ダーウィンズストーリー   作:R,n

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第七話 アンタッチャブル

「ちょっと!カナメが攫われたってどういう事!?あなた達それを黙って見ていたわけ!?」

「黙っていたわけねーだろ!悔しいが何も出来なかったんだよ!」

 

私が1人感情的に話し合う2人を見て、感情的になりかける私の思考を、幾らか冷静にしてくれることに安堵しつつ、一呼吸を入れ冷静さを保つ間、

2人の間には重い沈黙が流れしばしその場が静かになる

 

「それに正直何が何だか……少なくとも最初は友好的な話し合いだったんだぜ……?」

「2人とも冷静になってください、少なくとも2()()は無事——」

 

そう言ったあたりで、シュカさんの鎖が動き私の眼前で動きが止まる

 

「無事じゃなかったら少なくとも貴方の命は貰うわ、カナメがどうしてもっていうからクランに入れてあげてるけど、私は貴女の事あまり好きじゃないから」

「それはどうも、精々私も自身の有用性を証明するとしましょう」

 

私とシュカさんの睨み合いの中で、スイさんはどうにも出来ないようであわあわと震えて、その様子を知ってか知らずか私たちをリュージさんが諌める

 

「おいおい、とにかく今は俺らのボスともう1人のことについてだろ……攫ったって事は直ぐに命を取る気はねぇって事だろうが、あんまりのんびりも出来ねぇ」

「分かってるわよ……!」

 

リュージュさんの言葉に納得を示しつつ、シュカさんは勢いをつけて椅子に座り込む……事実直ぐには殺されないでしょうが、確実に殺されない保証はない……早急な救出が必要なのは確か……

 

「それで、結局何があったの?ダンジョウ拳闘倶楽部と同盟しに行って何で雪蘭——ランキング1位が出てくるのよ」

 

そいつがラスボスだと思っていた、そう言いながらも静かに私たちへそう尋ねてくる

 

「それについては私もわかりません……アンタッチャブルが現れた時はダンジョウ氏がこちらを罠に掛けたのかと疑ったのですが…どうやら雪蘭はダンジョウ氏の知り合い——いえ、むしろ氏のような存在らしいのです」

「どうやら雪蘭も我々同様協力者を探していて、渋谷のイベントの勝者であるカナメさんに目をつけた……それで私たち三人と、雪蘭さんと顔見知りらしいツクヨミさんを含めた4名で話し合いをする事になったんです」

 

私がそう言い切ると次はリュージさんが口火を開く

 

「で、その話し合いは初めのうちは問題なかったんだよ…大筋で利害は一致していたからな……だが——」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「断る」

「ほぅ、面白いなカナメ」

 

少し物々しい空気の中、カナメがそう言い切れば雪蘭は不思議そうな顔して、ツクヨミの奴は能天気にアイスを貪っていた……真っ当なのは俺とレインぐらいか…そう考えている間にも話は進む

 

「冗談で言ってるわけじゃねぇ、こっちも目的なくクランを作ったわけじゃなくてね、あったばかりの人間の風下に立つ気はない」

「目的はかなり近いと思うが?」

「だったらそっちがこっちのクランに入ればいい、ランキング一位なら諸手をあげて歓迎するぜ」

 

いつまで経っても平行線のまま議題は変わらない……つったってカナメの奴、アンタッチャブル相手に強気すぎねぇか?

まぁちゃちな駆け引きは見透かされそうな相手だがな……そう考えている隙にレインが口を挟む

 

「まぁまぁ、急いで結論を出す必要はないんじゃありませんか?今日のところはお互い持ち帰って充分に検討を——」

 

レインが冷静にそう言うが

 

「持ち帰る?持ち帰ったところで検討の余地はねぇぜ?」

「まだるっこしいのは好かぬ、決められぬ者ほど意味のない話し合いを好むものだ」

「ま、2人の性格からしてそう言うと思ったよ」

 

片や雪蘭を睨み、肩や静かにお茶を飲む2人の言葉を聞き、訳知り顔のツクヨミはそう声を漏らす……分かってんならさっさと横槍入れて止めてもらいたいもんですがね……そう考えていたら、空気が動く

 

「それにの、儂が持ち帰るのは戦果のみと決めておる」

 

その声が聞こえた時は、カナメとツクヨミの奴らの間に立っていて、咄嗟にカナメがシギルで拳銃を作ろうとした途端、バシン!と音が響く……みれば、いつの間にかツクヨミが立ち上がって雪蘭の手を止めてやがった……

 

「ほう、久しぶりに儂とやり合うか?主も儂は気に入っているのだ」

「ご遠慮いただきたいかなぁって、ここは穏便に……ね?」

「まだるっこしいのは好かぬと言っただろう」

 

そのようなおうしゅうの後、ばたりとツクヨミが膝から倒れ、雪蘭が身体を支えてやがる

 

「ツクヨミっ!」

 

咄嗟に俺とレインも立ち上がり、カナメも立って銃を構えるが……その数迅でカナメの背後へと回っていたのか、カナメの首に手を叩きつけてカナメの体が脱力する

 

「それではこやつらは貰っていく、お前達に用はないので帰って良いぞ?」

 

そう言って後にしようとする雪蘭に、俺たちは咄嗟に銃を構え、シギルを行使した、その瞬間……

 

()()()と音が聞こえた気がした、首に刃をたてられた、そのような錯覚を見てしまう……俺とレインはそれを食らって地面に倒れ伏してしまった、その様子を見て雪蘭はつまらなさそうに言葉を吐き捨てた

 

「ふん、意識も保てぬか?まぁ咄嗟の動きにしては悪くはなかったが……」

 

ゆっくりと部屋を出て、店員と会話をする声を聞きながら、俺はただただ意識が沈むのに引っ張られるしかなかった

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「それで——まんまとカナメをその女に獲られたのね」

 

ザクザクとシギルを使用して机に穴を開けるシュカさんを見て、怯えるスイさんを見ながら、私は冷えた頭で思考を回す……脳に負荷がかからない程度で、世界関数(ラプラス)は常に発動し続けています……

 

「面目ねぇ、俺にはどんな攻撃を喰らったのかすら分からなかった…正真正銘の化け物だぜありゃ…」

「あ、あの…その、自分が殺される幻覚を見せると言うのが、その人のシギルなんでしょうか」

「その力は彼女のシギルではありません」

 

スイさんのその言葉は、正鵠を得ている可能性はありましたが残念ながらそれは違います

 

「ダンジョウ氏によれば彼女がDゲームに参加する以前からあの技を使っていたようです、まぁ我々からすればシギルにしか見えませんんですけど」

「ダンジョウ氏に言わせれば、殺気を含めた気を操る技術は、東洋の古い武術には広く伝わっているそうです」

「我々は彼女の殺気に当てられて、 自分の死を無理矢理想像させられた、まぁ私自身納得はしかねますが、一応そう言う説明はできるでしょうか……」

 

そう言いながらも口に手を当て思考を回す……そのような化け物相手にどのようにあれば勝てるか……近距離では無敗……やはりここは……

 

「とにかく雪蘭が別格の怪物です、アンタッチャブルの二つ名はダテではありません、もし倒すのなら私の超長距離からの狙撃ぐらいでしょうか」

「おいおい、目的がズレてるぜ解析屋、こっちとしては最低カナメさえ取り返せりゃいいんだ、まずはカナメの居場所を突き止めて——」

 

その様にリュージさんが言ったところで、シュカさんがスマホを取り出しながら自慢げに話し始める

 

「それなら大丈夫 、もう突き止めてる」

 

にこりと微笑む彼女の笑みを見て、今の私はそれが静かな殺意だと感じてしまいますね……やはり女性とは恐ろしい………

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「——いカナ——お——メ——おいカナメ、起きろカナメ……!」

「う……」

 

誰かの声が聞こえるかと思えば、目が覚めればここ最近じゃ見慣れた顔のイヌカイの奴が心配そうな顔して俺に声をかけていた……そばを見りゃ、ツクヨミの奴もイヌカイ奴や俺同様、手を背中で拘束されていた

 

「目覚めたかカナメ……!今雪蘭の奴が席を外した……!逃げんなら今だ…!」

「クソ……どこだ…ここは……?」

「てかどう言う状況?なんでお前らまで捕まってんの…?」

 

寝ぼけ眼のまままだ目覚めきってない頭を回しつつ、2人へとそう尋ねれば

 

「俺は雪蘭に意識を落とされて巻き込まれただけ、カナメ守ろうとしてこのザマだよ」

「俺は気になってお前らの様子見てたら、お前らが拉致られてるの見つけてよぉ……見殺しにも出来ないから助けに入ったんだがこのザマよ」

 

どうやら2人とも雪蘭にコテンパンにされたみたいだな……かくいう俺もそうなんだが……

 

「そりゃあんがとよ……」

「ここはあの女のセーフハウスらしい、多分まだ郊外だとは思うが……」

「確かに逃げんなら……今だな」

 

そう言いながら俺はシギルでナイフを取り出し、ギリギリと俺の縄を切りはじめる、 その様子を羨ましそうにイヌカイが眺めて

 

「やっぱ便利だよなぁお前のシギル…無人島に何か持っていくならカナメだな」

「俺は十徳ナイフじゃねぇぞ…」

「多機能ライト以上の存在だな」

「よく言うぜ……よし切れた!」

 

イヌカイやツクヨミの煽りをいなしながら、ギリギリと刃を立て、なんとか縄が切れたところで……

 

「ほぉ、何が切れたとな?」

 

いつの間にやら雪蘭の奴が入り口に背を預け待ち構えてやがった……俺はそっと立ち上がりつつ、シギルで拳銃を飛び出して……

 

「いえ、なんつーか……縄がね」

 

そのまま一発、雪蘭へ向けて発泡するが……

 

「お主の力本当に便利よの、儂より兇手に向いとる奴を見つけるのは久しぶりだな」

 

いつの間にかすぐそばに立っていた雪蘭に、片手で拳銃のスライドを掴まれ、拳銃を奪われてしまう、そのまま俺が立ち尽くしていると、

 

「三人共出かける支度をせよ、これから暫く楽しいドライブぞ?」

 

ちっとも楽しそうじゃない誘い文句で、俺たちは仕方がなしにドライブへの準備をすることとなった……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

高速道路の中、俺たちは雪蘭の所有する高級ベンツ……の最後尾の座席に男三人並んで座らされ、同時もできずにワインを飲む雪蘭を眺めていた、

 

「ダメだ、酒飲んで油断してる風だが全く隙がねぇ」

「つーか手を縛ってる縄が全員ワイヤーに進化して、益々状況悪化してねぇかこれ」

「それにどうやらあの女、ただ単に動きが早いんじゃねぇな、ありゃ気を盗むって奴だ」

「気を盗む…?」

 

イヌカイの言葉にカナメは不思議そうに反復しながらそう尋ねる

 

「簡単に言えばこっちの動きを先読みされてんだよ……」

「そうすりゃ対抗出来んだいイヌカイ先生?」

「知るか、ツクヨミ大先生に聞いてみろよ」

「無茶言うなよ……」

 

たらい回しの様に質問を回されて困り果てた様子を見せればふと雪蘭がこちらを見つめて笑っている

 

「ふふふ、なんだ男揃って内緒話か?儂も仲間に入れてくれんか?」

 

余裕綽々……いや、事実余裕のある雪蘭は面白そうな余興代わりにそう言って、カナメは真剣な表情になって雪蘭を見つめる

 

「雪蘭——あんた結局何が目的なんだよ、俺を手下に欲しいとか言っていたが本当なのか?」

「儂はつまらぬ冗談は言わぬ……それに、どうやら儂1人では難しい仕事を抱えおってな?」

「だったら俺のクランと協力関係を作れば——」

「それに」

 

カナメが言葉を続けようとした所で雪蘭が言葉を遮る、まぁ雪蘭にとっちゃ大事な話だからな

 

「そろそろ我が一族の後継者が欲しいと思っておった所でな、儂の技は誰でも継げるような物ではない故……」

「なんだったらお主の子を孕んでやっても良い……最も、本命は隣の其方だがな」

 

そう言って雪蘭はカナメを見据えた後に、俺の方へと目線を滑らせる……こーれはイヌカイ君かなぁ…

 

「……あー、それこそ冗談だよね?」

「儂はつまらん冗談は言わぬ」

「いやちょー面白かったですよ…?」

 

カナメのおだてに乗る気はさらさらないようで、じっくりワインを飲み干して、その間にイヌカイが声を掛けてくる

 

「いやー、お前らあんな羨ましいぜ、あんな綺麗な美人にプロポーズされてさー」

「本命はツクヨミだってよ、よかったな」

「よくねぇよ、お前も判定だし俺じゃなくてイヌカイだろ」

「いやいやご冗談を」

 

そう軽口を叩き合ってれば雪蘭はさらにこう続けてきた

 

「我が一族は二千年以上続く殺しの一族でな、これまで永きに渡り歴史の裏に関わってきた、儂の代で技を絶やすわけにはいかぬゆえ——」

 

そう言葉を続けようとした所で天井から機械音が鳴る

 

『——雪蘭お嬢様、どうやら追手のようです、振り切りましょうか?』

 

その声に俺たちは急いで後ろを振り向く、幸いにも一番後ろの席だったためベンツを追いかける重量級の装甲車の姿が見えてくれる……

ようやくお迎えか、結構遅いもんだな

そう考えながら、俺は薄らと笑っていた……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「見えたぞ!どうやらカナメ達は無事だ!」

 

リュージさんが運転する最中、私は目を閉じ思考を回していました、その声を聞き、目を開ければ確かにツクヨミさん達の姿を確認できました…

 

「服にこっそり仕掛けておいた発信機は潰されていたようですが、()()()()()()()()()に仕掛けておいた方は無事のようです」

「解析屋ァ……正直お前までシュカに協力してるとは思わなかったぜ…」

「この件については意見の一致を見ましたので」

 

そう、私たちサンセットレーベンズやそれじゃ連なるツクヨミさんは大勢の人間に狙われる可能性がある、主にクランリーダーであるカナメさんと、関係者でありながらクランに入っていないツクヨミさんは格好の餌です、だからこそ仕掛けておいたのですが……ツクヨミさんの方は携帯の方もシグナルが出ていませんね……

そう考えていると、後部座席からシュカさんが顔を乗り出し文句をつける

 

「お喋りはいいからスピード出して!ぶつけてもいいから!」

「めいいっぱいアクセル踏んでるよ!馬力が違うんだ!距離はジリジリ縮められる!」

 

リュージさんがそのようなことを言ってる最中、シュカさんはスマホを取り出し再度カナメさんへと連絡を掛けている……ぶつりとつながる音が聞こえた瞬間

 

「カナメ!カナメなの!?」

『シュカか』

 

カナメさんの声が聞こえる……どうやら喋る程度には無事な様ですね……

であるならばもう少し余裕を……そう考えているうちにカナメさんからある意味驚きある意味想定通りの言葉が返ってくる

 

『ぶち当ててでもなんでもいい‼︎この車を止めろ‼︎あとは俺がなんとかする!』

 

その声が聞こえた瞬間ぶつりと通話が途切れてしまう、そのスマホを手にシュカさんは再度後部座席から身を乗り出してリュージさんへ文句を言う

 

「ねぇこの車もっとスピード出ないの!?リュージが早くて頑丈な車だって言うからこれ買ったのに!」

「これで目一杯踏んでるんだよ‼︎大丈夫だ!差は詰まってる‼︎」

 

その様な話をしている中に私はライフルケースを手に取り助手席を立つ

 

「私は向こうの車のタイヤを撃ちます、出来るだけ車を安定させてください」

「お前腕の怪我は良いのかよ!」

「過保護な人は居ましたが、今は居ないので……どのみちそろそろリハビリを始める予定でした!」

 

そう言いながら車の上部を開け、ライフルを抜いて構えようとすると、スイさんが心配そうに訪ねてくる

 

「でもこんな昼間から銃を使って平気ですか……?警察とか……」

「スイさん、Dゲームのエンカウントバトルを雪蘭に仕掛けてください!」

「そっか、Dゲームの隠蔽機能を使うんですね!わかりました、今から雪蘭さんにクラン戦を仕掛けます!」

「良いねぇッ!これが俺たちサンセットレーベンズの初陣ってわけだ!!あげてくぜ‼︎」

 

その様なことを言う彼らを見て、ふととある疑問が過った、

 

「所でこんな時に聞くのもあれなんですが……なんでうちのクラン名は夕暮れのカラス達(サンセットレーベンズ)なんです?私が居ない時に勝手に決まったんですけど……」

 

そう尋ねてみれば口々のこう答えた

 

「黒くて可愛い」

「この世で一番タフな鳥」

「えぇっとですね、カラスって本当は家族思いの優しい鳥で……!」

 

……この場で聞いたことを、半分後悔しながらも、私はライフルを構え、相手のベンツへと狙いを定めた……





プレイヤーネーム:シュカ
本名:狩野朱歌

所持シギル:荊棘の女王(クイーンオブソーン)
自身が1度触れた紐状の物体を自身の意思のままに操るシギル、王級ネームのシギルの為、使い勝手も手広く、基本的には鎖を使用し高速移動、敵の拘束や殺害などを行っている、他にも愛用武器として、手に甲につけ、先に刃の付いた紐を射出し操る武器などがある

・レイン評価
本人の戦闘スキルや精神性、シギルの使用練度から、周囲からは恐れられており、カナメさんに負けるまでは無敗の女王としてその悪名を轟かせていました、カナメさんに負けて以降は、常にカナメさんにまとわりついているため、新人にとっては強者の腰巾着と思われる可能性も高いでしょう、 そのような人物がバトルをすることになった場合は、あっけなく負けてしまいそうです

評価
クラス:A(イベントなどでの変動はあったが、Aランクは確定)
戦闘力:A
実績:A+
潜在力:A+
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