今回は獄王主人公の桜井カズキの誕生日回です。
ぜひ祝ってください、祝え!(ウォズ)
とある日の雑貨屋《東堂》。
そのリビングに女性陣が集まっていた。
「……今度のカズキの誕生日、何をプレゼントすれば良いのか悩んでるの」
ソファに腰掛け、両肘をテーブルの上に置いて口元を覆いながら、東堂早苗はそう切り出す。
「えっ、悩んでるの? 意外だなぁ」
「そうですね、もう決まっているものかと」
それを聞いた南
早苗は顔を上げると、不安げな表情で返す。
「ええ、前のアタシの誕生日の時、カズキが色々プレゼントをくれたじゃない? アレを見せられると、何をあげても霞むような気がして……」
「ああ~なるほどね」
「確かに、アレは凄かったですからね」
早苗の言葉に、文香とレイも納得する。
先月の早苗の誕生日において、桜井カズキは大量のプレゼントを用意してみせた。それらは今も早苗の部屋に大切にしまわれている。
だが、そのせいで早苗はプレゼントに関する自信を失ってしまったのだ。
「でも、カズキ君なら何を渡しても喜んでくれそうだけどなぁ」
「そうですね、カズキさんなら例え使用済みティッシュでも喜びそうです」
「いや、さすがにそれは……無いとは言い切れないのが怖いわね」
そう言って苦笑を浮かべる早苗。少しだけ肩の力が抜けたらしい。
その様子を見て、文香も微笑を浮かべて、口を開く。
「まあ、あまり難しく考えなくても良いんじゃない? ありがちな言葉だけど、やっぱり心が籠もってることが一番大事だと思うよ」
「そうかしら……それでも自信無いんだけど」
「そうやって悩んで悩んで、悩み抜いた上で選んだ物なら、たとえ後悔が残ったとしても、きっと喜んでもらえる物になると思うよ」
そう言うと、文香は早苗の隣に座り直して、肩に手を置いて励ます。
「早苗ちゃんはカズキ君のことが好きなんだから、そのために一生懸命考えることが大事なんだと思うな」
「文香……」
それを聞いて、レイも口を開く。
「私も同じようなことに悩んだことがあります。でもダイヤさんは私がどんな選択をしても、心から喜んでくれました。きっとカズキさんも同じだと思います」
「――レイ」
二人の言葉を受けて、早苗は考える素振りを見せる。
やがて、顔を上げて笑顔を浮かべる。
「ありがとう、二人共。しっかり考えて決めてみるわ。アイツならきっと喜んでくれると信じてね」
早苗がそう言うと、文香達も安心した表情を見せる。
早苗は椅子から立ち上がると、自らの部屋へと向かっていった。
★
5月25日。
早苗はプレゼントの入った袋を持ちながら、カズキの部屋の前に立っていた。
閉じた扉の前に立ち、指先で髪を弄りながら気持ちを整える。いざ渡す時になると、緊張してしまう。
一つ深呼吸をすると、意を決して扉をノックする。すぐに部屋の中で人が動く音が聞こえて、扉が開かれる。
「早苗? どうかしたのか?」
「ちょっとアンタに話があるのよ」
カズキは部屋の前に居た早苗を見て、少し驚きを見せる。
早苗は部屋の中に入ると、カズキを正面から見据える。
そして、後ろ手に隠していたプレゼントの袋を突き出した。
「アンタ、今日誕生日でしょう。だからプレゼントを渡しに来たのよ。受け取りなさい」
「……っ! 嬉しいよ、ありがとう早苗!」
頬を赤くする早苗に対して、カズキは満面の笑みを浮かべてプレゼントを受け取る。
心から喜ぶ姿を見て、早苗は少し安堵した。
「早く開けてみて。気に入ってくれると良いけど」
「なんだろう、早苗から貰える物なら、なんでも嬉しいと思うけどね」
そんなことを言いながら、カズキは袋を開く。
中から出てきたのは、花の入った花筒だった。そこには濃いピンク色の花が数本刺さっていた。
「これは?」
「
「ありがとう、凄く綺麗で嬉しいよ」
カズキは本心からの笑顔を見せて、お礼を言う。
その顔を見て、早苗の心臓が高鳴る。顔に血が上り赤く染まっていく。
早苗は顔を隠すようにそっぽを向いて、早口で答える。
「よ、喜んでくれたなら何よりよ。意味は自分で調べなさいよね、絶対よ!」
そう言うと、早苗は早足で部屋から飛び出していく。
残されたカズキは、花筒を机に置くと、パソコンを起動する。
「え~っと、胡蝶蘭っと」
ブラウザで検索すると、すぐに答えが出た。
ピンク色の胡蝶蘭の花言葉は――『あなたを愛しています』。
それを見たカズキの胸中には、少しの驚きと大きな喜びが広がった。
「早苗――俺も好きだよ」
一人そう呟いて、カズキは花筒を窓際に置いて、しっかりと陽が当たるようにする。
大切な人から貰った花を、いつまでも残して置けるように。
一方、早苗の方は自分の部屋に戻って、ベッドに転がり込んで悶えていた。
「ああもう、やっぱり恥ずかしかった……でも、アイツ喜んでくれたわね」
顔を覆いながらも、さっきのことを思い出してしまう。
あの花の意味も、カズキなら必ず分かってくれる。そうすれば、花に込めた想いも理解してくれる。
それを思うと、自然と笑みが溢れる。心地よい達成感に満たされて、早苗は満足するのだった。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
色々大変でしたが、無事に投稿できて良かったです。
これからも精進したいと思います。
それでは今回はこの辺で。
次回もお楽しみに。