祟り神の暴虐ライフ。   作:八尺様

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神には巫女が必要。
純粋無垢な子供であれば尚良い。


極道と祟り神

『治崎。神棚とか、稲荷神社とか、そういうもんを粗末にすんなよ』

 

『なんで、か。そうだな・・・』

 

『確かに、この世にゃあ神も仏もいないかもしれねぇ。でもな、もっとたちの悪いもんは確実にいるんだ』

 

『“タタリガミ“・・・神と名乗っちゃあいるが、あんなもんが神様な訳ねぇ。ありゃバケモンだ』

 

『もし目をつけられたら、とびきり良い酒を渡せ。間違ってもケンカ売っちゃならねえぞ』

 

 

真剣な表情で、オヤジがそう言っていたのを思い出した。

 

「さぁ・・・どうしますかぁ?」

 

オヤジの言った通りだ。

目の前のコレは、人間がどうこうできる存在じゃない。

悍ましい気配と、濃密な“死“の気配。

同じ室内にいるだけで、冷や汗と寒気が止まらなくなる。

 

どんな理不尽な交渉内容を突きつけられようと、頷くしかない。

 

「・・・分かった。要求を飲もう」

 

「よろしい。では、壊理はワタシが貰うということで・・・」

 

「待て。それと、こちらから贈り物がある」

 

応接室の棚の奥から、とっておきの酒を取り出す。

 

「これは・・・ロマネ・コンティではありませんか!!しかもジェロボアムバージョン!!」

 

「1945年産・・・ウチで一番良い酒だ」

 

縁あってオヤジが譲り受けた品。

『いつか一緒に飲もう』って言われてたが・・・ここで使うほかないな。

 

「うふふふふっ!いいですねぇ、気に入りました!極道の復権でしたか?ソレにも手を貸してあげましょう!!」

 


 

「こんにちは、治崎廻」

 

「壊理というガキがいるでしょう。ワタシに寄越せ」

 

「寄越すなら、ワタシはお前達に危害は加えません。もうすぐ襲撃をかけてくるであろうヒーローとの戦闘でも、少し助力してやります」

 

「寄越さないなら・・・分かるでしょ?」

 

突然現れて、意味不明な要求をしてきた女。

彼女は自身を『タタリガミ』だと名乗った。

 

こんな舐めた態度を取られれば、ミミックは黙っていられない。

 

「テメェ・・・さっきから何さ──」

 

「待て、クロノ!」

 

激昂し、『タタリガミ』に掴みかかろうとするミミック。

しかし、その先の言葉が紡がれることはなかった。

永遠に。

 

「ふむ・・・今ワタシは彼とお話しているんです」

 

「黙ってろ、チンピラのクソガキ」

 

ゴキャリ、と鈍い音がして、ミミックが床に転がる。

マスクは外れ、頭と体が逆方向を向いていた。

 

「あれ。そう言えばアナタ、綺麗好きなんでしたっけ?」

 

座っていた椅子から立ち上がり、『タタリガミ』がビクビクと痙攣するミミックに近付く。

 

「散らかしちゃってごめんなさいねぇ。きっちり死体(ゴミ)は片付けるので、ご心配なく」

 

彼女の下半身が変形し、ミミックに絡みつく。

蛇の尾で覆われ、見えなくなる。

 

ゴキリ、バキャリ。

 

そんな異音と共に、ミミックの死体は消失した。

 

「・・・さて、お話を続けましょう。ええ、お話を(・・・)

 

再び席に着く『タタリガミ』。

悍ましい蛇の尾が、妖しくうねっている。

 

「別に断っても構いませんよ?この程度の人数なら、後片付けも楽でしょーし」

 

「さぁ・・・どうしますかぁ?」

 

これは交渉ではない。

単なる恫喝だ。

 

もはや治崎に、選択肢は残されていなかった。

 


 

コンコン

 

「!」

 

部屋の扉がノックされ、壊理は体をビクンと震わせる。

ドアを開けて入ってきたのは、壊理も見たことがない少女だった。

 

「こんにちは、壊理ちゃん。アナタを迎えに来たよ」

 

柔らかい声でそう言いながら、ゆっくり近付いてくる少女。

その顔は優しげな笑みを浮かべていて、まるで聖母のような雰囲気を醸し出していた。

 

「怪我してるの・・・?治してあげるね」

 

包帯が巻かれた手足に気付くと、少女は優しく包帯が巻かれた箇所を撫でる。

すると、何か温かいものが手足に感じられた。

 

「・・・これでもう治ったはず。包帯を取ってみて?」

 

壊理が恐る恐る包帯を外すと、そこには傷跡すら残っていない綺麗な肌があった。

 

「・・・お姉さんは、誰なの?」

 

これまでの自分を“管理“するための者達とは違うのだと、壊理は察した。

そうであるならば、この人は一体何者なのか。

 

「ふふふ・・・お姉さんはね、アナタの親戚だよ。だってほら、髪の色も目の色も、お揃いでしょう?」

 

壊理の頭を撫でながら、少女はそう語りかける。

確かに、2人とも髪色は白で目が赤だ。

 

「これからワタシとアナタは、おんなじ家に帰って、おんなじご飯を食べて、おんなじ部屋で寝るんだよ」

 

「・・・痛いこと、しない?」

 

「しないよ、絶対。約束する」

 

その力強い言葉に、壊理の瞳から涙が溢れた。

 

「えっ、な、なんで?どこか痛いの?」

 

「ううん・・・お姉さんが迎えに来てくれて、嬉しいのっ・・・」

 

触れている手の感触が、優しくて、温かくて、壊理は嬉しかった。

 

「ひぐっ・・・えぐっ・・・」

 

「大丈夫だよ、落ち着いて。ワタシの目を見て?」

 

少女の言葉に従い、壊理は少女の真っ赤な瞳を見つめる。

 

「大丈夫、大丈夫だよ・・・ふふっ」

 

少女の瞳が、妖しい光を放った。

 

 

 

「アナタは巫女。ワタシに仕える者」

 

「今日からアナタは、神崎壊理。ワタシの・・・まぁ、妹ね」

 

「ワタシが守ってあげるから、これまでの怖かったことは全部忘れなさい・・・それと、ワタシのことはお姉ちゃんと呼んでね?」

 

「・・・はい。私は、お姉ちゃんの妹です」

 

機械のように、言われたままの内容を繰り返す壊理。

その瞳は、鏡華と同じく妖しい光を放っていた。

 

「よろしい!良い子ですねぇ、壊理!」

 

彼女が優しく頭を撫でると、壊理の瞳から妖しい光が消える。

 

「えへへ・・・」

 

撫でられたのが嬉しいらしく、壊理は照れくさそうに微笑んだ。

 

「じゃあ、ちょっと用事を済ませてから、家に帰りましょう。ほら、掴まって」

 

「は〜い」

 

鏡華の言葉に素直に従い、彼女にだっこされる壊理。

 

「良い子ですねぇ。ふふふ、うふふふっ・・・」

 


 

「うおっ、何やぁ!?」

 

廊下が突如崩落し、ファットガムと切島が落下する。

 

「チッ・・・分断する気か!」

 

天井と床が崩れ、地下に突入したヒーロー達は分断されてしまった。

 

「分断はしてあげました・・・後は各個撃破しなさい」

 

 

 

 

一方、先行していたルミリオンこと通方ミリオは、治崎に追いついていた。

 

「治崎!壊理ちゃんはどこだ!?」

 

「生憎、壊理の“姉“が引き取りに来てな・・・」

 

不機嫌そうにそう答える治崎。

 

「ふざけるな!!」

 

「いーえ、ふざけてませんよぉ?」

 

ミリオの背後から、ゆっくり誰かが歩いてくる。

声のする方向から発せられる恐ろしい重圧に、彼は振り向くことができない。

 

「ワタシが妹を連れて行くのに、何か問題があるんですかぁ・・・?ヒーローさん?」

 

ジットリと纏わりつくような、嫌な気配。

濃密な“死“の香りが、こちらに迫ってきている。

 

「ワタシはただ、妹を迎えに来ただけですよ・・・ねぇ、壊理?」

 

「うん、お姉ちゃん!」

 

その声に、ミリオは思わず後ろを振り返る。

そこには、壊理を抱いて微笑んでいる少女がいた。

 

「・・・だぁれ、この人?」

 

「・・・!」

 

壊理の言葉を、ミリオは聞き逃さなかった。

 

「記憶を・・・弄ったのか・・・!」

 

「何のことでしょうかぁ・・・?」

 

ニヤニヤとした笑みを浮かべ、少女はミリオを見つめる。

 

「何の証拠もないのに、まるで人を敵みたいに扱うなんてぇ・・・傷ついちゃいますね」

 

「ま、待「しつこいですねぇ・・・」

 

一撃。

それだけでミリオは壁に叩きつけられ、意識が朦朧とする。

 

「ガハッ・・・」

 

見えない。

攻撃のモーションすら認識できず、故に『透過』で回避することができなかった。

 

「ほぉら・・・何にもできないんだから、出しゃばってくんなってんですよぉ・・・!」

 

ニヤニヤと笑みを浮かべ、ミリオに近付く少女。

その腕の中の壊理も、冷たい目でミリオを見つめている。

 

「壊理・・・ちゃ・・・」

 

「しつこい。壊理はオマエの助けなんか求めてませんよ」

 

蛇の尾がミリオに巻き付き、締め付ける。

ミリオは『透過』で逃れようとするが、なぜか個性が発動しない。

 

「個性破壊弾・・・素晴らしい性能ですねぇ。当たらなければ良いだけなので、対策は楽ですが」

 

ミリオの個性は、先の一撃で個性破壊弾を突き刺されたことにより、完全に失われた。

 

「効果もこの目で見れましたし、アナタに用はもうありません」

 

「が・・・あっ・・・」

 

メキメキと音を立て、ミリオの全身が軋む。

 

万事休す。

そう思われた瞬間だった。

 

「ルミリオン!!」

 

緑谷出久が、壁を突き破って現れた。




鏡華ちゃんは子供好き。
純粋で、可愛くて、柔らかくて、美味しいから。


死穢八斎會の組長は、若い頃に『タタリガミ』と遭遇しています。
純米大吟醸を献上して見逃してもらいました。
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