補遺816-Ψ-03
2014年██月██日
あかしけ やなげ 緋色の鳥よ
くさはみ ねはみ けをのばせ
赤時化 夜薙げ 緋色の鳥よ
草食み 根食み 気を伸ばせ
赤し毛 柳毛 緋色の鳥よ
実食み 寝食み 毛を伸ばせ
阿傾け 矢投げ 緋色の鳥よ
九叉食み 音食み 卦を伸ばせ
***
ふと気がつくと、青年は真っ赤な原野に立っていた。
夕焼けよりも赤く、地平線の彼方まで緋色に染まり切った空に、同様に緋色に染まり切った大地。
生ぬるい風が音もなく吹き、青年の学生服をはためかせる。
あまりにも非現実的な光景に、青年はぶるりと身震いした。
「なんだ、ここは…。」
青年は突然見渡す限り広がった緋色の世界に、迷子の子どものように呆然と立ち尽くす。
そもそも、青年は先ほどまで学校に向かうための通学路を歩いていたはずだった。
いつもの時間よりも早く家を出て、これなら一番に教室につくかもしれない、と少々浮足立って学校に向かっていた。
住宅街を歩き、この先工事中の看板を通り過ぎて、公園に差し掛かったその時、ふと公園内に何か薄ぺらい紙のようなものが落ちていることに気づいた。
誰かの落とし物かな?
そう思い、それならば交番に届けようとその紙を拾い上げた。
紙は15㎝四方程の大きさで、砂場に落ちていたからか、少し砂利で汚れている。拾い上げたその面には何も書かれておらず、ならばと手首をひねってくるりと裏側に返した。
裏側は、表面と同様に砂利で汚れていたが、ただ一つ、何かの文字が書いてあることが表側と違った。
ああ、思えば、その文字を見てしまったことが…いや、この紙を拾い上げたことが、この公園を通ったことが、すべての過ちだったのだ。
あかしけ やなげ 緋色の鳥よ
くさはみ ねはみ けをのばせ
その文字を認識した瞬間、青年が見る世界は恐ろしいほど赤い原野に塗りつぶされてしまった。
あの文字は一体何なのだろうか。
言葉尻はどことなく俳句や詩を彷彿とさせる書き方だ。だがそれにしては俳句には必須の季語がどこにも見当たらないし、『あかしけ』や『やなげ』など、言葉の意味が全く検討つかないものばかり見受けられる。
もしかしたら、現代の言葉にそぐわない、つまり江戸時代とか少し前の時代の言葉なのかもしれない。それか、万が一現代に書かれた物ならば何かの暗号かも?
暗号、古の言葉、何とも心躍らせる語群だ。
青年は非現実的な現象に巻き込まれている自身の状況を忘れて、ちょっと想像を膨らませてみた。
緋色の鳥…ふむ、レッド…いや、血のように紅い、ブラッドだな
鮮血に染まりし巨鳥…ブラッディバード…バードは少し微妙か?
漆黒の翼に対比して、鮮血の翼…ブラッディウイングとかどうだろう?うん、いいな、すごくいい感じだな!
即席にしてはいい呼び名ができた。青年は二コリと笑った。
青年は俗にいう中二病だったので、こういうことを考えるのが大好きだった。自身の正体()である漆黒の翼と敵対するような名前をつけられて満足した。
筋書きはこうだ。ある日漆黒の翼の元に一枚の紙が送られる。その紙には凡人では解けないような難解な暗号とともに、自身の友達である『斉木楠雄』を連れ去ったと書いてあるのだ。
そう、その紙は悪の秘密結社、『ダークリユニオン』の幹部『
暗号を解くことができず、斉木は戻らぬと諦めかけていたその時、ついに一人の男によって暗号が解かれた。
そう!この男!青年こと漆黒の翼が!!
しかし、漆黒の翼は暗号が解けて、斉木の居場所が分かったにも関わらず、そのことを誰にも知らせず、一人で敵の罠が待ち受けるその場所へと向かった。
戦えない彼ら凡人を達を巻き込まぬ為に、たった一人で戦いに向かったのだ…
そしてついに、
『でてこい…緋色の鳥、いや、
漆黒の翼の呼びかけに答えるように、空の彼方からバサリバサリと巨大な羽音を響かせながら、緋色の巨鳥が現れる…!
さあ、ここからどう奴を倒す!?
自身の繰り広げた妄想に、クククと笑いながら青年は封印されし()右腕を見下ろして…その右腕が小刻みにプルプルと震えていることに気が付いた。
何故震えているのだろうか?寒いわけでもないのに。
原因が分からず、とりあえず左腕で右腕をさすろうと、手を伸ばし…伸ばしたことで、左腕も震えていることに青年は気が付いた。
左腕どころじゃない、青年はそこで自身の全身が小刻みに震えていることに気が付いた。
なぜ、なぜこんなにも震えているのだろうか。
寒いわけじゃないのに、何かに怯えているわけでも…
瞬間。
ギィ
と何かの声が聞こえたような気がして、青年は右手と左手で自身の体をかき抱きながらバッと辺りを見渡した。
血のように紅い原野に、最初と何も変わった様子はない。
赤い空に、朱い大地、何にも変わらない。
青年は目を見開いて、細めて、また見開いて、緋い地平線の彼方に目を凝らした。
なにもない。
なにもない。
なにも飛んでなんかいない。
あいつはまだきていない。
あいつ?あいつって何が?
青年は自身の頭の中に浮かんだ考えに首を傾げた。
初めてくる場所のはずだ。こんな非現実的な原野、見たことも聞いたこともないはずだ。
だがまるで知っているかのような言い方だった。
自分の言葉なのに。
何にも知らないはずだ。
いいや、何にも覚えていないはずだ。
青年は、全部覚えていないのだ。
何にも憶えていないのに、あの阿禍い空の彼方から目を離せない。
だって、だって、恐ろしいものが飛んでくるから。
青年は地平線の彼方が怖くて仕方ない自分に、ようやく気が付いた。
いや、青年は本当は知っているのだ。
憶えてないけど死っている。
空を飛べることも、あの彼方から奴が来ることも、全部全部、あの紙に記された言葉の所為だってことも。
小刻みだった体の震えは、ついに目に見えるほどに大きく震え、歯はがちがちと音を鳴らして震え始めた。
逃げなければ、とにかく遠くへ、あいつの来ないところへ。
青年は体を宙に浮かび上がらせて、必死に手足をばたつかせた。どうにか遠くにいきたかった。
手をぐるぐると振り乱して、足をがむしゃらにばたつかせた。
それでも進む距離は走った時と大差なくて、手足を動かさなくても早さなんて変わらなくて、それでも青年は全身の持てる力の限りで宙を藻掻いた。
呼吸が早くなって、息が苦しい。
すさまじい運動量に、体が悲鳴を上げて、あがけなくなっていく。
青年は自身の運動神経のなさを呪いながら、それでも必死に空を泳ぎ続けた。
2分ほど飛んでいただろうか。
全身の穴という穴から汗が吹き出し、学生服を濡らしている。体を動かして全身が熱い。
ずっと見つめ続けていた地平線に、青年は違和感を憶えた。
小さな点がある。
点は動くことなく少しずつ大きくなりながら、そこに留まっている。
点は、徐々に、徐々に、大きくなっていき、やがて一つの形としてとらえられるほど大きくなった。
二つ並んだ、逆Uの字。
時折バサリと音をたてて、それは先端を下に向けて振り下ろす。
まさしく、鳥の形だった。
それを見た瞬間、青年は途方もない恐怖に全身を支配されて、金縛りにあったかのように動けなくなった。
逃げないと。いますぐ踵を返さないと。
だが体はピクリとも動かない。冷や汗だけが唯一全身を伝って自由落下をしている。
逃げないと。いますぐ目を覚まさないと。
でもどうやって?今の自分にできることなんて何もないじゃないか。
ああ、頼むから、誰か夢だと言ってくれ。
鳥はついに、その姿をはっきりと目視できるところまできていた。
赤い翼、紅い嘴、朱い目、緋い体。遠目に見ている今は青年と同じ大きさに見える。
きっと、近くに来れば何倍もの大きさになるだろう。
近づいてくる。近づいてくる。
ああ、来る
来る、くる、くる、くる!
叫ぼうとして、乾いた舌が喉奥に張り付いて、かすれた声が口から漏れた。
鳥はまた一つ大きくなった。
くる、はやく、にげないと
にげろ、にげろ、うごかないと
鳥はまた一つ大きくなった。
くる
くる
いやだ、きてる
くる、くる、くる
鳥はまた一つ大きくなった。
くる、くる、くる、ああ、きてる、きている!!
鳥はついにそこにいる。
青年はこんなことになった発端の言葉を思い浮かべた。
縋れるならばなんでもよい。心の中でその言葉を叫んだ。
あかしけ やなげ 緋色の鳥よ
くさはみ ねはみ けをのばせ
緋色の鳥の嘴が縦に開かれる。
赤時化 夜薙げ 緋色の鳥よ
草食み 根食み 気を伸ばせ
緋色の鳥の割けた口から、阿禍い舌が覗いている。
赤し毛 柳毛 緋色の鳥よ
実食み 寝食み 毛を伸ばせ
緋色の鳥の足が、青年を捕えようと開かれる。
阿傾け 矢投げ 緋色の鳥よ
九叉食み 音食み 卦を伸ばせ
緋色の鳥の鉤爪が、緋色に鈍く輝いた。
緋色の鳥よ 未だ発たぬ
全身の貫く激痛に、青年は声にならない絶叫をあげた。
***
「あああああああああああ!!!あっ。はぁ、はぁっ!!」
青年、海藤瞬は、絶叫しながらガバリと勢いよく体を跳ね上げた。
海藤は、通学路の途中にある公園の砂場の上に、寝転がっていたようだった。朝だからだろう、公園に人影はなく、海藤が吐き出す荒い呼吸だけが聞こえてくる。
「ゆ、ゆめ…?ゆめだったのか…?」
突然の場面転換に、海藤は自身の正気を疑った。
ついさっきまで、別の場所にいたのに…いや元々はこの公園にいたのだが、どういうことだろうか。
海藤はさっきまでいた場所の光景…赤い原野を思い出しかけて、首をブンブンと横に振った。考えたくない。
それよりも全身を流れる汗が気持ち悪かった。
どうやら、寝ている間に大量の汗をかき、かつ砂場で倒れたまま暴れまわったのだろう。
汗によって砂が全身に張り付いて顔も髪も学生服もすさまじく汚れており、砂場の砂とついでに自身の学生カバンが砂場の外にめちゃくちゃに飛び散っている。
ともかく、自分の鞄をとろうと、海藤は立ち上がろうとして、手にがさりと何かが当たった。
手の方を見下ろすと、そこにはいつの間に出したのだろうか、自身の持つボールペンと……15㎝四方の紙があった。
あかしけ やなげ 緋色の鳥よ
くさはみ ねはみ けをのばせ
「ヒッ……!!」
その文字を見た瞬間、海藤は恐怖のあまり悲鳴をあげた。
ゆめじゃ、ゆめじゃなかったのか!?
でもこんなの、ありえないだろう!!?
止まっていた汗が再び全身の汗腺から吹きだす。震えが収まらない。
先ほどの恐ろしい記憶が蘇ってきそうになって、海藤はその紙を急いでぐしゃぐしゃに握り潰した。
それでも…途方もなく寒くて、自分だけどこか遠くの世界にいるような、まだ原野の夢の中にいるような、恐れは海藤の背中に張り付いて消えはしない。
誰でもいいから誰かに会いたい。
誰でも…と思った瞬間、脳内にあがった親しい友人たちの笑顔で、全身を縛り上げていた寒さが薄らいだ気がした。
海藤は握り潰した紙を放り投げて、自身の鞄の元に転がるように這いずり寄った。持ち手をしっかり肩にかけると、抱きしめるように抱えながら、立ち上がり走り出した。
公園の外に一歩踏み出し…そこでくるりと踵を返して砂場の元に走る。
落ちているぐしゃぐしゃの紙を拾い上げて、ポケットにつっこむ。
これは誰にも見せるわけにはいかない。
そして海藤は再び、今度こそ公園を出て、一直線に学校まで走って行った。
***
キンコンカンコン
海藤が学校についた頃には、チャイムが鳴り響き学校の門がちょうど、生徒指導の松崎の手によってしまるところだった。
「海藤!!!お前遅刻だぞ!!」
案の定怒鳴られる。
普段なら顔を真っ青にして謝るところだが、今はその怒鳴り声すら有難かった。
「かひゅっ、せん、ひゅっ、はあ、ちこ、ぜぇ、すい、かひゅ、ませ…!」
普段通りを装いながら、答える。息乱しすぎて言葉にならなかったが。
疲労と、いまだに居残る恐怖で震える足で、へろへろと校門を通る。走ったことの疲労が隠れ蓑になって、海藤の体調の最悪さをうまく隠してくれているようで、松崎はこちらの様子を指摘してこない。
「あとで生徒指導室に来い!」という怒鳴り声を聞きながら、よろよろと教室まで歩いていく。
教室につくと、どうやらホームルームは終わっていたらしい。
クラスメイト達はがやがやとお喋りをしながら次の1限の授業に向けて、教科書を出したりノートを出したり準備している。
ああ、いつもの日常だ。
涙が出そうになってグッとこらえる。手足はまだ少し震えているが、誤魔化せる範囲だ。
やはり、あの赤い原野で起きたことは、全て夢だったのだ。
体の冷えがだいぶなくなってきた。
自分の椅子に向かおうと、教室に入ると、ふと、斉木と目が合った。
「さ、斉木!おおはよぅ!」
若干声が震えたが、なんとか普通に挨拶ができた。そのまま斉木の机に近寄る。
斉木は目を丸く見開いて何故か驚いている。彼のこんな表情が見られるなんて珍しい。普段は冷めきった無表情で海藤のことを一瞥するくらいなのに。
海藤が遅刻したことに驚いているのだろうか?
「キョ、今日はだな、そう、少し…その、ふ、不穏な風が…」
なぜ遅刻したのか話そうとして…普段あんなに回る口が、いまは全く思う通りに話せない。普通に話すって、どんな風に話すんだったっけ。
「えっと」「その」ともごもごしていると、横から「おうチビ!遅かったじゃねえか!」とでかい声が聞こえてきた。
見ると、予想通り燃堂力が相変わらずいかつい顔面を晒しながらこちらにやってきた。
「ア、ああ、少しな、不穏な風を感じてそれを調査していたんだ。」
フッと格好つけながら話す。よかった。こいつに対しては普段通り話せる。
遅刻した理由は全くの嘘になってしまったが、仕方ないだろう。あんな恐ろしい夢のことを話すわけには行かなかった。
海藤がそもそもあんな夢を見てしまったのは、あの紙の文字を見てしまったからだ。見ただけでこうなるなら、話すことも危ないのではないだろうか?初めて出来た大事な友人を、あの恐怖に巻き込みたくなかった。
それに、真っ赤な原野で、真っ赤な鳥に殺されたなんて…きっと、この優しい友人と
そこまで考えて…また原野のことを思い出しかけて、海藤は思考を止めた。今恐怖を前面に出してしまえばきっと追及を受けてしまう。
勝手に震えだしてしまった体を両手で庇いながら「きょ、今日は寒いな。」と誤魔化す。
そして、ばれてないだろうかとチラと斉木の顔を見た。
斉木は目頭にしわを寄せて顔を顰めて、え、あれ、誤魔化せてない?
斉木は悲しんでいるような、それ以上に怒っているような様子で、海藤の目をジッと見つめていた。
それからふいと、視線を逸らしていつの間にか教卓にやってきていた先生の方に目を向ける。
『バグニュース』
「おっ?チビおめえ、顔色悪いな?」
「えっ。」
燃堂にも指摘されて、心臓がドキリと跳ねた。まさかこのバカにばれるとは思ってもなかったのだ。
「あら、海藤君。確かに体調が悪そうね。」
さらに教卓から先生がやってきた。
…そんなに自分の顔色は悪いのだろうか。近くに鏡などないから見ることができない。
それならばと、さっき走って登校したことで疲れている、と言おうと口を開いた瞬間。
ガタリ
斉木が突然立ち上がった。『テレパシー』
(はい。保健室に行きたいんですが、歩いているのも苦しくて…。)
「分かったわ保健室に行くのね。それなら斉木君。彼に付き添ってあげて。」
「い、いや!ぼく…俺は…」
「おう先生、オレっちもつきそうぜ!」
「斉木君が付き添うから、燃堂君は授業に集中してください。」
戸惑っている間にササッと保健室に向かうことが決まってしまった。
先生は話は終わったと言わんばかりに、「それじゃあ授業始まるから座って!」とクラスメイト達に声をかけている。
あまりにも早い流れに呆然としている間に、斉木は教室の後ろの扉の前に歩いていき、早く来いと言わんばかりにチラリと振り向いた。
流されるまま、海藤は鞄を持って慌てて斉木を追いかけて、並んで保健室に歩いて行った。
***
保健室は運が良いのか悪いのか、誰もいなかった。
海藤の隣を歩いていた斉木は、スタスタと勝手に保健室の中まで入っていき、その辺にあった椅子をベッドの近くに置いてそこに座った。
それから海藤の方を向いて、片手でトントンとベッドを叩いた。…寝ろということだろう。
「いや、斉木。俺は全く体調悪くなんか」
そこまで口にしたところで、再び斉木がトントンとベッドを叩いた。いいから寝ろ、ということらしい。
斉木がここまで自分の意思を押し通してくるのはとても珍しいことだ。
彼は普段、自分たちの話を聞くばかりで、自分から話しかけに行ったり、話題を提供するようなことは一つもない。無表情で黙って、そばにいる。
だが話を聞いていないというわけでもなく、同意するように目線をこちらに向けたり、ほんのわずかだが表情が動くことがある。
それが今日は、表情を崩して驚いたり怒ったり、こうして保健室まで付き添ったり…それだけ心配してくれているのか。
そう考えて、海藤はぽかぽかと胸の内が暖かくなった。『パイロキネシス』
恐怖と乾いた汗によって奪われていた体温が、戻ってくるような気がする。
いや、本当に戻ってきたのかもしれない。すごく体が暖かい。
海藤は、斉木に言われた(言ってはいない)通り、鞄をベッド横に置くと、ゆっくりと体をベッドに横たえた。
「悪いな斉木。ありがとう。」
心からの言葉を告げると、斉木の表情がほんの少しだけ柔らかくなった気がした。
開け放たれていた窓から朝の日差しが入り込み、新鮮な風がカーテンを揺らしながら室内を駆け抜けていく。
しかしどういうわけか、体だけはぽかぽかと暖かく、海藤はその暖かさに誘われるように、ゆっくりと瞼を閉じた。
今なら悪夢など見ない気がする。
ずっとずっと海藤の頭を支配していた恐怖は掻き消え、全身を包み込む安心感に身を委ねて、海藤はふつりと意識を手放した。
斉木楠雄は、ゆっくりと右手を掲げると海藤の頭にそっと手を置いて、目を閉じた。
そうして、友の悪夢を晴らすべく、認識の世界へ飛び込んだ。
***
ふと気がつくと、海藤瞬は真っ赤な原野に立っていた。
夕焼けよりも赤く、地平線の彼方まで緋色に染まり切った空に、同様に緋色に染まり切った大地。
生ぬるい風が音もなく吹き、海藤の学生服をはためかせる。
あまりにも見覚えのある非現実的な光景に、海藤の全身は一気に恐怖に支配された。
「ヒッ…そ、そんな、ここは。」
がたがたと全身が震え、緋色の鳥に殺された死の記憶が蘇る。
全身の穴から汗が吹き出し、あんなに暖かった体が再び凍り付いたかのように冷めていく。
どういうことだ。この世界は夢じゃなかったのか?
まさか、現実?
海藤はヒュッと鋭く息を吸い込んだ。
また、また自分は殺されるのか?
あの赤い鳥に
あの紅い巨鳥に
この朱い世界に
緋色の鳥に
自然と、海藤の目線は地平線の彼方に向けられた。
なにもない。
なにもない。
なにも飛んでなんかいない。
あいつはまだきていない。
当然安心など出来ない。そうやって、最後にはあの鳥がやってきて、何度も何度も殺されたのだ。
死にたくない
死にたくない
呼吸が早くなる。
吸いすぎた酸素が体から出ていかない。
極限まで緊張が高まった、その瞬間。
ポン
「うわあああああああ!?あ、あええええええ斉木!!!?」
誰かに肩を叩かれて、絶叫とともに振り返ると、斉木楠雄がその場に立っていた。
「な、なんでここにいるんだ!?」
海藤自身、ここが自分の夢なのか、現実なのか理解できていない。しかし、今まで一度も他人と出くわしたことがないこの世界に、斉木が突然現れたことが不思議であることは分かった。
「……。」
斉木は何も言わない。無表情。ここが学校の中であると錯覚するほど、あまりにもいつも通りだった。
なんなら、海藤の方を見ていないことすらいつも通りだった。すごくいつも通りな表情で海藤ではなく、別の方角を見ている。
どこを見ているんだろう。
海藤は後ろに向けていた体を斉木が見ている方角、つまり正面へと体を向けた。
緋い地平線の彼方に、一つの点が見える。
「あ」
点は、徐々に、徐々に、大きくなっていき、やがて一つの形としてとらえられるほど大きくなった。
「ああ…あああ」
緋色はやってくる。
空を飛んで、羽ばたいて、空気を叩いて、人の血肉を求めて。
忘れていた恐怖が再び舞い戻ってくる。
こわい。しにたくない。にげたい。
公園で、赤い原野でなんどもなんども繰り返し引き裂かれた記憶がフラッシュバックし、海藤はウッと腹の底から胃液がせりあがってくるのを感じた。
過去が、記憶が、胃液とともに巻き戻って、現実との境がなくなっていく。
行き場のない絶望とともに、全てを吐き出そうとしたとき、後ろから「…っ」と誰かの息をつめる音がした。
うしろ…うしろ…
後ろって、誰かいたっけ…?
この地獄には自分しかいないはずでは?
だって、いままで自分しかいなかった。
涙を流して許しを請いながら、赤い原野をさまよい歩いた記憶が蘇る。
今との違いは、さまよっていないこと…?
なんで迷っていないんだ?
ああ、そっか
それに思い至った瞬間、現実と記憶が混濁していた精神が急に綺麗に二分されて、心が凪いでいく。
今は、斉木がいるんだった。
最悪な状況は何一つ変わっていなくても、絶望が身にくすぶったままでも、それでもその事実だけで海藤は一つの覚悟を決めることができた。
死ぬ覚悟じゃない。
死ぬ覚悟なんてできない。
怯えは何も変わっていない。
こわい。しにたくない。にげたい。
でも、
逃げるわけにはいかない。
なぜなら、今この世界には海藤瞬の初めてできた友達がいるから。
強く、強く、拳を握りしめる。
死ぬ覚悟なんてできない。守る覚悟を決めるだけだ。
後ろにいる斉木に向かって「ここは俺に任せて逃げろ!」と声をかけるべく、後ろを振り向こうとしたその時。
(海藤。)
斉木の声だ。
静かな声だった。
振り返ると、斉木が穏やかな表情で海藤を見ていた。
(これは夢だ。ここは、お前の夢の世界だ。)
口も動いてないのに聞こえてきた斉木の声が、海藤の頭にゆっくりと染み込んでいく。
口が動いていないとか、なんで夢だと分かるとか、そんな疑問は一つも頭をよぎらなかった。
そっか、ここは夢の世界なんだ。
素直にストンと理解した。
ずっと夢か現実か分からなかった。本当は夢がよかった。
でも身を突き殺された痛みも、凍るような寒さも、震え続ける体も、あの文字も、全て現実だった。
誰かに会いたくてたまらなかった。
会って否定してほしかった。
慰めの否定ではなく、信頼する本音の言葉が欲しかった。
初めて海藤を否定しなかった友達がそういうなら、きっとそうだ。
心を覆い隠そうとしていた殻が、打ち壊される音が聞こえた気がした。
怖れは消え去った。
空いた穴を、ふつふつと心の底から沸き起こる、何かキラキラとした暖かいものが埋めていく。
夢の世界なら、海藤の夢の世界なら、なんだってできるんじゃないか。
腹の底から湧き上がる高揚に身を任せて、海藤は空を仰ぎ見た。
「フハ、ハハハ……フハハハハハハ!!!!」
海藤瞬は、漆黒の翼は高らかに笑った。
「斉木!お前は下がっていろ。奴はこの俺、漆黒の翼の獲物だからな!!」
前を向く。
あの時原野で見た、夢の続きを追いかける。
「来い!
半身を引いて、右手を構える。左足を掲げて、戦いの構えをとった。
ギィィイイイイイイイイ
もう何も怖くない!
…うそ!やっぱりちょっと怖い!!
「うおおおおおおおお!!」
恐怖を紛らわすように叫んだ。
来る
来る
来る
きた!!
いまだ!!!!
「食らいやがれ!!
ジャッジメント・ナイツ・オブ
『ボルトキネシス!』
サンダァァーーーーーーーー!!!!」
瞬間。
ズダァアアアアアアン
轟音とともに、緋色の世界を白く染めるほどの閃光が迸る。
落雷よりも遥かに強力な、何千億ボルトにも及ぶ電流が漆黒の翼の後方から放たれ、
一撃だった。
ズドォオン
大きな音をたてながら、
(フフ、またつまらぬものを焼いてしまった…。)
海藤はそんなセリフを考えついて、かっこよく決め台詞を言うべく、自身の上がりっぱなしの口角を落ち着けようと、必死に口をぎゅっと閉じた。
高揚で気分が上がりっぱなしで、今しゃべりだすととんでもなくウキウキした声音になる気がする。
漆黒の翼はもっとクールなので、それは少々困る。
そうして口元をもにゅもにゅとさせていると、ふと、海藤は自身の意識が遠ざかっていくのを感じた。
戦闘後の余韻がなさすぎやしないか?決め台詞もなく退場とは、少々早すぎる。
どんどん意識が遠のいていく。
緋色の視界が遠ざかっていき、視界が徐々に狭まっていく。
消える前にこれだけは言わねばと、海藤は声を張り上げた。
「フッ!!またつまらぬものを焼いてしまったなぁ!!!」
浮足どころか小躍りしそうな勢いでウッキウキの声になった。
でも一応言えたので、海藤は満足して意識を委ねることにした。
そして、海藤瞬は夢の世界を後にした。
***
さてと。
僕、斉木楠雄は海藤の意識を幻覚世界から無事に脱出させれたことを確認して、赤い鳥の方に向き直った。
…海藤にわざわざ赤い鳥を倒させたのは、『記憶消去』をした時に致命的な置き換えを発生させないためだった。
【記憶消去】
バールのようなもので頭を殴ってその衝撃で記憶を消す能力。消せるのはおよそ一分間の記憶で、消された記憶は別のものに置き換わる。
今回、海藤はこの赤い鳥に対する恐怖によって、精神疾患になる一歩手前だった。
海藤はテレパシーから読み取るに、およそ1時間の間、幻覚世界で何度も殺され続けていた。…本当に、よく耐えたものだ…。
僕が記憶を消せるのは一分間のみ、海藤が味わった1時間の地獄を丸ごと消してやることはできない。
幻覚世界で体験したすべての死の瞬間の記憶のみを消すつもりだが、赤い鳥に襲われたという記憶はどうしても残ってしまう。消した後でどのような置き換えがおきるかは僕が操作することはできない。
つまり、死の記憶を消しても、置き換えで赤い鳥に丸のみにされる、みたいな最悪な記憶に置き換わる可能性もあるということだ。
こんな危険な精神状態で、そんな最悪の置き換わりが発生すれば、海藤の精神がどうなるかは僕にも分からない。
僕は復元で壊れたものの時間を戻せるが、壊れた精神を元に戻す超能力はないのだ。
少々強引だが、海藤が抱く恐怖を消すためにも、あいつを赤い鳥に対峙させる必要があった。
まあ、あの最後のテンションの感じを見るに、中二病がいい方向に働いてくれるだろう。海藤のことは、そこまで心配しなくても大丈夫だ。
それよりも。
今はこの赤い鳥をどうするかだな。
僕は目の前で大地に倒れ伏している赤い鳥を睨みつけた。
先ほどまで死んだように動かなかった赤い鳥は、いまや首を持ち上げてその真っ赤な瞳を怒りで燃やしながら僕を睨みつけていた。
こいつはあの程度の電撃じゃ死なないだろう。
僕はこいつの生態をこれっぽっちも知らないが、人間の幻覚世界にのみ現れる鳥のことだ。きっと物理攻撃なんて全く意味をなさないのではないだろうか。
だが、だからといってここで放置すれば、この鳥は再び海藤を襲うだろう。それは困る。
この町で、この学校で問題が起きたら某秘密結社やら某連合やら某マッドな企業やらがうじゃうじゃとやってくるに決まってる。
そんなことになったら僕が超能力者だと発覚するリスクが高くなるだろう。
それに、
ギィイイイイイイイ
耳障りな声を発して飛び上がろうとした赤い鳥を上から『サイコキネシス』で叩き潰す。そのまま『金縛り』で拘束しながら、左手を頭上に持っていき、制御装置をゆっくり外す。
まあ、言葉の続きは必要ないか。
制御装置をポケットにしまう。
ふむ、海藤はこの鳥のことを『緋色の鳥』と呼んでいたな、ならそれでいいか。
『緋色の鳥』の瞳は、いよいよ憎悪によって赤々と輝いている。好きに憎めばいい。
もうお前は、どこにも飛び発てはしない。
『マインドコントロール』
”『緋色の鳥』は存在しない”
瞬間、ネオンピンクの光がどこからともなく現れ、世界を覆いつぶす。
大地を焼き、空を割き、緋を消し飛ばし、世界を壊す。
ギィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
巨鳥の最後の悲鳴とともに、認識の鳥は、人々の認識から消えた。
あかしけ やなげ ████よ
くさはみ ねはみ けをのばせ
████よ 未だ発たぬ
***
「ジャッジメント・ナイツ・オブ・サンダーー!!」
「ぐわあああああ!!」
この俺『漆黒の翼』の一撃はついに、
「お、おのれ、漆黒の翼…。私を倒したところで、ダークリユニオンは第二第三の刺客を送るだけだ…翼の名をいただく幹部は、まだまだいるのだからな。」
「フッ、どれだけこようが無駄だ。俺はすべての翼を倒して、ダークリユニオンの野望を必ず阻止する。」
「く、クハハハ、その余裕がそこまで続くかな?お前が絶望に打ち震えるその時を、楽しみにしているぞぉ!」
そういって、
ああ、やってしまった。
ついに、斉木と燃堂と照橋さんと夢原と窪谷須と灰呂と高橋の前でこの力を使ってしまった。
不可抗力だった。
その日俺は朝から
襲撃の際に負った怪我は隠していたつもりだったが、フッ、さすがは俺の右腕だ。斉木には見抜かれて、斉木と二人で保健室に向かうことになった。
保健室に向かい、俺がベッドに寝転がったまさにその瞬間!
世界が鮮血に染まった!
しまった!これは
「全員、いますぐ俺の周りに集まれ!」
俺は驚いているみんなに叫んだ。
だが、遅かった!突如虚空から現れた
「ぐわーーーー!!!」
「フハハハハハハ、漆黒の翼!もう逃がさないぞ、今度こそお前を倒す!」
こうして戦いの火ぶたは、俺の望まぬ形で切って落とされてしまったのだ。
回想終わり
「海藤くん、これは一体…。」
おっふ!照橋さん!が後ろから声をかけてきた。だが、俺は…。
「お、お前だ!海藤、お前が俺たちを巻き込んだんだ!この化け物!」
その時、後ろから高橋が俺を責め立てた。
そうだ、俺のせいでみんなを巻き込んでしまった…。みんなも、俺のことを化け物として嫌いになってしまうのだろう。
「みんなを元の世界に戻したら俺はもう消えるさ、安心するといい。」
せめて、みんなを元の世界に返そうと
「オラァ!」
バキィっと何かを殴る音がして、俺は後ろを振り返った。
なんと、窪谷須が高橋を殴っているではないか!
「TA☆KA☆HA☆SHI~~~!!!お前!俺のだちを化け物なんて呼んでんじゃねえ!!」
そういって窪谷須は高橋をバキバキゴキゴキ殴り倒している。窪谷須…!
「そうよ!海藤くんは私たちの大切な仲間じゃない!」
夢原が涙目で訴えかけている。夢原…!
「そうだよ!それに、僕は君にまだ一度も勝てていないんだ!勝ち逃げなんて、そんなのずるいよ!海藤くん!」
灰呂が大粒の汗と大量の涙を流しながら言う。灰呂…!
「おう!ラーメン食いに行こうぜ!!」
燃堂は相変わらずラーメンラーメン言っている。燃堂…。
「そうよ!私たち友達でしょ。海藤君がどこかに消えるなんて、そんなの嫌よ!」
おっふ!照橋さん!が涙を流しながら俺を引き留めようとしている。おっふ!照橋さん…!!!!!!!
「瞬…。」
最後に、斉木が真剣なまなざしで俺を見つめている。
「たとえ、瞬がどんな力を持っていたとしても、どんな人でも、僕たちは友達だよ。」
斉木…!
フッ、どうやらここを離れることにはならないらしい。
俺は仲間たちの顔を一人一人見渡しながら、
バキバキゴキゴキ鳴り響く中で、鮮血の世界は徐々に白い光に覆われて、ついに崩壊した。
*
ええぇ…海藤、お前、ちょっと、いやだいぶ、いくら夢ということになったとは言え、記憶が変わりすぎじゃないか…?
保健室の中、海藤から夢の話を聞き記憶が何に置き換わっているのか確認していた僕は、呆然とした。
いやツッコミどころ多すぎないか??僕は死んだ瞬間の記憶しか消してないのにどうしてこんなに変わっているんだ本当に。
燃堂と照橋さんと夢原さんと窪谷須と灰呂と高橋はどこから生えてきたんだ。最初保健室にいなかっただろう?
無から生えてきてるだろ、キノコか何かなの??
まあ前半5人はまだわかるとしても、高橋とか全然関係ないじゃないか、完全にヒール役になってるだろ。
他にも、窪谷須殴りすぎだろとか、鳥を倒してからすぐ元の世界に戻ったはずだとか、鳥が喋っているのは何?幻聴?とか、まだまだツッコミどころは残っているが、もうそれは置いておく。
ともかく、海藤の記憶は精神に対する致命的な置換を起こさずに、持ち前の中二病で劇的before afterが成されたことが分かった。なんということでしょう…。
やれやれ…ともかく、これで一安心だろう。
いまだに楽しそうに夢の世界の話をする海藤の話を右から左に聞き流しながら、僕はため息をついた。
さて、海藤の話が終わるまでまだまだ時間がかかりそうだ。
その間に、いま君たち読者が抱いている疑問符の答えをお伝えしよう。
そう、『緋色の鳥』はどうなったのか、の答えを。
結論から言うと、緋色の鳥は『斉木楠雄の意識にのみ存在する認識の鳥』になった。
どうしてそうなったのか、できる限り分かりやすく説明しよう。
僕の超能力の一つ『マインドコントロール』は世界中の人間の精神に干渉することができる。
【マインドコントロール】
『不自然』なことを『自然』だと思い込ませる能力。精神どころか生態、宇宙全体にも影響を及ぼすことができる。(wiki)
マインドコントロールをかけた後になって分かったことだが…『緋色の鳥』は人間の意識空間で生きる、まさしく『認識の鳥』と呼べる存在だった。
だからこそ”『緋色の鳥』が存在しない”ことが自然な世界になったことで、人間の意識空間は緋色の鳥が生息できない環境になってしまった。
認識の鳥の『存在しようとする力』と、僕の『認識の鳥が存在しないことが自然な力』では僕の方が強いらしい。意識空間に入ろうものなら即座に存在を保てなくなり消えてしまうだろう。
全人類の意識の中から締め出された鳥は、唯一マインドコントロールがかかっていない、かけた張本人である僕の意識に飛び込み、そこでしか存在できなくなったわけだ。
どうだろう、理解できただろうか?
誤解を恐れずにより簡単に表すと、僕以外の全人類の脳内が入ったら即消滅の死の領域になったので、緋色の鳥は僕の脳内に住んでいる、という感じだろう。
もし僕が死んだり意識空間がなくなるようなことがあれば、こいつに待つのは存在できない意識空間に入ってそのまま存在消滅の未来である。
そういうわけで、この鳥が僕を襲うようなことはない。まあ、襲ってきたところで返り討ちにするだけだが。
まさしく人畜無害の『斉木楠雄の意識にのみ存在する認識の鳥』になったのだ。
僕自身、もうこいつに手出しして完全に滅ぼそうなんて考えていない。さっきも書いたようになにかをする力もないし、何より面倒だ。
海藤の話にようやく終わりが見えてきた。
どこぞの小説のような語り口で話してきたので、そのうち家のマル秘ノートに書き起こしだすかもしれない。
まあ、ここまで中二病満載なら誰が見ても超常現象に巻き込まれた結果なんて気が付かないだろう。
と、考えていたところでふと、あの秘密結社のことが頭をよぎった。
…そういえば、この『緋色の鳥』は財団や連合なんかに存在を補足、報告書を作られているのだろうか?
もし作られていて、マインドコントロール後でも残っている場合、存在しないはずの超常存在の報告書があると大騒ぎになるかもしれないな。
やれやれ、面倒くさいが後で報告書があるか確認しに行くか。
ようやく海藤の話も終わり、1限終了のチャイムが校内に響き渡り始めた。
海藤は「教室に戻ろう。」といつもの中二病しぐさで告げて、先に保健室の外に出た。
僕も海藤に続いて外に…出ず、立ち止まった。
ポケットの中からぐしゃぐしゃで砂利まみれになっている15㎝四方の紙を取り出し、片手の上に置いた。
『パイロキネシス』
能力を使うと瞬く間に紙は燃え盛り、灰となって掌に落ちる。
僕は掌を口元に近づけて、ふっと灰を息で吹き飛ばした。
そのまま保健室の塵埃になった紙には目も向けず、僕は海藤を追って保健室の扉をくぐった。
SCP-444-JP
http://scp-jp.wikidot.com/scp-444-jp
海藤「くらえ!友情パワァアアアアア!!」(超能力)
鳥「ぐわぁああああ!!」
ってこと。
Q.海藤なんで1時間で幻覚抜け出せてるの?
A.中二病だから
あの言葉のことを結構しっかり憶えていて、何かのヒントでは!?という中二病心によって早めに現実で文字を書くことに成功しました。
Q.444-JPがそんなやすやすと負けるわけないだろ!いい加減にしろ!
A.それはそうかも
精神体をめっちゃ殺して最終的に肉体を支配しちゃう系赤い鳥
vs
超強い洗脳で自然だと思い込ませすぎて人間の遺伝子を書き換えちゃう系超能力者
で、私の中では超能力者が勝ちました。ごめんて。
でも常人にとっては恐ろしい存在であることには変わりないので、海藤くんに怯えてもらいました。ごめんて!
Q.なんか緋色の鳥、鳴き声ついてるが??
A.つけました。ごめんなさい。
Q.なんで公園にあんな危険な紙が落ちてんの。
A.多分ニッソの仕業。全部ニッソって奴が悪いよ。ゆるせねえー!
Q.444-JPの報告書どうなったの?
A.文字通り存在しないことになりました。
斉木はああ言ってますが、存在しなくなったのでそのページにつながるリンクや文書もなくなってます。もしかしたら444-JP-Jに置き換わってるかもしれません…。
おまけー
白文字で斉木の超能力の発動タイミング書いてます。