神がつくったものとしては人間は無常すぎ、不完全すぎる。
しかし自然が生んだとしたら、あまりに傑作すぎるように思うのだ』
武者小路実篤 「人生論」より
「うわうわ……無傷で勝っちゃったよカナメきゅんのクラン………!」
「こりゃいよいよ本格化かなー、関東圏——いや、日本でも最強の一角かもしれないなー」
「………ふふふ……凄いなー彼は、きゅんきゅんしちゃうなー」
そう言いながら画面を眺めていたら、彼から電話がかかってきた
「やぁもしもし」
『オボロ君、今電話大丈夫かい?少し時間を頂きたいんだが』
「丁度今暇してるところでさー、所で僕の事はオボロンと呼んでくれよ、親愛の情を込めて、ポポロンと同じ発音でね」
『………まぁそれはともかくだ』
「あー相変わらず釣れないなー、君は……それで今日は何の要件だい、ゲームマスター」
『ゲームに大きな進展があった、それについて少々相談したい』
「ひょっとしてカナメきゅんとツクヨミきゅんの事かな?それなら僕も丁度観戦してたよ」
『察しがいいな……彼らを【特別観察対象】にする、だから手を出すなよ、オボロ君』
「何だつまらないな、死んだ王の代わりに二人も?」
『いいや、それとはまた違う、王を特別観察対象にしていたのは彼が台風の目になってくれそうだったからだ、そして目論見通り彼のおかげでゲームは停滞せず、因縁となってスドウカナメ、ウエノアキラ……いや
ゲームマスターの話を聞いて、僕はゆっくりと二人の顔をおもいかえす
「なるほど……それで、要件は僕に釘を刺す事だけかい?やっぱりつまらないじゃないか」
『いや、もう一つ、いよいよゲームを次のステージに進める事にした、君にも大いに手伝ってもらうよ』
『
「そう来なくっちゃ!」
そう言って僕は血だらけでゴミで汚れた教会の椅子を立ち上がり、ツカツカと歩き始める
「さて、いよいよ次のステージか、この
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クラン【エイス】が潰れてから早1週間が経とうとして、
皆随分と疲れているだろう頃に、シュカさんが1枚のチラシを持ってやってきました
「ねーねーみんな!みんなでさ!夏祭りとか行ってみない!?」
「はぁ?夏祭り?……夏祭りか……んなもんどこでやってんだよ」
「浅草だって!」
リュージさんが不思議そうに尋ねると、シュカさんが差し出すチラシを見てみると、どうやら浅草に神社でお祭りがあるようです、
期間は今日から1週間のようで、結構長い間やっているみたいですね
「………そうですか、安全に気をつけてくださいね」
そう言って部屋着姿の私が、いそいそと自室へ戻ろうとした所で、
ガシリとシュカさんに肩を掴まれる
「レインちゃんも勿論いくんだよ?」
「え、でも仕事が………」
「仕事なんて後でもいくらでも出来るよね??」
「で、でも急な案件とかが入ってくる可能性も……」
「ん???」
幾ら逃げようと理由を捏ねてもシュカさんは一歩も譲らず、しょうがなしに折れて私もいくこととなってしまう………
しかしまぁ、クランのメンバーもそれほど居ませんし、
まぁ大丈夫でしょう……………そう思っていたのですが………
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完全に騙されました、私は折れると見込んで浴衣を用意しているのはまだよかったです、その上で、浴衣を着せられて………
「よう、レインにリュージュ………お前も結構似合ってるなぁ」
「おう、そっちもな……カナメは誰にやってもらったんだ?」
「俺の方は士明さんにな、あの人着付け上手かったんだよ」
……………カナメさんにツクヨミさんまでいるじゃないですか………!
カナメさんも綺麗な和服を着込んでおり、おそらくはシュカさんの差金でしょうが…………ツクヨミさんに関しては………
「……ん?どうした? レイン」
「………いえ、ツクヨミさんは普段と同じ格好なんだな……と思いまして」
少し膨れたような、むくれたような表情でそう返せば
「まぁそりゃ俺まで油断してりゃ、いつ襲われても迎撃できるようにはしとかなきゃだし……」
「………」
至極真っ当な理由を返されたのでモヤモヤとした気分を、拳へ乗せて
ツクヨミさんの足へと叩きつける
はぁ、私だって本当は私服で行きたかったですよ……!
そう考えていれば、私が叩いた部分を摩りながらツクヨミが苦笑を見せて
「ってて……あぁ、でも………その浴衣、レインにによく似合ってるぞ、良かったな」
そう言いながら、ポンと優しく頭に手を置かれる……ほ、褒められた……
す、素直に嬉しいですが……なんだかこう……アレですね、まるで馬鹿にされた時のような感覚が胸を襲いますね……
耳が赤くなって、頭に血が登って………そう考えていたら
「おいツクヨミ!こっち来いよ、射的あんぞ!」
「なにっ!?」
「俺たち3人で誰が一番落とせるか勝負しようぜ!」
「じゃぁサイズでポイント決めようぜ」
リュージさんとカナメさんに呼ばれ、男子3人で楽しくはしゃいで、ぎゃあぎゃあと射的屋の前ではしゃぎ出す………その様子を見て、私の怒りは落ち着きを取り戻す……何度か深呼吸を行った所で
「レーインッ!」
「ひゃっ!?……な、なんだシュカさんですか……!」
「レイン〜、なんだか顔赤いよー?大丈夫〜?」
「ま、待ってくださいシュカさん……!」
急に背後から抱きつかれ、後ろを振り向けば着物を着込んだシュカさんと
同じく着物を着込んで髪をまとめているスイさんがそばに居た、シュカさんは赤い着物に黒い簪で髪を纏め、スイさんは淡い水色の着物でこちらはポニーテール風に髪を束ねていて
「べ、別に……少々馬鹿にされた様で出ていただけです……」
「そっかぁ〜、馬鹿にされてたんだ〜……本当かにゃぁ〜?」
「シュカさんっ!」
シュカさんがにへらと笑う姿を見れば、なぜか私は真っ赤になってそう叫び、叫んだ瞬間シュカさんは急いで走り出してしまい、私とスイさんは急いでシュカさんを追い掛ける………
そう、ただ……ただ馬鹿にされていただけなのに、こんなにも真剣に走って……
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「っかー、結局俺の成果花火だけかよ〜!」
「まぁまぁ、途中で綿飴食ったんだから機嫌直せよリュージ」
「まぁ俺は小箱だけだったけどな」
そう言いつつリュージは片手に花火の袋、カナメは手に大きなテディベアのぬいぐるみを、そして俺はと言えば手に小さな小箱を持って祭りを楽しんでいた女性陣に合流した
「ようシュカ、待たせたな」
「ん〜ん!全然!それより花火とチャッカマン買ったからさ!花火しようよ!」
そう言うシュカの背後では、大きなコンビニ袋に入った大量の花火を抱えるスイと、買ったばかりであろうからのバケツをレインが抱えていた
「なんだ、そっちもか……こっちも花火あってな……せっかくだし全部一緒に燃やすか」
「お、大量ですなぁ……それでカナメ、そのテディベアは?」
「コイツは射的で当てた景品……シュカにやるよ」
そう言ってカナメはシュカへと大きなテディベアを渡しシュカはと言えば
「………ーーー〜ーっ!ありがとカナメッ!」
とカナメに抱きついている様子だった……暫くしたら来るだろう、そう考えて俺は声をかける
「俺たち先屋上で花火やってるからな〜?……ほら、みんな行くぞ」
「あいあい、じゃぁ行くか」
カツンカツンと屋上へと登り、静かな風の漂う中で、俺たちは花火を始めた
「オラ、スイッ!コイツはどうだ!」
「わっ凄い!綺麗……!」
リュージは射的で手に入れた花火パックから、七色に光る花火を出してスイを驚嘆させて笑っていた、他にもいろいろな花火を付けては見せて、付けては見せてを繰り返しており……あの様子はまるで………
「スイとリュージってなんか兄妹みたいだよなぁ」
「そうですね……ただ、スイさんはそうとは思っていないかもしれませんが」
「…………かもなぁ………リュージも人たらしだよなぁ」
スイは花火を見ている……と言うよりは、どちらかと言えば、リュージへと目線を向けている様に感じる………その様に他の人間の様子を観察しながら、俺とレインはのんびり線香花火を灯していた
「知っていますか?ツクヨミさん、線香花火の燃え方には呼び名があるのです、蕾、牡丹、松葉に散り菊といって——」
そういって、レインが話し始める中で、俺は射的の景品を改めて手に取って眺めていた………そしたらまあ話終わっていたのか、ひょいと視界の端からレインが顔を覗かせて
「何ですか?この箱」
「あぁ………いや、射的で貰ったんだけどな……」
「へぇ、景品ですか……見せてみてくださいよ」
そういって開けるよういってくるレインに俺は躊躇するが、
まぁ別に揉んだはないだろうと思って小箱を開ける、そこには……
「……指輪のネックレスですか?ずいぶん細いですが……」
「なんか、お互いのネックレスについてる指輪を合わせれば、一つの指輪になるのだと」
小箱には二つの細い指輪を付けているネックレスが、2つほど折りたたまれて入っていた
店主曰く【友達同士の贈り物に最適】って事らしいが……送る相手はなぁ
「まぁっていっても渡す相手も居ないから、どうしたもんかと思ったが…」
そう俺は話している間に、レインはいつの間にか指輪に見惚れていたようで、ぼーっとした様子でキラキラと目を輝かせながら、指輪を見つめていたので……ふと俺はいい事を思いつく
「なぁ、レイン、このネックレスいるか?」
「……え、良いんですか……?」
「レインも女の子だし、こう言うの欲しいだろ」
「………じゃ、じゃぁ………」
といって、レインはネックレスのうち一つを手に取り、ゆっくり首に通して見せ、チリンと胸の間で指輪同士が擦れて小さく音が鳴る
「………お、似合ってるぞ、結構いいな」
「………また馬鹿にしてます?」
俺が素直に褒めれば、少しむくりと膨れっ面をしたしまい、
レインは睨むようにこちらを見つめる
その様子もまた可愛らしいが………なんでそう思われてるのかわかんないな………
「………一応言うけど、マジで綺麗だと思ってるからな?」
「………なっ」
ぽりぽりと後頭部を掻きながら、ため息がちにそう言えば、
レインは少し言葉に詰まって悶えるようにそう呟き、
しばらくして自身が手にしている花火へと目を逸らす
…………うーん、こう言う時は純粋にこのまま捉えていいのか、 それともなんか別の要因なのか分かんないからなぁ ……レインちゃんの頭がいいから、俺じゃぁ判断が出来ないし……そう考えつつ、線香花火がぽとりと落ちて、俺はいそいそとバケツの中に放り込んで
花火の残骸の後片付けを始める
「ほらリュージ〜、そろそろ花火片付けるぞ〜」
「え〜?もうちょっとぐらい良いだろ〜?」
「もうド深夜なんだよ、さっさと片付けて眠りたいの」
俺がリュージにそう言えば、渋々といった様子でリュージも手伝い始め、
スイは自分から進んで片付けを手伝ってくれた……
ふと、背後を振り返れば、いつの間にかレインの姿は消えていた
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なんですか!なんですか………あんな急に褒めるなんて………
そう思いながら、私は必死に部屋へと戻り、息を整える……
走ったせいで胸がうるさい……とにかく、まずは服を着替えて……
まず、残った仕事を解消しなければならないですね……
私はそう考えながら、ゆっくりと着物を脱ぎ、部屋着えと着替えて……
………名残惜しそうに、浴衣を眺め……ハンガーにかけて壁に掛けて、
デスクの上にあるパソコンへと向き直った
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ケースDに対する第5次中間報告
レポート1、クラン『サンセットレーベンズ』について
クラン『サンセットレーベンズ』から全プレイヤー宛にメッセージが届いています
『告知』
『サンセットレーベンズが全Dゲームプレイヤーに発する。』
『一つ、エイスの旧領であるシブヤエリアは全てサンセットレーベンズの領地に編入する。』
『一つ、サンセットレーベンズの領地における許可無きDゲームを禁ずる。』
『一つ、禁令を破った者にはサンセットレーベンズ盟主スドウカナメの下に処罰する。』
前回のレポートでも触れたが、今から1ヶ月ほど前、クラン『エイス』を倒した新興クラン『サンセットレーベンズ』は日本エリアの全プレイヤーに対しメッセージを発信した
エイスの縄張りシブヤが巨大な空白地帯になった当日——各地で多くのクランが領地を得ようと行動すると、
サンセットレーベンズ各メンバーの襲撃に遭い、クランフラグを破壊され、メンバーも壊滅状態となってしまう
当日にその戦力でエリア支配権を確立し、その後に散発的な小競り合いも起こるが数日で完全に終結する
ここでサンセットレーベンズの戦力評価について触れておく
プレイヤーネーム:シュカ
本名:狩野朱歌
年齢:16歳
両親と死別しており2等身以内の親族係累は無し、
目下サンセットレーベンズの最大戦力と目される少女
保有シギルは鎖を自在に操る念動系である
プレイヤーネーム:レイン
本名:柏木鈴音
年齢:13歳
別名解析屋と呼ばれるフリーの情報屋だったが、クラン参加後は休業状態にある、極めて得意な情報処理系のシギル使いであり、接触には細心の注意を要す
戦闘では狙撃銃を用いる、実戦下で2000m超長距離狙撃を成功させたと言う情報あり
プレイヤーネーム:リュージ
本名:前坂隆二
年齢:21歳
個人戦では27戦19勝と言う戦績を残し、弟と二人でクランを結成するが、弟の死後サンセットレーベンズへと加入、
戦闘では主に機関銃による制圧射撃を担当する
保有シギルは不明であり、こちらも警戒すべき対象である
プレイヤーネーム:スイ
本名:不明
年齢:10歳前後(外見からの推測値)
ノーマークだったプレイヤーであり、身元などについては目下捜査中である
Dゲームの個人戦績では2戦0勝と交戦的なプレイヤーではないが、水と氷に特化したシギルを持ち、その能力が生物の体内にも及ぶとすれば、あらゆる生物にとって致命的なシギルと考えられる
プレイヤーネーム:
本名:上野晶
年齢:29歳
恐らくサンセットレーベンズに加入していると思われるメンバー
当日のシブヤでの他クランの撃退時には顔を見せていたものの、
以降サンセットレーベンズと関わる事なく、シブヤやアキハバラなど各地を歩き回っているため、目標の操作が必要である
保有シギルは不明だが、噂では凄まじい力を持っていると話される
以上の強力な戦力を率いているのが『スドウカナメ』と呼ばれる最大の要注意人物である、Dゲーム個人戦績全勝の強豪プレイヤーであり、シブヤ宝探しイベントの唯一の勝利者でもある
シギルについてはアポーツとの分析もあるが、未確定
17歳の日本人、須藤要として日本の高校に通っていたが、その戦績やクラン組織化の手腕を見ても、相当高度な訓練を受けていると思われ、平凡な経歴は入念な偽装の可能性が高い
『ダンジョウ拳闘倶楽部』のアレクセイ・ベルジェンニコフとの関係性から、ロシアの工作員である可能性を念頭に、現在調査中である
また、彼が宣言したDゲーム禁止令についてだが、私は当初実効性の無いものと考えていたが、これは誤りであったと認めざるを得ない
サンセットレーベンズのDゲーム禁止令に対し即座に同盟クラン、『ダンジョウ拳闘倶楽部』が追随したのだ、そして両クランがDゲームのアイテム 『クランシェルター』を一般プレイヤーに解放すると、
瞬く間に関東エリアにおけるDゲームが90%以上減少したのだ、極めて鮮やかな政治手腕であり、スドウカナメというプレイヤーの特異性を表している、またイベント戦の勝者である彼は、D主催と接触を持った可能性も高い、今後は責任担当者をつけ、重点調査すべきであると具申する、
またサンセットレーベンズの調査過程において、A級暗殺者である劉雪蘭が彼等に接触したと言う未確認情報あり、特記事項として付け加えておく
——この様に、淡々とタイプライターを打ちながら、私は肩を回し、執筆を続けていった
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暗い夜の中、俺はリュージやスイと一緒に車の中にいて、アイスをしゃりしゃり食べていた、冷たいアイスが口の中を冷やし、頬を冷たく撫でる中でリュージがこう話しかけてくる
「………っかし、本当にお前のシギルはチートだよな……俺もお前みたいなシギルが欲しかったぜ」
「つってもなー、普通じゃろくすっぽ使えるものじゃないからなぁ」
そう言いながら俺はスマホを取り出して、メモ帳を開く
キーボードをタップして、文章を書いていき……また仕舞う
「で、でも本当凄いですよ……い、いろんなシギルを使えますし……」
「ありがとね、スイちゃん……まぁ、便利で多能だから、こうやって駆り出されるんだけどな」
「……ま、メリットばかりじゃないらしいしな……っと、ツクヨミ、病院が燃えだした……行くぞ」
スマホを取り出してみれば、どうやら既にエンカウントバトルが行われている様であり、 俺のスマホには病院内を駆け回る二つのアイコンが映っていた
「あぁ、今スズネちゃんが戦ってる……怪我しないうちに助けるぞ」
そう言いながら俺は今行われてるゲームへと乱入した
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ガシャンと二人の間に壁を壊して滑り込み、車体に液体が降り掛かり燃え上がる
その中をリュージはガスマスクをつけながら、俺と一緒に降りて目の前の女を見つめ、構え込んだ
「サンセットレーベンズのリュージ並びにツクヨミ、訳あって助太刀するぜ」
「アンタはクラン、『オリーブツリー』所属の毒使い、レッドバイパーだよな?……まさか、養殖をやるとはなぁ」
俺とリュージが目の前の医者に睨みを効かせつつ、リュージはその隙にスイへと声をかけて
「悪いけどスイ、この火消しといてくれ、俺の愛車が漕げちまう」
「焦げたら俺が貰ってやるよ」
「馬鹿言え」
そう和気藹々と話していれば、スイは灯油缶を少し溢し、火を覆う様に水を操って、ソータのシギルで火を凍らせる
その様子を見て目の前の医者は少し震えて言葉を紡ぐ
「……なんでサンセットレーベンズが横槍を入れてくるのよ……!貴方達の縄張りはシブヤでしょ……!」
「そっちの娘の親父にちょっと借りがあってね……Dゲーム——それも養殖に巻き込まれたとあっちゃ放ってはおけねぇのよ……さてと、んじゃぁおっ始めようぜ」
とトリガーを引こうとした瞬間、既に脱兎の如く駆け出して、姿が見えなくなっていた……そこでリュージが追いかけようとして
「リュージ、お前はスイと一緒に車に居ろ、あの程度だったら俺一人で型が付く」
「………そうか、じゃぁ分かった、精々苦しめてやるなよ?」
そう言いながら、リュージが車へと戻り、スイと一緒にスズネさんを介抱している中、俺は病院の入り口前へと歩き始め……病院の外の道路に立ち尽くしている姿を発見した
「さて、そっちが手早く降参してくれるなら、俺は良いんだけれど——」
と言っている中、医者の女は腕に注射を刺してから、中身を注入し投げ捨て、懐から蓋の付いた試験管を投げ飛ばしてくる……咄嗟に俺は身を捩って避ければ、女はすぐに駆け出して……俺自身はコレはどうでも良いからな………裏技を、行使するか………そう考えながら、俺は体に植物を巻き付かせていった
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あの男、よく躱すわね……用意した投擲具は残り二つ……無駄遣いはできない……けれど今の私は圧倒的なパワーを保有している……あんな男だって枯れ枝みたいに縊り殺せるわ……
そう考えていれば、 足音を立てずに、植物を体に纏わせ装甲の様にしている男がやってきた……もっと、もっと森へ入り込みなさい……!
私がそう考えている瞬間
『……知っているかね?植物は周囲の気候に適応するため、その多くが周辺気温を感知する方法を持っている』
先程とはまた違った口調で、そいつが話し出している……おかしい、
先ほどから山道を歩いているのに、あの重量感で一切枝を踏む音どころか……草を踏み鳴らす音がしない……?
『では実際どうやって周辺温度を探るのか……その一つとして、 樹木や植物の葉の温度を参考にし、植物自身も体温を変化させると言うわけなのだ………まぁ詰まるところだ……』
『森に逃げ込んだ時点で君は既に詰んでいる』
その様な言葉が聞こえた瞬間、周囲の木々が音を立てて動き始め、枝や葉が、私の両手足と体に巻きつき拘束してくる……!?
咄嗟に私は引きちぎろうと力を込めるが、幾ら引こうが千切れることなく、より強力に手足を締め付けられ、私は大きく悲鳴を上げる
「ぐぁぁぁぁぁっ!」
『……よくも、
そう言って、男の手が私の首にかけられた……そんなところで、するりするりと男の体から、植物が離れていく……そして……
「………『花屋』さん、悪いがここまでか……後は、俺が締めておいてやるよ」
急にまた豹変したかと思えば、ギリギリと手足が締め付けられる力が強まって
「ま、待って!分かった、分かったわ!ポイント、ポイントが欲しいんでしょ!?あげるわよ!」
「………ポイントは要らないな」
そう言いながら、私の両足がばきりと音を立てて捻じ曲がり、ギリギリとその上で膝を起点に回される……痛い、痛い痛い痛い痛い!イタイ!
熱い熱いアツイアツイ!
「っぐぁぁぁぁぁっ!」
「俺は優しいからな、殺しはしてやらないよ………ただ、少なくともお前は今後まともな生活は送れないと覚悟しろ」
「だ、だめだめ………それ以上、それ以上足を回したら……足が千切れちゃ……だ、ダメ……やめて頂戴よっ!」
私が幾ら叫ぼうが、男は表情を崩さずに、蔦を操り味をギリギリと回し続ける、もう既に足は痛みで埋め尽くされている、ズキズキと折れた傷口が、捻じ曲がる筋繊維と神経が激しく痛みを訴え脳にズキズキと情報型になるほどの情報を伝え、吐き気が催す
「うぉぇっっ……ごぷっ……あ、あんた………まるで悪魔ね………」
「軽口が叩けるならまだ平気だなそら、両足だ」
「ぐぁぁぁっ…!」
胃の中を吐き戻し、男を睨んでそう言えば……ぶちり、と足が両足が、膝から先をむしり取り、だばだばと大量の血が溢れ出す……その様子を見て、男はため息混じりに手から火を出し、傷口を燃やす
「っぐぁぁぁぁぁっあぁぁ!あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"」
「……おいおい、 こっちはお前を生かしてやろうとして燃やしてんだぞ?いちいち煩く叫ばなくても良いだろ……」
そう言いながら、足の傷口にある熱さに悶え、痛みに叫ぶ私の声を無視して右腕がぼきりとなる
「ぇあ……?」
いつの間にか、右腕も折れ曲がれ、腕の骨が肉の中から外へと広がって出ていた、そのまま木の枝は、ミシミシと音を立てて骨を開いていき、もうすでに痛みさえ無い私の腕を、ちぎり落とす……
「ぁぁ……ぁぁあぁぁぁぁぁぁ!私の、わたしの腕がぁぁ!」
「だから死なない様にしてやるってんだろ………おら、コレで良いか」
そう言って、男はもう既に痛みや熱の感覚が麻痺しているわたしの右腕も焼き潰し、血が止まる様子を見てそう呟く
「あぁぁ…………あぁぁ」
「………あんたはコレで生涯このままだ、じっくり、今までの人生を考えろ」
「ま、まって……わたし、わたしは……」
男が森の外へ歩いていく様を見いて、ぶらりと宙ぶらりんの状態で、
助けを乞う様に見つめれば、べちゃりと木の枝が離れ、私は血溜まりの中に落とされる……まだ動く左腕で、必死に真っ赤な白衣を漁り、私は降参したのちに………
急いで救急車へと連絡を掛け叫んだ………
「た、助けて………手足が、千切れて血が流れて———」
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「——そろそろ本題に入りましょう、先に連絡した通り、今日貴方に来てもらったのは——」
「サンセットレーベンズ—要は、スドウカナメ君の件ですね」
そうカネヒラさんが首に手を当て、困った様な貼り付けた笑顔を見せながらそう言葉を返してくる
「えぇ、あの忌々しいDゲーム禁止令のおかげで、うちのクラブは閑古鳥ですわ、何せマッチング自体がほとんど成立しないんですもの」
「今や関東でまともにDゲームが出来ているのはダンジョウ拳闘倶楽部ぐらいですか、Dゲームを安全管理された試合として興行にしていますから」
そう言うカネヒラの言葉を聞き、ため息をつきながら私は顔を逸らして
もう一度深いため息をつく、
「あそこは既に賭け試合をやっていますから、胴元として食い込めませんし、大体うちの顧客が求めるのは試合ではなく『殺し合い』なのですわ」
「いやはや、カナメ君には感服しましたよ、一人でDゲームの様相を一変させてしまったのですから」
「………貴方さっきから余裕ぶっていますけど、商売上がったりなのは御同様では無くて?貴方の組合から人がどんどん抜けているってもっぱらの噂よ?」
余裕綽々と言う様子のカネヒラへ噂で聞いた言葉を尋ねてみれば
「ははは、とは言えカナメ君を排除するのもなかなか難しい………レーベンズの戦力は侮れません………何であのツクヨミさんがいらっしゃいますか」
「まぁ彼との一対一の状況を作れれば話は別なのですが……それに、そもそもの問題として——カナメ君の所在が分からない」
そう言ってカネヒラは手にした写真を机に落としじっくり言葉を紡ぐ
「私もそれなりの探りは入れているんですよ、ですが対エイス戦後んl彼の足取りがほとんど掴めない、シブヤエリアの制圧維持はカナメ君を除く5人で行なっている様ですし、実際戦力的にはそれで充分なのでしょう」
「彼のところにはロッポンギを一人で制圧した【無敗の女王】がいるものね」
「それと、ツクヨミ様もいらっしゃいますから」
何度も笑顔でツクヨミツクヨミと嘯く彼に、 私もどこか辟易してきてふと疑問をぶつけてみることにした
「………ところで、先程からツクヨミツクヨミと話しているけれど……彼はただの【無血の調停者】………言ったところで、人を殺すことすらできない逃げるだけ、拘束するだけの人じゃない?正直彼のプレイスタイルじゃ、お客様に見せられないから、たまに映る程度のちょっと噂を聞くプレイヤーって認識なのだけれど」
そう、ツクヨミはサンセットレーベンズがDゲーム禁止令を出す前から少し悩みの種ではあった、彼がバトルに現れれば、殺人が起きずまるでボクシングスパーリングを打ち合う様に、お互いが軽い攻防を起こすだけの戦いが起きてしまう
彼が居ても商売には多少影響はあったでしょうけれど………そこまで目につけるような人では………
「おや、テミス様はお知りではないのでしょうか………実は私、過去に一度ツクヨミ様と戦いを致しまして………その時、負かされてしまいまして………彼は、舐めない方がよろしいかと」
「っ………」
そう言って笑顔を見せるカネヒラの表情は、何処か怒りか、それとも恐れか、何かは分からないほどの感情が渦巻いて、咄嗟に私は体を震わせてしまう
「………しかし、カナメ君はサンセットレーベンズの本拠地に引きこもっているのか、そもそも関東エリアにいないのか……テミスさんが彼の所在をご存知なら、お伺いしたいほどですが」
「……わ、私も彼に居場所は分かりませんわ……でも——」
そう言って、私は紙を取り出し、カネヒラへと見せつけながらこう言って見せた
「貴方とスドウカナメ君が一対一で戦う舞台なら、用意出来るわ」
私はそう笑って、カネヒラへと微笑んで見せ
プレイヤーネーム:ツクヨミ
保有シギルを一部公開
保有
・シギル効果
シギル発動後の対象のと目を合わした場合、即座に対象の保有するシギルをコピーすることが可能、コピー上限は存在せず、コピーできるシギルに関しては念動系や精神操作系など、特定な物に限らず、多種多様なシギルを保有する事が可能である、尚このシギルで対象のシギルをコピーしたとして、コピー元の対象の能力の練度などは引き継がれないため、能力そのものを多用し練習するか、同系統の能力を使用し、感覚を鍛える事が必要となる
また、このシギル特有の注意事項として、多種多様なシギルを模倣する事はできるものの、シギルをコピーする際にコピー元の精神性も混ざってしまうため、能力のコピーのし過ぎは注意である、
また、同じ対象のシギルを何度もコピーした場合は、一時的に能力の操作感覚を把握し、オリジナルと遜色が無い程度の操作が行えるが、その場合はオリジナルの精神性に引っ張られてしまい、ツクヨミの魂がすり潰される可能性が存在する
また、このシギルが発言した理由として——『規制済み』が存在し、『規制済み』な為である
尚、本編で行った植物操作時の変貌については、ツクヨミのシギルの効果の一つである