祟り神の暴虐ライフ。   作:八尺様

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不自然な幸運

「・・・妙だ」

 

やけに力がみなぎる体に違和感を覚える。

私に残っているのは、既に“残り火“であるはずなのに。

 

(ギュルルル・・・)

 

「!?」

 

あり得ない感覚。

おかしい、私にはもはや胃はない(・・・・)はずだ。

 

「なぜだ・・・なぜこんなにも健康なんだ(・・・・・)っ!?」

 

今朝から体がおかしい。

いや、おかしくないこと(・・・・・・・・)自体がおかしい。

早く医者にかからねば。

そう思って、八木俊典はひとまずリカバリーガールの下へ向かった。

 

 

 

「・・・これは驚いたねぇ。どうなってるんだい、それ」

 

検査の結果、驚くべき事実が発覚した。

かつてAFOとの決戦で失ったはずの胃が、完全に再生していたのである。

 

「いやぁ・・・私にもさっぱりで・・・」

 

胃だけでなく、その他損傷を受けていた臓器も完治しており、今の八木俊典の体は健康そのものだった。

奇妙なのは、その回復の原因に本人も全く心当たりがないことである。

 

「まぁともかく、看護教諭としては健康になったなら喜ぶ他ないね。おめでとう」

 

「はぁ、どうも・・・」

 

 

 

 

「美味しいッ!」

 

唐揚げを口に運び、八木俊典は喜びの声を上げた。

久しく感じることがなかった食欲に従い、唐揚げ弁当を食べ進めていく。

 

「・・・しかし、これは誰の仕業なんだ?」

 

摘出したはずの胃が突然再生するなど、どう考えても異常だ。

移植手術が行われた形跡もないと言うし、おそらく何者かの個性によるものだろう。

 

誰が、一体何の目的で。

 

「わからん・・・あっ、無くなった」

 

考え事をしている内に、唐揚げ弁当は全て胃の中に収まった。

それでも空腹感に襲われた彼は、コンビニでおにぎりを3つも買って食べたのだった。

 


 

その日、八木俊典は、かつての宿敵の夢を見た。

 

『やぁ、八木俊典。何やら元気になったようじゃないか』

 

『いや・・・僕は君の夢に過ぎない。第一、僕を殺したのは君だろう?頭を吹き飛ばしてさ』

 

『君に起こったことは、まぁ、“神の思し召し“とでも思っておけばいいだろうさ』

 

『一つ言えることがあるとするなら、幸運だけが続くようなことはないということだ』

 

『大きな幸運が訪れれば、必ず不幸の振り戻しがやって来る』

 

平和の象徴(きみ)の復調という莫大な幸運には、どれほどの対価が必要なんだろうね?』

 

『ふふふ、はははははっ!』

 


 

「・・・っ!」

 

スマホのアラームで目が覚める。

・・・嫌な夢だな、と八木俊典は呟いた。

スマホの画面を見ると、そこに表示されていたのは『根津校長』の名前。

 

「はいもしもし、八木です」

 

『すまないね、こんな朝早くから。・・・悲しいニュースを1つ、聞かせなくてはならない』

 

「・・・何かあったんですか?」

 

『昨夜、リカバリーガールが亡くなったのさ』

 

「なんですって!?」

 

八木は昨晩の夢を思い出した。

まさか、AFOが何か仕掛けてきたのか。

 

少し前、雄英を襲撃してきた(ヴィラン)達。

その中にいた脳無という怪人は、複数の個性を有していた。

恐らくAFOは生きていて、襲撃してきた敵のリーダー・・・死柄木弔を支援し操っているはずだ。

 

敵連合による林間学校襲撃の後、奴らの拠点を襲撃したが、何者かの個性(・・・・・・)によって逃走された。

AFOが姿を現したかと思い警戒したが、奴は姿を現さなかった(・・・・・・・・)

 

『彼女の死因は心筋梗塞だった。外傷も無かったし、敵によって殺害されたのではなさそうだよ』

 

「はぁ・・・しかし、昨日会ったときは元気そうでした」

 

『いくら健康に気を使っていても、老いと言うものは止められない。どうしても体の機能は衰えるし、こういう突然死のリスクも高まるものだよ』

 

『生徒達には、僕から全校放送で話しておくよ。君も健康には気をつけるんだよ』

 

そうして通話は終わり、八木はベッドから体を起こす。

 

リカバリーガールが亡くなったのはただの偶然か、否か。

死因まで分かっており、異常性はないと判断されたのだとすれば、本当にただの病死なのだろう。

偶然だと頭で分かってはいても、八木の頭からAFOの言葉が離れなかった。

“対価“ “幸運の振り戻し“・・・,

 


 

「さぁて、“生贄“の徴収が始まったっぽいですねぇ。順調順調」

 

廃神社で、祟り神は怪しく蠢く。

八木俊典に起こった異変が彼女の仕業であることは、言うまでも無いだろう。

 

「では、ガキの方も始めちゃいましょうか・・・」

 

彼女は次の標的を、緑谷出久・・・の、周囲の人物に定めた。

 


 

雄英高校ヒーロー科、1年A組。

仮免試験を終えた彼らは、ある悪夢に悩まされていた。

 

夢の内容は全員ほぼ共通。

自宅に置いてある神棚、もしくは仏壇の中にいる何か(・・)の視点から始まる。

 

どうやら蛇のような姿らしいソレは、床を這いずるように動き、家の中を徘徊する。

 

『贄は何処(いずこ)ぞ、贄は何処ぞ』

 

そう唱えながら、壁を、天井を、自由自在に這い回る。

そして最後に、ソレは夢を見ている本人が寝ている部屋へと入ってくる。

 

『贄・・・贄・・・』

 

そう呟いて寝ている自分にゆっくり近付き、ソレは体を巻き付ける。

 

この時点で大概は目を覚まそうとするのだが、その試みが成功したことはない。

ソレは大きく口を開いて自分の顔に近付き、そして──

 

(ぴちゃっ)

 

涎が滴り落ち、そこで目が覚める。

恐る恐る周囲を見回すも、ソレらしき姿はない。

 

『良かった、夢で』

 

ホッとして胸を撫でおろすも、頬に違和感を覚える。

拭ってみると、べったりとした涎のような液体が手についたのだった。

 

 

こんな状況が毎日続いた結果、彼らは不眠症を患った。

生徒だけでなく、担任の相澤消太までも悪夢を見続け、クラス全員の顔には隈ができている。

頼れる保険の先生であったリカバリーガールも、つい先日心筋梗塞で亡くなってしまい、睡眠薬を服用してなんとか眠りにつく日々。

そんな中でも、インターンは予定通り実施されることになった。

 

 

 

 

「ではお仕事、頑張って」

 

「待って・・・!!なんで・・・・・・」

 

インターン初日。

壊理と緑谷出久の、初めての邂逅と別れ。

 

それを密かに目撃した者がいた。

 

「うふふふっ・・・利用できそうなやつ、見ーっけ♡」




次回、死穢八斎會と祟り神。
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