宿儺のお供呪霊(九尾)を生やしたい   作:三幹七枝

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三話 肩慣らし

 

「嘔暃鄜裵畒」

 

「しゃけ いくら 明太子」

 

 

──

 

 

「おっ」

 

「どうした天蓋、始まったのか?」

 

「うん、花御が……あれは呪言使いかな?と会敵したよ」

 

 

なんかよくわからん準一級相当の呪霊も瞬殺してたな。それにしても花御に満足に効果を出せるほどの呪言使いとかそうそういないだろう。途轍もない量の木の根を放出して攻撃している。いやあ派手に目立っていること。これが陽動とは夢にも思うまい。

 

 

「へぇ、この時代にもいるのか。他は?」

 

「んとねー、真人とハンガーラック君が行動始めたね…生徒だとねー…宿儺の器はパッと見生徒の中で一番強そうな奴と戦ってる」

 

「そうか…お?」

 

「おっ、帳も降りてきた。こっからは見えなくなるね…あとは戻ってきた花御達とアッチにいるらしい内通者から聞こうか」

 

 

 

「そうか…それでは、手も空いたことだし、久々に手合わせでもするとしよう、天蓋」

 

「そうするか、宿儺様にお会いする時、恥ずかしい実力ではいられないよね。俺も千年結構鍛えたからね、負けないと思うよ?取り敢えず帳降ろすねー……あんま見えない様にしとくわ」

 

 

「はっ、ほざけ……千年間、私に勝てたことなどないだろう…」

 

「だから鍛えたんですー!」

 

 

お互い、軽く準備運動をして見合う。殺す気こそなけれど、お互い本気だ。服の汚れを払って、同じタイミングで二人が息を吸うと、裏梅の周りはパキパキと凍りついて、我の周りの地面は、激しい旋風が渦巻き始めていた。

 

 

「裏梅……性別の言い訳はナシだよ?」

 

「ほざいていろ、天蓋。九尾から天狗にでもなったのか。千年生きて随分と鼻が高くなったようだな……その鼻っ柱を凍り砕いてやる」

 

 

開始前のジャブとしての口論は定石。最近はこのテンプレを理解しないやつが多くてイヤになっちゃうね。僕が裏梅を侮辱するたびに、裏梅が俺を蔑むたびに、テンションが上がっていく。懐かしい。これだ、この感じが良いんだ。うーん、手合わせじゃなければ黒閃でてたかも。

 

 

「じゃ、折角だし最初は撃ち合いで……」

 

「フン、こちらこそ言い訳は聞かんからな……」

 

 

裏梅の掌に氷丸がパキパキと出来上がっていく。うん、千年振りにしてはそこそこじゃない?

 

 

俺も、それに合わせて両の掌を合わせて、炎を交えて開く……宿儺様がアレを使う時のポーズだ。これ、真似してるけどすっごいカッコいいよね。

 

 

「霜凪!」

 

「燎原!」

 

 

裏梅の全身から、全てを凍てつかせる美しいほどに恐ろしい輝く結晶が。天蓋の全身から、全てを燃やし尽くす愛おしいほどに悍ましい輝く火焔が。

 

 

丁度向かい合った二人のその中心地点にて、激突した。

 

 

──

 

 

「クソっ……天蓋、貴様強くなったな……」

 

「逃げてばっかとはいえ、伊達に千年……生きてないからね……」

 

 

勝負は、まあ、なんとか我が勝ちを拾った。にしても、やはり裏梅は強い。手合わせとはいえガチバトルは久しぶりだったし、あそこまで本気になったのも久しぶりだった。

 

 

所々は焼け落ちて、ボロボロになった服の上を脱ぎ捨てながら裏梅が立ち上がる。僕も、何尾か凍りついた尻尾に呪力を込めて、メラメラと激らせることで氷を溶かした。

 

 

「こんな醜態は、宿儺様の前では見せられないな……天蓋、まだまだ手合わせには付き合ってもらうぞ」

 

「願っても無い! ま、今日は取りやめだけどね。連絡が来た。アッチ……呪術高専急襲が終わったって。帰ろ?」

 

「なに?言われれば、もう辺りも暗いな……熱中しすぎたか」

 

「俺の熱に夢中になっちゃった?」

 

「黙れ、お前は頭を冷やせ天蓋」

 

「ちべたっ、何も物理的に冷やすことないだろー!」

 

 

ちょっとした小気味な冗談じゃないか、そこまでするか!

 

 

「まったく……私は暑苦しい男は嫌いだぞ天蓋」

 

「嘘つきー」

 

「嘘じゃない」

 

「ま、いいや。帰ろ」

 

「ああ」

 

 

──

 

 

「たーだいまー。そっちの首尾は?」

 

「ま、上々かな…被害を出さずに宿儺の指をしっかり確保できた」

 

「ハンガーラックくんは? いなくない?」

 

「元々捨て駒」

 

かわいそっ

 

 

 

──

 

 

 

「あっ終わった?」

 

 

宿儺様の指と一緒に持ってきた特級呪物、呪胎九相図(じゅたいくそうず)の受肉を、今羂索がやってたんだけど、終わったみたいだね。

 

 

……呪胎九相図って羂索が随分も前の体の時に作ったらしいけど……呪霊でもやらないよそんなこと……既に呪霊に孕まされてる女を更に改造とか……やっぱ頭おかしい。脳味噌だけだからかな。

 

 

「うん、強さの様子見も兼ねてお遣いにいってもらうけどね」

 

「… 壊相(えそう)血塗(けちず)、さっさと済ませるぞ…」

 

「ちょっとちょっと、脹相(ちょうそう)、君はお遣いに行かなくていいよ。お遣いなんて二人で充分だろう」

 

「……貴様」

 

「…兄さん、お遣いなんて私達だけで大丈夫だよ。それよりも今までの事、これからの事を話そう?」

 

「…そうさせてもらう」

 

 

……? 気のせいかな。勝手に作られた脹相くんが羂索をそれこそ親の仇の目で見るのはわかるけど、なんか羂索からの脹相くんへの目線もなんというか不満そうというか、ロクなこと考えてない顔してる。

 

低血圧かな?やけに暗いテンションだ。百数十年待った解放だって聞いてたんだけどな…案外嬉しくなかったのかな?

 

 

「……呪胎九相図……あの程度だったか、つまんないの」

 

「え? な、何? つまんない? 何が?」

 

「何もかもだよ。人と呪霊の混血なんていかにも面白くなりそうな物なのに兄弟思い、血に毒、精々一級〜特級そこらの呪力、術式…それぐらいかな?何もかも予想の域を超えてくれない。ハズレだね」

 

「えぇ…」

 

 

自分で作っといてこれってマジ…? ウッソだろオイ……え? 本当に呪霊じゃないよね? あくまでただの呪詛師なんだよね? そりゃ最悪の呪詛師とか言われるわぁ……

 

 

「そうだ、お遣い付いていっちゃだめかな?僕」

 

「? 特に意味がないならやめて欲しいかな。でも強制はしないよ」

 

「いや、兄弟思いってんなら何か危険な時に助ければ少しは仲良くなれないかなーと……家族愛とか親愛みたいなの、正直嫌いじゃないんだよね」

 

「まぁいいけどさ?宿儺の指一本のお遣いだし幾ら失敗作といえど、君が付き添いしなくてもどうにかなると思うよ、流石に。君だって隠し玉の1人なんだから、あんま好きに動いて欲しくはないかな」

 

「悪いねぇ……悪いけど、行きたいから行かせてもらうよ」

 

「了解………アレらにそんな仲良くなる価値があるとは思えないけどねぇ」

 

 





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