【完結】えっ、ここからでも入れる保険があるんですか???   作:らいらいてー

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 ガンダムは媒体ごとに設定が変わって複雑すぎるのが難点な気がします、なので今作は作者の独自解釈が含まれますのでご容赦ください。

 追記 誤字、脱字報告ありがとうございます!


えっ、ここからでも入れる保険があるんですか???

『アッテンボロー被弾! 航行不能! たすけ――』

 

 愛機のセイバーフィッシュの通信機越しに母艦のオペレーターの悲鳴のような声が聞こえた後に炸裂音が響いて通信が途絶する。

 

 ……え、ここ地獄なの?

 

 何となく転生したことは分かる、そして転生前の記憶を今このタイミングになって思い出したのも分かる。

 

 この世界はМSと呼ばれる人型ロボが戦い、人が塵芥のように死んでゆく世界。

 知っている人間ならば死後に転生したくない世界のランキング、十位以内に入ることは間違いないであろう世界。

 

 宇宙世紀の世界に転生してしまったようだ。

 

 そして前世の記憶を取り戻した俺、アレス・ピクトン少尉は今の自分の置かれている現状を出来る限り分析してみることにした。

 冷静に考えるように努める、あまりにも現実離れしている状況であるが冷静にならなければ死ぬのは間違いない。

 

 既に母艦、補助空母【アッテンボロー】は敵、つまりジオン軍の攻撃を受けて撃沈したと推測される。

 旗艦【アナンケ】からの通信は途絶。

 ガンダムはあまり熱心なファンではないが、確か黒い三連星にレビル将軍は捕虜にされたんだったかな? まぁ指揮系統は乱れに乱れてる。

 

 そして母艦が撃沈される前に出撃した俺の編隊は通信が繋がらない。

 

 無傷なこちらの機体めがけて遠方から近づいてくるМSの姿。

 

 え、ここからでも入れる保険があるんですか?

 

「……よし、冷静に現状を分析。セイバーフィッシュの操縦は……うん、体に染みついている、訓練真面目にやってて良かった」

 

 切り替える、少なくとも切り替えるように努める。

 こちらが戦闘機だと侮ってる様子でスラスターを吹かしながら近づいてくる機影を見据える、接近戦になれば運動性の関係で間違いなく不利。

 

 操縦桿を左に倒してバレルロール、敵が構えたザクマシンガンを放つ前に回避、そのまま何度か横に回転した後に加速、ワンテンポ遅れてこちらを一撃で爆散させる死神の鎌がすぐ横を通る。

 世界が回る、三半規管が揺さぶられる、機体後部の四基のブースターパックによる殺人的な加速によって体に負荷がかかる。

 構うことなく前進、回避して突っ込んできたこちらの姿に驚いた様子でザクマシンガンからヒートホークに構えなおし、スラスターを吹かせて横にズレて射線から逃れようとする。

 予想通りだ、僅かに機首を横に振って射線から逃れようとしたザクに射線を合わせる。

 独特な姿から察するにザクと呼ばれる機体のコックピットめがけてミサイルを投射。

 

 誘導効果はミノフスキー粒子によって無くしているものの、そのままこちらを叩き潰そうとヒートホークを構えて振り上げていた敵のコックピットにミサイルの着弾を確認。

 ワンテンポ遅れて炸裂し、宇宙を彩る綺麗なお星さまを一つ作ってゆく。

 

 ザビ家の兵隊を燃やして作られた汚ねぇ花火だ。

 

「とりあえずこの状況を乗り切らないとまず死ぬな……!」

 

 差し迫っていた死は何とか乗り越えたが、状況は最悪。

 

 ミノフスキー粒子の散布濃度が非常に濃いせいで遠距離通信などままならない、つまり総崩れになって撤退を開始している味方との連携もままならないという事を意味していた。

 

 これ転生早々死ぬんじゃないのか?

 

 と思っていたが、総崩れになって後退を開始している味方艦隊のうち一隻、マゼラン級が何と迫りくるジオン艦隊めがけて艦を反転させ猛烈な射撃を加えながら前進し始める。

 

 死ぬ気のようにしか見えないが、今は兎も角手頃な友軍と合流したい、藁にも縋るような気持ちでその戦艦へと機首を向けて近づく。

 

「『……! まだ動いてる機体があったのか、こちら戦艦【ネレイド】通信手! そこのセイバーフィッシュ、我が艦が殿を務める! すぐさま後退しろ!』」

 

「『既に母艦は撃沈、僚機も全滅した! 今迫ってきている敵軍をある程度減らさないと後ろから撃たれて死ぬ! 戦闘機乗りとして後ろから撃たれて死ぬのだけは御免だ!』」

 

 あ、今ちょっと格好つけたな。いやまぁ今まさにこちらに向かってきているムサイ級やらグワジン級やらを一瞬でも怯ませないと後ろから撃たれて死ぬ可能性も高そうだ。

 ならばここは友軍と連携した方がいいだろう、うん。

 

「『……分かった! すまないな、この戦いが終わってルナツーに戻れたら一杯奢ろう!』」

 

「『よく寝れるように度数の高い酒にしてくれ』」

 

 ザクの大半は連邦宇宙軍を蹂躙するのに弾薬を使い切ったのか母艦であるムサイへと戻ろうとしてゆきつつ、弾が切れても戦う気満々でヒートホークを構えている血気盛んなジオン兵も【ネレイド】の猛烈な対空砲火を見て尻込みしてるのか突っ込んでは来ない。

 

 何機か死を恐れないジオン魂をキメた奴らが弾が切れたザクマシンガンを投げ捨ててヒートホークを構えて突っ込んでくる。

 

 敵の戦闘機動を推測。

 対空弾幕によって作られたキルゾーンを強引にすり抜けてゆく、集中しているお陰か敵の動きが遅く見える。

 

 ――このタイミング。

 

 強引にキルゾーンを潜り抜けたせいで姿勢が崩れた所めがけて斜め上四十五度から強襲、メインスラスターに二十五mm機関砲を放つ。

 四連装の機関砲から弾幕が張られてゆき、スラスターを破損させる。

 流石にスラスターを破壊し撃墜することは出来なかったが、相手の動きが鈍る。

 そこめがけて戦艦から放たれたミサイルが直撃、また一つ宇宙に星が作られてゆく。

 

 今の光景を見ていたМS隊も無理攻めは危険と判断したのか、後退を開始、その代わりに敵艦隊が前進してきて猛烈な弾幕を浴びせて来る。

 

 こいつら何とかしないと帰れないよな……。

 

 こちらを左右から挟み込むかのような軌道を取って前進してきたムサイ級からミサイルが発射される、右翼方面から飛んできたミサイルに機首を向けて機関砲を連射。

 放たれたミサイルの内七割ほどは二十五mm弾によってて撃墜されてゆくが、それでも何発かは殿を務めることになった勇敢な艦に突き刺さって炸裂してゆく。

 さらにワンテンポ遅れて左から回り込んできたザビ家の尖兵からの届け物であるミサイルが突き刺さり、彼女に傷を負わせてゆく。

 

 が、それでも宇宙の女王である彼女の息の根を止めるには至らない。

 

「『戦艦が簡単に沈むかぁ!』」

 

 オペレーターのその叫び声が通信機越しに聞こえてくる、火力だけならばジオン公国のどの戦艦にも勝る主砲が右方面に回り込んで来ようとした軽巡洋艦に向けられてゆく。

 

 その次の瞬間に主砲が瞬き、ムサイ級に必殺の光線が次々と直撃。

 マゼラン級の斉射を受けたザビ家の軍艦が爆沈し、宇宙を漂うデブリに変わる。

 

 あの様子だと生存者は……うん、間違いなく居ないな、中の乗員はミンチよりも酷いことになってるんじゃないか、あれ?

 

「『ムサイ級一隻撃沈! ざまぁ見ろジオン星人共!』」

 

「『左からも来るぞ、気を付けろっ』」

 

 僚艦が撃沈されて怯む所か戦意が刺激されたのか、砲塔が向くよりも先に主砲を乱射しながら勇敢にも突っ込んでくるムサイ級。

 

 よし、注意は【ネレイド】に向いているな……なら、少し驚かせてやるとしよう。

 

 死角となる下方向へと機首を向けて回り込む。

 流石に突っ込んできたセイバーフィッシュの姿に敵も気が付いて、慌てて死角をカバーするように旋回しようとするが遅い。

 

 ムサイ級のスラスターめがけて残っているミサイルを斉射、狙い通り着弾、その次に炸裂。

 

 殿へと肉薄し至近距離からメガ粒子砲を叩き込んでやろうと画策していたであろう敵艦はスラスターが破損したことによって加速が鈍る。

 

 そこに戦艦の斉射が叩き込まれてゆき、艦橋が吹き飛ばされてしまったせいで爆沈はしなかったものの航行不能になった様子で宇宙を漂い始めた。

 

 艦橋から響く歓声が通信機越しに聞こえてくるが、その声をかき消すかのようにムサイ級のものとは比べ物にならないほどの高出力のメガ粒子砲が宇宙の闇を切り裂いた。

 

 グワジン級の砲撃が突き刺さり、【ネレイド】の艦首を吹き飛ばしてゆく。

 

 衝撃でこちらの機体が大きく揺れるが、艦首が吹き飛ばされてゆきながらも戦艦としての尊厳を失ってないことを示すかのように彼女は主砲をグワジンへと向けて斉射。

 

 耐久限界を超えて主砲を連射したせいか主砲の砲身は融解してゆくが、その甲斐もあって砲撃は敵戦艦に突き刺さり、露出したエネルギータンクを破壊。

 

 ワンテンポ遅れて、眩い光を放った後に敵戦艦は沈黙した。

 

 国家の象徴たる戦艦が大破させられて怒り狂った周囲に展開していたムサイ級が次々とミサイルを放ち、主砲が破損し無防備となった【ネレイド】に猛攻を加えようとしてゆくが、甘い。

 

 火器管制担当が怒りのままに放ったであろうミサイルにセイバーフィッシュの機首を向かわせていってすれ違い様に一発。

 冷静さを欠いて捻りもなく真っすぐ飛ばしたソレはデブリに変わってゆく。

 

 またすれ違い様にもう一発、更にもう一発。

 

 繰り返してゆくうちにこちらの機関砲が弾切れになってゆくが、彼女に飛んだミサイルの内三割ほどは撃墜する事が出来た。

 

 そのお陰か、ムサイ艦隊からのミサイル弾幕を浴びせられながらも【ネレイド】は撃沈されることは無く、その体はボロボロになりながらも原形を留めていた。

 

 敵の残存艦隊も大破したグワジン級の生存者の救出に回りつつ、まともに砲撃戦を挑むのではなくザクを向かわせることを選んだようで砲撃が止む。

 

 その代わりにザクがこちらに向かってきているのを確認できる、が、距離がそれなりにあるお陰か到着するまで時間はかかりそうだ。

 あるいはこちらの反撃を警戒しつつ近づいてるのかもしれないが、どちらにせよ好都合。

 

「『援護感謝する! そこの……』」

 

「『アレス・ピクトン。階級は少尉。 生存者はランチに詰め込んで脱出の用意をしてくれ、もうそろそろザクが来るから持ちこたえられないぞ』」

 

「『分かった! さぁ、カニンガン准将もお急ぎください!』」

 

 【ネレイド】の生存者たちがランチなどのマゼラン級に搭載されている艦載艇に乗り込んでゆく、が、ザクを振り切るためにはセイバーフィッシュの推力が必要になるだろう。

 

「『生存者を積み込み次第、こちらの機体にワイヤーを装着してくれ すぐに後方に離脱するぞ』」

 

 ノーマルスーツを着た乗組員の一人が、生存者を満載した艦載艇から牽引用のワイヤーをこちらの機体に装着してゆくのを確認して、エンジンを吹かして離脱を開始する。

 こちらが戦闘する余力が無い事に気が付いて、警戒しながら近づいていたザク達も慌てて一気に距離を詰めようとしてゆくが、ワンテンポ行動が遅い。

 【ネレイド】に横付けして留まっていたセイバーフィッシュが戦闘機特有の良好な加速によって艦載艇を牽引してゆきながらも、ぐんぐん敵を引き離してゆく。

 

 どうやら向こうも損害が大きかったようで、追いつけないと悟るとすぐにザクは引き返していった、正直推進剤の残量が心許無かったのであの速度のまま追いかけっこをしていたら追いつかれていたかもしれない。

 本当にギリギリだった、推進剤の節約のために加速をやめると、通信が入る。

 

「『ピクトン少尉、こちらはロドニー・カニンガン准将だ。君が居なかったら私も、そして部下も死んでいただろう。君のお陰で生き残って次の戦場でもやつらに食らわせてやる事が出来そうだ。感謝する!』」

 

「『は、光栄であります!』」

 

「『君の活躍は勲章ものだ、ルナツーに戻り次第すぐに昇進と勲章の授与を司令部に打診しよう!』

 

「『……はっ、光栄であります!』」

 

 ……ルウムで惨敗を喫していた連邦にとっては、もしかしなくても局地的とは言え大戦果を挙げたのは体面を保つためにも大々的に宣伝する必要があって。

 

 そして腕が立つ戦闘機乗り達も大量に死んだ今、一人でも多く前線に立てる経験を積んだ兵士が必要な訳で。

 

 ……あれ? もしかして俺が今回生き残るために頑張ったとしても死ぬのが早いか遅いかぐらいの違いじゃないのか?

 

「『レビル将軍は戦死しただろう、しかしながらも連邦軍には君がいる! 我々はまだ戦い続ける事が出来る、ジオン兵共に我々は決して負けてない! 勝てるぞ、この戦争!』」

 

「『…………は、光栄であります』」

 

 カニンガン准将は死ぬ覚悟を決めていた所、思わぬところでやって来た救援に命を救われたお陰かテンションが上がってる様子で熱く戦争に勝てると語っているし、いやまぁ実際レビル将軍は死んでなくて最終的に連邦は勝つんだけど。

 

 地獄とも言っていい一年戦争を俺、戦わないといけないの? しかも無駄に戦果を挙げちゃったせいで連邦軍のパイロット事情的に前線送りはほぼ確定。

 

 え、ここからでも入れる保険があるんですか???




 ギレンの野望をやりながら思いつきました。
 続くかどうかは分かりません。
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