「てことで、初めまして宜しくね!血塗君、壊相君!私は天蓋というんだ」
「宜しくお願いします」
「天蓋だなぁ"、わかったぞ」
う、うーん……羂索と一緒に居たからか……流石に警戒心が高い。ビシビシと視線の針が突き刺さるのを感じる、でも、まあそれも仕方ないな……誰だってそーなるさ。話を聞いたところ、呪物の時も意識あったらしいし。即攻撃されてないだけ心優しいよ、彼らは。
まあ、そこらへんはお遣い中に打ち解けるしかない、かあ。
てことで来ました八十八橋……なんかすっっごい宿儺様の気配するんですけど。指一本とかじゃ考えられないんですけど。尻尾レーダーがビンビンで方向指し示してるんですけど。これ器来てるよね? 宿儺様の器来てるよね??
「ココがお遣いの場所だなー?」
「そうですよ血塗、そして何やら強い威圧感……これが宿儺の指ですか……」
うーん、二人はまだ気づいてないっぽい、やっぱりセンスはあっても知識が無いのかな。産まれてすぐに呪物だもんね……呪力が凄いことは理解できてるけど宿儺様の指のせいだと勘違いしてて、本人の器が来てるとは流石に思ってないのか。
「それでは早速行きま───」
「待って、これは宿儺様の指のせいじゃなくて他にも人がいる。というか、宿儺様本人が受肉している本人が来てる。あと……二人。男と女。なんならもう交戦中……多分本来の宿儺様の指の保持呪霊だね」
「!?本当ですか…!?なら尚更早く行かなければ…」
「いや、戦闘慣れしてない君たちでは厳しいな……普通に死に得る。せめて二対二とかにしてコンビネーションで戦わないと……よし決めた。僕が速攻で宿儺様の指を回収するから、君たち二人は人間を二人相手にして」
「わがった!」
「もう一人は?」
「俺が指持ち呪霊ごと相手する。二人とも、絶対人間を殺さないでね。宿儺様の器は勿論、他のもう一人の男と女。コイツらが羂索の言っていた、宿儺様の地雷の可能性もある」
「……つまり、二人引き受けろ。殺すな、時間稼ぎ優先……ということでよろしいでしょうか」
「Exactly(その通り)」
「流石兄者!」
「お任せください。私たちの蝕爛腐術は強烈な毒……効力を弱めれば激しい痛みで行動不能にするくらい容易いでしょう」
なぁんか失敗しそうな物言いじゃなぁい……?まあいいや、
「じゃ、よろしく!」
───
◇◇
「兄者と俺でぇ…二人ずつだったよなぁぁ?」
「そうですよ血塗…手筈通りに」
!? なんだコイツら…!? いつから居た!? 呪霊! どちらも…おおよそ特級はあるか…! しかも、口ぶり的に…
「…伏黒、コイツら別件だよな」
「…あぁ」
「それに、言い方からして私たち狙いに来てるじゃないの、しょうがないわね…私と虎杖が相手をするわ。アンタは……」
クソっ、仕方ない、が……逆にこっちの特級は想像よりも遥かに楽だ!さっさと宿儺の指を持っている呪霊を祓って、二人の増援に……!
「貴方がたはこちらへ」
「怖くねぇぞぉぉ」
「嘘つけ!」
「虎杖! 速攻で決めるわよ!」
行ったか……! コッチもさっさと終わらせる! あちらから攻撃はしてこない。ただのモグラ叩きだ! 式神もフルで使って、さっさと終わらせる──!
「二人は上手くやったようだね……じゃあ、私の番ってわけだ」
───っ!?
「モグラの呪霊か何か、かな? 弱そうだ」
誰だ、コイツは!? 呪霊、それも遥かに格上! 目の前にいるアイツなんかより……いや、この呪力量は……あの時の、宿儺より──!?
「殺しはしない。連れてった二人も、殺さない。目的はあくまで指、だからね。だからそこで黙って見ててね。めんどくさいから」
交流会でも出た、未確認の呪霊の仲間か……!? いや、違う! 狐耳に九尾の尻尾、一秒一秒と違う顔に変化していく様子……
現在確認されている特級呪霊、その中でも五条先生や数多の呪術師に祓われず生きているモノは少ないから、授業で覚えさせられた。コイツが、コレが──
「九尾の狐!」
「ああ、知ってるんだ。情報とかあるんだね、俺の。流石に逃げててもある程度は補足されるか」
九尾の狐……天蓋! 授業で聞いた通りなら、祓われないまま少なくとも千年は生きてるんだったか、そして、その分成長のリセットが無いまま上限なく膨らんでいく悪鬼羅刹! 特に厄介なのは、そもそも碌に人前に出てこないらしいという点。
最近は姿どころか残穢すら残していないので、特段暴れていない呪霊とされ、なんなら呪物化したのでは、普通に祓われたのでは? などと色々言われていたらしいが……暗躍していたのか!
「よっ……、やっぱ避けた。正解は範囲攻撃かな」
……気づいたら奴は後ろに居たし、八十八橋の特級呪霊は振りかぶられた腕を交わしていた。まったく見えなかった。それにしても、九尾の狐が早いのはわかるが、そんなアイツの攻撃を躱せるものなのか……? 反射で避ける術式とかだったのかもしれないな。
現実感がない。駄目な兆候だ。殺しはしないという発言に安堵してる。所詮アイツも呪霊だ。愉悦目的の嘘かもしれないし、殺す気がなくてもアイツからしたら俺なんて道端のアリ。勝手にくたばるかもしれない。
……正解は、魔虚羅調伏の儀を今すぐに始めるべきなんだろう。いかにアイツが強くても、伝承に残された対魔の剣や、五条先生と同じ六眼持ち無下限呪術師と相打った実績のある魔虚羅なら勝てるんじゃないか?
ただ、身体が動かない。宿儺の時は、絶対に助からないという確信があった。だから、相打ち覚悟で魔虚羅を呼び出せた。だが、今回はアイツは嘘か本当か俺を殺さないと言っている。ならば良いじゃないかと身体が言うことを聞かない。こんな、こんな時に恐怖で体が震えるなんて……!
「おい、おーい」
「……っ、あ」
◇◇
邪魔なんだけど。ここらへん全部炎で焼き尽くすから、もっと端の方によるとか、なんなら領域から出るとかしてくれない?なに放心してるんだよ呪術師。おーい? 大丈夫か? 気付け程度になれば、と、デコピンをしてみた。
◇◇
九尾の狐に、額をデコピンされた。それもそこそこ強めに。本人が言うには端に寄れとのことらしい。そもそも、なぜ俺を生かそうとするんだろうか? 今考えてもわからないことは考えてもしょうがない。だが、今ので目が覚めた。ひとまず端に寄る。
「うーん、意外と狭いなあ。これでは呪術師、君に、死にはしなくても、死ぬくらい痛い火傷をさせてしまいそうだ。それは宿儺様の望みではないかもしれない。かといって私は術式対象の区別なんてできない……しょうがない、こんな雑魚に使うのはめんどくさいけどやるしかないか」
やる!? 何をだ? 話の流れからして、無理やり炎を撒くという訳では無いだろう。出力を抑えるのか、範囲を絞るのか、何をするにせよ、本当に俺が生きて帰れるのなら全てが謎に包まれた呪霊の情報を一部持って帰れる。見逃すな、一挙手一動を全て、見逃──
「見逃さない方がいいよ、呪術師。これが、呪術の極点だ。きっと何かのタメになるだろう」
『領域展開』
◇◇
結局、領域を展開したら流石にすぐに終わった。なんか新しく産まれ落ちてアハっとか言ってたけど普通に焼いた。領域だって閉じたし、指もゲットした。
「よし、急いで二人の元に向かわないと……」
な、なんだかジリ貧になってそうな感じがする。大丈夫かな、初めての戦いで手加減しろってのは調節が難しかったか。急いで向かわなきゃ……まあ、一言くらい何か言っておくか。
「キミ、運が良い」
無言で顔を伏せて立ち尽くすトゲトゲ頭の呪術師をその場に放置して、走り出した。
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