。
「(腕の長さはアバター基準で考える……!)」
『───始めっ!』
「はあっ!!!!」
「……ッ、クソぉ……負けたぁ……!」
「ありがとうございました!」
黄色の足場に進んだシロを待ち構えていたのは、
「お、シロじゃん」
「お初にお目にかかります……?」
「聞いたよ、イジャヨ倒したらしいじゃん」
「ぇ……ぁ、ああ、そうですね……?」
「まぁ、でもね。ここで負けますよ、っと」
首をぐりぐりと回し、シロに語りかけるメガネの みみのこ。
気が抜けるような話し方に面くらうシロだったが、それではいけないと気を引き締めた。
『お互い見合ってー、お互いに、礼!』
「よろしくお願いします」
「ッシ……」
『構えて!』
腰を低く落とし、両手は下にだらんとぶら下げたままの構え。
どこか十六夜の『瞬歩』に似たようなものを覚えたシロは油断なく『片耳渡し』の構えをとり。
『は───』
「(超集中……ッ!)」
油断なく、自身の知覚する時間の流れを緩慢にした。
さぁ、どう来る。加速する思考の中でシロはその みみのこ をジッと観察した。
そして、目が合った。
「──────」
「(───!?!?!?!?!?!?!?)」
確かに、その目は何かを訴えていた。
水中で一度でも息を吐き出してしまったらほんの一瞬で溺れる寸前まで行ってしまうように、驚きから来る集中の乱れがシロの心臓をくしゃりと潰す。瞬間、速度を取り戻す視界の端にシロが捕えたのは、自身の横を通過する桃色の耳。
両手は既に動かず、身体は地に倒れ伏している。
負けた、と知覚するまでに、
「いや、遅いわ。そんなんじゃ全然ダメだね」
「……ぁ……!?」
「おぃ、何負けてんだよ」
「ミタマさん……あの人は一体……?」
「ん。知らなかったっけ?
「あぁ、噂に聞くあの……」
…………。
「喋ってる!?」
「ん、そりゃーしゃべるよー?」
「て、てっきり無言勢なのかと……」
「そっちの方が可愛いからね」
装束を変え、巫女服を纏っているミタマ。
まるメガネのレンズがぼんやりと光を反射していた。
ミタマは巫女服以外にも衣装を所有していてFC内でもよく使用するのだが、よくもまぁそんなに改変ができるものだ、とシロは感心した。
自分が銅バッジをつけている以外に何一つ弄っていないデフォルトの みみのこ ということもある。
VRChatのアバターはそれに対応した衣装をインポートすることによって、自分のなりたい姿になることができる。カッコいい衣装、可愛い衣装などを、着る手間を掛けずに瞬時に着用することができるのだ。
和服、軍服、コートにドレス。『なりたい自分』はやがてその者を象徴する一つの要素となり、やがて『理想』から『本物』になっていく。
このFC内にいる みみのこ 達が個性豊かなのも、その者の『なりたい自分』とほんの少しのユーモアによって創られた物なのだ。
「いいなぁ、いろんな衣装持ってるじゃないですか」
「……デフォルトでも良いんじゃない? 似合ってるよ」
「そうですか? 元々、改変とかあまりしないので……」
「デフォルトでも強い人いるし良いでしょ」
単純に買う機会が無い者も、持っているけどデフォルトで戦う者も。
特に後者は、デフォルトみみのこ特有のえげつないダウンロードサイズの小ささ低さからそれを好む者が多く、一度に人数を多く表示しなければならないバトロワ等でよく使われる。
オシャレな格好は勝ってからするからいいもん!という具合である。
言いたいことだけ言って満足したのか、ミタマは赤い袴を引き摺りトーナメントの観戦に動く。
シロはメガホン越しに拡声されたレフェリーの声を聞き流しながら、先ほどのPunkに感じた
「(確かにあれは超集中だった。だって目があったもん。あの空間で、僕と全く同じ思考速度だった……)」
シロの経験の中で、意識的に超集中に潜れる人は少ない。
原理は言えば簡単で、目の前のものにただ没頭し周りが見えなくなる現象を意図的に引き起こすというもの。先日シロがかかった医者からも『過集中』と呼ばれるわけで、そんなあからさまに異常な状態を自分の意思で入れるものなど。
自分と、そして───。
◇
───「『超集中』?」
「そう。グワーッて視界が狭まってよォ、周りがゆっくりに見えンだ」
「すごい……! 漫画みたい! 僕にもできるかな」
おおきな草原のあるだけのチルワールド。
大きな樹が作り出した陰の中で木漏れ日を受けながら、シロはうんと伸びをしてその場に寝転んだ。
「調子がいいとよ、丸一日考えたみてェな疲れがあるのに、実際には30分だの1時間だのしか経ってない時もあンだ。便利だぜ」
「すごいね。それが反射神経の秘密?」
シロの問いに、自嘲気味に、しかしカラカラと笑うその男。
頭の上のネームプレートは黄色い文字に変わっており、それがシロとフレンドであることを示していた。
「インチキみてェなモンだ。他の奴らが0.5秒で反応しなきゃいけないのを、俺は5秒くらいたっぷり使えるンだからな。マジックのタネも丸わかり。サバゲーだって相手が撃つのを見てから避けれるぜ」
「それで体が反応し切れるのがすごいよ」
「ま、だからなンだ、
それは酷いね、と言いたげなシロの口に指を当て、もう気にして無いというふうに首を振る男。
「
「そっか……」
「それに、敬遠されてたのは制御できなかった時の話だし。オンオフできるようになってからここ最近はずっとオフだ」
「そんなことできるんだね」
別にしょげているわけでも過去の傷を抉ったわけでもなさそうな態度にシロは胸を撫で下ろし、そういえばずっと気になっていたけど聞いていなかったことを口に出す。
「……ねえ、さっきラグって言ったでしょ? 君がラグってる所見たことないんだけど……どんな回線でどんなPCスペックしてるの?」
「1100000」
「え?」
「1100000」
「ひゃくじゅうまん」
「そう。他にCPUもまだ表に出てないやつで……そういうルートがあンだよ。お前以外に話してないから秘密な」
「百十万って……え? その言い方からしてグラボだよね? そんなのあるの?」
「あるぜ」
「なんか、4桁の数字が小さく見えてきちゃった」
「そーいや、コレに変える時に余ったヤツあったな。101110あるからやるよ」
「え、いや、え?」
「これでお前も共犯な」
「犯罪なの!? 巻き込まないで!?」───
◇
「シロ? おーい、シロ〜? 聞いてる? 離席中?」
「……は!」
「ただぼーっとしてただけ?」
「Punkさん……すみません、最近夜更かしが多くて」
「ふぅーん……」
シロの顔を覗き込むメガネの奥の双眸。
ピンク色の髪がふんわりと揺れ、その手がブレた。
「えい」
「あっ」
両耳を即座にもがれ地面に倒れ伏したシロの耳を捨てぱんぱんと手を叩くPunk。普段は強さ以外に興味もなく、よほど苦渋を舐めさせられたりして気にかけた相手でなければ名前を覚えることも話しかけることも無いPunkだが、今回はPunk自身も何か違和感を感じていた。
「そうだ、Punkさん!」
「そろそろバトロワが始まるよ……ってなに、どしたの」
「さっきの試合、超集中を使ってましたよね!」
「……え?」
「だから、さっきの試合、超集中を使ってませんでしたか!? 確かに目があったじゃないですか!」
「……なにそれ?」
「え」
「なん、え? 超集中? なにそれ知らん、怖……」
怯えるPunkから嘘は感じられない。そもそも嘘をついたところで何になるのかという話である。
超集中を使えない者から聞かれてごまかすならまだしも、シロは超集中が使えるどころか試合中に目が合うまでしたのである。
だから全く、本当に、初耳(初耳の意)*1なのであった。
「俺に……そんな力が……?」
「いや、自覚が無いなら大丈夫です……」
「俺に……? そんな……? 力が……?」
両手を見つめふるふると震えるPunkから離れ、シロは考える。
今まで誰も踏み入って来なかった空間。超集中によって組み立てられた
その領域に入れるのはフレンドとシロのみだったため、そんなことが起こり得ることが全くなかったのだ。
「(超集中には……割り込める……?)」
もし。
もし、Punkの他にも領域に立ち入れる者が現れたら。
超集中に頼り切りだったシロにとって、脅威に他ならない。
「(何か得なきゃ……自分にしか無い、切り札を……)」
『初参加への説明も終わりましたので、そろそろバトロワを始めたいと思います! それでみなさん、準備はよろしいでしょうか?』
「はっ……!」
また思考に没頭しかけていた。ここ最近、常に
ちゃんとしないと。雑念を払うように頭を振り、それに追従して耳が右へ左へふよふよと動く。
レフェリーの手がボタンへと伸ばされ、拡声器越しのカウントダウンを放つ。
『ガラス消します! 5、4、3、2、1……』
「……ッ!」
『スタートです!』
落下する自分の体を制御し、着地した瞬間に走り出すシロ。
赤い足場を中心に、オレンジ、黄色、緑、そして青。レフェリーの立つ台から時計回りになるように渦を巻く みみのこ 達の流れに沿い、シロも前の みみのこ の背中を追った。
みみのこFCのバトロワにおいて、青い足場は
例えばキャラコンのミスで落下する者、勝手に戦ってもがれる者、など。
最も広い足場というだけあって、よほどのことが無ければ退場することは無いのだが、しかしこの"よほど"は思いの外、頻発する。
「アッ!」
「(後ろから悲鳴……)」
相手の背中を追うということは、それ以外に見えなくなることを指す。
青の足場での安牌とされている時計回り/反時計回りに周り余計な戦闘を避けるという行為は安定性からか油断を誘う。
脳死でシロの背中を追いかけていた後ろの みみのこ はジャンプするタイミングを誤り、間に合わずに落下。儚くも、本日の銅バッジチャレンジはここで終了である。
『おいRedが柱に頭埋めてるぞー!
「おらー!」「やったんでこのー!」「誉は無いのか誉はー!」
「……! …………!」
恥も外聞も関係なく腐った精神で耳を守る者もいる。
土下座、頭埋め、戦術はさまざま。一時的に対戦協定を結び協力してレイドバトルをする耳共によって悪は裁かれた。
そして、絶対悪がいなくなった瞬間、お互いの目がギラリと光り……。
「オルルァ!」「ぎゃー! もがれたー!!」
「一本無くなったんですけど!?」「青で脱落したー! ヤダー!!」
「(阿鼻叫喚……)」
『誉無い奴もいなくなったので、青の足場を消すぞー!』
「(ここで移動)」
緑の足場に移動し、大きな山……でっぱりのある方に移動するシロ。
俯瞰して見た限り、ふるいにかけられたのはざっと5〜6人程度。Redを巡るレイドバトルの影響か、珍しく観戦が多かった。
「(だけどここは、長く留まっちゃダメ)」
大きな山───平面であるバトロワの足場において、最も高低差が生まれる場所。
高いところから見下ろせるため今どこに誰がいるのかわかりやすく、さらに向かってくる耳がいようものならすぐに逃げ出せるため生き残るには良いポジションだと思われがちだが、実際はそうではない。
とっても目立つのだ。
緑の足場になり動ける範囲が狭まると耳たちは慎重になる。そんな中、視界の端で高いところに鎮座し動かない みみのこ がいたら、それはもう目立って仕方がない。
例えるならスクランブル交差点のど真ん中で脚立に登っている人がいるようなものである。大目立ち。
即座に飛び退いたシロは、青の足場が消えた影響で出現した黄色い足場を視界に捉える。上には空色のニットを着た みみのこ が堂に入った動きでニシン漁を踊っている。
『さぁー、黄色の小島の上で舞ってるやつもいるぞ!』
「(あそこはあそこで悪目立ちするな……)」
緑、黄色の足場には柱が建っている。
移動しているとぶつかり邪魔になってしまう部分だが、時には身体を隠す盾にもなる。相手のフォーカスを逸らすのに役立ち、さらにはこの柱側からも小島に移動することができる。
一般的に小島へのアクセスは柱側ではない部分、ひらけた所から安全に飛ぶことが定石。だからと言ってそちらばかり警戒していると柱側から飛んできた他の耳にもがれてしまうので、誰か一人でも柱側で小島を狙うだけで圧をかけることができるのだ。
しかし。
『柱の後ろに隠れてる奴いるなー!』
「なにー!?」「隠れてないで出てこーい!」
レフェリーは全てを見ている。
しばらく柱の影にいると、ネームプレートの位置から看破したレフェリーがその名を読み上げてしまう。
そうすればどれだけ狙いを逸らしたとしても意味はなく、柱から出ざるを得ない。
地下闘技場に、安全な所などない。
『さぁ、緑の足場を消すぞー!』
「オレンジ消える! オレンジ消えるよー!」「嘘つくな!?」「緑消えるってよ!」
『嘘をついてるやつもいます! 緑消えます、3、2、1……』
「(ここでジャンプ!)」
『さぁオレンジの島が現れ……おっとシロさん行った!』
緑の足場が消えた段階で、小島は2つに増える。
オレンジの足場に飛び乗ったシロは視野角のほとんどを中央へ注ぎ、合間合間に後ろを警戒する。
力強く手網を引く動作を荒々しく流れる波のように舞い続ける みみのこ を尻目に、シロは前方を警戒した。
右側……つまり柱側にも、隠れるように みみのこ が飛んだり跳ねたりしている。油断はできない。
かといって後方や右に注意を割くと、
「隙ありッ!」
その隙をついて、みみのこ が飛んでくるのだ。
有名なアニメに出てくるキャラクターのコスプレをした みみのこ が勇ましくも足場に飛びつき、シロの両耳をもごうと手を伸ばす。
それを確認する前に、シロは息を吐き切っていた。
幾重にも研ぎ澄まされた感覚が、シロを領域へ、緩慢な時間の流れる世界へと導く。
その手を避けるべく首を傾けようとして、シロは見切った。
この みみのこ は、既に後退し始めている。
戦法としては相手の耳を掴み、後ろに下がってその勢いで耳をもぐというもの。故にカウンターはしづらい傾向にある。
だったら。
「…………あれっ!?」
さらに一歩。もう一歩。後退に合わせて、前進する。
シロの顔がいつまでも眼前にある事を不思議に思った みみのこ が驚いた表情をした。
「隙ありッ!!」
「うわぁっ!?」
「……ってね」
『おーっとシロさんカウンター決めた!』
「うっそ、マジか……!?」
「おぉ、やるなぁシロさん!」
「(八重桜さんもまだ残ってる……ここで追撃するべき? いや、オレンジの足場になるまで待った方が良い……!)」
両手に握った耳を手放し、振り返るシロ。
シロが立ち退いたことによりオレンジの足場にはシアンが乗っており、そうしてちょっかいをかけに行った別の みみのこ を返り討ちにしていた所だった。
シアンは強敵である。ここで1vs1に持ち込むよりも、他の強い耳たちとぶつかり合ってお互いにくたばらせた方が良い。そう判断したシロは小島には戻らず、ただ中央で迫り来る手を躱し続けていた。
『結構減ったね。黄色消すよー!』
「黄色消えるってよ!」「真ん中取れるか……!?」「さて、消えるがどうなる……!」
「(もう一度、超集中を……!)」
シロの口から息が漏れる。
世界が色を失う直前、レフェリーの手がボタンに触れた。
消える足場からオレンジに飛び乗ったシロは視界の端で屈む八重桜を見つける。
その瞳は中央へ集まる みみのこ 達の耳をじっと見つめており、隙をうかがっている。
「うわっ、後ろかよ!」
『もがれたー!!!!』
銀色に輝く髪がアーチを描き、土産として耳を持っていく。
「(経験の差は多い……このままじゃ優勝を持っていかれるぞ……)」
シロだけの時間。シロだけの領域。
割り込む者などいるはずのない、いるはずのなかった世界でシロは考える。
自分に足りないものはなんなのか。バトロワでは、どうしてなかなか生き残れないのか。
超集中を駆使してなお、何故。
────────────ッ
頭痛。世界が、色を取り戻す。
急速に動き始める視界で、シロは咄嗟に迫り来る手を避けた。
そうしてもう一度、超集中を発動しようとしてはたと気づく。
「(反動だ。超集中の反動)」
シロの扱う超集中は、医師からは『過集中』とも言われている。
呼吸を忘れるほどの集中力を、酸欠状態になることで自由意志で引き出していた。
だったら。
「(吐き出すんじゃなくて、吸う。吸って、息を止める)」
八重桜がまた一つ、耳を薙ぎ払った。
レフェリーはそんな様子を見てオレンジの足場を消す宣言をするが、シロの耳には届かない。
ただ、目の前に耳が迫っていたから。
───オンオフできるようになってからここ最近は───
思い出した言葉。
『超集中』は、オンオフすることができる。発動自体は簡単にできて、時間経過や反動によって強制的にオフになっていたそれを、自分の意思で切り替えることができる。
「(世界に……潜るように……息を止めて……)」
もっと深く……!
「……えっ」
それは誰の声だったか。
声の主は既に倒れており、自分がもがれたことに気づくまで時間がかかった。
オレンジの足場が消え、真ん中の突起に6耳ほどが密集。中央に立っているのは、デフォルトの みみのこ だった。
その背中が見える。手を伸ばす者がいた。
「……あれ?」
しかしその手は届かず、地に伏している。
いつのまにやら己がいたはずの位置にに立っていたその みみのこ は、ジャケットに一つだけついた銅バッジを煌めかせ首を傾けた。
背後から迫っていた手は空を掴み、そうして地に伏せる。
先ほどまでその みみのこ がいた場所に、先端の赤い見慣れた耳が2本だけ揺らいでいた。
その場にいた全員の額に冷や汗が浮かぶ。
動き自体は速くなっていない。普通の みみのこ と同じである。だが次は自分かもしれない、やられる前にやるしかない。
気圧された耳達が咄嗟に飛びかかった。
ある耳は下から、ある耳はタイミングをずらして上から。
それは みみのこ バトルの選手としてはかなり優秀な判断であるはずだった。
1秒や2秒の間に自らが感じた違和感を信じ、その原因を特定し、潰そうとした。
それらを咄嗟にやってのけるのだから、彼らもまた反射神経には優れているはずだった。
だが、相手は。
「(下……それから、上)」
ゆっくりと認識し、ゆっくりと状況を整理し、そして一息。
「下ッ!!」
「うわぁっ!?」
「一歩引いて上!!」
「なんでぇ!?」
『過集中』という現象を故意に引き起こすことができる超集中、それらの切り替えまでできるようになった『超集中』。
もはやこれは、現象ではない。
領域へ至るための技の一つとして、昇華されていた。
『残り2耳ーッ!!!!』
「(ずっと中央で様子を伺ってる みみのこ がいた!)」
「行くぞシロさんっ!」
上体を起こす勢いで高く飛び上がる八重桜。
中央の突起からの跳躍。高低差のある攻撃は避けにくい。これも咄嗟に取った行動であり、その判断が瞬時にできる みみのこ が何人いるか。
だが、しかし。
「視えてるよっ!」
「なっ、それッ、まさか『不ど───!?」
「(『超集中』……『居合』
一歩引き、その手を躱す。
完璧な間合い管理。躱された八重桜にも、それがわかった。
その八重桜が何かを言うよりも
「片耳渡しッ!!!!」
「うああああああああ!?」
『決まったーッ!! 勝者ッ、シロッ!!!!』
「ウワーッ!? 嘘だろッ、悔しすぎるぞ……!!」
『勝者の権利です、オシャレして写真撮っちゃえ!』
盛り上がるレフェリーに振り返り、カメラを出しながらシロは答える。
「いえ……僕には
『おー! 撮ったれー!』
「そっかー、シロさんって衣装無いんだなー」
「確かにデフォルト意外見たことないかも」
「エッ、でもこう、十六夜さんみたいな服も似合いそうじゃない? プレイスタイル的に」
「わかるー!」
各方向から投げられる札束エフェクト。
二度目になる勝利を噛み締め、シロはカメラを構えた。
「撮ります……! はい、チーズ!」
みみのこユーザーの『tanumimi』さんに、桃色の髪で素早い居合を得意としRedと27回相打ちしたみみのこの名前をつけていただきました。