ダーウィンズストーリー   作:R,n

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第十話 エイス

ウエノアキラへの動画投稿が行われてから2日後、

またエイスから動画投稿が行われた、今度は学生を対象にだ

シギルも使用し指を切り落としている、以前の動画の件もあり

 

世間の彼らに対する注目意識は想定以上に増加してしまっている……

先日のとある埠頭近辺での乱用騒ぎも相まって…だが

……倉庫内部には二人分の遺体と、昏倒したエイスメンバーのみがおり、

通報者の少女の姿はその場には無かったらしいが……

 

そんな事考えている最中、鑑識の人間が唸りを見せる

 

「うーん………今回のこれもこりゃ本物ですね、加工された痕跡は一切ないですよ」

「撮影場所が知りたいのだが……」

「でしたら多分湾岸の貸し倉庫かな…ほら、画面のここにウミネコ映ってるんで」

 

そう言いながら画面を拡大すれば屋根の向こうにウミネコが飛んでいた

そうか……今度は湾岸か……すぐに部隊を招集しなければ

 

「しっかしこの動画、出所は何処なんです?」

「以前と同じネットの動画サイトにアップロードされていた、 もう削除されたがね」

 

そう言いながら私はそばに居たタゴナカ君と共に軽く頭を下げて離れようとすれば、鑑識の人間が声をかけてくる

 

「それにしても綾小路警視がなんでわざわざ鑑識まで?」

「……いやなに、今は少数精鋭のチームで動いていてね、いやなに参考になった……ありがとう」

 

そう言いながら、私は改めてタゴナカ君と共にその場を後にして外へと向かう

外を歩いている中で、タゴナカ君へ尋ねてみるか

 

「どう思う?」

「十中八九例のエイスの連中で間違いないかと、スドウ君への怨恨ってとこですかね……スドウ君と接触すらチャンスやもしれません」

「しかしま、少人数の特命チームというのはよかったですなぁ」

「別に嘘は言っていないし、上も認めていることだからな」

 

そう言いながらメガネに手をかけて位置を戻し

 

「少々シギル——強制執行(ピースメイカー)を使わせてもらったがね」

 

駐車場に置いてある私の車へと辿り着き、ドアを開けて乗り込みながらも話は続ける

 

「しかし守備よくスドウ君に接触できたとして——問題は、彼がこちらが望む協力をしてくれるかどうかか」

「俺の印象では話せばわかるタイプだと思います、ですが同時に意志が強い少年だとも……」

「意志が強気優秀な少年か………味方にできれば頼もしいが……」

 

しかし、うまくて名付けられなければ……さて、どうするか………

そんなことを考えながら、タゴナカ君が乗り込んだのを確認し、私は車のエンジンをかけ走り出す……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「クソッ!クソクソ!クソクソ!クソッタレが……!」

 

ガンガンとコンクリートで出来た壁になんでも拳を叩きつける、クソっ、ツクヨミの件でわかってただろ!王は周辺人物を攫う……!くそがっ!

怒りは収まらず拳を何度も壁に叩き続ける

 

「やめろカナメ、自分で自分を痛めつけてどうする」

「あのクソ野郎俺のダチの指を飛ばしやがった!ぜってぇぶっ殺てやる!」

 

リュージに体を抑えられ、拳を止められるが怒りは収まらず、

当てつけるようにリュージにそう叫べば、

 

「大丈夫だ、あの程度の怪我ならカエデの姐さんに頼めば楽勝で治るさ」

「それに——王の野郎をぶっ殺すって話は大賛成だ、あの特大のクソをこの世からお掃除するのは俺の仕事だからな」

 

笑いながらそう言うリュージに俺は幾分か怒りが収まり大人しくなる……

最も、一番の怒りはリュージやツクヨミの件で分かっていたはずなのに、警戒できなかった俺自身に……だが……

 

「………」

「あ、あの……ところで、雪蘭さんやツクヨミさんには連絡が取れたんですか?あの人達の力を借りれたら……」

「雪蘭とツクヨミか…」

 

静かにリュージを見つめる俺に、スイがそう声をかけてくる……確かにあの二人の力は強い……だが両方とも連絡がつかないのがな……

 

「雪蘭もツクヨミも、あれから連絡ついていない、時間的には当てにできないな……基本的に俺たちだけで——」

 

そう言ったところで扉が光レインが帰ってくる……

どうやら情報もしっかり手に入れられたようだ

 

「必要な情報は全て手に入れました、作戦会議を開始しましょう」

 

そう言って、俺たちは奥の部屋へと入り会議を始めた

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

目標の倉庫が見える少し離れた埠頭に、俺たちは車を止めて待機していた、エイスの奴らの様子見として……あいつらから追加で何か要求がないか確認したものの、結局以降の接触はなく……

 

「っくそ、ポイントでも要求してくるなら交渉出来るかもしれねぇのに……」

「王の目的はお前の目の前で人質を切り刻む事だ、王ってのはそう言う男だよ」

 

双眼鏡で倉庫を眺め、様子を確認しているリュージがそう言えば、俺は再び怒りが湧き上がる

 

「クソッタレが!ツクヨミに引き続き俺にまでゲームに関係ねぇ奴を巻き込みやがって!」

「……カナメさん、大丈夫ですか?」

 

怒りにまかせ叫んだ俺を、レインが心配をしてかそう声をかけてくる

 

「あぁ悪い……大声出しちまって…俺なら大丈夫だ」

「いえ、そう言うことではなく……カナメさんはここ数日戦い詰めです、肉体的にも精神的にも疲労が溜まっているかと」

 

……そうか、確かにここ最近は戦ってばっかりだ……だが

 

「 わかってるよ……だけどエイスの連中にはこっちの事情は関係無いし……ツクヨミと比べりゃだいぶんマシだ…」

「………」

 

俺がそう言えば、心配そうな眼差しでレインが俺を見つめてくる……そして

 

「まぁ今はシュカさんが偵察から帰ってくるのを待ちましょう、それまで出来ることはありませんよ」

 

そんな風に結論をつけてレインが耳にかけている無線機に手をかけて

 

「シュカさん、無線の調子はいかがです?ちゃんと通じてますか?」

『なんだレインか、何の用?今忙しいんだけど』

「無線の調子を確かめただけです、オーバー………どうやら無線良好の様ですね」

 

と無線の調子を確認したところ、シュカから無線が入ってくる

 

『……レイン、見かけたわ』

「………見かけた、とは何を?」

 

主語が一切無いその言葉に、 レイン含め、一同困惑していれば、シュカから追加で連絡が入る

 

()()()()よ、今パーカー着込んで倉庫を見てるわ』

「なっ!」

「ツクヨミさんも来られたんですね!」

 

………別の情報口から知ったのか?………何はともあれ……向こうの目的も、王を殺す事だろう…………最悪向こうからアプリ経由で連絡をすることも返すことも可能か……

 

「シュカ、一旦ツクヨミは無視してくれて構わない、予定通り倉庫の様子を確認してくれ」

『オッケー!すぐ確認するね!』

 

そう言って、シュカからの無線が途切れる……

 

「しっかし、ツクヨミはともかくとして、雪蘭とは結局連絡が取れなかったな」

「当てにしちゃいないさ、ダンジョウさんがイヌカイを貸してくれただけ良いよ」

 

そう言って後部座席に座るイヌカイへと目を見やる

 

「悪いなカナメ、援軍が俺だけで……タイミング悪くウチもUROBOROSにクラン戦仕掛けられてよ…」

「…タイミング悪く、と言うより…連動した動きかもしれませんね」

 

申し訳なさそうに言うイヌカイに対し、何か考えているものがあるのかレインがそんな言葉を返す、エイスの奴が他のクランと手を組んだのか……?

 

「UROBOROSとエイスが同盟を結んだってのか?」

「我々が同盟に動いたようにエイスも動いた——勿論ただの偶然かも知れませんが」

「そうか……最後にもう一度確認すっけど……」

 

レインの言葉を聞きながら、イヌカイが俺たち相手に再度確認するようにそう尋ねてくる

 

「作戦の第一段階が人質の救出——第二段階が安全圏への脱出でいいんだよな?連中の()()じゃあなく」

「あぁ……それで良い……」

「カナメ」

 

苦虫を噛み潰したような表情の俺を見て、リュージが声をかけてくる

 

「わかってるよ!ツクヨミの件もあったのにぬるい考えだってのは!」

「………俺だって王の野郎はぶっ殺してやりてぇ……けど……エイスの奴らも皆殺しにするのは……なんつーか……踏ん切りつがかねぇんだよ……」

 

ツクヨミの、知り合いの親をあいつらに殺された、 けど……あいつ本人は相当苦しいはずなのに、あいつは誰一人殺さなかった、

俺はまだ取り戻せる……なのに、俺は……殺すのか……?

いや……王以外のやつは……

 

「まぁお前はそれで良いさ、俺だって王以外は眼中にねぇしよ、いずれにしろ王の野郎だけは殺す、その方針は納得してるんだろ」

「あぁ」

 

俺の顔を見て笑いながら、リュージの奴が改めて確認してくる……俺とリュージ、それにツクヨミの仇だ、絶対に殺す

そう決意したところでイヌカイが疑問を声に出してくる

 

「混ぜっ返すみてぇだが王の奴を殺れんのか?アイツのシギルは厄介だぜ」

「それは問題ない、もうアイツの底は知れた」

「ん……?……全員武器を隠せ、車が来てる」

 

俺とイヌカイが話している間に、リュージが角を曲がる車に気が付き武器を隠すように皆へ伝える、まぁ運良く誰も武器持ってなかったからすぐに済んだが……

 

「ど、どうしましょう……エイスの人達でしょうか…!?」

「落ち着けスイ、偶然通りがかった一般人かも知れねぇ」

「今はDゲームで封鎖しているわけじゃありませんからね……やり過ごしましょう」

 

そうレインが言ったところで、俺たちの側で車が止まる、どうやら俺たち目当て……か

 

「チッ、俺らが目当てかよ……」

「何モンだ?エイスって感じじゃなさそうだが」

 

そう言って二人の人間が降りてくるとそのうちの一人に、 俺は見覚えがあった、タゴナカさんだ

 

「みんな、少なくともエイスじゃねぇ、一人は見知った顔だ」

「知り合いか?」

『——カナメ!カナメ!ちょっと予想外の事態っぽい!どうしたら良い!?』

 

俺が答えようとしたところで焦ったような声色のシュカの通信が割って入る

 

「ちょっと待て、シュカの方でも何かあったらしい……」

「面倒ってのは重なるモンだな……」

「シュカ、何があった?」

『それが——警察がすっごい数でエイスの倉庫を囲んでいるの!』

 

シュカの通信を聴いている中でタゴナカさんたちは俺たちに近づいて、相方さんが懐から警察手帳を見せながら声をかけてきた

 

「スドウカナメ君——だね、少し話を良いだろうか」

「まず所属と名前言えよ」

「私は警視庁のアヤノコウジだ、君はマエサカリュージ君だったね、悪いが今はスドウ君に用があってね」

「なっ……」

 

リュージが名前を言われて驚いている……くっそ、あっちは十全にこっちを下調べしてんじゃねぇか……不利にも程がある

 

「シュカ、こっちにもお客さんだ、こうなった以上偵察はもう良い、作戦を第二段階に進めてくれ、指揮はレインに引き継ぐ」

『むー、了解にゃぁ〜』

 

そう言って無線を切って、アヤノコウジさんへと向き直りつつ、 小声でリュージへと話しかける

 

「リュージ、いつでも車を出せるようにしてくれ、後連中の言葉に嘘があったら、通信で頼む」

「了解だ大将」

 

リュージの言葉を聞いてから、俺はゆっくり車を降りて、アヤノコウジさんたちへと歩き、ある程度の距離がある場所で立ち止まる

相手のシギルが分からない以上近づきすぎるのは悪手だ

 

「綾小路さんとは初めまして、そっちのおじさんとは2度ほど会ったっけ、俺んちと——シブヤのイベントで…」

「その節は世話になったのぉカナメくん、お陰で命を拾わせて貰ったわ」

 

そう言って笑顔で手をあげるタゴナカさんを見て、俺は軽く微笑んで

 

「そりゃおじさんの運が良かったんだよ、それにしても——警察にDゲームプレイヤーが二人もいるとは思わなかったけどね」

「それで俺を逮捕でもしにきたのかな?

 

そう煽りを見せながら笑顔を見せれば、相手も軽く微笑んで見せて

 

「なるほど逮捕か、今日はあくまで任意での聴取という奴だよ、それとも何か逮捕されるような心当たりでもあるのかな?」

「いやー心当たりはねぇなぁ、これでも善良な高校生でね」

 

まぁ実際はこのゲームをやってるプレイヤー同士だ、この会話も実際は形だけで……お互い心当たりはいくらでもあるだろうけどな、俺だって銃を持ってるし撃っている

 

「それで、あっちで倉庫を囲んでいる警察……あっちもお二人の差金って事だよな?」

「それは少し違う、彼らは私の部下では無いし当然指揮官は別にいる、情報を提供し、準備を行わせたのは確かだがね」

 

そう言いながら倉庫を眺めている俺に対してリュージからの通信が入る、

どうやらこいつらの発言には何処にも嘘は無いらしい

 

「うーん、どうにも話が見えねぇなぁ、それじゃ結局何のようなわけ?」

 

俺が本題を聞くためにそう切り込めば、アヤノコウジさんは少し黙ってメガネを構える

 

「昨日、高校の敷地内から誘拐された高校生シノヅカヨウタ、目撃証言と防犯カメラの画像から、犯人はエイスと名乗る犯罪グループの一員と判明、そして現在シノヅカ君を人質に湾岸倉庫に立てこもっており——」

「君達は友人であるシノヅカ君を救出すべく行動をしている」

 

警察らしい物言いで、淡々と言葉を告げていく……なんだ?何が言いたいんだ……

 

「こっちも立て込んでてね、長い話なら切り上げさせて貰うぜ、任意なんだろ——」

「この事態はッ‼︎」

 

俺が踵を返して車へ戻ろうとしたところでアヤノコウジが声を荒げる

 

「明白な刑事事件でありッ‼︎日本国の治安そのものへの挑戦だッ‼︎一介の高校生が自力救済を試みて良い事態ではないッ‼︎」

 

腕を広げ、明らかな憤りを見せながらアヤノコウジは俺へと告げる……なんだ、つまりは俺に【諦めてシギルも持たない警察の様子を見てろ】って言いたいのか?

 

「ハァ⁉︎なら俺のダチを救い出してくれんだろうなッ⁉︎ご立派な警察様がッ‼︎」

「賭けても良いぜッ‼︎このままじゃあの囲っている警官達は皆殺しにされる!あのクソッタレなエイス共にな‼︎」

 

暫くの間、俺とアヤノコウジの間に無言が流れる、そして……アヤノコウジが口を開く

 

「それが我らの()()だ」

「………!……あんただってDゲームプレイヤーだろうが」

 

警察を見殺しにするのが責務だ?んなのは責務じゃねぇ、ただの怠慢だ……!

 

「スドウ君、我々に協力しろ、この馬鹿げたゲームを終わらせたいだろう?」

 

その言葉に俺は詰まる……確かに、俺はゲームを終わらせる為にクラン——サンセットレーベンズ——を設立した……だが……そう考えているうちにレインから通信が入る

 

『カナメさん、状況に動きが入りました』

「レイン、どうした?」

『それが——一人倉庫から出てきました、あれは……エイスの【空手使い】ケーイチです……!』

 

クソ、以前話してた奴らか……戦況は悪そうだが……!

 

「レイン、戦況を教えてくれ」

『ケーイチが警官隊を圧倒していますが……フードを被った何者かが乱入して警察の死者を防いでいます……!警察に何かを指示していますが……あの様子では……そう長くは持たないかと』

「……おい、刑事さんよ、あんた達のお仲間はそう長くは持たないぜ、あんた達の責務とやらで乱入者が居なかったら全滅になってただろうし、あんたらの作戦のせいでこっちの作戦も滅茶苦茶で、全く良い迷惑だ」

「これで満足か!すっとこメガネの刑事さんよォ!!」

 

俺がレインからの無線を聴いて、声を荒げてそう良いが、 相手は冷静さを保って言葉を返してくる

 

「君の返事を聞かせてもらって居ないが、我々に協力してこの馬鹿げたゲームを終わらせるかどうか」

 

返事? 返事だと? 答えは決まり切っている

 

「答えはNOだ!アンタたちは信用できねぇ!」

 

そう言って俺はすぐに車へと駆け込んでシートベルトを閉め

 

「リュージ、出してくれ、こうなりゃ警官隊とフードを囮にして作戦決行だ」

「オーケーボス、飛ばすぜ!」

 

そう言いながらリュージはアクセルを踏み込んですぐに車を走らせる……

シノヅカ、ぜってぇ死ぬんじゃねぇぞ……

 

 

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