【完結】えっ、ここからでも入れる保険があるんですか??? 作:らいらいてー
そろそろ終盤戦です。
ルナツー内部に存在する教会、そこで俺は捕虜となったフランシス大尉が十字架を握りしめながら祈りを捧げる光景を見ていた。
捕虜である彼の見張りとして俺含むメビウス小隊の各員が付いてきてるという訳だ、今日の事務作業も訓練も終わって暇だったというのもある。
捕虜と言えども、丁重に扱う。と言うカニンガン中将の方針もあって、我々の捕虜となったジオン兵達にはある程度の自由が保障された。
流石に軍の機密に触れるような所には連れていくわけには行かないし、独房から出てルナツーの購買等に向かう場合は見張りが必要になるが、それでも彼らへの待遇は悪くはないと言えた。
連邦軍の捕虜への扱いは大々的に宣伝された。ザビ家の兵隊達への降伏を促そうという思惑が垣間見える、既に戦後処理を上は考えているのだろう。
柔をもって剛を制す、とはカニンガン中将の言葉だったかな? とは言え、捕虜へのある程度の自由の保障については連邦軍内での反発も強かったと聞く。
コリニー提督なんかは強硬に反発したとも聞くしな、だがレビル将軍の後押しも受けていると聞けば通すしか無かったのだろう。
「すまない、君達を付き合わせてしまって。……死んでしまった者達の為に、祈らせてくれてありがとう」
宇宙では、遺体を埋葬する場所などは存在しない。なので、基本的には遺体は荼毘に付すようにしている。
それでも、回収される事さえなく、そのまま放置されることも少なくない。
無限とも言える程広い宇宙で死んだ者達の亡骸は、ご遺族の元に届くことは稀だ。
悲しいけど、これ戦争なのよね。
その点、先の軌道上の戦いでフランシス大尉と共に残り、散っていった者達の内、二人は遺体の一部を回収し、荼毘に付すことが出来たのは幸運な事だったのかもしれない。
大尉の首から下げられているロケットペンダントの中には、彼らの骨の一部が入っている。
「いや、構わん……。死んでいった我々の仲間の冥福も、祈ってくれたんだろう?」
「……ああ、君達の仲間を殺してしまった私が言えることではないが。せめて、死んでしまった君達の仲間の冥福も、祈らせて欲しい」
そう言いながら、戦友の遺体の一部が収められたロケットペンダントを握りしめる大尉の姿を見て、妙に察しの良い少女は口を開いていた。
「……敵の冥福も祈れる、心優しい貴方がどうして軍人になったんですか?」
「……家族、仲間、そして国の為だ。誰かを守る為に、操縦桿を握っていた。私のやり方が、正しかったのかどうかは分からんが。今の使命は、この遺体の一部をご遺族や、彼等の上官だった人の元へと届けることだと思っている」
敵にも、戦う理由はある、平時であれば素晴らしい人格者が銃を握り、人を殺す。
戦争では誰もが傷つく、人が傷つかない戦争などありはしない。
「ピクトン少佐、貴方は何故戦うのです? 結局、私は一度も勝てはしなかった。機体の操縦技術には、自信はあったのですが」
「……最初は死にたくないから戦った。でも、インドで見ちまったんだよ。親の姿もなく、兄妹で、炊き出しに並ぶ子供たちの姿が。それを見たら無性に腹が立ってな」
思えば、あの頃はまだララァもうちの隊には加わって居なかった、そう考えると遠い所まで来たもんだ。
「結局は自分本位なもんさ、子供達が親を亡くして泣く姿が見たくないから戦争を早く終わらせるために戦ってるんだ」
そうとも、結局は自分本位で
そして、ライラ大尉やララァのまだまだ子供の二人が、大人になって軍人以外の選択肢も取れるようにしてやりたい。
子供も女も、笑顔が一番だからな。
「……ふふふ、そうか。少佐。君とは世界が平和になったら、共に争いの無い
「平和になったら、狭く感じた
今は十二月二十日。
史実におけるジオン落日の日が近づいていた。
◇◆◇◆◇◆
周囲を確認してみるとパブリク突撃艇が編隊を組んでいる光景を確認する事が出来る。
ルナツーより出発したカニンガン艦隊は、ワッケイン大佐が率いる第三艦隊を隷下に加え、第三連合艦隊を編成しソロモンへと進撃中だ、主力の第一艦隊は大きく迂回し、サイド1方面へと展開しようとしている。
我々の役割はソロモン駐留部隊の注意を出来る限り引き付ける事ではあるが、損害は大きくなりそうだな、特にビーム攪乱幕を展開する役割を与えられたパブリク隊は。
彼らを守る為に足の速いライトアーマーで敵を攪乱する必要がありそうだ。
『少佐。少し、良いっすか?』
『ん? 珍しいな、個人用の回線でオメガから話しかけてくるなんて』
『あー……まぁ、無いとは思うが、ジオンの思想に共感してるという事は無いっすよね?』
ああ、なるほど、あれから何度かフランシス大尉と話してるのを見て俺がジオンシンパになったんじゃないかと思われたのか。隊長としては確かに失格な行動をしたかもしれん、話が合う奴だったからついつい話し込んでしまった。
『あー……そういう訳ではないぞ、だが、カニンガン艦隊のMS部隊司令として行うべき行動では無かったのは確かだな、浅慮だった、すまない』
『俺の家族のように、コロニー落としによって発生した大津波に巻き込まれて死んだ奴も多いんですから、捕虜とは言え敵と話し込むような事は慎んだ方が良いっすよ』
まぁ、オメガの言いたいことも分かる。ジオン兵も皆、フランシス大尉のように人格者ばかりではないしな。
何なら、コロニー落としの二次被害は連邦軍艦隊の妨害によって引き起こされた連邦の自業自得と声高に語るジオン兵捕虜も居るぐらいだ。
コロニー落とした側が言うのか、それ。
いやまぁ国内向けのプロパガンダだとそう発言するしか無いだろうが、連邦軍士官としてコロニー落下を阻止すべく命がけで戦った連邦軍兵士達を愚弄されたみたいで良い気持ちはしない。
こちらが捕虜を丁重に扱っていると、図に乗る奴も確かにいる。
特にニホンで捕虜にした親衛隊の連中は顕著で、親衛隊の手で行われた文化財の窃盗に、食料の強制調達、市民からの徴用と言う名目での窃盗、後それと一部の人間によって行われた強姦事件と放火事件と殺人事件などなど。
あいつらに動機を尋問したら、驕り高ぶったアースノイドに対して神聖なるジオン人による正当な行動だと胸を張って宣言してやがったからな。
そんな奴らも他のジオン兵捕虜と同じように扱わざるをえないせいで増長する事甚だしい事よ。
彼等を収容している捕虜収容所で虐待事件が起きてない事を祈るばかりだ。
あの、これ俺の個人的な意見なんですけど、頭が悪くて倫理観の無い連中に優性思想と言う耳障りの良い大義名分与えるのはやめて貰っていいすか?
いやまぁ本人もここまでヤバい連中が親衛隊に加わるとは思って無かったかもしれんが、頭が良すぎると視野が広くなりすぎて足元が見えづらくなるのかもしれんな。
ま、大義名分を得た奴らが増長するのは連邦兵も同じだろうし、せめてうちの隊だけは規律は守らないとな。
『うむ、ありがとう。後でカニンガン艦隊の全パイロットの前で謝罪するとしよう、隊長が自ら規範を示さねばな』
『二人とも、何話してるのかは分からないがそろそろ見えて来たぞ、ホワイトベース隊だ。予定通り補給を行った後に、第三連合艦隊に加わるんだな?』
『その手筈になっている。ニュータイプ部隊って噂があるな。ライラ大尉、ララァ、二人共作戦が終わったら会ってきたらどうだ?』
『……確かに、感じますね。ここからでも力を』
ニュータイプとしては上澄みを超えた上澄みなだけあって、ララァはアムロを感じ取ってはいるらしい、恐らくは向こうも同じだろう。
さて、子供達が手を出来る限り汚さないように、大人として俺達も頑張りますか。
◇◆◇◆◇◆
『現在、我が艦隊は敵の宇宙要塞ソロモンから第三戦闘距離に位置している。以後は、敵と我々を邪魔するものは一切ない』
ダークブルーに塗装された愛機であるジム・コマンド・ライトアーマーのコックピット内から出撃の準備を整える。ワッケイン大佐からの話を聞きながら、集中。
装備はブルパップ・マシンガンに、ハイパーバズーカ、ついでにプロペラントタンク。
この機体の推力ならばこれだけ重武装でも機敏に動き回ることは出来るだろう、被弾=死だが戦闘機乗りとしては当たり前の事だ。
『艦隊、横一文字隊形に移動! 戦闘は正攻法、突撃艇パブリクによるビーム攪乱幕を形成する! 全艦、正面から進攻する!』
ワッケイン大佐の号令と同時に、パブリク突撃艇が一斉に要塞めがけて突撃を開始。
その動きに合わせてこちらも一気に加速していき、勇敢だが無謀な彼らの更に前を行く。
『こちらピクトン少佐、パブリク隊の援護を行う。敵の注意を引きつけるから生き残れよ!』『すまん、恩に着る! ルナツーに戻れたら夕食を奢らせてくれ!』『芋料理以外で頼むぞ!』
プロペラントタンクを射出、身軽になったライトアーマーが宇宙の闇に紛れながら更に加速。
敵の砲台から要塞へと急接近してくるこちらの機体めがけてビーム弾幕が張られていくが、こちらを捉えるには少し弾幕の密度が薄すぎる。
これならばチバでの戦いの時の方が激しかったな。
スラスターを吹かせてゆきながらバレルロールの戦闘機動、こちら目掛けて放たれたビーム弾幕をまずは斜め右下に回避、回避先に置くかのように放たれたビームに対してはハイパーバズーカを放つ反動を活かして避ける。
380mm口径の実体弾は要塞の砲台の一つに着弾し、派手に爆発して敵の砲台の一つが沈黙。
後方から味方艦隊による支援砲撃が行われてゆき、こちらに注意が向かってる砲台の幾つかが沈黙する。
同時にパブリク突撃艇から放たれたミサイルからビーム攪乱幕が展開され、砲台のメガ粒子砲の脅威度が大きく低下。パブリク隊の損害率は……二十パーセントと言った所か、出来る限りの事はしたがそれでも損害は大きいな。
パブリク隊の動きに合わせてこちらも退避を開始、カニンガン艦隊の旗艦【ケストレル】や、鹵獲したムサイ級である【アーガス】【ベアルン】【タイホウ】【ズイカク】からも艦載機であるジムやボールが上がってくる。
フランシス大尉との戦いの後に、パトロール艦隊を襲撃して鹵獲したジオン艦の数々だ。彼女達を自陣営に引き込めたのはオメガ達の活躍も大きい。
冷静に考えてみるとうちの艦隊鹵獲艦多すぎだろ。誤射防止の為にデカデカとペイントされた連邦軍マークが彼女達のチャームポイントだ。
『少佐のお陰でパブリク隊の被害は抑えられましたが、無茶しすぎですよ』『前線指揮官が他の兵士達の規範にならないといけないだろ?』
メビウス隊各機と合流、四機による編隊を組む。
他の隊も……うん、訓練通りしっかり隊列を組めているな。前衛であるジム三機に後衛のボール五機の隊列。
俺がモビルスーツ隊で指導した事は物凄くシンプル。敵と戦う時は必ず数の優位を取って連携を取りながら戦うという月並みな戦法を徹底させた。
数の有利をひっくり返しかねない強敵などの高脅威目標はメビウス隊が潰し、それ以外の練度はあまり高くない兵士は囲んで殴ってすり潰す。
何の捻りも無い王道な戦術だが、王道に勝るものは存在しないから王道だ。
質は兎も角、数的な優位はこちらに間違いなくある。それを存分に活かして一人で戦うのではなくチームで戦うのだ。
『よーし、各機隊列組み終わったな? この戦場ではホワイトベース隊の連中も戦ってる。彼らはまだ子供ほどの年齢の者も多い。大人として、彼らに情けない姿を見せる奴は一人として居ないと俺は確信している。さぁ、勝ちに行くぞ。全機前進!』
敵の迎撃部隊を確認。ガトルが多数に、敵艦、そしてモビルスーツもちらほら見えるな。
『ライラ大尉、ララァ、二人はホワイトベース隊の援護を。俺とオメガ、それと各隊は出て来た敵の迎撃に移る』
『了解! ホワイトベース隊の奴ら頑張り過ぎだ! ここは一つ先輩として良い所見せないとなっ』『ライラお姉ちゃん、気合入ってるね。了解、隊長、幸運を』
肉薄して来たガトル隊めがけて、隊列を組み終わった各隊が容赦ない弾幕を浴びせる。
ボールの砲撃を掻い潜って肉薄して来た敵宇宙戦闘機にはジムが待ち構えており、容赦なく敵機を一刀両断して宇宙の塵へと変えていく。
敵機を一刀両断して体勢が崩れた所を狙い撃とうとしているリック・ドムを確認。
半ば無意識にそちらに向けて愛機を加速させる。接敵。
敵機めがけてハイパーバズーカを投擲、注意が投擲物に逸れたその一瞬の隙を見計らい空いた手でビームサーベルを引き抜いてすれ違い様に一撃。
納刀してバズーカを回収しながら、敵機を蹴り上げて加速、後方から爆発音が一つ響く。
『一機撃墜を確認、調子が良いっすね隊長!』
オメガ機もボールめがけて接近しようとしていたザクに接近し、膝蹴りを食らわせて怯んだところにコックピットめがけてビームサーベルを突き立てて撃墜していく。向こうも撃墜スコアにプラスだな。
『まだまだ行くぞぉ! ホワイトベース隊や各隊の負担を減らせるように気張れよ、オメガ!』
要塞へと近づこうとしているサラミス級を迎え撃とうと接近してきた敵機めがけて再度加速、後ろから蹴りを食らわせて体勢が崩れる、そこめがけてバズーカを投射。
撃破確認、宇宙にザビ家の兵隊の命によって作られる花火が打ちあがる。
『すまん、助かった!』
『気にするな、戦争と言うのは一人でするもんじゃないからな。助け合いだ!』
推進剤の残量は……まだ余裕はあるな。バズーカで吹き飛ばされて残骸になったリック・ドムを蹴って加速、同時にスラスターも吹かせて突出したムサイ級めがけて肉薄。
『あれは……! 【リボン付きの死神】!? 総員たいか……』
直上から迫り、敵の砲塔の真上からバズーカを放つ、一発、そして艦橋めがけてもう一発。放たれた砲弾は砲塔をぶち抜いていって弾薬庫に到達、そこで炸裂して、可燃物に引火したようで誘爆。
爆発に巻き込まれるよりも先に、砲塔を足場にして蹴り上げて加速、爆発の衝撃を背中で受けてゆきながらそれさえも推進剤代わりに使って次の敵艦へと一気に距離を詰める。
弾切れになったバズーカはその場に放棄、ビームサーベルを引き抜く。
『これ以上やらせ……ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』
直掩として残っていたのであろうリック・ドムを確認。ヘッドオンする形になりながら敵の放ってきたバズーカの一撃をインメルマンターンの要領で急上昇し回避してゆきながら、スラスターを吹かせて姿勢制御。
勢いを乗せたままま急降下してゆきビームサーベルを横なぎに振るう、まずは首を飛ばす、そして続けざまに逆袈裟斬り、コックピットの破壊を確認。
今までの加速によって得たそのまま運動エネルギーを保持したまま、敵艦めがけて急降下、艦橋めがけてビームサーベルを突き立てる。
断末魔のような悲鳴が聞こえたような気がするが、気にはしない。
そのままブルパップマシンガンを構えてエンジン部に弾丸を叩き込む、爆発を確認。
誘爆に巻き込まれる前に艦橋を踏みつけて勢いを付けた後にスラスターを吹かせて離脱。
モビルスーツでの戦いもこなれて来た気がするな、まぁ流石にアムロなどのトップ層に比べたら見劣りするだろうが。
ティアンム艦隊の動きに気が付いたようで、要塞からサイド1方面めがけて衛星ミサイルが放たれていく。ホワイトベース隊の援護に残した二人の機体から狙撃で幾つか落とされていくが、それでも何発かは向こうに到達するだろう
まぁ、少し遅かったな。
その直後、宇宙の闇を切り裂くかのように眩い閃光がソロモンへと降り注ぎ、難攻不落で知られる要塞が焼かれていった。
区画ごと吹き飛ばすとは凄まじい破壊力だな。下手したら宇宙空間では核兵器以上の威力を誇るかもしれない。
敵のモビルスーツ隊の後退を確認、どうやら敵は水際での防衛戦に切り替えるつもりらしいな。
通信回線をホワイトベースの艦橋へと繋ぎ、ブライト艦長へと取り次いで貰う。
『ホワイトベース隊は敵の反攻に備えて要塞の外で待機、味方艦隊の護衛を行わせたい。構わないか? 要塞内への突入は俺達に任せて貰いたい』
『了解です、少佐。ご武運を!』
『この戦いが終わったらホワイトベース隊に休暇を与えるようにという意見具申を行うとしよう。艦長、そちらの武運も祈るよ』
さて、ここからが要塞攻略の正念場だな。
ホワイトベース隊が要塞内に突入しないことでビグザムへの対応が迅速に行えるようになる、はず。
これで味方の損害が少しでも減ると良いんだがな、ついでにアムロ達の負担も減る事を切に祈る。
さぁ、大人の責務を果たすとしよう。
ワッケイン大佐は生存ルートです。