ダーウィンズストーリー   作:R,n

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第九話 リペント

「それしゃぁもっかい聞くけどさー、あんたの息子さん、アキラさんについて教えてもらえる?」

「……っは、そう言われて教える様な爺に見えるか?」

「うーん、見えないかなー?そもそもこれお願いじゃなくてさぁ……()()なんだよね?」

「ぐぁぁっ……!」

 

妙なジャケットを羽織られたガキに、両の指をへし曲げられながら、必死に痛みを堪えて相手を見やる、

恐らくは此処最近活発になっている【エイス】とか言う馬鹿どもだろう

……晶の奴め、この様な奴らと関わりおって……奴のことだ、どうせ誰かのために関わりおったのだろう……

こんな爺に無茶させて、次会ったら怒鳴りつけてやらねば……

 

そう考えている儂の側に、ズカズカと歩いてくるガキがいる、また新手か……

これ以上の拷問は正直キツいのだが……

 

「なぁ〜、ウエノヒトシさんよー、俺たちも正直言って今暇じゃ無いわけ、分かる?これ以上喋らないなら、奥さん刺すかあんたを出汁にアキラくん呼ばなきゃなのよ、分かる?」

「はっ、爺が無理なら婆を虐待か、若人として歳上を敬う気持ちを忘れたか?……まぁ、晶の奴もそうだったがな……儂を出汁にでも使えば良い、アイツは来んぞ」

 

髪を掴まれ、持ち上げられながらも必死に気丈さを振る舞って見せる、

手はダメだが足はある、指なんぞ捨てれば拳が使える、

両腕の拘束さえなんとかすれば婆さんぐらいは助けられる……だが、【それではダメ】なのだ……

 

恐らくはあいつは来る、ならば……婆さんを無傷で助け出させるには此処で出汁にされるしか無い、

例え殺されようとも、愛しい妻と息子の為だ…苦でも無い

 

そう考えていれば、ガキどもが撮影機材と錆びたナイフを持ってズカズカとやって来て、

ニヤニヤと気色の悪い笑みを浮かべながらマスクを被る

 

「はぁーい、それじゃぁご注目!こちらに座すはウエノヒトシさん78歳!なんとも業突く張りな元大手企業の役員さんです!はい拍手〜!」

 

パチパチとまばらな拍手が目に見える、これだけのガキ、そして武器を相手に動けないのが歯痒い……

今は耐えだ、耐えて耐えて、妻に為にも1秒でも囮として、餌としての価値を保たなければ…

そう考えていると、何かを話し終えたのか覆面を被ったガキがこちらを向いて……腎臓のあたりを正確に突き刺した

 

「っぐぁっ……」

「今ナイフに塗ったのは!体力を大きく消耗させ、体を端から壊死させていくウィルスと毒の混ぜあわった化合物でーす!」

「そのナイフを腎臓のあたりに差したってことは、大体一週間経たないうちにお父さんが死んじゃうってことでーす!」

 

そうケラケラ笑いながら、ガキは儂の顔を掴んでカメラへと押し付ける

 

「だぁーいすきなお父さんを助けたいなら〜?これから俺たちがいる場所まで来てもらわなきゃ行けないねぇ〜?」

「ウエノアキラくぅーん、此処はどこか分かるかなぁ?……ぎゃはははは!」

 

その様な言葉を発したあたりで、カメラの後ろにいるガキの1人が合図を見せれば、

掴まれていた頭が解放されて、どしゃりと血の水溜まりに顔を落としてしまう

……毒か、姑息な手を使う……だが、今の物がネットに挙げられるなら……婆さんは、助かるか……

そんな事を考えながら……痛みによって意識を手放してしまい……儂はその場に放置されるだろう……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

とある動画がネットに投稿されて早数時間、配信サイト運営により動画はすぐに削除されたものの、

個人でダウンロードを行った動画を確認し、私達はとあるビルの一室で集まり、物々しい空気で沈黙していた

 

「………それで、レイン……これが……この人が、ツクヨミの親父さんだってのは事実か?」

「はい、カナメさん…つい先程、配信直後にツクヨミさんがこの動画を確認した直後、ツクヨミさんが不意に私の部屋を出ていき、用事ができたと言った為、不躾なら調べさせていただきました……それで」

 

そう言って私は紙を配る、そこに書かれていたのは

 

「………おいおい、この会社って超大手の貿易企業じゃねぇか」

「おい見ろよカナメ、此処に書いてあるツクヨミの経歴……色んなもんの特許も取ってんぞ……」

「ツクヨミさんのお父上は現在時点でのツクヨミさんとの関わり自体は無い物の、銀行口座を調べた結果、ツクヨミさんからヒトシさんへと毎月数十万単位でのお金が振り込まれています、このお金の出所は恐らくはダーウィンズゲーム由来のものだと推察します」

「……で、なんでツクヨミの親父さんがエイスの奴らに誘拐されてんだよ」

 

資料を机に投げ、私に睨む様な目つきをしながらそう尋ねてくる、

私も実際の事実はわからないが……

 

「………一つの推論を立てるとするならば……皆さん、以前雪蘭さんからツクヨミさんの【スサノオ】時代のお話をお聞きしましたね?」

「あぁ、聞いたな」

「私もびっくりだったにゃ〜、まさかツクヨミくんが、元々スサノオってアカウント名だったにゃんて」

「は、はい、話を聞くだけども凄そうでした……」

 

皆が頷く様子を見て、私は話を続ける

 

「また、リュージさんからの証言により、ツクヨミさんと王が過去のイベントによる因縁がある、と言うお話をお聞きしました」

「おう、俺の嘘発見器(トゥルーオアライ)で見ながら聞いてたが、王の野郎は嘘はついていなかった……因縁はあるはずだ」

「………恐らく、以前より王はツクヨミさんの周りについて調べていたのでしょう、今の段階になって、漸く父親を発見し、今に至る……と言う可能性です」

 

……仮に、この仮定で動くのならば王本人も出張っている可能性が高い、そうでなくてもツクヨミさんが向かえば捕まえられるか殺されてしまう……

いくらツクヨミさんが強いとはいえ、エイスのメンバーは選りすぐりのプレイヤーが何人も……

そう思考に落ちていれば、カナメさんが声をかけてくる

 

「レイン、今ツクヨミの現在位置は分かるのか?俺の時みたいに、GPSを仕込んだりとかで」

「それが、どうやらツクヨミさんにばれてしまっている様で、全て外されて追跡不能となっています」

「……じゃ、アイツは1人で蹴りつけに行ったってことか?」

「恐らくは」

 

リュージさんの質問に、私は淡々と答えていく……なぜ、あの映像を見た時に私たちに共有をしてくれなかったのか、

何故GPSを外してしまうのか………少なくとも、クランバトルは1人で行うものでは無いはずなのに……

 

「………兎に角、場所の特定を急いでくれ……少なくとも、レインの知人だし……一応協力関係だ、助け舟を出すぞ」

「わかりました……場所の推定は既に把握済みです、皆さんは急いで準備の方をお願いします」

 

私がそう言うと、皆が席を立って思い思いの装備を取りに向かい出す………そんな折、私はスマホを取り出してツクヨミさんへメッセージを送る

 

『ツクヨミさん、大丈夫ですか?私達もこれから向かいます、決して、決して1人では突入しない様に』

 

ツクヨミさんが居なくなってから、10分置きにメッセージを送っているが、既読はいつになっても着いてくれない……

ツクヨミさん………無事で居てくれるでしょうか………そう考えながら外を見れば………何処か雨が降りそうな空模様を見せて来た

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

…………あぁ、五月蝿い……なんだ、この金属音は……婆さん……婆さんはどこに……

意識が重い……そう思って……目を開ける、そこには………

 

「退け!退け!退け!」

「テメェら!王さんが来るまでに全滅するんじゃねぇぞ!」

「って言ってもマーチさん!こいつ化け物ですよ!」

「良いからやるんだよ!」

 

……儂の息子によく似た男が、手から風を出し、床を氷漬けにし、撃たれる銃弾を全て弾き返して居る様子があった

肩から腹へと胸が服ごとばっくりと斬られ、熱で無理やり焼いたのか爛れだ肌が見える

艶やかな白い髪に、赤い血が掛かり、綺麗な焦げ茶色の目には、ただただ目の前の人間を恨む思いだけが詰まっていた

 

多くのガキどもが壁に飛ばされ昏倒し、手足に穴を開けられ膝をつく、1人のガキが手から水の様なものを飛ばせば……

風によって周囲へと弾け飛び、壁や床をじゅうじゅうと音を立てて溶かしていく……

……息子によく似た人間は、とても苦しそうな表情で、袖から【短刀】……いや、ナイフを抜き出して……

水を撒き散らすガキへと投げ込んだ、ナイフは風を纏って、速度を上げていき……

 

「ぐぎゃぁぁぁぁぁ!」

「……寝てろ」

 

ガキの片目に突き刺さったかと思えば、ガキがばたりと倒れ伏す……

なんて、なんて惨劇だろうか………此処は本当に日本だろうか……そう思いながら、男がこちらへ駆け寄って……

 

「親父!親父!……いきてるか!?まだ生きてるよな!?親父!」

 

息も絶え絶えな儂の体を抱え、酷く歪んだ顔でボロボロと涙を溢す……あぁ、なんだ……お前だったか……

通りで……婆さんに似て……優しい子だよ思ったよ………

 

「……あき……ら……お前……顔が変……だぞ」

 

精一杯、強がりの笑みを浮かべながら、涙を流す、その頭に優しい手を伸ばそうとして、折れ曲がった指を見やる

曲がった指を、晶が見れば……酷く呆然とした顔をして……涙を溢す

 

「……悪い、悪いな……親父……こんなに痛めつけちゃって……」

「……っか……かか……これぐらい……婆さんの……まっさーじより……マシよ」

「………っはは、母さん……マッサージ下手だもんなぁ……」

 

儂が気丈に振る舞い言えば、晶もそれに倣って笑って話を続ける……もう既に、足の感覚や腕の四肢の感覚もない、

動かせはするが……恐らくは、もう既に脆く崩れてしまいそうだろう……

此処が、死に時か……かぁ〜、苦しんで死ぬのは辛いな……そう思いながら……力を振り絞って言葉を綴る

 

「………あ………きら………婆さんを……連れて逃げろ………せめて、お前たち……だけでも……」

 

儂が、そう言えば………晶は、口を閉じてしまう……晶、儂も救いたいのか……?

………相変わらず馬鹿な子だな、だが……その優しさが愛おしい……

 

「………どうせ、毒もウィルスも……体力が無いから、排斥……出来ん……せめて、婆さんだけでも…」

「…………親父、悪いな……」

 

儂がそう言いつけた後、暫くの間を置いて、儂を抱えて……倉庫の奥へと歩き出す、

なんだ……?何を見せる気だ……そんな事より、婆さんを………

そう思いながら……暗がりにある、一つの人影に気がついて………儂は、言葉を失った

 

「…………おまえ、おま……え……なん……で」

 

婆さんは、死んでいた……大量の刺し跡がある、ナイフの様な刺し跡がある、

何度も何度も、刺された跡が、そう言えば、あのナイフは錆びていた、何故?

………【何度も使用していたから?】……誰に?何故?

 

…………阿ぁ、そうか………コレは………儂を、いや………晶を、苦しめる為に……

嬲って、殺したのか………あぁ、酷く……露悪的で……子供的だ……

 

「………あき……ら……お前……は……」

 

必死に声を絞り出すが、もう既に崩れてきた、肺も、声帯も痛みも無く崩れてくる、

儂は死ぬ、死ぬから……だからこそ、後腐れなく死ななくては……このままでは、このままでは……

 

おまえ……は………ただ……いき……ろ

 

……あぁ、風に攫われる、まだ、まだ伝えられていない……声が、声が出ない………だめだ……だめだ……

晶よ、我が子よ………どうか、どうか心が壊れないでおくれ………願わくば、優しい子で……

会ってくれ……………

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

この世界の、親父が死んだ、恐らくはシギルの効果の毒で、この世界の母さんも死んだ、

エイスのやつらの毒の実験体にされて………何度も、何度も突き刺されて……

……俺は、両手に残る親父の血を、如何とも思えず、見続けるしかなかった………

 

………雨が降った、何秒か、何分か、俺には分からないが、雨が降り出した……その頃に……

サンセットレーベンズ………いや、主人公達がやって来た……遅いぜヒーロー……

レインが居るんだ、わかってたろ……そう思うが、言葉には出来ない………なんで死んだ、

なんで親父と母さんが死んだ…………俺か?……俺の責任か?

そう考えていれば、誰かが肩に手を置いた

 

「………ツクヨミ、今は帰ろう」

 

俺は手を取り投げ飛ばす、母さんの遺体が潰れた、銃を抜く、男へ向けて銃口を向ける

 

「カナメッ!」

「ダメです!シュカさんッ!今のツクヨミさんは周りが見えていない!」

「ツクヨミ落ち着け!俺達だ!」

 

俺が王の奴を挑発するから、俺が王の奴を傷付けたから、だからしっぺ返しが来た?

じゃぁなんで俺じゃなくて2人なんだ、なんで両親なんだ

 

「くっ、邪魔!どいて!」

「きゃっ……!」

 

鎖が動く音がする、俺は咄嗟に男を拾い、銃を突きつける

 

「…………止まれ」

「……止まってやれ、お前ら」

「でもカナメ!」

「良いから———!」

 

静かになる………そして………物悲しそうな顔をする、サンセットレーベンズの奴らがいた……

スイは悲しそうな顔をしつつ、雨を纏めて俺の足に纏わり付かせていた……

シュカは警戒した様に睨んで、鎖をそばに浮かせていた、

リュージは、必死にコチラを見て、発言を聞き逃すまいとした………

レインは………こちらを見て、ただただ悲しそうに、警戒をしていた………………

 

……………あぁ、ダメだ、ダメだ……俺が俺を保てない……俺は、ダメだった………

俺のせいで、両親が死んで……俺のせいで……カナメを殺しかけた………

ダメだ、ダメだ………殺してはならない……近づいてもならない…………

 

「…………落ち着いたか?ツクヨミ……」

「………」

 

何も言わずに、銃を落としてカナメを離す、カナメは軽く咳き込みながら、数歩ほど歩いて、こちらを向いた

悲しそうな、表情で……それでも、ほんのり笑顔もあって………

………両親が死んだのが、嬉しいのか?お前の友人を見捨てた俺を恨んでいるのか?

 

………ダメだ、ダメだ……今の俺は話が出来ない……………落ち着こう、落ち着く為に………

 

「…………悪い、俺は………お前らには関われない」

「……?それ、どういう意味………」

 

カナメの言葉を耳に聞かず、数歩歩いて……屋根の上へと瞬間移動をした………

後は……雨だから……日は無理だ、王のシギルで……連続転移をするか………

その様に考えて………俺は、雨の中空を駆けた

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

………ツクヨミが、目の前で消えた……明らかに転移だ……あれは………

そう考えて居る俺に、シュカが抱きついてくる

 

「カナメ!大丈夫!?怪我は無い!?」

「あ、あぁ……俺は大丈夫だが………ツクヨミの……ほうが……」

 

そう言って、倉庫を見回す、死人は2人しかいないが………エイスのメンバーは全員生きて居る……

………あいつ、あの状態でも……手加減してたのか……そう考えながら、エイスのメンバーを見て居ると、

リュージにポンと肩を叩かれる

 

「カナメ、少なくともさっきのアイツの言葉は真実……つまり本気で言ってやがった、まぁ俺らのクランメンバーでは無いが、少なくとも協力相手だ……どうする、ボス……アンタが望むなら、アイツを探すのも問題はねぇが……」

「………いや、いい……あの状況だ、たとえ探しても……良い結果にはならないだろ……」

 

そう言いつつ、スイに警察に通報してもらう様に言ってから………静かに、レインの側へと歩いていく

………この中では、俺たちより一番アイツと親しくて、此処最近では生活の手伝いもしてもらってたほどだ……

何も思うところがない、んな事はないだろう………

 

「……レイン、平気か?」

「平気です……それより、早く此処を後にしましょう……体が冷えて、風邪を引きます」

 

いつもの様に冷静に見える……いや、冷静であろうとするレインの様子を見ながら、

風邪を引くのも確かにまずいと判断し、全員引き連れて帰る為、俺たちは乗って来た車へと駆け込んだ……

 





プレイヤーネーム:ツクヨミ/??????
本名:上野晶/??????

所持シギル:エラー解析不能
現時点で公開済みのシギル効果
・テレポート能力
・火炎能力
・氷結能力
・操風能力
・反射能力

・レイン評価
エイスのメンバーを確保し、尋問を行った結果以上の効果を把握しました
元々把握していた効果も踏まえると、明らかにこの効果の数は以上です、
どのようなシギルであれ、カナメさんのような新種であっても、単一の効果しか発揮しないはず……ツクヨミさん貴方は一体………
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