いらっしゃい、さようなら

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キャットル・ミューティレーション

いらっしゃいお客様。

いらっしゃいと言っても貴方は望んでいなかったかもしれないけれど、望んでいたかもしれないですよね。

口も開けない貴方ですから、閉じてしまったのは私ですけど、何を考えているのか分からないですよね。ですけど妙に落ち着いていますね。取り乱すことを期待していたわけではないですけれど、不思議ですね?

もしかして経験がお有りですか。もしもそうであれば、なんというか、稀有で不幸な方ですね。

同情は必要ですか。ないですね、結構なことです。

私は罪悪感を抱くことはないですけど、最近の若い子はどうにも優し過ぎるようでして、きっと貴方のようなお客様に出会うと絆されてしまうでしょう。

安心してください。私は玄人ですから。慣れてますよ。勿論最初は辛かったですよ。何せ一人目は生まれてから大人になるまで育ててくれた御主人様でしたから。とても愛していました。種族は違えども、あの人も私の思いを分かっていたのだと思います。

あの人と愛し合いたくてこんなことを始めたのに、一番最初があの人だったんです。とても悲しいことです。同時に嬉しいことでもありました。だってあの人は私だと分かってくれた。

結ばれることはなかったですけど、最期の瞬間だけは繋がれたんです。とても幸せな瞬間でした。

だからもう大丈夫なんです。一番大切な人を失って、一番大切なものを得ることができた私は無敵です。

ところで話は戻りますけれど、経験はお有りなんですよね。どういうことでしょう。何故生きているのでしょうか。そういう人もいるのでしょうか。

そういえば噂話で聞いたことがありましたね。歩くマタタビみたいな変態がいるとか。若い子たちに被害が多いらしいですけど、あの子たちは爪が甘いんですよね。

喋らせない、動かさせない、考えさせない。基本中の基本ですよ。

知ってます?知らないですよね。元々は熟練の人達が目を掛けている子に教えていたんですけど、最近正式に規則に加えられたんですよ。

どうも私たちのことがよく知られているみたいでして、小賢しく対策する人が増えて来たので。

大変ですよ。優しい子が多いですから、騙されてしまわないか心配で。

私は大丈夫ですよ。ちゃんと殺してあげますから。冥土の土産という言葉を知っていますか?良かった、知っているみたいですね。

死んだら天国か冥界か、浄土か地獄か。でも私はどちらもないと思っているんですよ。勝手に支配者面してる奴らが自分たちを棚に置いて、人の功罪善悪を計るって腹が立ちませんか?許せないですよそんなこと。だから私、聖職の方は積極的に殺しているんです。本当は順番があるんですけど、どうせ回収予定なので問題はないと思います。

鬱憤晴らしついでに、もし本当に神とか仏なんて存在がいるなら良い嫌がらせになると思うんですよ。

殺生禁じたり、愛を説くような存在がどこまでいけば相手を殺したくなるんだろうって気になりません?

だから冥土の土産ですよね。いまの話。貴方がどうなるのか、どこ行くのか、誰と会うのかなんて分からないですけど。もしも神々しい奴にあったら教えてあげて下さい。

きっと面白いですよ。でも何処に行くのでもなければ、私の話を思い出して来世に生まれるまでの暇潰しにでもして下さい。

そろそろ時間ですね。最期に一つ。

猫は好きですか?

そうですか、それは良かった。

それではさようなら。

貴方の血肉が良き生命の礎となりますように。


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