今回は2号ライダーの赤獅子ダイヤの誕生日です。
ある日の雑貨屋『東堂』。
いつものように、桜井カズキは店のドアを開ける。
強い日差しに目を細めながら、手に持った箒で地面を掃き始める。
そうしてしばらく掃除をしていると、誰かが近付いてくる気配を感じて、顔を上げる。
「よっ、元気そうだな、カズキ」
そこに立っていたのは、赤獅子ダイヤだった。ダイヤは軽く手を振って挨拶してきた。
カズキはそれに対して、ため息を吐く。
「また来たのか、ダイヤ。お前暇だからって、いつもウチに来なくてもいいだろ?」
「そう言うなよぉ。ダチのところに遊びに来るくらい、別に構わねえだろ?」
「だからダチになった覚えは無いっての」
すっかり恒例になったやり取りを交わし、カズキは掃除を再開する。
一通りゴミを回収すると、裏口に移動してそこにあるゴミ箱へと入れた。
掃除を終えて一息ついたカズキは、表で待っていたダイヤの元へと戻る。
「まあ、飲み物くらいなら出してやるよ。どうぞ」
「サンキュー」
そうして、カズキとダイヤは店の中へと入る。そのまま奥の居住スペースまで移動する。
ダイヤは慣れた様子でソファに座り、カズキはキッチンから麦茶とコップを持ってきた。
「そういや、お前とレイさんのことだけど」
「あん?」
麦茶を淹れながら、カズキが口を開く。それにダイヤも反応する。
「幼馴染で付き合ってるのに、ずっと仲良いよな。長くいると冷めてしまうことだってありそうなのに」
「バカなこと言ってんじゃねえよ。オレがアイツに冷めるなんて、あるわけないだろ。ずっと惚れてんだからよ、こっちは」
堂々とそう言うダイヤに、カズキは感心したように頷く。
「凄いな、お前は。その割には色々と女遊びが目に余る気はするけど」
「お前も知ってんだろ、そういうプレイみたいなもんだ。オレ達なりの愛情表現なんだよ」
「だとしてもかなり楽しんでそうだけどな。一々早苗達にちょっかいかけるのはやめろよ」
「むしろ相手のいる子の方が気楽でね。下手なことにならなくて済むから。これからもよろしく頼むぜ」
「勝手によろしくするなよ、というかプレイだとしたら他人を巻き込むな!」
「うるせえ、そういうもんなんだよ! ダチだと思って付き合え!」
「無茶言うな、あとダチじゃない!」
二人揃って騒ぎ立てて、口論を始める。
やかましさに腹を立てた早苗達が止めに来るのは、それから数時間後のことだった。
★
店を追い出されるように出てきたダイヤは、家代わりのホテルへと戻っていた。
部屋に入ると、ソファに座っていたレイ・キリエがこちらに気付き、駆け寄ってきた。
「おかえりなさい、ダイヤさん」
「ただいま。遅くなって悪かった」
「別に構いませんけど、カズキさんと何かしてたんですか? 早苗さんからそんな連絡が来てましたけど」
「ああ、なんかオレ達のアレコレが気になるらしいぜ。要は人前で暴れるのはやめろってさ。余計なお世話だよな」
「う〜ん、どうでしょうか」
あっけらかんと語るダイヤに対して、レイは何かを考え込む素振りを見せる。
「なんだ、何か気になるのか?」
「ええ、私達の関係はやっぱり世間的には普通じゃないみたいです。だからそれを大っぴらに行うのは、あまり良くないような気はするんですよね」
「おいおい、今更そんなことがあるかよ。オレ達これでずっとやってきたんだぜ? どこで何をしようと勝手じゃねえか」
「それはそうなんですけどね、まあ思うところは少しあるんですよ、私も」
「そんなことーーいや、待てよ」
そこでダイヤは何かに気付き、レイの顔を見据える。
「もしかして、不安になってるのか? オレが他の女に取られるかもって」
そう言われて、レイは気まずさを覚えて苦笑した。
「情けない話ですよね、私から始めたことなのに。時々本気で、あなたがどこかに行ってしまうかもしれないと、不安になってしまうんですよ。ならばいっそ、こんな関係やめた方が良いんじゃないかって」
不安げにそう語るレイ。ダイヤは黙ってその言葉を聞いていた。
やがて、ダイヤはレイの頭に手を乗せて、互いの額を合わせた。
そして落ち着かせるように、諭すように語りかける。
「そんなことあるわけねえだろ? オレにはお前しかいない。お前がオレに惚れたように、オレもお前に惚れてんだ。こんなオレにずっと着いてきてくれるお前が、どうしようもなく愛おしい。だから殺されるくらい愛されたいと思ってる」
「私も……私だって、あなたのことが大好きですよ。誰かに取られるなら殺してしまいたいくらいに。でも、それじゃダメなんじゃないかって」
「何がダメなもんか、そんなことを言う奴はオレがぶん殴ってやる。お互いが納得してるんだ、何も問題ないだろ?」
額を離して、ダイヤは笑う。その笑顔に、レイの心も救われるような気分になった。
すると、ダイヤは突然レイのことを抱き上げる。横抱きにしながら、ベッドまで運んでいく。
優しくベッドにレイを下ろして、その上にまたがるような形で正面から向き合うと、ダイヤは更に続ける。
「それでも不安になるなら、そうならないくらいにお前のことを愛してやる。いや、不安になっても良い。その度に忘れられるくらいにめちゃくちゃにしてやるよ。これでどうだ?」
堂々と語るその姿に、レイは昔のことを思い出した。
初めて想いを告げたあの時と、この人は何も変わっていない。だからこそずっと好きなのだ。
そう思うと、なんだか自分の悩みが小さく思えてくる。この人はどんな自分でも受け入れてくれるのだから。
レイは一つ息を吐くと、身体をゆっくりと起こした。
「ごめんなさい、私が間違ってました。あなた相手にウジウジ悩む必要なんてありませんでしたね」
「おいおい、その言い方だとオレがバカみたいじゃないか?」
「それは否定しませんけどね」
「そこは否定してくれよ!?」
ベッドの上で向かい合い、笑い合う二人。
やがて静かになると、ダイヤがレイの顔に両手を添える。
そのまま優しく包み込むようにしながら、ゆっくりと顔を近付ける。
互いの唇が触れ合ったまま、数秒、数十秒と経って、一度離れる。そしてまたすぐに、同じことを繰り返していく。
そこから先の時間は、いつも通りの、しかし二人だけの特別なものとして過ぎていった。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
ダイヤとレイは大人の恋愛というものを意識して書いているのですが、少しでも感じていただけているでしょうか。
これ書く前にpixivでオリジナル恋愛モノを多く読んでいたので、その辺の影響や参考で上手く書けていれば良いなと思います。
それでは今回はこの辺で。
次回もお楽しみに。