今回はサブヒロインの一人、レイ・キリエの誕生日会です。
どうぞご覧ください。
7月12日、午後を少し回った頃。
雑貨屋『東堂』の店内に、二人の人物がいた。
一人は桜井カズキ。彼は魚住椅子に座り、レジカウンターの上で頬杖を付き、暇そうにしている。
もう一人は、レイ・キリエ。彼女は店内を回り、商品を吟味していた。
カズキはその様子をぼんやり見ていたが、ふとあることが気になって、レイに声をかける。
「レイさん、一つ聞いても良いですか?」
「はい、なんでしょう?」
首をかしげて答えるレイ。
カズキはそんな彼女を見て、気になっていたことを口にする。
「レイさんって、普段はずっとツインテールですよね。何かこだわりとかあるんですか?」
「あら、何か気になることでもありましたか?」
「いや、俺の知る限りだと大人の女性でツインテールをデフォルトにしてる人って、初めて見たんですよね。どちらかと言うと、子供のよくやる髪型って印象でした。だから、それをするのには何か理由があるのかなって」
「ああ、なるほど。確かにあまり大人がする髪型ではないかもしれませんね。言われてみれば珍しいかもです」
「すみません、気を悪くさせたなら謝ります」
「いえ、そんなことは無いですよ。それで、ツインテを続けてる理由でしたっけ」
レイは顎に指を当てて、何かを思い出すように思案する。何かを懐かしむような笑みを浮かべると、すぐに答えた。
「私も、子供の頃は色んな髪型をしてもらっていました。やっぱり女の子でしたから、オシャレを楽しむのが好きでした」
更に、揺れる髪へと手を伸ばして続ける。
「ある時、ツインテールをしてから遊びに行くと、ダイヤさんが凄く喜んでくれたんです。『お前に一番似合ってる髪型だ』って。それが凄く嬉しくて、それからはずっとツインテールを続けてるんですよ」
「なるほど……そういうことだったんですか」
感心したように、カズキを息を吐く。
レイは照れくさそうに、嬉しそうに笑うと、遠くを見つめた。
「まあ、ダイヤさんはもう忘れちゃってると思うんですけどね。子供の頃の話ですから」
「いやそれは……アイツのことだから忘れてるか。戦いにしか興味無いみたいですし」
「ええ、そういう人ですから。困ったものです」
「全くですね」
そう言い合って、カズキとレイは笑い合った。
★
雑貨屋『東堂』を出たレイは、ホテルへの帰路についていた。
路地を歩いていると、壁にもたれながらこちらを待っている男がいた。
「よう、おかえりレイ」
「ただいまです、ダイヤさん」
レイを迎えに来たのは、赤獅子ダイヤ。
ダイヤはその右手に、何かの紙袋を持っていた。
「何を持ってるんですか? ハンバーガーですか?」
「ちげぇよ。ほら、お前にやる。今日誕生日だからな」
そう言って、ダイヤは紙袋をレイに手渡す。
レイが袋を開けてみると、中には一対のシュシュが入っていた。色は白で、透き通るような雰囲気を感じられる。
「街中駆けずり回って、お前に似合いそうなやつを選んでみた。気に入ってくれるといいんだが」
「気にいるに決まってますよ、凄く嬉しいです。ありがとうございます!」
手に持ったシュシュを眺めて、レイは嬉しさに舞い上がる。だが、ふと気になってダイヤに問いかける。
「それにしても、どうしてシュシュだったんですか?」
そう問われて、ダイヤは照れくさそうに頬を掻く。
やがて、レイの髪へと――揺れるツインテールの先へと手を伸ばす。
「そりゃまあ、アレだ。ガキの頃にも言っただろう? 『
その言葉に、レイは目を見開いて驚いた。
「そのこと……覚えてたんですか?」
「ったりめぇだ。食った飯と女のことは忘れない男だぜ? オレは」
ダイヤはドヤ顔でそう言った。
次の瞬間、レイはダイヤに思い切り抱きついていた。
人目もはばからず、溢れる思いに身を任せて。
「ありがとうございます、本当に……私、今凄く幸せです……!」
「――そうかい」
満面の笑みで抱きついてくるレイに、ダイヤもまた笑顔で抱きしめ返す。
互いの存在が決して離れないように、愛情が決して失われないように。
二人の存在が一つになると錯覚するほどにまで、ただただ抱きしめ合うのだった。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
仮面ライダー獄王の中でも、かなり先を行くカップルの話でしたが、いかがだったでしょうか。楽しんでいただけたなら幸いです。
正直なところ、レイのツインテの話は当初の設定にはありませんでした。これもまた、キャラが勝手に動くというやつに入るのでしょうか。
書いていて思ったのは、やはりダイヤとレイは独自の世界を築いているということです。本人たちにしか分からない世界で生きてますね。羨ましいと思います。
ちなみに、シュシュには『一緒にいたい・愛情が途切れない』という意味を込められるとかなんとか。嘘か本当かは知りませんが、話のネタにはちょうど良かったです。
それでは、今回はこの辺で。
次回もお楽しみに。