仮面ライダー獄王・外伝   作:アカミツ書庫

6 / 9
 どうも、アーニャです。
 今年の父の日作品です。
 どうぞ、御覧ください。



父の日

 六月の第三日曜日。

 世間的には『父の日』と呼ばれる日である。

 そんな日に、雑貨屋『東堂』でも催しが行われていた。

 

「父さん、父の日のお祝いよ。受け取ってくれる?」

 

 一人娘の東堂早苗が、父親の東堂健児に向かって小包を差し出す。

 健児はそれを、笑顔を浮かべて受け取った。

 

「今年もありがとう、早苗。いつも嬉しいよ」

「当然じゃない、アタシは父さんの娘なんだから」

 

 健児のお礼に、早苗も笑顔を浮かべて答える。

 健児はソファに座ると、小包の包装を剥がして、中身を取り出す。

 箱の中に入っていたのは、一つのグラスだった。

 

「お酒のグラスよ。父さん、お酒が好きだから、色々使えそうなやつにしたの」

「確かに、これは良さそうだ。ありがとうな」

「まあ、いつもカズキのことで頑張ってくれてるから、これくらいはしないとね」

 

 そう言うと、早苗も向かい側のソファに座ると、日頃の礼を伝える。

 娘が優しい人間に育ったことに、健児は誇らしい気持ちになった。

 二人がそんな話をしていると、リビングに誰かがやってくる。

 それは、桜井カズキだった。カズキは両手に細長い包みを持っていた。

 

「おっ、もう渡したのか。早いな」

「準備はできてたからね。アンタもできた?」

「もちろん、ご覧の通りさ」

 

 カズキは包みをテーブルの上に置き、健児の方へと差し出した。

 

「俺からもプレゼントです、おやっさん。どうぞ開けてみてください」

 

 これには健児も少し驚いて、目を見開いた。

 

「まさかカズキからも貰えるとはな。ありがとう、開けさせてもらうよ」

 

 そう言って健児は包みを開く。

 中から現れたのは、日本酒の瓶であった。

 

「これは――かなり良い酒じゃないか。悪いな、高かったろう?」

「いや、そんなことはないですよ。おやっさんに世話になってることを思えば、これくらい安いもんです」

 

 喜ぶ健児を見て、カズキも微笑を浮かべる。

 そして、照れくさそうに頬を掻いた。

 

「まあ、俺はおやっさんの子供ってわけじゃないですから、父の日のプレゼントってのも変な話かもしれませんけど」

 

 それを聞いて、健児は穏やかな笑みを浮かべて、答える。

 

「そんなことはない。俺はお前のことも、息子のように思っている。俺の跡を継いで戦ってくれているんだ、当然だろう?」

「おやっさん……」

 

 健児の言葉に、カズキは感銘を受ける。隣に座っている早苗も、嬉しそうに微笑む。

 

「それに、いつか本当に、俺の息子になるかもしれないしな」

 

 続けて健児が言った言葉を聞いて、カズキと早苗は顔を見合わせる。

 やがて、その言葉の意味することに気付き、二人揃って顔を赤くした。

 

「な、何言ってるんですか!? まだ俺達はそこまで行ってないというか、気が早いというか!!」

「そ、そうよ! 急に変なこと言わないでよ!! というか、娘がそうなっても別に良いわけ!?」

「早苗のことは大切に思ってる。だが、それはそれとして良い人と結ばれてくれるなら、それもまた良いと思っているよ。娘の幸せを願うのは、父親なら当然だろう?」

「それはそうかもしれませんけど……!」

「もう、父さんったら……」

 

 大きく動揺する二人を見て、健児は微笑ましく思う。

 そうして、しばらく騒がしい時間が過ぎていった。

 

 ★

 

 その日の夜、健児は自室に一人で居た。

 机に向かうと、カズキ達から貰った酒とグラスを置く。そして、酒をグラスに注いでから、机の上にある写真立てに目を向ける。

 その写真は、健児の妻のものであった。死ぬ直前に撮った、笑顔の写真。

 彼女の命が奪われる前に残った、最後の思い出だった。

 健児は酒の入ったグラスを写真に向けて、一人呟く。

 

「今日は早苗とカズキが、プレゼントをくれたよ。父の日だったからな」

 

 写真に向かって語りかけながら、健児は酒を一口飲む。

 口の中にほのかに広がるコクが、酒の味をより深いものにしていた。

 

「うん、美味いな。酒も良いが、このグラスも良い。二人が選んでくれたから、余計にそう感じる。お前にも味わって欲しかったな」

 

 健児はそう言うと、またグラスを写真の前に置く。

 そして、写真を手に取ると、妻の笑顔をしばし眺める。

 

「俺の復讐に、あいつらを巻き込んでしまったことを、少し後悔し始めてる。早苗もカズキも、戦いとは無縁な人生を送ることだってできた。それを俺が阻んでしまった」

 

 健児の顔に、暗い影がかかる。それは己の行いを後悔している人間の表情だった。

 しばし沈黙するが、顔を上げると写真を元に戻し、酒のグラスを手に取った。

 

「だけど、あいつらはちゃんと自分の道を歩んでいる。俺一人が落ち込んでいることなど、無意味かもしれないな。お前が生きていたら、なんて言うだろう?」

 

 そう言って、健児は酒を飲み干す。その後すぐに、新しい酒を瓶から継ぎ足す。

 そうやって酒を飲みながら、夜は更けていくのだった。




 ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
 今回は父の日ということで、獄王のおやっさんである東堂健児の話にしてみました。
 ちなみに健児の誕生日は、6月7日です。決して忘れていたために父の日で代用したわけではないです、いいね?

 それでは今回はこの辺で。
 次回もお楽しみに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。