性別・男
身長・180センチ
髪の色・藍色
瞳の色・黒
両親・破天荒(タスケテ
英霊召喚
「今夜だ。綺礼」
冬木の遠坂邸にて、遠坂時臣は告げた。
目の前にある一見して豪奢だと分かる机の傍らに置かれている蓄音機――のように見える通信型の魔道具――に話しかける。
蓄音機から返事が返る。
『今夜、ですか』
「ああそうだ。例の聖遺物がようやく届いたのでね」
そういって時臣は、机の上に置いてある木製の箱を軽く撫でる。
その中には、かつて世界で初めて脱皮をした蛇の抜け殻の化石が入っていた。
遠坂時臣はこれを使い、今回の聖杯戦争でおそらく過去最高にして最強の英霊――英雄王ギルガメッシュを呼び出そうとしていた。
……永かった。
時臣は内心感慨深げに思う。
これでようやく、長年の悲願でもあった『根源の渦』への到達が叶う、と。
それも今回は今までの参加者たちと違い、盤石の態勢で挑む。
前当主である自身の父との縁故により、前回の聖杯戦争の監督役を務めた言峰璃正が今回も監督役として参加し助力が確約されている。
その上。彼の息子である言峰綺礼に令呪が発現したことにより、彼にアサシンを召喚させ諜報の任を命じ、自分はその情報を基に各陣営の様子を把握・攻略するという布陣だ。
本来であれば七陣営全てが敵である状態が、彼らの協力により他の陣営はアサシンのマスター殺害にも気を張らねばならない状況の中。自分はその心配もないとくれば、心理的アドバンテージは大きいだろう。
そして、今回届いた聖遺物。
これで間違いなく。英雄たちの頂点である古代の王、ギルガメッシュを召喚することが出来る。
最高の諜報員と、最強の英霊。
これで負ける方が難しいというものだ。時臣は一人ほくそ笑む。
……おっと。いかんな。
誰も見ていないとはいえ、些か上品さに欠けた行動だった。
自身を律すると同時に、蓄音機に話しかける。
「そういえば。あれ以降霊器盤に変化はないかい?」
『依然召喚されているサーヴァントは、アサシンと。それからキャスターだけです』
時臣はふむ、と顎に手をやり思案する。
二か月ほど前。全くの予想外といえるタイミングでキャスターの召喚が為された。
これには三人とも驚くほかなかった。
何しろそのころにはアサシンは召喚しており、街中に情報収集のために散らばらせていたのだ。
にも拘わらず。キャスターの召喚を見逃したのだ。
……キャスタークラスは時間をかけると厄介だ。
なまじ自分も魔術師であるから、時間をかける魔術師の工房がどれだけ恐ろしいか分かる。
「綺礼。アサシンの諜報を掻い潜るほどのサーヴァントだと思うかね?」
『私からは何とも』
ただ、
『
「うん。確かに、その線も捨てきれない」
実力のあるサーヴァントを召喚したか、それともただの運か。
しばらく思案していた時臣だったが、まあいい。と結論づける。
「どの道。聖杯戦争が始まれば、キャスターも動き出さざるを得ない状況というのは生まれる。そこに付け込もう」
『ではアサシンには引き続き街の監視を続行させます』
「頼むよ、綺礼……ああそれと。出来れば今夜の召喚には君と、君の父君にも立ち会ってほしい」
我々にも? と、通信機の向こうで疑問符を浮かべる綺礼。
何、と時臣は笑みを浮かべながら答える。
「これから来る英雄王に、私の協力者として紹介しておかなければと思ってね」
『サーヴァント相手に、そうへりくだることもないのでは?』
「仮にも世界を統べた王だ――――例えその影法師でも、表向き臣下の礼を取っておいた方がいいだろう。それに、喜びは皆で分かち合いたい」
そう平然と言ってのける時臣。
骨の髄まで魔術師、ということを再度認識した綺礼は分かりましたと伝える。
『では、また夜に』
「ああ。また会おう」
そういって、通信は切れた。
時臣は、窓の外を見る。
……少々驚きはしたが、英雄王さえ召喚できてしまえばいい。
全ての英霊の頂点であろう彼の王。
どれほどの力を持つかはこの時点では計り知れないが、少なくとも魔術師の英霊に後れを劣るようなことは万に一つもないだろう。
加えて、呼び出すクラスは最優と名高いセイバーだ。
不安要素は何もない。そう信じ切って、時臣は窓から入る昼時の暖かな日差しをしばし感じる。
……この時の時臣は、まさかギルガメッシュがアーチャーのクラスで現界するなど夢にも思わなかったことだろう。
アーチャークラスのスキル「単独行動」によって、彼が頭を悩ませることになるのはこれより数時間後である。
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同日の夜。隆文は自宅とは別の場所で魔術の修練に励んでいた。
「おおおぉぉぉぉぉっ……!」
「はい。頑張ってください。あと三分です」
……傍から見ると少女に見られながら上半身裸で汗を噴き出しつつ、苦悶の声を上げている変態にしか見えないが、これも修練である。
かれこれこの状態で一時間半近く、ここにいる。
隆文が行っているのは、いつでも全力の魔力を捻り出せるようにするための特訓である。
召喚後すぐに、キャスターに魔術の指南を頼んだ。
初めは面食らったような顔をしていた彼女だったが、これを二つ返事で了承。
以降は隆文の魔術の指導役として的確に指示を出している……のだが、大分スパルタ気質なためか魔術の修練が終わると、隆文はいつもぶっ倒れるように眠りについてしまう。
それが彼是二か月ほど続いていた。
今では魔術の行使に手間取っていた最初期と比べて、大分魔術師が様になっている。
ただ心配だったのは魔力量。
だがこれもキャスター曰く「私が全力で戦闘行為をしても数時間は余裕で耐えます」とのこと。
それくらい隆文の魔力量は十全に存在していたようだ。
ただ魔術回路の質に関しては平均より少しだけ上といった程度。
加えて、隆文が魔力を出力するということが無意識の内に苦手と感じているため。それを矯正すべく、こうした修練を行っているのだ。
……というのはキャスターの言。
パン、とキャスターが手を叩くと同時に隆文の魔力を放出が終わる。
「っ、ハァ……! ハァ……!」
「情けないですよ。貴方の
「んなこと、言ったって……ゼェ……この間まで、一般人だった、んだぞ……ハァ……」
「まあ確かに。それを加味すれば貴方の成長速度は十分驚きです」
とはいえ。キャスターは隆文に近づき脇腹を小突く。
それだけで、隆文は倒れこむように床にうつ伏せになる。
「おまっ……」
「この程度の魔力放出を行うだけで倒れこむようではまだまだですね」
「くっ……お前、スパルタ出身なのか……?」
「全然違いますよ」
そりゃそうか、と隆文は息切れした体を整えながら納得する。
そして仰向けになりながらキャスターに訊ねる。
「はあ……そういやキャスター。準備の方はどう?」
「概ね順調です。このままいけば、あと十日ほどあれば万全にできます」
「よかった。それが少し気になっていたんだ」
ほっとする隆文。
キャスターは隆文が休憩している間も、一人黙々と作業をしていた。
……いや。確かに神代系の魔術師は希望したんだけどさあ……
隆文はキャスターを
各マスターには、サーヴァントがどのようなスキルを持っているか。どのようなステータスをしているかが、漠然とした形ではあるが、分かるようになっている。
それによると隆文のキャスターは、
筋力・C
耐久・B
敏捷・B
魔力・A+
幸運・D
となっていた。
魔術を得手とする割には物理方面が手堅い。
ここから察するに、キャスターの得意分野は…………
……
つまりは「魔力を渡して物理で殴る」戦法。
魔術師とは。一瞬自分が間違っているのかと思ってしまう。
実際に本人に聞いてみたところ。
「当然です。一々呪文とか唱えたり術式の準備したりするより手っ取り早く済むじゃないですか」
とのこと。
何処かの理想郷の果てに幽閉されている魔術師が全力で頷きそうな返答だった。
まあ、近接戦闘に入られると弱いキャスタークラスがそうした白兵戦もできると知って少し安心した。
やはり鍛えられるところは鍛えた方がいいのだろう。
そう思っていると、キャスターの動きが止まった。
「どうした?」
「……市内に、サーヴァント召喚の気配があります」
それを聞いた隆文は疲れている体を無視して起き上がる。
「……数は分かるか?」
「四騎ですね」
四騎。隆文は呟きながら考える。
召喚されたのは間違いなく、遠坂と間桐。そしてウェイバーとケイネスだろう。
即ち。アーチャー、バーサーカー、ライダー、ランサー。
この分だとおそらく国外召喚を行ったアインツベルンのセイバーも召喚されているだろう。
……これで。
全員出揃った。
今回の聖杯戦争。その参加者全員が、各々サーヴァントを召喚し終えた。
あとは国外にいるセイバーが日本に来れば、本格的に聖杯戦争が始まる。
自然と、隆文は拳を握りしめていた。
覚悟はできている……つもりだった。
だがこうして間近に迫った戦いの気配を感じて、今一度。自分がそういった世界から縁遠い世界にいて、これから起こる血戦とも言えるものに身を投じることになると思うと。やはり――――
「マスター」
「うぉっ!?」
いつの間にか、目の前にキャスターがいた。
その透き通った黄金の瞳で隆文をじっと見つめている。
「ど、どうした? 何か変化でも?」
「いえ。ただ、戦いを前にとても緊張……というより。恐怖されている様子でしたので」
その言葉を聞いてハッとする。
……ああ。これが恐怖ってものか。
知っていたつもりだった。何なら、召喚する前からずっと恐怖していた。
けれど。改めて言葉に出されて、自分が前と何も変わっていないことを知らされる。
ここに敵はいないというのに、心臓は早鐘を打ち。思わず胸を手で押さえてしまう。
すると。キャスターがこちらの手を握って、微笑みかける。
「心配しないでくださいマスター」
「キャスター……?」
「誰しも戦は恐ろしいものです。それが初めてのものとなれば尚更」
けれども、とこちらの不安や緊張や恐怖を和らげてくれるかのように、包み込まれた手は暖かく優しく、そして柔らかかった。
「それは恥ではありません。私もいますので。どうか過度に恐れぬように」
「……ありがとう。キャスター」
「いいえ」
そういうと、パッと手を離し数歩離れてこちらを振り返る。
「まあでも。もう少し勇気は出した方がよろしいかと」
「あー、はは。まあ、うん。頑張るよ」
「是非そうしてください。マスター」
隆文が苦笑しながら答えると、キャスターもまた悪戯めいた笑みを返した。
その仕草があまりにも年相応の少女のようで、隆文は今度は別の意味で心臓の鼓動が早まるのを感じる。
……そういや、普通に女の子、なんだよな。
英霊は、必ずしも逸話通りの姿で現れるとは限らない。
現に今回のセイバーであるアーサー王は伝説では男性となっているが、実際は女性。それも十代その少女だ。
だから目の前の少女もまた、逸話通りの姿とは限らない。
……中には男性なのに、現界するに際して女性の体になった。という変態もいるくらいだ。外見なぞ当てにはならないだろう。
「……なあキャスター。そろそろ真名を教えてくれてもいいんじゃないか?」
「んー。まだ、ダメです。マスターがもう少し成長したら。ちゃんと教えますよ」
そういって、こちらに背を向けて作業に再び入るキャスター。
隆文は、はあとため息をつく。
まあでも。
……『神性』は持ってるんだよなあ。この子。
一体何処の英霊なのやら。
隆文は、一旦自分の相方のことは忘れて。自分の使う術式のことを考え始めた。
え、神性って持ってると瞳って赤くなるの? 教えてエロい人!!