【急募】ここから助かる方法【死にそう】   作:ラグなロック

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戦うのは止めておけ。

死人が出るぞ(配点:自分が)


Prolog
前日譚:思い出すこと


草木も眠る丑三つ時。

昼間の喧騒は鳴りを潜め、星と月が太陽の代わりに世界を照らし、人々は眠りの中へと落ちていく。

中には夜からが本番という者もいるのが人間の世界。

それゆえに、人々が作り上げた人工の光が消える日はそうそうない。

 

ここ。地方都市である冬木市も例に漏れず夜は静かになり、時折車の走る音が夜の空気に溶けていく。

そんな静寂が支配する冬木の町の中に一つ。閉じられたカーテンの隙間からわずかに光が漏れる部屋があった。

 

見た目は普通の庭付き二階建ての一軒家。

ここにはとある夫婦とその息子が暮らしていたが、夫婦共働きの上今は両方ともに海外に行っており、帰ってくることは稀。

その息子はそんな境遇に腐るわけでもなく、穏やかに育っていった。

周囲からはたまに見る親子の風景に口を揃えて「理想の親子」と評する。

 

「……やっべぇ。マジでどうするよコレ」

 

現在その息子は頭を抱えながら自室でテーブルライトだけをつけて唸っていた。

 

「よりにもよってZEROの世界かよ……」

 

天井を仰ぎ見ながらそう呟く。

 

青年。間宮隆文は、記憶が存在している。

 

一つは、今まで過ごしてきた間宮隆文としての記憶。

そしてもう一つが……■■■■として生きてきた記憶。

 

間宮隆文は、所謂前世の記憶が存在している。

とはいえ。全ての記憶があるわけではない。

 

というのも、前世の記憶が戻ったのはつい最近のことだ。

きっかけは、友人とのカラオケ。

翌日が休みだからと調子乗ってオールナイトカラオケをした挙句、成人しているからと酒を飲んで酔っ払い。家に着いたと同時に足を滑らせて頭を強打。

その瞬間に、前世の記憶が蘇ってきた。

 

すわ走馬灯かと思ったが、自分の今生で見たことのない景色が広がっていた。

それと同時に、それをすんなりと迎え入れた自分もいた。

 

……ああ。転生したんだな。俺。

 

そう理解したのは、いつの間にか眠って玄関で夕方を迎えた時だった。

最初は、人生二週目で楽勝モードかと浮かれかけたが。自分はもう二十を超えている。前世の記憶によるアドバンテージなど無に等しい。

もう一つ。子供の記憶が年齢を重ねるにつれて薄らいでいくのと同じで、前世の学生時代の記憶などは朧気になっている。

 

だが逆に、忘れない記憶というのも存在する。

 

先ほど呟いたZEROというのも、前世の記憶の一つにあったものだ。

 

ZERO。冬木市。そして……今も隆文の右手の甲にある奇妙な赤い文様。

 

Fate/ZERO

前世で人気であった創作の世界の住人になっていたことに気づいた。

 

そこまでならまだいい。

例えそこが自分がかつて読んだ小説の中の話でも、今は自分が暮らす現実世界。

自分は自分で、今を生きればそれでいい。その中で正史(原作)に関わるならそれもいいだろうと。

 

だが命を懸けた殺し合いに参加したいとは誰も言っていない。というか全力で逃げたい。

 

この「Fate」という世界の共通項として、「聖杯戦争」というものがある。

端的に言えば、七人の魔術師がそれぞれ一騎ずつ英霊——過去の偉人・英雄——を召喚し、最後の一人になるまで殺し合いを行わせる。

そして、最後の一人には聖杯が与えられ全ての望みを叶えるといわれている。

 

そう。殺し合い。

英霊の力は凄まじく、隆文も映像化したこの世界(Fate/ZERO)を見たこともある。

 

……え、何? 俺に死ねと? 齢20ちょいのこの俺に?

 

マジで神は死んだ……、と天井に向けて中指を立てながら虚ろな目で今までの人生を反芻する。

 

普通なら、「え、そんな激ヤバ状態のマジの戦争でなきゃいいじゃん」と思うかもしれない。

確かに原作に関わらなければ普通に生きれるであろう世界でもある(例外も多々あるが)

だが、隆文の右手には令呪。すなわち、聖杯戦争への参加権が表れている。

だからといって回避する手立てがないわけではないのだが、状況が最悪すぎた。

 

このFate/ZEROという作品。本筋であり、後の舞台。「Fate/stay night」に続くための物語だ。

 

それの何が問題なのかというと、登場人物。つまりこの場合、今回の聖杯戦争の参加者たちが問題なのだ。

 

まずセイバー陣営。問題となるのがマスターである衛宮切嗣。

この「ZERO」の主人公ともいえる人物ではある。

 

聖杯への願いは「戦争の根絶。恒久的平和の実現」

 

これだけ見ると、一見善良な人間に見えそうだが、やることがまずい。

簡単に言えば「大勢を救うために少数を犠牲にする」を地で行く。

つまり、結果的に平和になるのであれば少数派の人間を殺すことを躊躇しないのだ。

事実。戦争を止めるために、何の関係もない民間人ごと殺害することを行う。

 

それに加えて、彼は聖杯の起こす奇跡を信じ、この聖杯戦争を人類最後の流血にするとまで言い切るほどの覚悟を持っている。

 

次にアサシン陣営。マスターの言峰綺礼。

アーチャー陣営のマスターである遠坂時臣の弟子であり、今回の聖杯戦争では裏で組み、主に諜報の役割を担っている。

周りから見れば敬虔で実直。真面目な印象を受ける男だが、その実。他者の傷つく様にしか悦びを感じないという破綻者。

 

そのことをアーチャーである英霊。ギルガメッシュに見出され、後半では時臣を裏切り殺害。

 

他にも問題要素はあるが、主にこの二人がいるのがまずい。

 

この聖杯戦争。一見令呪が発言したら強制的に参加と思われるだろうが、実は辞退することも可能なのだ。

 

まず一つ目。所謂審判役のような役割を持つ聖堂教会の方に出向き、令呪を破棄するというもの。

だがこれは言峰綺礼が教会側に属していることもあり、尚且つギルガメッシュも度々出入りしているため取れる手段ではない。

一応できなくはないだろうが、後の第五次聖杯戦争において綺礼とギルガメッシュはとある理由から続投している上に、非人道的なことをしているため、その標的にされかねない。

仮にそんなことにならなくても、教会に出入りした令呪を持ったマスターなど、切嗣の標的にされるだけだ。

 

二つ目。サーヴァントを召喚し、即座に令呪でもって自害を命じる。

若干面倒で煩雑ではあるが、確実に辞退……というより失格できる方法ではある。

しかしこれも隆文は没とした。

理由は……

 

「……この令呪がキャスターのものじゃなければなあ」

 

令呪が配られる仕組みは、まず聖杯戦争を開始した始まりの御三家が優先的に配られる。

その次に、参加の意思のある魔術師などが選ばれる。

そして、それでも数が揃わないときは数合わせのマスターが選ばれる。

 

ZEROにおいて、キャスターのマスターがそれにあたる。

おそらく。いやほぼ間違いなく。隆文に宿った令呪はキャスタークラスの召喚がなされるだろう。

勿論。早めに召喚を行えばそれ以外のクラスになるかもしれないが、そもそも隆文は参加したくない。

加えて、キャスターは字の如く。魔術師のサーヴァント。

もし万が一。令呪に介入できるような高位の魔術師を召喚してしまったら、自害を命じるよりも先にこちらが殺されてしまうだろう。

これがもしアサシンクラスならまだマシだったかもしれないが、残念ながらアサシンはかなり早い段階で召喚されており。それも叶わない。

 

他にもいくつか手段を考えるがどれもこれも実現不可能なものばかりが浮かぶ。

だがその中であることを思い出す。

 

……あれ。確か召喚の意思無しって判断されると自動的に別のやつに移るんじゃなかったっけ?

 

ガバッと椅子から立ち上がる。

聖杯は、この戦争に参加するものを七人七騎集める。

だがその中にやる気のないものがいた場合、儀式は――表向きは――永遠に始まらない。

なので、そういう者が現れた場合。聖杯はその者から令呪を回収。再び別の人物に令呪を宛がうのだ。

 

「っ、はぁ~。よかったぁ」

 

まさか何もしないことが正解だったとは。

ただ外にはもうアサシンがいるかもしれない、という不安がまだ残っているが。うまく令呪を隠せればそれでいいだろう。冬の時期は手袋をしていれば外側からはまず見えない。

 

「よっしゃこれで勝った」

 

勝つどころか勝負の土俵から全力疾走ではみ出している。

不安要素はまだあるものの幾分か気が楽になったのか、ベッドに体を預ける。

 

……が、すぐさま勢いよく起き上がる。

 

「……いや。ダメじゃん。これ龍之介のところに行くじゃん」

 

そう呟きながら令呪を見る。

やる気のないマスターがいたら聖杯は令呪を回収し、再分配。

そう――――本来のマスターである雨生龍之介のところにいくだろう。

 

彼は本来魔術師ではないが、先祖が魔術師だったらしく。聖杯戦争の知識も先祖の書物から得ていた。

ただし、彼は生来のサイコパス。シリアルキラー。

彼と、彼が召喚するキャスター。ジル・ド・レェのせいで、聖杯戦争の犠牲者は膨れ上がる。

それも子供が中心だ。

 

「…………でっきるわけねえだろがクソァッ!!」

 

自分の命と他人の命。どちらを取るか比べるべくもないだろう。

本来なら顔も名前も知らない赤の他人。

 

だが人の命、子供の命が亡くなると分かっていてそれを切り離せるほど。隆文は非情にはなれなかった。

 

「ああもうクソッ!! やってやんよ!! パンピーの意地と原作知識舐めんなボケ!!」

 

ほぼ自暴自棄になっている状態だが、それでも生来の善性が勝ったらしい。

頭を乱暴にかき回しため息をつきながら、今後の対策を立てる。

 

「えーっと……まず全陣営の把握。原作とズレてる点が無いかの確認は必須だな。最低限召喚されているサーヴァントと召喚したマスターが一緒なら大体の予想は立てられるし」

 

あとは、とそこまで考えてはたと動きが止まる。

 

「……そうじゃん!! 俺触媒ねえじゃん!!」

 

サーヴァントの召喚には、触媒と呼ばれるものが必要である。

 

例えば、セイバーなら聖剣の鞘。

 

例えば、アーチャーなら世界で最初に脱皮した蛇の抜け殻。

 

ようするに、召喚したい英霊と縁が深いものを触媒と呼ぶ。

普通なら目当ての英霊を決め、その触媒を探し当てるということをするが。悲しいかな。今まで一般人として過ごしてきた隆文にそんなものは無かった。

原作でも、キャスターは触媒ではなく。マスターの気質が合致した結果による召喚……所謂縁召喚というもので召喚されている。

なので、一応は触媒が無くても呼び出すことは可能だ。

 

ただし。誰が選ばれるかは完全に運次第な上に、最悪の場合。召喚した瞬間にこちらが殺される可能性もわずかながらにあるのだ。

 

再び頭を抱える隆文。

 

「…………どぉしろってんだクソガァッ!!!!」

 

聖杯戦争開始まで、あと一年半。




FGOでオノノイナフ出ないんだけどぉ!!?
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