車の上へ身を乗り出し、ライフルを構えながら相手のベンツの軌道を読む、このまま直進して曲がる軌道を描く……
「さて、昨日のリベンジマッチです」
そう言いながら二発連続で同じタイヤへと当てるが……弾かれた……?
まさか相手も……
「すみません!どうやら向こうのタイヤもこちらと同じ防弾です!狙撃だけでは止められません!」
「いや!スピードは落ちた!これならすぐ追いつける!」
そう言ってリュージさんがアクセルを力強く踏み締める中、私が車内へ戻ると同時に、鎖をうねらし鳴らしながらシュカさんが車外へと飛び出ていく
「もう充分、後は私がやる」
そう言って獲物を狙う様に車を見据えて……
「このまま寄せて!」
「了解ッ!」
リュージさんがハンドルを切ってベンツへと車体を近づければ、ある程度の距離でシュカさんが鎖を操りベンツへと突き刺す、シュカさんが移動の体制に入ったあたりで相手がベンツの戸を開けて、ベンツの屋根へと登るのを、私達は固唾を飲んで見つめていた
「あなたが私のカナメに手を出してきた女ね?今から殺しちゃうから、降参しても遅いよ?」
「やれやれ小娘には相手との力量差も分からぬか?それにカナメの奴も儂に惚れそうとかなんとか言っておったぞ?」
「死ね」
2人がそう言って煽り合いをした直後、シュカさんが鎖を頼りにベンツへと飛びかかり雪蘭へと大量の糸の刃先を差し向ける……
そんな中、私やリュージさん、スイさんのスマホに通知音が鳴り響く
「……?なんですかこれ、今までクラン戦などでこんなこと……」
「なんだ!?何が起きてる!?」
必死にベンツを追いかけているリュージさんを尻目に私とスイさんがスマホを確認すれば、ダーウィンンズゲームのバトル画面にこの様な表示がされていた
第三勢力:ツクヨミが乱入しました
その様な表示の後に、私たちのキャラクターの間、VSマークの部分に重なるように、腕を組むような形のツクヨミさんのキャラクターが現れる
「……侵入者?第三勢力……?一体どう言う……」
「ツクヨミのやつがどうした!?アイツ今ベンツの中だろ!」
「何故かは分かりませんが、このクランバトルにツクヨミさんが乱入してきます!第三勢力と言う話ですので敵か味方かは分かりません!シュカさん、警戒してください!」
私が大声を上げてそう言うが、シュカさんは雪蘭とに戦いに集中しきって聞こえていない様だ……こんなシステム、Dゲームにあったのか……?
ーーーーーーーーーー
「……っち、腕の拘束外すの中々骨が折れるな……」
俺はワイヤーカッターを出し、必死にワイヤーを切りながらそう呟く、焦る様なイヌカイと、目を瞑って何処か気楽そうなツクヨミの様子を見ながら、ため息をついていた所で……近くに放られた俺のスマホに妙な画面が映し出される……
「侵入者警告ぅ……?」
「なんだよカナメ!また何かあったのか!?」
「いやなに……は?このクランバトルにツクヨミが乱入って……お前」
ふとツクヨミの場所を見てみれば、いつの間にか粉々に切り裂かれたワイヤーがあるだけで、ツクヨミの姿は消えていた、なんだよあいつ……抜け出す方法あるなら最初からやっとけよ……!
「イヌカイ!ワイヤーカッター渡すから急いで切ってくれ!この戦い何かまずいぞ!」
「お、おう!」
手に持っていたワイヤーカッターをイヌカイに預け、急いで切るように頼みながら俺は考えていた……この戦いをどうすれば良いかを
ーーーーーーーーーーーーーーーー
クソ、稀有性判断が難しい……今は雪蘭がシュカの攻撃をいなしてるが……これはシュカが押してんのか?上手く凌がれてんのか?……これは俺たちに動き次第で決まるのか……?
「くそっ!何もできないのがもどかしいッ!」
「リュージさんは運転に集中してください!それと、私がいつでもライフルを打てる様に安定した走行でお願いします!」
そう言いながらレインの奴が車上に上がろうとして俺は声を上げる
「おい!今出たってあの2人の戦いの邪魔になるだけだぞ!どうする気だ!?」
「私の目当ては2人ではないです!
そう言いながらレインは車上へと上がれば、ライフルを片手にスコープを除いて周囲のビル群を見やっていく……っくそ、なに考えてんだレインの奴……そうこう考えている内に、シュカが上空へと飛び上がり、雪蘭がベンツの車上に1人だけとなった、その瞬間……
ベンツの車上へ向けて何処かからライフル弾が放たれ、ベンツの屋根に穴が開く、だがどうやら機関部までは到達しなかった様で走行し続けているが……
雪蘭の姿が見えなくなった、上手く車から落ちたのか、それとも……
「油断しないで!まだ殺ってないっ!」
「何!?」
「距離をとって!仕掛けてくるよ!」
車の車上に戻ってきたシュカの言葉を聞き、俺は相手が何をするのかを考えあたり舌打ちを打つ
「クソッ!そう言うことかよ!」
そう言いながら俺はハンドルを切ってカーブをスピードを落とさずに曲がりながら、車を安定させ続ける
「させるかッ!」
そのシュカの声と共に金属が激しくぶつかる音が聞こえ、
追い払ったのだと理解してハンドルを操作するが……ハンドルの効きが悪い……クソッ!
「リュージ!このまま車で頭を押さえちゃって!」
「悪いがそいつは無理だ!ハンドルが言うこと聞きやがらねぇ!あの女タイヤに何か細工しやがったッ!」
「ゲームセットだの、なかなか面白かったぞ小娘?」
直後にレインがライフルを車内に投げ、スコーピオンを手に取り雪蘭に構えるが、軽い悲鳴の後車内にスコーピオンが転がり落ちる
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「引き際が肝心ぞ?小娘共よ」
「まだだよ……!まだ終わっていない……!」
「やれやれ…もう盤面は詰んでおると言うのに………いや、彼奴がまだ居ったか……それでももう遅いがな」
そう車上で話す声を聞きながら、俺はようやく解放された腕を押さえて確かめて、誰に訊かせるでもなく嘯く
「まだ打つ手は残ってんだよ……!勝負はここからだぜ……!」
そう言いながら俺は、近くにあったワイン瓶を手に取り窓越しにシュカへと見せて、シュカも思惑がわかったように軽く微笑む
「ソータ!合図でシギルを使って!」
そう言いながらシュカが飛ぶ、それを見た俺は即座に窓を開け、ワイン瓶を車外に投げ……シュカが投げ飛ばすと同時に
「ソータッ!」
タイヤに叩きつけられたワイン瓶が割れ、タイヤが凍って激しく割れながら、スリップをして壁に擦り付けつつ、車が完全に停止する……この状況で怪我なく停止する運転手も凄いやつだな……
「……生きてるか?」
「まーな」
イヌカイの酷く気分の悪そうな声を聞きつつ、イヌカイにベンツのドアを消し飛ばしてもらって、俺とイヌカイは外へ出る
「シュカ!無事か!?」
「カナメ!」
シュカの位置を見やれば、少し離れた場所の看板の下に鎖で宙吊りとなっている……怪我はひとまずなさそうだ、 後は……
「怪我がされてない!?あの女に変なことされてない!?」
「俺は平気だ!!……それより雪蘭!?あいつはどうなっ——」
そう言ってあたりを見回して目を見開いてしまう
「見事見事、カナメよ、思った以上に良いクランを創ったようだの?」
怪我の様子もなく、監視した様子でリュージたちが乗っている車の上に腰を下ろしていた
「なっ!?全くしぶとい年増ね!!てっきりアスファルトで擦り下ろされていると思っていたのに!!」
「ふふふ……困った状況だの、カナメよ、お主の最大戦力があそこでぶら下がっていては、もはやこの一帯は全て儂の制圧下よ」
自身ありげに雪蘭がそう言った瞬間
『それはちょっと傲慢じゃないかな?僕のこと忘れてない?』
ふと唐突に、俺のスマホから声が流れてくる、咄嗟に見てみればいつの間にやら通話状態になっていたのか、ツクヨミの名前がデカデカと画面に現れている
「ツクヨミッ!お前あんなこと出来るならはなから……」
『いやー、こっちもバトルとかしてもらわなきゃいけない条件があってね……まぁ今はともかく置いておいて、こっちはスナイパーライフルを遠距離で構えているんだ……雪蘭の頭なら、いつでも狙い撃てるよ?』
「ほぉ、あの程度の腕で【狙い撃てる】とは其方も充分傲慢になったの?」
『まぁ、十中八九避けられるだろうけど……その隙をシュカさんが見逃すかな?』
……これで、お互い膠着状態になった……か、だがしかし、それでもまだ……避けながら俺を拘束されて仕舞えば……そう考えていた時、車から執事服の老人が現れ声をかけてくる
「お嬢様、この勝負我々の負けでございます」
「なんじゃ
驚いたような不服そうな表情で士明さんへとそう尋ねると
「まず我々の車ですが機関部へのダメージが心配です、一度点検しなければ走行は危険でございます」
「そしてカナメ様の車も、傷ついたタイヤを交換しなければ走れますまい」
「そんなもの交換すればよかろう」
なんとでもないように雪蘭がそう言えば
「そんな事をしていては、あの少女や
冷静にそう言う士明さんの顔を、雪蘭は少し膨れた顔で見つめ、さらに一押しするかのように士明さんは言葉を続ける
「大魚を釣り上げるには相応の時間を要する物です、時を敵ではなく味方にする事こそが肝要かと」
「……ふん、士明がそこまで言うとはの」
そうため息がちに雪蘭が言ったと思えば、暫く俺の顔を見つめてくる……見つめるのに飽きたのか、気が済んだのか車上から軽い音を立てて路上へと降りて
「フン…儂の負けじゃ負けじゃ」
そう言うと共にクランバトル終了の音声が鳴り響き、漸く一安心して一息を吐く、そのあたりでスタスタと少し離れた位置からは、ツクヨミのやつがアイスを食べつつ歩いてきて……
「おつかれ、だいぶ難敵だったねぇ」
「誰かさんが先に逃げてなきゃもっと楽だったろうよ」
「そりゃ恨むのもお門違いさ……」
俺が軽くそう毒づいて見せれば、戯けたように両手を広げて軽く苦笑してしまう……まぁ、結局勝って……いや、勝たせて貰えたから文句は無いが
「しかし爺さん、あんたが助け舟を出してくれるとは思わなかったぜ」
「助け舟ではありません、あくまでお嬢様の最終的な勝利の為、誤解なされませぬよう」
俺は感謝を述べれば、爺さんは優しい顔つきでそう言い返してくる、 この爺さんも相当だな……そう考えていればシュカが士明さんへと突っかかっていく
「何それ、負け惜しみ?」
「ほほほ、シュカ様は実に見事なクンフーでしたな、大変な才能がお有りだ、この国では我らと同じ人種はほぼ絶滅したかと思っておりましたが」
黒い笑みを浮かべる士明さんを見て、背筋に冷たいものが走った気がする、ありゃヤバいな
「……この決着でいいの?」
「上等さ、ランキング1位相手に事構えて、誰一人欠けなかったんだからな……雪蘭!約束だ!俺たちと同盟を結んでくれ!」
シュカの疑問に冷や汗を流しながら返答をし、少し合間を開けて雪蘭へそう声をかけるが……しばらく黙り込んで
「……断る」
目を閉じ顔を逸らされた
「考えてみればお主が勝った時、儂がどうするとは何一つ約束してなかった、儂は約束は守るが約束していない事は知らん」
「あ………」
思い直してみりゃそういやあの時、雪蘭の言質を一つも取っていなかった……
「と……とは言ってもだな!目的は半ば一致しているんだ!協力すればお互い得になるだろ‼︎」
「そうじゃな、お主らはDゲームをクリアしたいと言う、ならば我等も暫く同じ道を歩むことになる、協力出来ることもあるだろうな」
「だったら——」
納得したような、して無さそうな物言いをするする雪蘭に【なら同盟になっても問題はないんじゃないか】そう口にしようとした瞬間、雪蘭の言葉に阻まれる
「だから、儂らをお主のクラン——サンセットレーベンズに入れよ、儂を使いこなせる男か近くで見定めてやろう」
雪蘭の言葉に面食らったが、即座に俺は笑みを見せて返答を返す
「そりゃ願ってもねぇな」
その一声に全員は同じように驚愕しただろう……ツクヨミの奴は納得した様子だがな
「ほ、本気かよカナメ!好き好んで家で毒蛇を飼うようなもんだぜ!?」
「私も反対、あの女偉そうだしこっちの言うことなんて聞くの?」
「私もあくまで外部の協力関係に止めるべきだと思いますが……」
確かに3人の言うことはもっともだ、もっともではあるが———
「確かに雪蘭は俺たちに仲間意識なんて持ってねえだろうし、状況次第じゃ裏切るだろうな」
「だったら——!」
【仲間にしないほうがいい】そう言いかけた言葉を無視して俺は言葉を続ける
「だけど1度した約束は必ず守る、それだけは充分確かめた」
「雪蘭、一つだけ約束してくれるか?それがクラン加入の条件だ」
「聞こうか、約束できるかは物によるがの?」
「もしアンタが
そう言いながら雪蘭の耳元に近づいて
「真っ先に俺を裏切れ、俺より先に仲間に手を出すのだけは許さねぇ」
そう言うと、しばらくして雪蘭が軽く笑い
「っくく、約束しよう、もし殺すなら必ずお前からだ、カナメ」
「オーケー、歓迎するぜ雪蘭——ようこそ我が
そう言って雪蘭と手を交わし、握手をする中で一人ついていけないイヌカイがぼやいていた
「なんか話はまとまったみたいだけど……俺たちここからどうやって帰るんですかねぇ……」
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ところで、さっきから気になってたんだがその【スサノオ】って一体なんなんだ?」
カナメさんにタイヤを作り出してもらい、タイヤを交換して少し手狭な車に乗って走る中、カナメさんが雪蘭さんと助手席に座っている士明さんへとそう話しかける、スサノオ……その名前は……
「そういや王の奴もなんか言ってやがったな、ツクヨミの事をスサノオだとかなんとか」
「ふむ、 お主らは知らんのか……まぁ俗に言う前の名前よな」
雪蘭さんがそう言うと、補足を行うように士明さんが話を始める
「我々が日本へ来た頃、日本のDゲームランキングの中に入っていたツクヨミ様の元のアカウント名でございます、我々がやってきた数日後に始まったと噂されるイベントバトルの勝者でもあります」
士明さんがそう言ったところで私も思い出した
「ファンタズムレリックハント……!私もその時はDゲームそのものに未参加だったので噂でしか聞いたことは無かったですが、優勝者がその後多くのポイントを失いランキングから消失し、Dゲームでも確認ができなかったと言う……その時の優勝者がツクヨミさんで、当時とは名前を変えていた……!?」
「………割と極秘情報なんだけどなぁ、それ、どうしてくれるの?アンタッチャブルさん」
「ふふ、お主の事だからクランメンバーには話しておったかと思ったぞ……私とランクバトルを行い、勝ったことなどもな」
そう楽しげに笑う雪蘭さんの言葉を聞き、私たちは更に目を見張る
「おいおい、今回あんだけ苦戦した雪蘭相手にお前勝ちやがったのかよ!」
「えー?だったら私が戦わなくてもツクヨミが戦ってればよかったじゃん」
「おいおい、 一応言っとくが逃げ切りがちみたいなもんだからな……?」
リュージさんやシュカさんのヤジを困り顔で受け止めつつ、ため息を吐く様子を見ながら私は考えていた……逃げ切り勝ちだとしてもそれは…彼の性格からして接近戦を行うでしょょうし、それに指弾などの遠距離攻撃もある……それら全てのダメージを抑え、逃げ勝つと言うのは……
「ふふふ……しかしまぁまさかお主がこのクランにおるとは、儲け物よな、じっくりゆっくり話し合おうでは無いか」
雪蘭さんが何処か艶かしい目線をツクヨミさんへ向ければ、ツクヨミさんはため息混じりに言葉を返す
「悪いが俺はクランに入ってないし入らないぞ」
「……ほう?」
「どうせ基本俺たちと行動するんだから入ったほうがいいだろって言ったんだけどな」
驚いたような表情をする雪蘭さんに、カナメさんが困ったような表情でそう言いながら話を始める……
「クラン設立時、レインにクランに入るよう頼んだ時、レインに【ツクヨミにも誘いを入れさせて欲しい】って言われて、聞いてみれば腕前自体はシュカと遜色ないらしいから、レインの知人って事で入れようと誘ったんだが……」
「知人だからってクランに入れるな、そう言うのは一緒に戦った戦友とかのが良いだろうが、俺はクランに親しい外部協力者ポジで良いんだよ」
そう言いつつ、ボリボリとアイスを頬張ってふんぞり帰り
「……私からも何度もお誘いしてるのですが」
「パスパス、どうせ俺は一人のが気楽だし、ポイント散財するしなー」
「その散財癖を改めたいのでお誘いをしているのですがね」
私がじとりと目を細めて言えば、彼は顔を逸らしてそっぽを向く……
王の時には助けていただきましたし、腕が折れている間には少々手助け頂いたので、恩返しの思いもあったのでが……まぁ、彼には彼なりのペースがあると言うことですかね
「……なるほどのぅ、まぁ良いわ、その辺りについてはまた追々、と言うことでの」
かかかと楽しげに笑いながら、彼を優しい目で見る雪蘭さんを、気が付かぬうちに私はじっくりと、見つめてしまっていた……