【完結】えっ、ここからでも入れる保険があるんですか???   作:らいらいてー

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誤字脱字報告いつもありがとうございます、助かってます。
それと、今回もやりたい事を詰め込みました。
その結果前後編の構成になりました。


白亜の殿堂に翻るは英霊達の旗(前編)

 首都高速道路をモビルスーツ運搬用のトレーラーが目的地に向かって走る。ジオン占領下に置かれたことで、かつて存在していた活気は鳴りを潜め、死んだかのように静まり返っているトウキョウの様子を見て、トレーラーを運転している大男は思わず眉をひそめた。

 

 窓から外を眺めてみると、ジオンの旗が先端に掲げられたトウキョウタワーの姿を確認する事が出来る、まるでザビ家の威光を知らしめるかのように、その旗は風を受けて翻っている。

 街中では親衛隊に所属している憲兵達が大通りを練り歩き、怪しいと判断した人間を見つけ次第、逮捕し連行しているのだろう、無実を訴える者の悲鳴が高速道路を走りながらでも聞こえた。

 

 占領軍による厳格な統治が行われている、かつてのニホンの中心地を『積み荷』を揺らしながらトレーラーは走る。運転している者の心情を示すかのように荒々しく加速し高速道路を突き進む。

 

 地球連邦の統治も決して優れていたと言えるものでは無かったし、低所得者は容赦なく宇宙へと上げられたが、それでもその土地に住む市民への自由は保障されていたし、統治する気は確かにあるように思えた。

 だが、少なくともこの土地を占領している連中には住んでいた者達に対する配慮は存在してるように思えないし、財産を収奪するだけの輩に思えてならなかった。

 

 高速道路上に設置された占領軍による検問を確認、停車し、IDを提示してゆく。

 

 IDを確認しようとしてゆく親衛隊の下士官に対応するのは、トレーラーを運転していた親衛隊の制服を着こんで目深に帽子を被った大男。

 

「確認ありがとうございます。トウキョウで連邦との決戦を行う親衛隊の皆さんへのオカムラ大佐からの差し入れとなります」

 

 実際にザク『は』搭載されている、トレーラーへと視線を向ける。『積み荷』には厳重にカバーがかけられており、中に何が存在してるのかは外から伺う事は難しいが、それでもカバー越しに浮かび上がったシルエットから地球を蹂躙した一つ目の巨人が搭載されてる事は判断できた。

 

「ああ、そうだ。『桜の丘』は今も美しいですか?」

 

「ん? ああ……『桜は枯れてしまったよ』だが『根は腐ってない』」

 

 事前に決めておいた暗号でやり取りを行う、その言葉を聞きつつ何度か大男は、オメガは頷いた。

 

 東海道を東に進撃し、ジオン占領下のニホン各地を奪還し、ハコネを超えた連邦軍司令部の元にある連絡が数日前に入った。連絡の出所は親衛隊内部に潜ませている地球連邦のスパイ。

 

 トウキョウに駐留している親衛隊の指揮官、ムタグ中佐が独断で水爆をこの土地の親衛隊司令部に持ち込み、起爆準備を行っているという衝撃の報告であった。

 ムタグ中佐の作戦はこうだろう、トウキョウに突入した連邦軍が旧都内を粗方制圧し終えたところで、水爆を起爆。

 人口密集区にして物流の要であるかつての首都を更地に変え、この土地の施設が連邦に渡らないようにしつつ、敵軍集団を殲滅するという作戦だ。

 

 総帥府には許可を取ってないであろう作戦。その作戦を、中佐の独断で遂行しようとしているのだ。明らかな南極条約違反である。

 

 突入準備を整えていた連邦軍は進撃を停止、核の確保と親衛隊指揮官の捕獲を目標とする作戦が立案、そして決行される事となった。

 

 親衛隊内部にもムタグの暴走とも言える行動に反発する者が居て、トウキョウへと身分を偽って潜入した特殊作戦群にも協力してくれる者も多かった。

 

 親衛隊にもニホンから移民してきた者の子孫である兵士が多いのだ。

 

 そして、この検問所を指揮している者も協力者であった。

 

 暗号の内容を頭の中で反芻、『桜の丘』と言うのは水爆を示す、そして『桜は枯れてしまった』という単語は既に核の起爆準備は整った、と意味を持つ。

 『根は腐ってない』……つまりトウキョウに展開している親衛隊の撤退準備は整ってないという事だ。

 だが、ギレンの語る言葉を真に受けて選民思想に染まり切り、ザビ家への忠誠心は認められながらも総帥府からも疎まれているムタグならば身内が引き上げる準備が整ってないとしても、連邦軍が突入次第起爆する事だろう。

 

「『桜の木』を中佐は痛く気に入ってるらしくてな、親衛隊司令部が置かれた旧国会議事堂の中にも飾る為に運び込もうとしてるって噂もあるな、だが、置く場所が『暗かったら』花は咲かないかもしれんなぁ」

 

「ああ、なるほど。後で『伺う』事にしましょうか」

 

 核兵器の保管場所は旧国会議事堂、その地下だ。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 ミノフスキー濃度を確認、協力者からの事前情報通り通常濃度。

 メールボックスを確認。メッセージが入っている。どうでもいい日常会話のように見えるが、そのメッセージの中にちりばめられた単語にこそ意味がある。

 

「『菊』『銀時計』『二つ星』」

 

 宮城にも特殊作戦群の兵員も集結したようだ、浸透にも成功しているらしい。こちらが仕掛けると同時に状況を開始し、『VIP』の救出の後にこちらに合流する。

 

「頼みましたよ、大尉。今回の作戦で持ち込めた一番の最大火力は大尉の『これ』なんですから」

 

 銀杏並木の近く、親衛隊の物資集積所とされているその場所にトレーラーを停車させてゆきながら、分厚いシートに覆われたザクへと這い上がり、コックピット部分を軽く叩いてゆきながら、隊長にそう呟いてしまう。正門前の様子を確認。

 

 事前情報通り、核兵器が保管されている司令部なだけあって周囲には敵影多数。土嚢が積み上げられ、三脚に重機関銃が設置された簡易陣地が司令部周辺を死角なくカバーしている。

 

 その上、正門前と参議院会館前には忌々しい一つ目の巨人が一機ずつ。

 

 旧国会議事堂の内部にも、協力者の情報が正しければ歩兵二個中隊が展開している事だろう。

 

 作戦立案段階で協力者の伝手を頼って隠密に内部に潜入する方法も検討されたが、司令部要員にはムタグの思想に近い者たちが選ばれており結束は固いためその案は流れた。

 

 トレーラーから降りてゆき、旧外務省前へと向かう。旧国会議事堂殴り込み部隊の集結地とされた場所だ。

 

 旧外務省前にはムタグがギレンへのご機嫌取りのニホンの各地から略奪してきたのであろう文化財などが収められたコンテナが並べられており、それを見て思わずオメガは眉をひそめてしまって、自分の不機嫌そうな表情が見られないように帽子を目深に被る。

 

 整備士の服装の作戦群隊員とコンタクトを取り、決められていた符丁でやり取りを行う。予定通りの人員をこの場所に展開する事には成功した、が。

 

「……つまり、侵入経路は見つけられてないという事か」

 

「ええ、そうなりますね。……中へと突入するには強行突破しかないかと」

 

 声を潜めてゆきながら、同期のタグチから良いとは言えない報告を聞く。侵入経路となりそうな場所は瓦礫などによって塞がれてしまっていた。本来ならば厳重な警備で守られた司令部内へと突入するのは侵入経路を使ってのものになるはずだったが、こうなってはプランBしかないだろう。

 

 つまり、正面から強行突破だ。心強い助っ人がいるとは言えども、ここに集まっている特殊作戦群の隊員は凡そ百人程、これだけの戦力で突入するのは誰がどう見ても無謀だ。

 

 どうしたものか、と小さくオメガは呟いてゆきながら周囲を見回すと、あるものが目に留まった。

 

 戦利品が集められた区画の一つ、そこに近くの『神社』から略奪して来たのだろう旧ニホン軍の軍旗や軍刀などと共に、九七式中戦車が並べられていてジオンの整備士が整備していたのだ。

 

「よし、これで完成と。本国に持ち帰って軍事博物館に寄贈するらしいけど、わざわざ57mm砲弾まで用意して実弾撃てるようにする必要なんてあったのか?」

 

 人使いが荒いな、とぼやいている整備士の声を聞いた後に、オメガとタグチは顔を見合わせる。

 

 そして、口角を釣り上げた。

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「これって後で英霊の皆さんに祟られたりしないんですかねっ!?」

 

「国家の非常時だ、英霊の皆さんも許してくださるだろうさっ」

 

 ジオンの整備士達の手によって蘇ったチハが駆ける。急接近して来る旧ニホン軍の戦車を見てジオン兵たちは一瞬困惑したものの、向けられた砲塔から放たれた57mm榴弾が陣地に突き刺さって炸裂し、敵兵を薙ぎ払っていく。ワンテンポ遅れて警報が鳴り響き始める。

 

 正門前に居たザクが起き上がり、ザクマシンガンを構えて時代遅れどころか骨董品を超えた遺物を爆散させようとするが、物資集積地点に停車されたトレーラーからおもむろに分厚いシートを引きちぎりながら一つ目の巨人が起き上がる。

 

 連邦軍の塗装が施され、連邦のマークが描かれたザクが。

 

 チハを蜂の巣にしようとしていた緑色の巨人のコックピット部分めがけて放たれたシュツルムファウストが突き刺さると同時に爆散。凄まじい爆風によって議事堂の頂点に掲げられたジオン軍旗が引きちぎられんばかりにはためく。

 

「ジオン軍の奴らクソみてぇな旗掲げやがってっ、許さねぇぞっ」

 

 旧国会議事堂の敷地内へと突入したチハが機関銃陣地を蹂躙し、後続の突破口を開く。

 そして、搭載された機関銃が火を噴いてゆき、異常を察知して建物の内部からやって来た増援を次々と射殺、連邦に加わる前はこの国の政治の中心地だった場所を血で彩ってゆく。

 

『大尉、核を確保するまで増援を押さえてくださいね、頼みましたよ!』『ああ、迎えに来るミデアに見えるようにジオン軍の旗を引きずりおろして制圧したと分かるように旗を掲げておけよっ』

 

 チハによって築かれた突破口から特殊作戦群の兵員が敷地内へと突入し、建物の内部へと入ってゆく、その様子を確認しながらオメガは大尉との通信を切り上げ、端末から宮城へと潜入している者達へとメッセージを送った。

 

『作戦開始』

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「アルファはこのまま親衛隊司令部の制圧を! ベータは地下の核兵器を確保し解除を! 残りの奴らは俺と共に入口の確保を!」

 

 特殊作戦群の指揮官から議事堂内へと突入した者達に指示が飛ぶ、アルファチームの指揮官に任命されたオメガは軽機関銃を構えながら、奥からぞろぞろと現れたザビ家の兵隊めがけて引き金を引いて弾幕を張る。

 

「おらおらザビ家の兵隊共! これがおもてなしだ、たっぷり食らっていけっ」

 

 中央広間に展開しようとしていた敵兵を一気に五連続で射殺し、機先を制する。

 続けざまに倒れ伏した味方を見て動揺が走る親衛隊兵士に後続の特殊部隊の隊員たちが手持ちの銃火器で狙い撃ちにし、広間を制圧していく。

 

「敵の指揮所は御休所に設置されている! あそこ自体がかなりの金がかかっている芸術品だが遠慮はするな! 国家の大老達も恐らく許してくださる!」

 

 流れ弾によって広間に存在している銅像に傷がついていくが、今は気にしてる場合ではない。片手で軽機関銃を構えて引き金を引く。リコイルをコントロールして狙い通りに衆議院議場からやってきた敵を薙ぎ払う。

 

 弾が切れてすぐさま手頃な場所に置かれていた銅像の後ろに隠れて敵の猛反撃を凌いでゆきながらリロード。

 

「タグチ、お前の分隊は議場の制圧を頼む!」「分かった、そちらも幸運を!」

 

「ちぃ、何処から連邦軍の奴らやってきたんだ!?」「おい、ここは絶対に通すな! トウキョウ支配の要だぞ!」「ザビ家の為に一歩も退くなっ」

 

 わらわらと湧いてくる敵兵の姿を銃弾の雨に晒された銅像越しに確認しながらも、舌打ち一つ、手持ちのスモークグレネードを投擲して増援の視界を煙幕で遮る。

 

 敵がこちらの姿を見失い、一瞬だけ射撃が止む。制圧射撃が止まった数秒の隙を突いて陸戦最強の自負を持つ男が飛び出す。

 

「くそっ、薄汚いアースノイド共、汚い手を使いやがって!」「ザビ家の理想に共感しない奴は皆死んだほうが――」「ん? 誰かが倒れ――」

 

 煙幕の中へと飛び込む、手に握られたナイフで何とか確認する事が出来る敵兵のシルエットの首筋が切り裂かれて血が噴き出て、地面へとザビ家の私兵が一人、また一人と崩れ落ちてゆく。

 

「な、なんだこいつは……っ」

 

 煙幕が晴れてゆくと、広間を守ろうとやってきた増援は一人を除いて血の海に倒れ伏していた。

 

 全身が返り血塗れになった軽機関銃を片手で軽々と握りしめている大男がその見た目と裏腹に虎のような速度で突っ込む、咄嗟にサブマシンガンで弾幕を張ろうとするが、その大男は飛び上がったかと思うと、壁を走って勢いをつけながらこちらへと飛びかかってくる。

 

 最期に見た光景は、その手のに握られたナイフが頭上へと振り下ろされる光景であった。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 御休所の扉が親衛隊の兵士の体によって強引にこじ開けられてゆき、扉の前に立っていた不運な親衛隊兵士の一人は扉の下敷きになってゆく。

 詰めていた兵士達もサブマシンガンを構えて突入して来た者を蜂の巣にしようとするが、筋肉ムキムキマッチョマンの変態が抱え上げて盾のように構えた不運な兵士と言う名の存在をズタズタに引き裂くだけに留まり、反撃の軽機関銃の掃射によって薙ぎ倒されていく。

 

「お前か? ムタグ中佐は」

 

「だ、だ、だ、誰だお前は!?」

 

 自分の護衛が十秒も経たずに全滅する光景を目の当たりにして、逃げる準備をしていたのだろう、バッグの中に高価そうな日本刀などの戦利品を詰め込んでいた士官へとオメガは近づいてゆく。

 近づいてきたオメガに士官は拳銃を抜いて銃口を向けようとするが、銃を突きつける前にオメガにその腕が掴まれてしまい、断末魔のような悲鳴が響く。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」

 

「これ脆いっすね」

 

 橈骨と尺骨が凄まじい腕力によってへし折られてゆき、銃を落としながら悶絶し蹲った士官の足元に転がった拳銃を蹴り飛ばしながら、納められた戦利品の中から日本刀を引き抜いてゆく。

 

「童子切か、これを持ち去ろうとするとはお目が高いな?」

 

「アースノイド共には過ぎたるも――ヒッ」

 

 士官の首筋へと左手で握られた童子切の刀身が首筋へと押し当てられてゆく。

 

「今機嫌悪いんだ、それにこの刀を握ってるのは左手だ、利き手じゃないんだぞ? 手が滑っちまうかもしれん、その時はすまんな? で、質問だ、お前がムタグ中佐で間違いないな?」

 

 顔を青ざめさせているムタグは何度か頷く、その様子を見てオメガはふむ、と声を漏らし。

 

「文化財を盗み出して自分の国にある芸術館で飾ろうとするとは面白い奴だ、殺すのは最後にしてやる」

 

 ムタグ中佐の腹部に拳が叩き込まれ、意識が奪われてゆく。司令部となっていた御休所で立っているジオン兵は一人も居なくなった。

 

 制圧された司令部へと後続の隊員が入ってゆき、中の様子を確認しつつ、分隊長へと視線を向けて。

 

「流石ですね、ストーム先輩は。あ、今はオメガってコールサインでしたっけ。……敵指揮官の逮捕に制圧した所悪いですが、悪い知らせがありましてね」

 

 と、バツが悪そうに、旧国会議事堂の制圧に成功した際に掲げる予定だった軍旗を――負傷者の止血の為に切り裂かれてボロボロになった布切れを見せてゆく。

 

「ああ、それならジオンの連中が『神社』から持ってきたものだと思うが、良い物があるぞ」

 

 ムタグの個人的なコレクションにするつもりなのだろう荷物の中から、旧日本軍の物と思わしきそれを取り出し、隊員に手渡して制圧したと示すように掲げるようにと指示を出してゆく。

 

 国会議事堂に、かつての英霊達の軍旗(日章旗)がジオンのクソみてぇな旗の代わりに掲げられることとなった。

 




ギレンも多分真に恐ろしいのは無能な味方だと思ってると思います。
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