祟り神の暴虐ライフ。   作:八尺様

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超常黎明期のお話が読みたい・・・外伝とか出ないかな・・・


祟り神、復活

世界が混乱に包まれた時代、超常黎明期。

超常(オカルト)が現実を侵食し、暴力が支配したその時代には、歴史に名を残す(ヴィラン)が多数存在した。

 

デストロ、AFO(オール・フォー・ワン)、張間歐児・・・。

しかし、その時代に最大の被害を出した敵の名は、一般にはあまり知られていない。

目撃者の証言など、数少ない情報は対策資料(・・・・)としてヒーロー公安委員会が管理している。

 

・・・“対策資料“ということは、その存在に備える必要があるということ。

その敵は未だ捕らえられておらず、この世界のどこかで生存していると考えられているのだ。

 

果たして、ソレは一体どこに潜んでいるのか。

その答えは、後に最悪の形で明らかになる。

 


 

「なぁなぁ。肝試し、しねぇか?」

 

夏休みのとある日。

クラスメイトのゆーくんの誘いで、ぼく達は肝試しに行くことになった。

 

「肝試しって・・・どこに行くの?この辺には心霊スポットとかないしさ・・・」

 

「いい場所見つけたんだよ、この間!7時にここ集合な!」

 

今思えば、この時断っていればよかったんだ。

でも、もうどうしようもない。

 

 

 

 

 

午後7時。

晩御飯を食べ終わったぼくは、約束の場所でゆーくんを待っていた。

 

「わりぃな、おかわりしてたら遅れちまった」

 

「う、うん・・・それで、どこに行くの?」

 

懐中電灯をカチカチしているゆーくんに、行き先を尋ねてみる。

 

「『煮え山』にさ、ボロボロの鳥居があんのを見つけたんだよ。だから、そこ行ってみようぜ!」

 

「えっ、『煮え山』に!?」

 

『煮え山』。

人を鍋でグツグツ煮て食べる怖い鬼がいるんだって、おばあちゃんが言ってた。

 

「大丈夫だって!鬼なんかいても、おれがやっつけてやる!」

 

そう言うと、ゆーくんは手で炎をパチパチ鳴らした。

 

ぼくもゆーくんも、みんな“個性“を持っている。

お化けとか妖怪なんかよりも、個性を持った(ヴィラン)の方がずっと怖い。

 

「じゃ、しゅっぱーつ!」

 

 

 

 

 

 

「ここだ・・・」

 

「うわぁ・・・」

 

30分くらい歩いて、ぼく達はボロボロの鳥居の前に辿り着いた。

 

鳥居をくぐると、来る途中はうるさかった虫やカエルの声はやんで、辺りは不気味なくらい静かだった。

その奥には、上に登っていく石の階段があった。

 

「ほら、行こーぜ!」

 

「あ、ちょっとまってよぉ!」

 

苔が生えている階段を、ゆーくんはどんどん登っていく。

ぼくは転ばないようにゆっくり登っていたから、ゆーくんの背中はだんだん遠くなっていった。

 

 

 

 

「早くこいよ〜!もうおれだけで探検しちゃうぜ?」

 

「ちょっと、待ってよー!」

 

一番上まで登ったゆーくんは、ぼくをせかしてくる。

ぼくの方からは見えないけど、上には神社があるみたい。

 

「うわー、ボロっちい神社だなぁ。ほぼ潰れてんじゃん」

 

笑いながらそんなことを言うゆーくんは、全然怖がっていないみたいだった。

でも、ぼくは正直すぐにでも帰りたかった。

 

怖い話が好きなぼくは、『人が来なくなった神社』が危ないって知っていた。

幽霊とか、そういう良くないモノ(・・・・・・)が集まってくるって。

 

「狛犬も壊れてるし・・・あっ」

 

神社の様子を話していたゆーくんの声が、急に途切れた。

辺りが無音になって、ぼくの背中には鳥肌が立った。

 

「・・・ゆーくん?」

 

声をかけても、ゆーくんは返事をしない。

もしかして、幽霊が──「早くこいよ〜!」

 

返事が、返ってきた。

間違いなくゆーくんの声だ。

 

「おれだけで探検しちゃうぜ?」

 

「ち、ちょっと待っ──え?」

 

ゆーくんの声に急かされて登ったぼくは、階段を登りきった。

 

でも、ゆーくんはそこにいなかった。

 

「ゆ、ゆーくん?どこ?」

 

呼んでみたけど、返事がない。

境内は静かで、崩れかけた神社の建物だけがそこにあった。

 

「早くこいよ~!」

 

建物の中から、ゆーくんの声が聞こえた。

なんだ、先に入っちゃってたのか。

 

そこでぼくは、ふと考えて足を止めた。

 

「早くこいよ~!」

 

さっきから聞こえるこの声は、確かにゆーくんの声。

でも、ゆーくんが最初に喋っていたのと同じセリフしか言わない。

 

まるで、録音した音声を何回も流してるみたいに。

 

「ゆーくん・・・ぼくの名前、呼んでみて?」

 

「・・・」

 

返事がない。

やっぱり、アレはゆーくんじゃないんだ!

 

「・・・っ。ぼ、ぼく、用事があるから帰るね!」

 

大人の人を呼ぼう。

子どものぼくじゃ無理だ、だめだ。

 

そんな言い訳を頭の中で考えながら、階段を駆け下りようとして──

 

「・・・えっ?」

 

階段が、ない。

確かに階段があった場所には、ただの崖があるだけだった。

 

「早くこいよ~!」

 

ぼくが固まっていると、ゆーくんの声をした何か(・・)が呼びかけてきた。

今度は建物の中からじゃない、ぼくの真後ろから。

 

「早くこいよ~、早くこいよ~、早くこいよこいよこいよこいよこいよ早く早く早く早く早く早く早く早く───」

 

振り向いちゃいけない。

声はどんどん大きくなりながら、ぼくの方に近付いてくる。

 

「早く早く早く早くはやくはやくはやくはやくははははははハハハハハハッ!」

 

姿を見ないように目を瞑ると、いつの間にか女の子のものになった声は、笑いながらぼくの周りをグルグル回り始めた。

怖い、怖い。

 

 

 

 

「ハハハハハハッ!ハハハハハハ──」

 

どれくらい経っただろうか。

急に笑い声が止み、辺りはシンと静まり返った。

ぼくが急なことに混乱していると、鳥居をくぐってから一切しなかった、虫やカエルの鳴き声が聞こえてきた。

 

良かった、助かったんだ。

他の命の気配に、ぼくは安心して目を開けた。

 

「ばぁ!」

 

ぼくの目に最初に映り込んだのは、ニヤニヤと笑う女の子の顔だった。

夜は明けていないし、虫たちの声もしない。

 

「っ!?」

 

ぼくは固まり、目を瞑ろうとする。

騙されたんだ、この子に。

 

「はい、駄目〜。もうワタシのこと見たでしょう?」

 

そう言うと女の子は、無理矢理ぼくのまぶたをこじ開けてきた。

 

「ひっ、いっ・・・」

 

女の子は巫女さんみたいな服を着ていて、顔もきれいだった。

でも、怖い。

ヒトじゃないものが、ヒトの真似をしているような感じだ。

 

「ワタシの鳴きまねに騙されちゃってぇ、かわい〜。またやってさしあげましょうか?『早くこいよ〜!』」

 

ケラケラと笑う女の子の様子を見て、ぼくはおばあちゃんの話を思い出した。

 

 

『煮え山』の鬼の話は、実は全部嘘っぱちだ。

本当は『煮え山』じゃなくて『贄山(ニエヤマ)』と書く。

『タタリガミサマ』に『贄』を捧げてた場所だから、絶対に入っちゃいけない。

『今度タタリガミサマが外に出てきたら、みんな殺されちゃうからね。絶対、入っちゃいけないよ』

 

 

 

「あ〜あ、『贄』を捧げちゃった。可哀想に、全員ぶっ殺されてしまいますね、ワタシに」

 

楽しそうに笑う女の子の、腰から下がグニャグニャと変形していく。

 

「階段を登り始めた時点で、オマエ達は逃げられなかったんですよぉ・・・こんなふうに」

 

ヘビのしっぽになった女の子の足が、ぼくの周りを取り囲む。

 

「ワタシ、柔らかい肉が好きなんですよねぇ。だから、こんなにぐちゃぐちゃにしちゃう」

 

女の子がぼくに見せてきたのは、ぐにゃぐにゃに曲がった人の腕だった。

ゆーくんも、食べられちゃったんだ。

 

「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!許してくださいっ!」

 

女の子に泣きながら謝る。

食べられたくない。

死にたくない。

 

「ごめんなさい・・・食べないでっ・・・」

 

「え〜、どうしましょうかなぁ・・・」

 

考えるような素振りをしているけど、尻尾はぼくの体をぎゅうぎゅう締め付けてくる。

 

「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」

 

「う〜ん・・・決めた!」

 

女の子がポンと手を叩き、笑いながらこっちを見る。

 

朝ご飯は、つくねにしましょう!

 

その瞬間、ぼくの体はボキボキに折られ、弾け飛んだ。




個性『祟り神』
異形型の個性で、“祟り神“っぽいことはなんでもできる。
普通の人間っぽく擬態しているが、本来の姿は下半身が蛇。

人の恐怖や憎悪、あらゆる『負の感情』を自らの力とする。
その性質故に『負の感情』を帯びた攻撃はあまりダメージにならないという、“白面の者“みたいな性能をしている。


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