【完結】えっ、ここからでも入れる保険があるんですか???   作:らいらいてー

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 好評そうなので続きます。
 誤字脱字報告をお待ちしております。


生きてぇなぁ……。

「アレス・ピクトン中尉、ネレイドの直掩として残り、味方を守る為に奮戦したその功績をたたえ、貴官にルウム戦功賞を与える! 貴官は意地を見せた、この調子で励むように!」

 

「は、了解であります! ワッケイン少佐!」

 

 ルナツー基地司令のワッケイン少佐から、ルウム戦役に従軍し戦功を挙げた者に与えられる勲章が与えられ、銀色に輝く勲章が右胸に付けられる。

 嬉しいと言えば嬉しいが、俺の戦果を誇張しプロパガンダに使ってると同僚から聞いたので、素直に喜べない自分が居た。

 

 そもそも敗戦したルウム戦役での戦功賞ってなんだよと思わず口に出してしまいそうになるがぐっとこらえて口に出さないようにする。

 

 先の戦いの敗戦によって戦力だけじゃなくてこのルナツー基地自体の士気も下がっているのだ、滅多な事を言うものではない。

 

 レビル大将の【ジオンに兵なし】演説によって、いくらか士気は持ち直したものの、ルウムから戻って来た直後のルナツーの様子は目も当てられないものだった。

 

 サイド5出身の者の中には、故郷を失った事から悲観のあまり自殺する者、モビルスーツによって植え付けられた恐怖心から発狂する者、酒に溺れる者、或いは基地に居た女性兵士を襲おうとする者。

 

 控えめに言って世紀末であった。

 

 ワッケイン少佐の迅速な対応によって基地内の混乱は早々に収まったが、基地全体に漂う厭戦気運を拭い去ることは出来てはない。

 

 だからこそ、こうやって先の戦いで戦功を挙げた者には無理やり新しい勲章を作り出して兵士たちの前で表彰し、負けた戦いでも戦果はあったと声高に主張しているのだろう。

 カニンガン准将……いや、今はカニンガン少将か、彼も勲章貰ってたしな。

 

 ……まだ三月に入ったばかりでこれなのに後この戦争九か月も続くのか……絶望で目の前が真っ暗になりそうだが、まだ生きている、生きているからには最後まで諦めるのはダメだな、うん。

 

 勲章が付けられた俺の姿を見て、集まった兵士たちは歓声を挙げた、俺の心の内も知らずに、先の戦いの敗戦を無理やりにでも忘れようとするかのように。

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、君にはカニンガン少将の指揮下に入って貰って、とある作戦に従事して貰いたい」

 

 勲章授与式が終わった後、ブリーフィングルームに残るようにとワッケイン少佐に言われて、嫌な予感がしつつ残っていたら、その予感は的中する形になった。

 

 戦闘機をまともに乗りこなせる兵士を遊ばせている余裕は宇宙軍のどこにも無いのだろう。

 

「は、了解であります。次の作戦となると、ジオン軍の降下作戦の妨害でしょうか?」

 

「うむ、君も知っての通り、先日、バイコヌール宇宙基地は陥落した。基地防衛隊は文字通り全滅。一人も降伏することなく勇敢に戦った」

 

 バイコヌール宇宙基地から届いた電波はこのルナツーでも確認された。内容は『既に弾丸尽き一つ目の巨人が司令部に迫る。しかし一人として退くつもりはない。地球の未来の為にここで死ぬ』との事だった。

 

 宇宙基地防衛隊の奮戦によって降下したザクを何機か破壊したようだが、マスドライバーによる事前攻撃によって防衛設備が破壊されてしまっていたという事もあって一日で陥落、地球にザビ家の兵隊共の橋頭保が作られた。

 

 次の目的地は、色々な媒体でフォーカスされているオデッサだ、こちらにも連邦軍の守備隊がかなりの数配備されているが、ザク相手には時間稼ぎが精いっぱいと言った所だろう。

 

「既にオデッサ上空にはジオン軍の降下艇が集結しつつある、ここを叩いて少しでも打撃を与える。攻撃作戦は既にカニンガン少将が立案し、準備は整っている、後は作戦地点に向かうだけだ」

 

「了解です。ですが、一つ質問よろしいでしょうか?」

 

「なんだ?」

 

「今回の攻撃作戦にはルナツーに残存している飛行隊も出撃するのでしょうが、私の僚機が居ないのです、誰を連れて行けばいいですか?」

 

 これは戦闘機での戦いにおいてはかなり致命的だ。

 ルウム戦役において俺が編隊を組んでいた連中は皆帰らぬ人になってしまった。

 航空戦でもそうだが、宇宙戦でも戦闘機は編隊を組んでの行動が基本となる、それを前提とした空戦機動もあるぐらいだ。

 

 サッチウィーブが代表例だな。

 

 一機が敵機の注意を引いてもう一機が注意が引かれた側の死角から攻撃する、味方との連携を取るという事の重要性は、例え戦いの場が空から宇宙になったとしても変わることは無い。

 

 だというのに、僚機も居ない中で俺に敵情の偵察や後方攪乱などをルウム戦役後、単独でやらせていたワッケイン少佐は控えめに言ってヤバい奴だと思う。

 

 ……いやまぁ僚機を出したくても出せなかったというルナツー宇宙基地の懐事情もあるんだろうけどな。

 

「ああ……うむ、正直言って今まで手が足りないからと言う理由で君に無茶をさせてしまったのは申し訳なかったと思う。だが、丁度いい人材が見つかった」

 

「ほぅ? どんな子なんです?」

 

「士官候補生から戦時昇進で少尉になった十八歳だ」

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「ワッケイン少佐もストレスのせいで正気を失っているのかもしれんなぁ……。帽子を取ったら頭頂部の毛が円形に無くなっていてもおかしくないぞ」

 

 通信機を切りつつ、愛機のコックピットの中でそうぼやきながら、自分の僚機がちゃんとはぐれてないかを左下方向を見て確認。

 よし、ライラ少尉はしっかりついてきてくれてるようだな。

 

「『こちらピクトン。ライラ少尉、はぐれるなよ。そろそろ作戦ポイントだ』」

 

「『了解だ、ピクトン中尉! しっかり援護はするから頼りにしてくれ!』

 

 やる気十分な十八歳だ、まだ二十歳にもなってない子どもを戦場に立たせるのはどうかしてるが。

 ……冷静に考えたらガンダムって初代からしてアムロみたいな子どもを戦場に立たせてたし今更か、せめて俺は大人としての責務は果たすようにしないとな。

 

 そして大人としての責務と言うのは今回の作戦を成功させてライラ少尉を無事にルナツーに戻してやる事だ。

 

 こちらの戦力は有線誘導で制御されているボロボロのサラミス級が十隻に、セイバーフィッシュが俺とライラ少尉の機体合わせて三十機、後方に指揮艦としてマゼラン級が一隻にその護衛にサラミスが四隻。

 

 それに対して、今まさにオデッサに降下しようとしている敵戦力は降下艇が五十艇以上に、その護衛と思われるザクが少な目に見積もって五十機、ムサイ級が十五隻。

 

 はっきり言って戦力だけで言えば連邦が圧倒的に不利、であるが、今回の作戦は別に敵艦隊の殲滅ではない。

 

「『敵も臨戦状態に入ったようだぞ、中尉』」

 

 流石に敵艦隊もこちらが降下艇に対して攻撃を仕掛けようとしている事に気が付いたようで、戦闘態勢を整え降下を急ごうとして、ミノフスキー粒子が更に散布されてゆく。

 

 これほどの濃度のミノフスキー粒子の中ではミサイルなどの従来型の誘導兵器は役に立たないだろう、だがまぁこれも予想通り。

 

 敵艦であるムサイ級の砲撃が始まり、無人となっているサラミス級に突き刺さってゆく。

 

 その砲撃が合図となって、有線誘導されているサラミス級に増設されているロケットブースターが点火されて敵の降下艇めがけて突き進む。

 

 このサラミス級、先のルウム戦役で損傷してルナツーでは修理する余裕が無いという事で外に放置されていた艦達だ。

 

 遊兵となっている彼女たちを朽ちさせるよりは有効活用するとしよう。

 

「『よし、ロケットブースターは点火したな、我々も作戦通り行動するぞ。第一優先目標はムサイ級。第二優先目標は降下艇だ』」

 

「『了解! 腕が鳴るな』」

 

 言葉遣いも上官として彼女に教えてやる必要があるかもしれないな。

 と思いながらもすぐに思考を切り替えて、愛機のセイバーフィッシュを加速させて直線軌道で突っ込む、最初の攻撃目標は降下艇のすぐ近くに展開しているムサイ級。

 

 ムサイ級のメガ粒子砲が突き刺さってもどんどん加速しながら突っ込んでゆくサラミス級に、護衛のザクたちも困惑しながらも、指揮官が優秀なのかすぐに上下左右に散って、四方八方からザクマシンガンやバズーカによる攻撃が仕掛けられてゆく。

 

 ザクの注意はサラミス級に向かった、このタイミングだな。

 

 近づいてくる機影に気が付いたのか、ムサイ級の直掩に残っていたザク二機がこちらにザクマシンガンを放ってゆく、十字砲火の形になるが機首を上にあげて急上昇。

 寸前で回避しながら更に機首を下に下げて急降下してザクを翻弄しながらムサイ級の死角に回り込む。

 これがもし他のザクの注意が降下艇に突っ込むサラミス級に向いてなかったら、こちらは蜂の巣にされていただろうし、やはり注意を逸らす囮は重要だ。

 

 ムサイ級の死角に回り込みながら、翼下に搭載されている対艦ミサイルを発射、目標は右舷ロケットエンジン。

 着弾、無誘導ながらも肉薄すれば対艦ミサイルをぶち当てることは出来るな。

 

 右舷のエンジンから爆炎を上げ始めた母艦を見て、直掩のザク二機はザクマシンガンによる対空砲火からヒートホークを使っての白兵戦に切り替えるつもりのようだ。

 

 追いかけっこする気か、ならば望むところだ。

 

 敵がヒートホークを構えたのを見て機体を急降下、地球の側へと移動してゆきながら加速する。

 

 こちらに敵機が引きつけられた、予想通り。

 

 次の瞬間、後方から炸裂音が響く、対艦ミサイルが着弾した音だ。

 

「『よっし、当たった! 中尉、もう一機のエンジンにもミサイルぶち当てておいたぞ』」

 

「『よくやった! 良い腕だ、ライラ少尉。ザクとはまともに戦うなよ、一撃離脱を心がけてすぐに離脱しろ』」

 

 注意は隊長機である俺が引きつけて、切り込んだ後に、僚機が戦果を拡大する。

 

 航空戦の基本だな。

 

 両舷のエンジンが破損したムサイ級は推進剤が誘爆したのか航行不能になり、地球の重力に引かれ始めてゆく。

 コムサイが切り離された所を見るに、総員退艦の命は出されたようだな。

 

 一瞬切り離されたコムサイに追撃を加えるか迷ったが、あくまで作戦に集中する。

 

 ムサイ級が地球方面へと沈みゆくのを見て、降下艇へと突っ込んでゆくサラミス級が囮だと判断し、向かっていた注意がこちらに向く、が。

 

 降下艇めがけて突っ込んでゆくサラミス級も本命だ。

 

 加速しながら突っ込んでくる彼女たちの突入角度から外れるように降下艇はわずかにずれて降下しようとしているようだが、それじゃあルウムの復讐に燃える烈女からは逃れることは出来ない。

 

 ザクの攻撃を受けてズタズタになりながらも前進を続ける彼女たちが降下艇へと近づいた瞬間、彼女たちを誘導している機体から有線によってある信号が送られる。

 

 艦内に人の代わりに搭載された高性能爆薬への自爆信号だ。

 

 その自爆信号によって降下艇付近まで肉薄していた彼女たちは一斉に破裂、逃げ遅れた降下艇を次々と薙ぎ払ってゆく。

 

 彼女たちの自爆に巻き込まれて即死できた降下艇はある意味幸運だったのかもしれない。

 

 艦内に搭載された爆薬が起爆することによって船体が破片となり、運よく爆風から逃れた降下艇や、護衛のザク達に散弾のように襲い掛かって機体を破損させてゆく。

 

 特に、大気圏への突入姿勢を取っていた降下艇にとっては船体に小さな穴が開くだけでも致命的だ、空力加熱に耐えきれずに燃え尽きることになる。

 

 破損しながらもジオン魂をキメてオデッサへと突入してゆく降下艇もあるが、やはり中が凄まじい温度になっているのか耐え切れずに降下艇からザクが飛び出すが地球の重力から逃れることは出来ずにお星さまになってゆく。

 中の温度は……想像はしたくないな、うん、錯乱して外に出ようとするのも仕方ないのかもしれない。

 

 きっとオデッサ周辺では綺麗な流星群が観測できるだろう、ザビ家の兵隊共によって作られる命の輝きだ。

 

 破片によって破損したザク達も、破損した降下艇が空力加熱で燃え尽きていくのを見て恐怖したのか、その動きが露骨に鈍る。

 

 まだ降下艇はかなりの数残ってはいるが、これ以上の戦果拡大は望めないだろう。

 

 後方で作戦指揮を執っているカニンガン少将もそう判断したようで、後退を命じる信号弾が打ち上げられたのが確認できる。

 

 ひとまずはジャブローの頭の固いモグラ共に最善は尽くしたという申し開きは出来るだけの戦果は出せたようだ、何よりだ。

 

「『よし、ライラ少尉。俺が殿に残る、すぐに後方に退避するぞ』」

 

「『中尉、まだ推進剤も弾薬も余裕はあるが?』」

 

「『命を無駄にするな、その命を使う局面が必ずやってくる。今はジオン兵共に一発食らわせてやった事を喜ぶとしよう』」

 

 少しの間が開いて、了解したという言葉が返ってきて、ライラ少尉の機体も今回の襲撃に参加し生き残った機体と共に退避してゆく。

 

 さて……大人として子どもたちの為にもう一仕事頑張りますか。

 

 護衛対象であった降下艇の一部が打撃を受けて、怒り狂った様子でマシンガンを放ってくるザクの攻撃を機首を上にした後にそのまま一回転し、インメルマンターンのマニューバで回避してゆきながら加速し、振り切ろうとする。

 

 あえてライラ少尉たちとは別の方角に機首を向けて加速、相手のヘイトはこちらに集まっているな、うん、予想通り。

 

 後方から放たれるであろうザクマシンガンを回避するように不規則に動き回る、縦方向に螺旋状に回転してゆきながら急上昇、そこから機首を戻してのバレルロール、さながら少しでも踊り方を間違えたら死へと繋がる死の舞踏だ。

 

 だが、俺は上手く踊り切る事が出来たらしい、推力ならばザクの方が上だが、最高速ならばセイバーフィッシュの方が勝る。

 

 少しずつではあるが推進剤を犠牲にしつつ、敵との距離を離す事が出来ている。

 

 それでもなお追いすがろうとしているザクめがけて、カニンガン少将が指揮艦としているマゼラン級からの牽制の艦砲射撃が行われた。

 

 流石に向こうもこれ以上の追撃は不可能だと判断した様子で後退していったようだな。

 

 ふぅ、とコックピット内で一息つく、今回も生き残る事が出来たようだ。

 

 ……これがまだ後九か月も続くってマジか、生きてぇなぁ……。




 オデッサは陥落しましたが主人公たちの戦功は大いに宣伝されて主人公とライラも一階級昇格することになりました。
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