転生しました。どうやら凡人のようです   作:いつまでも中学生

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第一章
1-1


暗く静寂な廊下にカツカツ、と音を鳴り響かせながら、一人の女が歩いている。荘厳な扉の前の門番たちは近づいてくる人影に警戒するが、それが彼女だと認識するとすぐに敬礼をし扉を開ける。

 

女は開かれた扉を通り抜ける。部屋の中央にひざまづく男を認識すると、女は部屋の隅に立ち自分の順番を待つ。男が相対するのは、長い階段の先の玉座に座る男。

 

短い赤髪に、赤い目。血気盛んで、それでいて爽やかな雰囲気を持つ青年

現皇帝、アレクス・レオハルトその人である

 

「それで次の件だが、王国とはどうなっている?」

 

「はっ!近頃は睨み合いの状態を保っていましたが、先月にカイナ峠で我が国工作員と王国兵が衝突、小競り合いに発展しました。その戦闘で、少年兵・一般兵合わせて22名が死亡したようですが、工作は無事成功した模様です」

 

玉座の男は満足そうに頷く

 

「よし、それだけの被害で作戦を成功できたのなら十分だろう。よくやった。」

 

「ありがたいお言葉です」

 

()()村との交渉も順次進めるように頼むぞ」

 

「はっ!それでは失礼致します」

 

ひざまづいていた男はそう言って立ち上がり一度礼をした後、部屋を後にする。部屋を出る直前、男は女を一瞥し、女は男に軽く礼をする。

 

(レオル隊長、帰還していたのですか。戦線に出突っ張りで中々城中ではお見かけすることがありませんでしたが)

 

「次の者、前に」

 

その言葉を聞き、女は早々に思考を切り上げ先程の男と同じように、部屋の真ん中にひざまづき頭を下げる

 

「帝国近衛騎士団第4部隊隊長、ヘルガ・スノウ、陛下の招集に馳せ参じました」

 

「おお、スノウ隊長か。よく来てくれた。貴殿が隊長に就任してから2年が経つが、どうだ?困ったことはないか?」

 

「ご心配下さりありがとうございます、陛下。まだまだ不慣れではありますが、陛下のご配慮のおかげもあり、困ったことはございません。これからもますますの努力を尽くしたいと存じます」

 

「うん、頼もしい限りだ。これからも何か困ったことがあれば、私に言え。それでは早速なんだが、あの事件については調査は進んでいるのか?」

 

「はっ、順調には進んでおります。しかし、あの山は王国との境界に位置しているため、全てを調査出来た訳ではございません。未調査の部分については現在王国との間で交渉しているところでございます」

 

「そうか。それではその件については引き続き貴殿に任せよう。次に、貴殿の団員が1年前に探知した男の行方はどうなっている?」

 

「そちらの件については、行方自体は判明いたしました。しかし、その行方が厄介でして・・・。どうやら件の男はギルドに保護されたようです」

 

そのことを聞き、アレクスは苦々しい顔をする。

 

「ギルド・・か。全く『不老』の奴め。いつも我が国の邪魔ばっかりしやがって。ギルドと戦争するのは得策ではないな。仕方ない、この件については、次の会議で方針を決めることにする。貴殿の団は事件について、またギルドの動向を調査し、何か少しでも事があれば報告するように。話は以上だ。もう下がっても良いぞ」

 

「了解致しました。それでは、失礼致します」

 

ヘルガは腰を上げようとして・・・あることを思い出す。

 

「失礼ながら陛下。一つお耳に入れておきたいことが」

 

「どうした?」

 

「2月前に我が団の兵士があの山の山頂にて、比較的新しく作られた墓を発見いたしまして。事件と関係あるとは思いませんが、一応ご報告しておきたく」

 

「なるほど、墓か。して、何と書かれていたんだ?」

 

「『イデリーナ・イェークの母 イデリーナ・ツェーダー ここに眠る』と」

 

そうヘルガが発言した瞬間、アレクスの顔が驚愕に染まり、そして思案顔になる

 

「陛下?この名前に聞き覚えが?」

 

自身の主人の変調を感じ取り、ヘルガは問いかける。しかし・・・

 

「いや、良い。伝え忘れていたことはそれだけか?」

 

ここは引き下がる他ない、とヘルガは判断する。

 

「はい・・・それでは、今度こそ失礼致します」

 

ヘルガが一礼をし、部屋を後にする。残されたアレクスは、一人考え込む。

 

「イデリーナー・ツェーダー。また懐かしい名が出て来たものですなぁ、アレクス様」

 

「爺、いたのか」

 

玉座の後ろから高齢の男が現れる。

 

「ええ、爺はいつでも御身の側におりますとも。それにしても『透明の暗殺者』という名を知っている者は多けれど、イデリーナ・ツェーダーの名を知っている者は今や何人なのでしょうなぁ」

 

「ああ、そうだな。かくいう俺も祖父様からその名を聞いていただけで、実際に会ったことはない。爺は会ったことあるのか?」

 

「一度だけお見かけしたことが御座います。ただなにぶん、あの頃儂はまだ10代の若造でしてなぁ。一度もお話しすることはありませんでしたなぁ」

 

「そうか。俺が聞いた話では、祖父様は彼女に格闘術を教えてもらっていたようだが、ついぞ一度も組み手で勝てなかったということだ。全くどれほどの化け物だったのか・・・・、いやそれよりも、これは無関係だと思うか?爺」

 

「ふむ。断言はできませぬが、関係ありと見るべきで御座いましょう」

 

「まぁ、そうだろうな。しかし・・・何にせよギルドの存在が邪魔だな。具体的な方針は先も言った通り会議で決めるが、爺、何か策はあるか?」

 

アレクスがそう問いかけた瞬間、空気が締まる。

 

「もちろんありますとも」

 

そう言う老爺の顔は邪悪に歪んでいた

 

 


 

 

 

最強の便利屋、ギルド

 

少なくとも帝国もしくは王国生まれであれば、その名を知らない者はいないだろう

 

帝国もしくは王国から迫害された者、出身不明の流れ者、傭兵崩れ、etc、etc

一定の審査はあれど、来るものを拒まなった結果、一堂に会することがないように思われる者たちが集い、そして現ギルド長であるジジイが纏め上げて出来た、王国とも帝国とも並ぶ一大勢力だ

 

勿論その結成には様々な過程があり、ジジイのカリスマや粘り強い説得、仲裁、そして紆余曲折あって生まれた伝説(自称)の演説で、漸くギルドは結束したらしいが、それはまた別の機会に

 

さて、問題はギルドの業務体系だ

ギルドの依頼受注は、初めにギルド長もしくは各ギルド支部長が依頼を審査し、受領するか否かを決定する

受領された依頼は契約書として設置してある掲示板に張り出され、その後団員達が各自で判断した上で、どの依頼を受注するかギルドに申請することで正式に依頼が受注されたことになる

 

便利屋として名高いギルドには、本部にだけでも一日十件程度、多い時は数十件の依頼が舞い込んでくる

そしてギルドはあくまで便利屋、基本的に報酬さえ担保されればどんな依頼でも断らない

しかし、各依頼の中には、勿論一日では終わらない依頼や戦いしか知らない者、逆に戦いを知らない者には出来ない依頼もある

 

そうすると、どうなるか

答えは簡単だ

幾つかの依頼が積み重なっていく、つまり塩漬け依頼が発生してくるのである

だか、正式でなくとも一度は受領した依頼、それを後になって反故にしたとなれば、ギルドの評判が悪くなるのは目に見えている

 

そこで、ギルドにはある部隊が作られた

EoC、ギルド直轄の依頼遂行部隊

 

 

 

 

 

 

・・・・俺が所属するクソブラック部隊だ

 

 

 

 


 

 

 

「おい、ジジイ!前も言ったろ!そんなにホイホイ依頼を受けんじゃねーって!昨日俺が何件依頼こなしたと思う?8件だぞ!8件!」

 

バンっ、と机を叩きながら、目の前のジジイに抗議する

 

「三日前の昼から魔獣討伐に行って、クタクタで夜帰ってきたと思えば、深夜しか取れない香草の採取に行かされて、朝日が昇った頃にようやく終わったかと思えば、次は早朝の農作業の手伝いがあって・・・。もう三日間まともに寝れてねぇし、風呂にも入れてねぇんだぞ!俺に許されてるのは着替えだけか!」

 

俺の必死の抗議に対し、ジジイは鼻をほじりながら返答する

 

「だからって、依頼受けねぇ訳にはいかねぇだろ。俺たちゃ便利屋なんだからよ。それに息子よ。お前には、頼れる仲間がいるだろ?ほら、ウィンケルは?」

 

「あいつなら、この前5連続通勤してぶっ倒れて、今休養中」

 

「ギークは?」

 

「異能力使って、女子の着替え覗き見してたこと発覚して拘留中」

 

「ハイナは?」

 

「あの人なら『虫獲ってくるー!』って言って、どっか行ったよ」

 

「・・・グリーンはどうだ?」

 

「隊長が何処ほっつき歩いてるかなんて分かんねぇよ。唯一まともなニーナも今依頼で遠くに行ってるし」

 

はぁー、とジジイがため息をつく

 

「人員を増やすべきか?でも、能力的にEoCに入れるやつはいねぇしなぁ」

 

そう、EoCは能力が高ければ入れるというわけではない

実際に、俺よりも戦闘能力や事務能力等が優れている人はギルドにはザラにいる

しかし、天才は多かれど、EoCに求められる能力、つまりどんな依頼も一人で人並みにこなせる能力を持っているものは中々いない

そういう事情もあり、EoCは年中人手不足なのだ

 

その時、コンコン、と音が鳴る

 

「マスター、入るぞ」

 

そう言いながら入ってきたのは、ルナさん

手には大量の書類を持っている

 

「今月の会計を終わったぞって、イェクじゃねぇか!久しぶりだな!元気してたか?」

 

そう言って、ルナさんは近づきながら空いた手で俺の頭をワシワシ、と撫でる

 

「やめてくれよ、ルナさ、じゃなくてルナ姉さん。久しぶりって、たったの四日だろ。」

 

姉さん、か。まぁ、合格点だな。つれないこと言うなよ、イェク。これでも、お姉ちゃんなりに心配してたんだぜ。」

 

そう言って、ルナさんは一層俺の頭を強く撫ではじめる

 

「おほん!それで、ルナ。何の要件だ?」

 

見かねたジジイがルナさんに尋ねる

 

「今良いところだから邪魔すんなよー、って言いたいとこだが、自分の仕事はしなきゃな。イェク、ちょっとそこで待っといてくれ。すぐ終わるから。」

 

名残惜しそうにルナさんは俺と離れながら、そう言う

 

「いやー、俺の用事はもう終わったか「良いから。待っとけ」分っかりましたー」

 

俺は大人しく部屋の隅っこでルナさんを待つことにする

 

「よし、それでマスター、今月の会計を計上し終わったんだがな、私の予測と何か一致しねぇんだよ。」

 

ルナさんは意外や意外、ギルドでも一、二を争うほど頭が良く、特に計算能力がずば抜けているため本部の会計を一手に担っている。

ギルドの収支の管理は勿論、今までのデータを元にして、来月はどのぐらいになるかをほぼ正確に予測するなど、彼女がギルドの財政を支えていると言っても過言ではない

 

「でも、収支は一致してるんだろ?だったら、今回はお前の予測が外れたってことじゃねぇか、ルナ。人間誰しも失敗はある。一度ぐらい外れることだってあるだろう。だから、何も気に病むことはねぇぞ、ル「だから、不審に思って近場の・・・なんてたっけ、ああそうだ、猫猫亭ってところに行ってきたんだけどよー」ん?」

 

「店員さんに尋ねたら、『俺はギルドのマスターだぞー』って言いながらセクハラしてきた男が居たって言ってたぜ。マスター、どう言うことだか教えてもらおうか?」

 

ジジイが汗をかきだす

というか、あのジジイ俺が必死こいて依頼こなしてる間に、そんな事してやがったのか

猫猫亭って、あのキャバクラみたいな酒場だろ

 

「お、俺っていう証拠はねぇだろ。他の奴がふざけて言った可能性だってあるじゃねぇか」

 

それを聞いて、ルナさんが一枚の紙を取り出す

 

「セクハラされたっていう店員さんが持ってたんだけど、マスターのサイン入り優先依頼書」

 

「すいませんでしたぁ!」

 

美しい・・・本気の土下座だ、俺がこの域に達したのは10代後半

 

「ったく、頼むぜ。で、いくら使ったんだ?」

 

「35銀貨」

 

「分かった、35・・・何て言った?」

 

「だから、35銀貨」

 

「は?」

 

ルナさんの雰囲気が変わる

 

私の計算では10銀貨、多くて20銀貨だったってのに。前回のデータからも間違いないはず。私の計算が間違ってた?いや、そんなわけねぇ。

 

「お、おい。ルナ」

 

「マスター、予定変更だ。ちょっと別室に来てもらうぜ」

 

「ハイッ」

 

「ってなわけだ、イェク。すまねぇな。私はこのバカマスターとちょっと話があるから、お前に構ってやれねぇ。」

 

ルナさんが俺の方を向き、心底申し訳なさそうにそう言う

 

「ほら、行くぞ!マスター」

 

「分かったから、そんなに引っ張るなって!」

 

ジジイがルナさんに首根っこを掴まれて、引きずられていく

 

「あっ、そうだ。ルナ、ちょっと待ってくれ。イデに伝えることがある」

 

そう言って、ジジイは俺に近づき、小声で俺に伝えてくる

 

「いつものお客さんが、お前に依頼だとさ。いつもの場所で待ってるって言ってたから、行ってこいよー」

 

「マジかよ!おい、そう言うことはもっと早めに」

 

「おい、マスター。イェクに何言ったんだよ」

 

「秘密、秘密。さぁ、早く行こうぜ」

 

「おい、待て、マスター!怒られる立場って分かってんのか!」

 

俺が言い終わらないうちに、ジジイもルナさんも部屋を出ていく

 

「はぁ〜〜、行くしかないよなぁ」

 

残された俺はため息を吐き、目的地に足を向けるのだった

 

 

 

 

「おや、ようやく来てくれたんだね。イェク君。待ちくたびれたよ」

 

俺が目的地、王国郊外のひっそりとしたカフェに向かうと既に依頼人が到着していた

ショートの銀髪、整った顔、モデルのような体型に高身長

前世であれば、学校で王子様と間違いなく呼ばれていただろう美女がそこにいた

 

「全く王女である僕を待たせるなんて、駄目じゃないか。罰としてここのお代はイェク君に払ってもらおうかな」

 

王国第四王女、グレーシア・スノーフィア

俺如きが本来会えない人物である

 

 

 


 

 

 

俺はその場に恭しく跪く

 

「すみません、王女様。王女様がお待ちしてることを、自分も先ほど知りまして」

 

「ふふっ、冗談さ。まぁ、お代を払ってもらうのは冗談じゃないけどね。それよりも、そんな言葉遣いや態度では距離を取られたみたいで悲しいなぁ。いつも通り気楽に接してくれないかな?」

 

そう言う割には目の前の王女様、フィアも俺の態度が冗談と分かっているからなのか、いたずらっぽくそう言う

 

「じゃあ、お言葉に甘えて。というか、いつも俺が奢ってるじゃねーか。まぁ、ここそんなに高くないから別に良いけど。で、俺に頼みたいことって何だ?」

 

フィアがやれやれと肩をすくめる

 

「何だよ」

 

「忙しない男性は嫌われるよ、イェク君。僕とちょっとお話ししようじゃないか」

 

「いや、俺もそんなに暇じゃないんだが・・・。まぁ、いいか。で、何話す?」

 

「じゃあさ、王国に新しいケーキ屋さんが出来たんだけど、今度僕と一緒に行ってみないかい?」

 

「おっ、良いなー。でも、王国のどの辺だ?あんまり中央に近いと、お前がいると目立つぞ」

 

「中央ど真ん中だよ」

 

「駄目じゃねぇか!!」

 

「アハハ!やっぱり君はいい反応するね!」

 

 

話し始めて30分ほど経っただろうか

ほとんど揶揄われていた気がするのは、気のせいだろうか

 

「そういえば、今日はフレデリカさんはいないのか?」

 

俺がそう問いかけると、フィアが少しムッとする

 

「僕が目の前にいるのに、別の女の子の名前を出すのは感心しないなー」

 

別の女の子って、あんたの従者だろうが

 

「まぁ、良いや。うん、あの子は今、少し調査に出て貰っていてね。ちょうど時間もいいし、依頼の話をしようか。」

 

そう言って、フィアは一枚の地図を出し、ある一点を指差す

 

「シグ村?」

 

「うん、この村は獣人族が比較的多く住んでいる村でね。数年前から王国と協力して、王国からは資金援助、シグ村からは傭兵を駆り出してたんだ。でも、一ヶ月前ぐらいから連絡が途絶えてしまってね。今、王国も帝国との戦いが激化してきて、手が回せないから君に白羽の矢が立ったという訳さ。君、意外と王国では有名なんだよ?」

 

「えっ、何でだ?」

 

「まともな人格してるのに討伐依頼も事務依頼もちゃんとする仕事人だー、って皆言ってるよ。まぁ、ギルドには変な人も多いからね」

 

ほー、いつの間にやらそんなことに

ということは、俺にも春が近いの

 

「顔はタイプじゃないって、女の子は皆言ってたけど」

 

ですよねー

 

「はぁ・・まぁ、分かった。つまり、フレデリカさんはこのシグ村の調査を先にやってくれているんだな?」

 

「そういうこと。危険だから、周辺調査だけだけどね。この印のところで待っているはずだから、村の内部に入る前に情報共有してもらって」

 

「了解だ」

 

その後、フィアに報酬等の確認をし、俺は席を立つ

 

「あっ、そういえばさ」

 

すると、フィアが俺の方に近づき、顎を肩に乗せてきた

 

「ど、どうしました?フィア王女様?」

 

「会った時から気になってたんだけど、君から君じゃない匂いがするんだ。特に頭から。今日、誰かに会った?」

 

俺が突然のことに戸惑っていると、フィアが耳元でそう呟く

少し擽ったくて、身を捩る

 

「あーもう、暴れないで。で、誰に会ったのかな?誰かに頭とか触られた?」

 

フィアの腕が俺の背中に回る

抜け出そうとするが、全く腕が動かない

 

(そういや、こいつ力だけはゴリラ並みだったな!それにしても、俺の頭触った人?今日会ったといえば、ハルカちゃんに、グスタードさん、ミラニアさん、依頼人のおっちゃん、ジジイに・・・あっ)

 

「そういえば、今日ルナさんに頭撫でられたわ」

 

「ルナ・・・・あの腹黒女豹か。分かったよ。元々渡そうと思ってたけど、はいコレ。」

 

俺の言葉を聞くと、フィアは俺を解放して持ってきていたバッグから何かを取り出した。

 

「ん?何だこれ」

 

「シャンプーだよ。君が身体を洗える時間もないほど忙しいってマスターさんに聞いたから、せめていいシャンプーを使ったらどうかなって思って買ったんだけど・・どうかな?」

 

「いや、めっちゃ有難いけど・・・。後で何か請求されるとか無いよな?」

 

「ふふっ、心配しないで。何も請求しないから。今はね。じゃあ、今日のところはこの辺でお開きにしようか。それじゃ、依頼の方よろしく頼んだよ」

 

そう言って、フィアはいつの間にか来ていた馬車に乗り込んで、去っていった。

 

 

 


 

 

 

 

「ふふっ、彼と話すのはやっぱり楽しいなぁ」

 

馬車の中で、一人そう呟く

王女ではなくただの友人として接してくれる彼

甘い物を食べて幸せそうな顔を見せてくれる可愛い彼

そして・・・守る側だった私を、助けてくれた王子様のような彼

 

「絶対に誰にも渡さない」

 

あの女豹にも、毒花にも、狂人にも、誰にも

 

ただ、彼にはまだ実績が足りない

私の横にいて良いと万民が認める実績が

 

本音を言えば、万民なんて気にしたくない

今すぐ王女なんて肩書き捨て去って、彼を匿って僕の愛を刻みつけたい

でもそんなことをしたって、彼から本当の愛なんか貰えないことは理解できる

 

だから、彼に自分のところまで登ってきてもらおう

彼に依頼を与え、実績を積み重ねてもらおう

 

そして、そして、その先で

 

「待ってるからね、イェク君。頑張った報酬は僕が余さずあげるから」

 

 

 

 

 




大変、遅くなりました
実は書く意欲を失っていたんですが、久しぶりに感想欄を見たところ、有難い感想を頂いていたことに気づき、急ぎ執筆しました
そのため、誤字・脱字がある可能性が高いので、あれば報告お願いします!

また。この世界の通貨は、1小銅貨=1円で、10小銅貨=1銅貨、100銅貨=1小銀貨、10小銀貨=1銀貨です。(つまり、1銀貨10000円) この先にも小金貨、金貨がありますが、日常生活で使われることはほぼ無いです
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