【完結】えっ、ここからでも入れる保険があるんですか???   作:らいらいてー

19 / 25
何時も誤字脱字報告ありがとうございます、大変助かっております。
今回は前中後の三編構成です。


ア・バオア・クーの戦い(前編)

 体感型のモビルスーツ操縦シミュレーターから出ていきながら、屈伸を一つ行う。

 アレス・ピクトンになって肉体年齢は若返ったが、それでも一定時間同じ体勢で居ると体が固まってしまうな。

 

「付き合って貰ってありがとう、アムロ君」

 

「いえ、僕としてもいい経験になりました。モビルスーツの操縦には自信があったんですけど、まさか引き分けに待ちこまれるなんて思いもしませんでした」

 

「十回やって、一回だけだ。初見殺しの技まで使って、何とか判定で引き分けにまでしか持ち込めなかった。やはり君は天性の操縦技術を持っているね」

 

 先のガトーとの戦い、ララァが来てくれてなかったら間違いなく俺は撃墜されていただろう。

 

 俺は、あいつに負けたのだ。

 

 別に、本職は戦闘機乗りであるし、結局生き残ってるし、作戦は成功したし。

 と、色々と言い訳を重ねそうになったが、次はあいつに負けないために休暇中のアムロ君にシミュレーターでの特訓に付き合って貰っていたという訳だ。

 

 因みに彼への見返りはニホンに居た頃に仕入れた超高級羊羹詰め合わせだ。後でホワイトベース隊の皆と一緒に食べるんだぞ。

 

 エースパイロットと言うのは総じて負けず嫌い。勿論俺もだ。

 

 まだ少年の彼に十戦九敗一引き分けと言うのはあまりにも情けないが、戦闘機による空戦シミュレーターだと十戦全勝したので大人のメンツを保てたという事にしておこう。

 

 大人げない? エースパイロットと言うのは負けず嫌いなものさ、俺含めてな。

 

「ピクトン少佐には色々と便宜を図って貰って、本当にありがたいと思ってます。休暇の意見を通してくれたのは貴方のお陰だと聞きました。お陰で久々にしっかり休めた気がします。でも、一つ気になるんです」

 

「どうして貴方はここまで僕たちに気を使ってくれるんですか?」

 

 ほぅ、アムロ君はもしかして俺の事を警戒してるのかな? 何か下心があると思ってるんだろうか? いやまぁ原作に触れた人間としてホワイトベース隊の面々と話したかったのもあるし、何ならサインも貰いたかったのもあるが、一番の理由は……。

 

「いや、ホワイトベース隊ってメインクルーがほぼ未成年じゃないか、まとまった休みぐらいは必要だろう?」

 

 子供に無茶させんじゃねーよ、まだガキだぞこの子達。

 戦争になったら子供が最初に犠牲になるとはよく聞くが、九月から過密スケジュールで戦い続けてきた彼らには、余裕が出来た今だからこそ休暇を与えてやれよ、全く。

 

 ララァがこちらに居るお陰か、ソロモンへのジオンからの攻撃は行われなかったお陰で、ソロモンを拠点にして戦力の再編を行う事が出来た。

 レビル将軍が直々に率いる艦隊も到着したお陰で、ア・バオア・クーの攻略には十分な戦力が集ったと言えるだろう。

 

 オメガが占領した司令室には、抹消される寸前であったソーラ・レイに関する資料もあったお陰か、やっと連邦上層部も重い腰を上げた。

 ワッケイン艦隊が別動隊として先日、ソロモンを出発し、隠密航行でコロニー【マハル】を目指している。

 二十八日に出発で、到着予定が三十日らしいので本当にギリギリになりそうだが、阻止できるかどうかは彼と彼の隷下となったヤザン隊の奮戦を信じるしか無いだろう。

 

 これでデギン公王もレビル将軍も消滅することなく講和が成立したら万々歳なんだがなぁ、戦争なんてさっさと終わらせるに限るし。

 

「あの、前から気になってたんですけど、少佐って僕達と年齢変わりませんよね?」

 

「そうですよ、それなのに私達の事を子供扱いして……怒りますよ?」

 

「ララァ、いつの間に」「シミュレーターを使いたくて二人が終わるのを待ってました」

 

 俺って今の年齢は二十歳だからララァたちと年齢は変わらないんだよな、うん。そんな俺がララァたちを子供扱いしてるとなれば不満を覚えたりはするか。

 

 しかしだねぇ……俺の精神年齢は四十台なのだから……ホワイトベース隊の子達もライラ大尉もララァも俺からすれば子供のようなものなのだから……。

 

「子供扱いしないでください、神経が苛立ちますっ」

 

 むすー、と頬を膨らませて、露骨に不機嫌ですよー、と言いたげな表情を浮かべているララァを見て思わず笑みが零れてしまった。

 ああ、年相応な反応を示してくれるようになってくれて嬉しい。

 今ではこうやって自分の考えを遠慮なく言ってくれるようになった。彼女の自由意思が成長しつつあるという事なのだろう、喜ばしい事だ。

 

 とは言えここで更に子供扱いするとララァが本気で怒りだしそうなので、こほん、と一つ咳払い。

 旗色が悪いので話題を変えるとしよう、大人らしくな。

 

「あー……シミュレーターを使うならばアムロ君の動きに合わせられるように調整しておいてくれ、アムロ君も休憩が終わったらララァと訓練するように。次の戦い、もし起こればホワイトベース隊にララァを参加させて、アムロ君の援護を行わせたいと考えていてね」

 

「僕は初耳ですけど」「あの、私もその話、今聞いたんですけど」

 

「さっきカニンガン中将と話して決まった事だ。次の決戦では恐らくは激戦になるだろう、赤い彗星などのエースが向こうには揃ってるはずだ。君達二人で行動するようにして、高脅威目標を優先的に潰していってほしい」

 

 後、ニュータイプ同士ならばアムロも連携が組みやすいだろう。ついでにホワイトベース隊にカニンガン艦隊からの支援が無いのはいかんという事で、選ばれたのはララァだった。

 

「まぁ、なんだ。ララァの方が軍歴は長い。先輩としてアムロ君を援護してやってくれ。俺の方はライラと組む。ちょっとした特殊任務をカニンガン中将から命じられていてね」

 

「……そういう事情ならば、分かりました。軍歴の長いお姉さんとして、アムロの事を援護します!」

「アムロ、私の事をお姉ちゃんと呼んでいいですよ」

 

「それはちょっと」

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ガルマ艦隊、旗艦【グワデン】艦橋。

 艦橋からSフィールドを眺めた後に、イセリナと愛を育んだ地球の方へと視線を向ける。

 

 今の時間ならば、彼女の故郷は夕刻ぐらいだろうか? ああ、あの夕焼けが懐かしい。

 

 既にニューヤークは陥落したものの、彼女自身の無事を伝える手紙はさっき届いたばかりだ。

 

 手配しておいた特務機関の手引きによって、サイド6への亡命には成功した。

 彼女が親ジオン派として、連邦軍に拘束される事は無いだろう。

 

「どうしたんだい? ガルマの坊ちゃん。わざわざ私の事を呼び出すなんて」

 

「よくやってきてくれた、シーマ中佐。君に、任務をお願いしたくてね」

 

 そう言いながら、机に置かれたアタッシュケースを示してゆく。

 

 中身を確認していいかどうかの許可を取った後に、こくりとガルマが頷いたのを確認して、シーマが開いてるとそこにはファイルと、純金のインゴットが詰まっていた。

 

「なんだいこれ?」

 

「……ジオンは負ける。君達の故郷、【マハル】は、ソーラ・レイと呼ばれる超兵器に改造されてしまったという情報が先程入った」

 

 その表情を聞いて、驚愕の表情をシーマは浮かべて、ガルマの顔を咄嗟に睨みつけてしまう。

 ジオンの為に汚れ仕事を行い続けてきた自分たちへの報いがこれなのか、と言わんばかりに睨みつけてくるシーマの目を目を逸らすことなくガルマは見つめてゆき。

 

「そのファイルには君達の経歴を抹消してくれるであろう業者のリストが入っている。そして、純金のインゴットは親衛隊の士官が横領していたものを押さえたもので、マネーロンダリング済みだ。足は付かん」

 

「……何がしたいんだ? あんた」

 

 戦争に翻弄され、ザビ家に全てを奪われた彼らを、これ以上戦わせることはガルマには出来なかった。

 それが彼の甘さであり、人を惹きつける魅力なのかもしれないが。

 

「――特別任務をお願いしたい。私の妻になるはずの人が、サイド6に居る」

「この要塞から離れてシーマ艦隊はサイド6に向かい、経歴を抹消した後に市民として、彼女を見守り、支えてあげて欲しい」

「もう、ザビ家の為に君達が戦う必要はない。よくやってくれた。だから、これからは経歴を抹消し、市民として暮らすんだ。だから、この任務も君達が受けるかどうかは任せよう。私個人としてのお願いだ」

 

「……本当に坊やだね、あんた。金塊貰って、経歴抹消した後にそのままトンズラしちまうかもしれないよ?」「それでも構わんさ。でも、君達を信じてみたくなってね」

 

 即答かい、と、シーマは苦笑いした後に、アタッシュケースを閉じて、重いソレをしっかりと、しかしながらも少しバランスを崩しそうになりながら抱えて。

 

「……ありがとう、地獄にずっと居たが、地獄で仏に出会った気分だよ」

 

 そう言って、艦橋から去ってゆくシーマの後ろ姿を見送りながら、入れ違いでガトー大尉が入って来た。顔色はあまりよくない、良い報告ではないのは確かだろう。

 

「……ガルマ大佐、本当によろしかったので?」

 

「ああ、話を聞いていたのかな? ……彼らはよくやってくれた、そんな彼らにジオン公国の人間として少しでも報いてやりたくてね」

「まぁでも、ドズル兄さんに忠を誓っていた武人気質な君ならば、武士の情けと言うものを理解して今回の事は内密にしてくれるだろう?」

 

「……ええ、ドズル閣下は生前、自分の死後はガルマを支えるようにしてやってくれ、と仰っておりました。貴方の御心に従います」

 

 よろしい、と一つ頷く。

 ガトーは少し頭が固い所はあるが、一本気で忠を尽くすその姿勢はガルマは嫌いではなかった。

 

 良くも悪くも、仕えるべき君主次第で変わる人間なのだろう。

 

「うん、君ならばそう言ってくれると思っていたよ。で、やってきた理由は【ドロワ】の近くに展開予定の親衛隊特務旅団の話だろう?」

 

「ええ、ご存じでしたか……。親衛隊の名を冠してはおりますが、戦争犯罪者を集めた懲罰部隊だとか? しかも、指揮官格は親衛隊の中でも危険思想と判断された連中が率いていると聞きました」

 

 頭の痛い話だが、ジオンにはもはや人的資源の余裕は存在しなかった。学徒も大々的に動員され、オッゴと呼ばれる急造の兵器に乗って戦わせようとしている始末。

 そんな台所事情で、経歴に多少傷があったとしても兵隊にしないという選択肢はもはやジオンには残されていなかった。

 

 柄付きの手榴弾を二つに交差させた、親衛隊特務旅団のマークが描かれたチベ級を【グワデン】の艦橋からも確認できる。

 

 案の定と言うべきか、決戦前の打ち合わせ段階で正規兵と揉め始めているようだ。

 

 視野が広すぎて足元が見えてない、ギレン兄さんらしいと言えばらしいな、と心の中でガルマはそう呟きつつ、続きを話すようにとガトーに促してゆく。

 

「率直に言って、私も彼等の思想にはついていけません」

「アースノイドを虫けら同然に扱い、重力戦線では虐殺に強姦、放火に略奪を行い、その上、この期に及んで地球連邦を侮り、自分たちが負けるはずがないと慢心し、こちらの話を聞かないあのような輩達とは」

「軍隊と言うよりも盗賊と言うべき輩です。そんな連中も決戦に加えるというのですか!? 今すぐ軍刑務所に戻すべきです!」

 

 優良種である自分たちこそが絶対正義と信じ、周りを見下し、他者を踏みにじることに何の躊躇も持たない連中が周りとの連携が取れるはずがないというのも予想通りだ。

 せめて彼等の醜い有様を見て、他のジオン兵が反面教師にしてくれることを祈るしかない。

 

「私も同意見だ、既にギレン兄上には意見書を送ってはいる、が。果たして私の意見書を見てくれるかどうかが問題だな」

「いかんせん、ギレン兄上も頭が良すぎて視野が広いわりに足元が見えないという弱点を抱えているからね。兄としてはとてもいい人だったよ」

 

 そう言いながら、天井を見上げる。そう、兄としては、本当にいい人だった。

 自分が小さい頃に、お気に入りだった玩具を無くして泣いている時に、お互い泥だらけになりながら庭中を探し回って。

 無くしていた玩具が見つかる頃には、既に夕方になっていて、疲れて眠りそうになってしまっていた自分の事を背負って家まで連れて帰ってくれた兄の背中の感触は、忘れることは無いだろう。

 

 あの頃は本当によかった、家族は皆揃っていた。

 今と比べたら少し貧しかったが、それでも家族は一つだった。皆が笑いあえていた。

 

 ガルマには自分が変わってしまったのか、それとも兄が変わってしまったのか、どちらかは分からなかった。

 が、それでも親衛隊に犯罪者と危険思想の持ち主で作られた旅団を編成し前線に投入しようとしている兄だとしても、大量虐殺を行い、悪びれる様子も一切無い地球連邦からは文字通り親の仇のように憎まれている肉親だとしても、敬愛し尊敬しているのは変わらなかった。

 

 ただ、もう彼とは向いてる場所が違うのだ。

 

「ガトー大尉。君もジオンと言う国を残すために力を尽くしてくれるな?」

 

「勿論です」

 

「よろしい、では君も同志と言う事だ。後でシャリア大尉も、シャアも、その他私の理想に共感してくれた同志たちを紹介しよう」

 

「シャリア大尉、木星帰りの男ですか」

 

「うむ、シャアが紹介してくれたんだ。彼も一人でも多く、後の世に人を残してくれるよう戦ってくれるらしい」

「ジオンは戦争で負けるだろう。自分達の住む大地さえも切り捨てて兵器にしようとしているのだから」

「だが、負けた後に何かを残せるようにしよう。人と、コロニーと言う土地さえ残れば、まだ我々はやり直せる。その為に私はここに残ってるんだ」

「……父上がやろうとしてる事が成功すれば、余計な血を流さずに済むのだが……はてさて」

 

 そう言いながら、要塞の方へと視線を向けた。要塞内では今頃、シャアとシャリアが最終決戦に向けてジオングとブラウ・ブロの最終調整を行っているだろう。

 

 デジタル時計が現在の時間を示していた。現在の時刻は十二月三十日、午後六時十二分。

 

 決戦の時が、近づいている。

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2045と表示されたデジタル時計の画面を眺めつつ、コロニー【マハル】攻撃部隊指揮官のワッケインは苛立ちを隠せずに居た。

 

 巡回の敵部隊に見つからないようにサイド3まで何とか肉薄する事には成功したものの、時間的な猶予は一切残されていなかった。

 しかも強固に守りを固められた敵の本拠地である以上、時間をかければ精鋭と言えども少数のこちらの艦隊はすぐに殲滅されるだろう。

 

『ヤザン隊、頼んだぞ。君たちが今回の作戦の要だ』

 

『了解! 良い報告を待っていてくれ!』

 

 無線封鎖を解除、マゼラン級を旗艦とした五隻の艦船からなる小艦隊から艦載機であるジムが出撃してゆく。

 

『砲門開け! 目標、コロニー【マハル】! 諸君らの双肩に連邦の未来がかかってるとおもえ!』

 

 ワッケインも部下を激励しつつ、激しい艦砲射撃を浴びせてゆき、攻撃目標に損害を与えてゆくと同時に、慌てて飛び出て来た防衛部隊をヤザン隊が蹴散らして目標へと突き進もうとしてゆく。

 

 後少し、後少しで攻撃目標を破損させ、大量破壊兵器を使用不能にすることが出来る、そう思った矢先の出来事だった。

 

 兵器と化した、コロニー【マハル】からジオン公国の渾身の電力が込められた一撃が、損傷もあって出力八十%で放たれてゆき、宇宙を光が切り裂いた。

 

『……遅かったか! クソっ! 全艦、作戦は失敗! 艦載機を戻せ、すぐに本隊に戻るぞ!』

 

 

 ワッケイン大佐は作戦は失敗したと判断したが、彼らの攻撃によって歴史は変わることになった。

 

 破損によって出力が低下した状態で放たれたコロニー・レーザーは、講和へと向かおうとしている公王を乗せた【グレートデギン】を消滅させ、地球連邦艦隊の二十%に損害を与えて航行不能にさせた。

 

 が、第一連合艦隊旗艦【フェーベ】は中破に留まり、司令部要員を殺傷されながらもレビル将軍は生存、戦力の再編は迅速に行われることになる。

 

 歴史書には作戦の失敗として語られる事になるだろうが、ワッケイン艦隊は確実に本来の歴史を変えたのだ。

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 中破した【フェーベ】からコロンブス級改装空母【カツラギ】へと移動してきたレビル将軍は、格納庫に保管されていた自らの『愛機』へと視線を向けていた。

 

 そこに、生き残った司令部要員のレン少佐が駆け込んできたので、そちらへと視線を向けなおした。

 

「ここに居られましたか、レビル将軍。ワッケイン艦隊は追撃を振り切ってこちらに向かっているようです、損害はヤザン隊の奮戦によって軽微、との事です」

 

「それは何よりだ、要塞の攻略戦に間に合ってくれると良いのだがな」

 

 敵の新型兵器による艦隊への被害は甚大、デギン公王も死亡したという連絡が先程入ってきたため、講和もご破算となった。

 

 ジオンの継戦意志を奪うためには、次の戦いに必ず勝たねばならない。

 

 その為には、少しでも戦力が必要だ。

 

「レン少佐。私はこのガンダムに乗って前線に出て指揮を執る。この機体は総大将仕様。通信能力も極限まで高められているお陰で指示も出しやすい筈だ」

 

 は? と思わず声が出てしまった彼の事を責めることは誰も出来まい。総大将が自らモビルスーツに乗って陣頭指揮を執るなど前代未聞の事なのだ。

 

 ゴップ大将がこの場に居たらレビル将軍の発言を聞いて卒倒したかもしれない。

 

「敵の新兵器による攻撃で連邦軍全体の士気が落ちている。勝利の為には総大将自らが先頭に立ち、全兵士に規範を示さねばならない」

「この戦争が長引けば長引くほど、ジオンの徹底的な破壊を望む派閥が増長し、力を持つことになりかねない。そうなれば、待っているのはどちらかが絶滅するかの絶滅戦争だ」

 

 それだけは、絶対に避けなければならない。とレビルは小さく呟き。

 

「護衛はバニング大尉の隊に任せたい」

「さて、最後の総仕上げに向かおうか」

 

 数時間後、再編の完了した艦隊の先頭にレビル将軍専用ガンダムが立ち、黒く塗装された手を振り上げて注目を集めた後に、集結した全兵士に向けて演説を行った。

 

『おはよう、諸君』

『一週間戦争以来、地球連邦は戦い続けてきた。宇宙で、地上で、海で、空で、路地裏で、地下で。ありとあらゆる場所で戦い続けてきた』

『一部の人間の私利私欲によって引き起こされた戦争によって数えきれないほどの命が奪われ、地球環境も破壊されてしまった』

 

『ジオン兵達にも、戦う理由はあるのかもしれない。彼らの言い分にも三分の理があるのかもしれない』

『だが、彼らの語る理は所詮は盗人の理でしかない』

 

『諸君、盗人達に勝利し、そして生き残ろう。戦争が終わった後にこそ、君達の本当の人生が待っているのだ』

 

『帰りを待つ友、家族の為に、恋人の為に、或いは戦後の日常の為に、もしくは他の何かの為に、今ここで勝利し、新年を迎えよう』

 

『奪われた宇宙(ソラ)を取り戻し、我々の故郷に戻り、笑顔で新年会をやるぞ! 総員、戦闘用意!』

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 パブリク隊によるビーム攪乱幕の展開が始まったという報告を司令部で聞きながら、ギレンはすぐさまミサイル攻撃に切り替えるようにと指示を出してゆく。

 それと並行しながら、机の上に置かれたガルマからの意見書の方へと視線を向けた。

 

 あの甘やかされて育ったお坊ちゃまと言って良かったガルマが、自分に意見を言うようになって素直に成長を喜ぶ気持ちと、政治家として彼が成長すれば自分を脅かしかねない存在になりかねないという焦りの気持ちの二つがあった。

 

 一瞬、政治家にならずに一般企業に就職していれば、父を殺める事も無かったのかもしれない未来を想像してしまった。

 普段ならばくだらない感傷だと切り捨てる所であったが、どうしてもあり得たかもしれない未来を夢想してしまう。

 

 彼の明晰な頭脳が導き出したあり得たかもしれない未来では、今よりもはるかに貧しいながらも、産まれてきたミネバを祝福するように彼女を中心に集まり、写真を撮る家族の姿が存在していた。

 

「……本当に、くだらない感傷だ」

 

 柄にもなく、あり得たかもしれない未来を夢想してしまったギレンはその考えを振り払うかのように何度か頭を振り、デラーズへの直通回線を開く。

 

『デラーズ、C型ザクの準備は出来ているな? 封印している【切り札】を使える状態にしてくれ。恐らく、必要になる』

 

 もう、後戻りなどできるはずがない、突き進む道しか彼には残されていなかった。




ルウムの頃のキレキレなシャアにヒロイックな戦う理由(ア・バオア・クー決戦で後のジオンと言う国の為に少しでも人材を残す)が加わって精神的なバフがかかってます。

ついでにガルマの働きかけによって史実よりも早くゲルググはベテランに行きわたり、機種転換訓練も終えて万全の状態です。ただし、ビーム兵器の数が揃わなかったので大半が実弾武器装備です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。