【完結】えっ、ここからでも入れる保険があるんですか??? 作:らいらいてー
今回はちょっと長いです、すいません。
サラミス級へと向かっていた衛星ミサイルめがけてビームライフルの照準を合わせ、引き金を引く。
狙い通り戦艦の主砲に匹敵する大火力を誇るガンダムのライフルは衛星ミサイルを容易く撃ち抜き、破片に変えていく。
目前でミサイルが爆散した事により、破片がサラミス級に降り注いでいくが、損害は軽微。
シミュレーターで乗り慣れたザクとは勝手は違うものの、やはり自分専用にカスタムされたこのガンダムは使いやすい。
『レビル将軍! お見事です! ニュータイプと言うあの噂は本当なんですね!』
『まぁ、研究者曰くニュータイプ能力はかなり低いらしいがね』
護衛であるバニング大尉にそう返していきながら、こちら目掛けて一直線に突っ込んでくる敵編隊を確認。
数は四。リックドムとゲルググの混成小隊。
先頭に立ちながらこちらへと狙いを定めて来た敵機、赤く塗装されたゲルググ――諜報部曰くゲルググJの手に握られた大型ビームライフルの動きを確認。
半ば反射的に横方向へと鋭く機動、ついさっきまで自分が立っていた場所に光線が通過していく。強烈なGに耐えていきながら姿勢を制御し、ビームライフルの照準をゲルググに向ける。
一発目、あえて素直な直撃コースの弾道。腕利きらしく相手は上方向へとスラスターを吹かせて回避、内心凄まじい加速力だなとレビルは舌を巻きながら、狙い通りの方向に回避した敵機めがけて牽制のバルカン砲を放つ。
同時に回避機動を取った事によって姿勢がブレた敵めがけてニ発目の光線を放つ、コックピット狙いの一撃。こちらも回避されるが、更に姿勢が崩れる。
『そしてこれが本命だ』
姿勢が崩れた所に頭部バルカン砲による追撃を行い、撃墜には追い込めないもののスラスターを損傷させて動きを鈍らせた所で三発、四発とビームライフルの引き金を引いていく。
頭部センサーの破壊を確認、その直後にコックピットを光線が貫き、少し間をおいて敵機が爆発四散。
隊長機が仕留められて動揺したリックドムの胴体部めがけて戦艦の主砲に匹敵する大火力を叩き込み、宇宙を彩る花火を打ち上げる。
『二つ』
瞬く間に隊長とその僚機が撃墜され、隊全体に動揺が広まったところにバニング大尉が駆るジムコマンドが側面から強襲。
慌ててジャイアント・バズを構えてレビル機を狙おうとしていたリックドムのコックピットにビームサーベルを突き立てて強制的に沈黙させる。
残った一機も僚機を仕留めたバニング大尉の機体にガンダムでさえも無事では済まない大火力の兵装を向けようとするが、その胴体部を光線が貫いていった。
『三つ』
黒い三連星のようにレビルを捕縛し、戦争の英雄になろうとしたモビルスーツ小隊は瞬く間に返り討ちにあい、貴重な要塞の防衛戦力は更に削られてしまう事となった。
『……これがニュータイプの力ですか』
『人類の革新と呼べる力が、人を殺すために使われるのは皮肉なものだがね』
少なくとも、ジオン・ズム・ダイクンが提唱したニュータイプとは違うだろうさ、と返していきつつ、要塞の方へと視線を向ける。
まだまだ対空砲火も激しく、敵はドロス級空母を前面に押し出して総反撃を行おうとしているようだ。
総大将を倒しこちらの統制を乱そうとはしてるようだが、それこそがレビルの狙い通りの作戦であった。
まぁ、事の顛末がゴップ大将の耳に入ったら彼は卒倒するだろうが、将来の政界入りを考えた場合、ここで強い指導者と言うイメージを確固たる物にする必要もあった。
腐敗した連邦を変える為には、前線で兵士達と共に戦うような強い指導者が必要だ。マスコミも分かりやすい英雄を求める事だろう。
ついでに、もし自分がここで戦死したとしても、ティアンム提督などが跡を継いでくれるであろうと言う安心感もあった。
『ふむ、このタイミングだな。敵はこちらの首を取りにNフィールドに戦力を集め始めた。Sフィールドが手薄になるはずだ、Sフィールドに展開している部隊に総攻撃命令を出せ』
◇◆◇◆◇◆
『全軍の総大将が最前線で指揮を執るなんて滅茶苦茶だよ本当』
【ケストレル】の格納庫からカタパルトへと移動していきながら、思わずコックピット内でそう呟いてしまう。でも誰も俺の事は責められないはずだ。
『それについては全くもって同意見っすね』『変な薬やってないか後で調べた方が良いんじゃないいのか?』
コア・ブースターの兵員収容カプセルに乗り込むことになったオメガや、僚機となったライラからも同意の言葉が聞こえてくる、お前らの感性がまともで良かったよ。
ま、総大将が後ろからふんぞり返るんじゃなくて最前線で戦ってくれるのは士気が上がるのは確かだがな。
『作戦の手順を確認するぞ。Sフィールドに展開された【ドロワ】へと特殊作戦群満載のカプセルを搭載したコア・ブースター三機が敵艦へと強行着艦。特戦が艦橋を制圧し、コントロールを奪った後に【ドロワ】を要塞内へと突っ込ませて行動不能に追い込む。そこから発生した敵陣の乱れに乗じてモビルスーツ部隊は要塞内へと切り込む』
こっちもこっちで滅茶苦茶な作戦だな。兵員を満載したカプセル搭載のコア・ブースター三機と言えども、総兵力は百五十人ちょっとだぞ。
だが成功すれば敵の防衛の要の一つを無力化出来る上、要塞への突破口を開くことが出来る。まぁ敵もバカじゃないから全力でドロワは守ろうとするだろう。
『で、【ドロワ】切り込み部隊、通称【抜刀隊】をライラと俺が護衛するという訳だな。少数で行動することによって、相手の意表を突くという訳だ。ムサイなら兎も角、大型空母にこれだけの少数で挑んでくる命知らずが居るとは思うまい』
そう言いながら、カタパルトに愛機であるジム・コマンド・ライトアーマーをセット。
僚艦である【ホワイトベース】からも艦載機が上がる。事前の打ち合わせ通り、ガンダムとララァのジム・スナイパーⅡが編隊を組んで敵の高脅威目標に挑みかかっているな。
要塞からもジオングやブラウ・ブロが上がってくるのを確認するが、あちらは二人が抑えてくれるだろう。
こちらはこちらの仕事をするとしよう。
『カニンガン中将が立案した相変わらず滅茶苦茶な作戦だが、成功すればリターンは計り知れない。任務を成功させ、一人でも多く生き残るぞ!』
護衛対象と自分を鼓舞するようにそう叫びながら、カタパルトによって愛機が射出されていく、更にスラスターを吹かせて加速。
凄まじいGがこちらに襲い掛かってるが、何とか歯を食いしばって堪えていって殺人光線と弾幕が飛び交う地獄へと飛び込む。
僚機であるライラのジム・スナイパーⅡも上がってきて、こちらと編隊を組んでいくのを確認。後方からも特戦を満載したコア・ブースターもついてきてるな、よし。
『こうやって二人で編隊を組むのも久しぶりだな、隊長!』
『ああ、背中は任せるぞ、ライラ』
あたりを見回すと、カニンガン艦隊のジムやボールも次々と上がっていくのを確認できる。
直接の指揮と援護は今回は出来ないが、彼らの練度も生き残ることで上がっているはずだ。各機の奮戦を祈るしかないな。せめて一人でも多く生き残ってくれ。
攻撃目標めがけて突き進むこちらの部隊の進行方向上に敵影を確認。
肩には柄付き手榴弾が交差されたシンボルマーク。見える範囲ではリックドムが六機、空母の護衛と言った所か?
『へへへへ、アースノイド共がのこのこやってきたぜ!』『これから手に入れる捕虜の中に女が居たらどうする?』『勿論ファック&サヨナラよぉ!』『ヒャッハー!』
……ミノフスキー粒子による通信回線の混線を今ほど恨んだことは無いかもしれない、あいつらの下品な鳴き声が聞こえて来るな。
あの、これ俺の個人的な意見なんすけど。いくら戦力が足りないからと言って猿山から人の言葉を喋る珍獣連れてくるのはやめません?
ライラの教育にも悪いだろうが、と内心毒づきながら、三機ずつの小隊に別れてこちらを挟み込むかのように向かってきた敵編隊の片方へとスラスターを吹かせて加速して接敵。
『もう片方は頼んだぞ、ライラ!』『了解! 【ルナツーの狂犬】の力を見せてやるよぉ!』
ライラ機が敵編隊へと向かうのを横目で確認していきながら、すれ違い様にビームサーベルを一閃。
まずは一機撃墜を確認、珍獣の命によって宇宙に爆炎の花が咲いた。
爆発によって発生した衝撃を受け、あえて逆らわずにその勢いを乗せて加速、こちらめがけてバズーカを構えて来た敵機に一気に肉薄。
コックピットにビームサーベルを突き立てていきながら、敵機の胴体部を思いっきり蹴って更に加速。
Gによって体が押しつぶされるかのような刺激を感じながらも無視し、瞬く間に僚機が撃墜されて動揺が見て取れる敵機に肉薄。
『あ、アースノイドがなぜこんなに……ジオン国民は選ばれた優等民族じゃ……うわぁぁぁぁぁぁぁ!?』
ビームサーベルを加速の勢いを乗せて振って、敵機を袈裟斬りにしていきながら離脱。
後方から爆発音が響くが、そちらには視線を向けず、ライラ機の方へと視線を向ける。
『これで三機目!』
丁度、ライラ機のビームサーベルによってコックピットが串刺しにされるリックドムの姿がそこにはあった。
やっぱララァに比べると地味だがライラもとんでもない腕利きだよな……。
『強くなったな、ライラ』『へへん! 後でもーっと褒めてくれよな、隊長!』
『ああ、戻ったらうんと――』
と、言いかけた所でこちらを向いてるライラ機の後ろから近づいてくる腕のようなものを確認。咄嗟にビーム・ガンを放ち牽制し、ライラ機も敵襲に気が付いて横に飛ぶようにスラスターを吹かすことで回避していく。
その直後に指から光線が放たれ宇宙を切り裂いていくが、狙われていたライラ機の方は無事のようだな。
同時に、攻撃目標である【ドロワ】の方からもこちらの接敵に気が付かれたようでミサイルが飛んでくるのを確認、これはあまり時間をかけている場合ではないな。
『ライラ、【抜刀隊】をエスコートしてやれ。敵艦の防空網に穴を開けて強行着艦できるようにな。俺はあいつを押さえる!』『了解! 幸運を!』
腕から伸びている有線ケーブルの先へと視線を向ける、そこには白い塗装のなんかこう……ジオングの成りそこないみたいな見た目のモビルスーツがモノアイをこちらに向けているのを確認できる。
確か、サイコミュ高機動試験用ザクだったか? ニュータイプ専用機と聞いたが……。
『お前か、トウキョウで私をコケにしたアースノイド野郎は』
『誰だよお前』
いや本当に誰だよ、ジオンにニュータイプの知り合いなんて居ないぞ。
と思いながらも、相手は激昂した様子でサイコミュ兵器である腕を飛ばしてこちらを挟み込むようにしていきながらビームを放っていく。
が、甘いな。僅かに体を逸らして必殺の光線を寸前で回避。
『グフだよ! 親衛隊のグフパイロット!』
『ああ、居たなそんな奴』
『貴様の首を取るために研鑽を積み、ニュータイプとして覚醒したのだ! 絶体にここで殺す!』
ニュータイプって相手を殺すための力なんだっけ……?
そう考えながら敵機の弾幕を回避してゆきつつ、反撃の機会を伺う。この弾幕だと近づく事もままならないな。ビームサーベルを納刀しながら、先程撃破したリック・ドムが落としたのだうろジャイアント・バズを拾い上げておく。
『これこそが人類の革新の力だ! 優等民族たるジオンの民に与えられた力! 神が与えたもうた力だ! 無知蒙昧なる下劣で卑怯なアースノイド共を支配するのが我々に与えられた神からの使命!』
『なんすかそれ』
『神の代理人として人口調整を行う権利が我々にはあるのだ! 地球圏の為に地球に巣食い、資源を食い荒らす寄生虫のゴミ共を踏み潰す権利がなぁ! だから私がニホンでやった捕虜虐殺は許されるはずなのに皆して腫れもの扱いして!』
『なんすかそれ』
あの、これ俺の個人的な意見なんすけど。ギレンさんこの手のヤバい人親衛隊に入れるのやめませんか? ジオンと言う国全体の品位が落ちると思うんすけど。
『ふん、やはりアースノイドには分からんか。高尚なるギレン総帥の考えが。人々を管理し、支配する事によって地球のゴミ共にも平穏が訪れるのだ。コロニー落としも全ては戦略的な意義はあれども、人口調整の為だと私は信じている!』
ギレンさんも極端すぎる思想すぎへん? と言うか地球環境を何とかしたいならコロニー落とすのはどう考えても悪手だと思うんですけど……。
あいつの思想をこいつが曲解してる可能性もあるか、流石にここまで極まった意見を仮にも一国の指導者が持ってるとは思いたくない。だがまぁ、一つ言える事がある。
このヤベーやつにはニュータイプの力は過ぎたるものだ。
こちらを挟み込むように展開された両手、その指先からビーム砲が交差するように放たれて行くのを確認。
二つの扇状に放たれた火線の隙間を潜り抜けるようにバレルロールの戦闘機動を行いながら回避していきつつ、敵機へと接近。
ビーム・ガンを連射して、相手に回避機動を強制させる。
やはり腐ってもニュータイプであるようで、必殺の光線は避けられるが…狙い通りの位置に移動したな。
そこだ。
コックピットを貫かれて宇宙を漂っていたリック・ドムの残骸に着弾、その次の瞬間に推進剤に引火したようで花火が上がる。
当然、その近くを回避機動を行いながら飛んでいた敵機にも爆風は襲い掛かって……。
『ぐぅぅぅぅ!? にゅ、ニュータイプなのに! 私は選ばれし人なのにぃぃぃぃぃぃ!?』
『所詮道具に過ぎない力を過信しすぎると身を滅ぼすことになるぞ。勉強料はお前の命で払ってくれ』
爆風を受けてバランスが崩れた敵機めがけて鹵獲したスペースノイドの技術者が作ったジャイアント・バズを投射。
360mm砲弾が着弾し、敵機は吹き飛んだ。敵の断末魔の叫びが通信機越しに聞こえてくる。戦争が無ければ彼女も普通の女の子で居られたのだろうか?
『殺しておいて、下らん感傷だな』
そう自嘲するように呟いていきつつ、攻撃目標の方へと視線を向ける。
ライラ機の奮戦のお陰で対空砲の一部が沈黙し、空いた防空網からコア・ブースター達が飛び込み、格納庫への強行着艦を行っていく。
アツギ基地からの生き残りと言うだけあって良い腕前だ。
『行くぞお前ら! 艦橋に突っ込め!』『大和魂を見せてやれ!』『万歳!』
『なんだこいつ滅茶苦茶つよ……うわぁぁぁぁぁぁ!?』『ま、まさかあの噂は本当だったのか!? 連邦には【プレデター】が居るという噂は!』『【プレデター】なんて噂に決まってるだろ!』『へっ、アースノイドの弾丸などかすりも……はうっ』
通信機越しに激しい戦闘音が聞こえてくる、後はオメガ達を信じるしかないな。
『ライラ機は空母に救援に向かおうとする敵機に警戒を、陸戦隊が増強されるといくらオメガ達と言えども苦戦を強いられることになるだろうしな』
了解! と元気よく帰ってくるライラの声を聞いた後に、こちらに向かってくる敵影を確認。
四肢が青い塗装、そして胴体は緑。俺の因縁の相手の塗装、これは間違いないな。
『ガトーか! 再戦の機会を待っていたぞ!』
『ドロワはやらせんぞ! 今度こそ貴様を落としてくれる!』
敵機がスラスターを吹かせて加速して来る。ビームナギナタと呼ばれる得物を振りかざし、こちらへと斬りかかってきた敵機の攻撃をスラスターを僅かに吹かせて寸前で回避。
相変わらず狙いが鋭い、だが、避けられないほどではない!
スラスターを吹かせて回避した勢いを乗せながら、後ろ回し蹴りの要領で蹴りを食らわせようとするが、そちらは回避されてしまう…だがその動きも予想通り。
上体をひねらせてビーム・ガンを回避した方向めがけて放つ。
対ビームコーティングが施された盾によって受け止められてしまうが、一瞬だけ相手の視界が遮られる。このタイミングを待っていた。
エネルギーが尽きたビーム・ガンを投げ捨てると同時に閃光弾を取り出して投擲、投げ付けたソレは相手に届くよりも先にビームライフルによって撃ち落とされ、眩い光を放つ。
と同時に、『初見殺し』の手を打つ。
『子供騙しを! 私には効かんぞ!』
閃光弾を途中で撃ち落としたことにより、直撃を受けずに済んだお陰ですぐに回復した敵機はビームライフルをライトアーマーへと放つ。
『子供だましと侮るなかれってね!』
ダミーバルーンによる初見殺し、一度使った相手には二度と効かない技であるが、この技はどんな技量を持つパイロット相手にも効く、と思う! アムロにも効いたし!
ダミーに注意が向いてる隙に敵機の背面へと回り込み、敵機のコックピットを後ろから串刺しにしようとするが、流石はガトー。寸前でスラスターを吹かせて前のめりになる形で回避したものの、代わりにスラスターがビームサーベルの餌食になった。
小気味いい音を響かせて、スラスターが爆散し、どうやらその損傷によって操縦系統に異常が発生したのか、敵機の動きが大幅に鈍る。
『俺の勝ちだ』
ガトーはここで仕留める、と言うか仕留めないと戦後テロリストにでもなられたら困るしな。
再度コックピットめがけてサーベルを突き出そうとした所で、死神の鎌を握った腕が何処からか飛んできたビームライフルによって撃ち抜かれて吹き飛ぶことになった。
更にもう一発光線が宇宙の闇を切り裂いていき、咄嗟に体をわずかに横にずらしてコックピットへの直撃を避けてゆくが、無事だった方の腕が貫かれてしまう。
『全く、柄にもないことしちまったよ。折角一抜け出来る機会だってのに! それをふいにしちまうなんて!』
『シーマ中佐!? サイド6に向かったのではないのですか!?』
『坊ちゃんの恋人を守るのは部下に任せた。あたしは……まぁ、ほら。忘れ物があってね。ガルマ坊ちゃんへの恩を返すというね』
ちっ、横槍で仕損じたか! 慌てて飛びのいて距離を取る。
シーマ機の他に増援としてやってきたのは、ザンジバル級とゲルググが何機か。こんな予備戦力を連中は待機させてたとは! ぬかったか!
『こちらオメガ! 艦橋を制圧! このまま【ドロワ】を要塞に突っ込ませます!』
『【ドロワ】の方は……制圧されたか、陸戦隊も万が一に備えて大量にいた筈なのになぁ……退くよ、ガトー大尉。【グワデン】に戻ろう』
『すまないな、シーマ中佐。恩に着る!』
【ドロワ】は制圧できたが、ガトーを始末しきれなかった。シーマ機に曳航される形でガトーの機体は退避してゆく。
『忘れるなよ、ガトー! これで二戦一勝一敗だ!』
『次は負けんぞ! 絶対に貴様との決着をつけてやる!』『良い大人なんだから相手の挑発に言葉を返すじゃないよ、全く』
退避していく敵部隊を眺めた後に、【ドロワ】が要塞へと突っ込んでいくのを視認した。
巨大な質量兵器と化した空母は要塞の重厚な防衛設備を踏み潰し、大穴を開けていく。それでも頑丈な空母は原型を留めているあたり、ジオンの建艦技術は侮れないだろう。
あの様子だと、オメガ達も無事だろうな、要塞内に突入して防衛設備を次々と制圧していくだろう。
これでSフィールドの防衛の要は失われた、後はここから要塞内に突っ込むだけだが……。
『すまん、ライラ。【ケストレル】まで退避する、援護を頼む』
今は一度戻るとしよう、しかしこの分だと俺の愛機は暫くは使えないだろうな。
◇◆◇◆◇◆
「その話は本当なのか?」「ええ、本当です。ギレン総帥は戦死した、との事です」
兄の死を参謀の一人から聞かされて顔を青ざめさせているガルマに立て続けに悪い報告が入っていく。
『【ドロワ】が要塞内に突っ込んできて防空兵器の一部が押しつぶされました!』『要塞内に敵の陸戦隊が突入してきて……な、なんだあいつは!?』『まさか連邦の【プレデター】なのか!? う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!』
対空砲火が減ったことによって、その地点から敵軍が要塞に取り付き始めた。墜落した【ドロワ】から出現した敵歩兵は残存の防空兵器を制圧しまわっているようだ。
『すまん、ガルマ。ジオングに乗っていたのにシャリア機は撃墜されてしまった。だが、シャリア自身は無事なようだな。連邦の白いのと決着をつけた後に彼と合流し、そちらに向かう』
Sフィールドの防衛の要の一つであった、ブラウ・ブロは撃墜され、ジオングの方も脱出装置だけになって要塞内へと逃げ込んでいる。
パイロットが二人とも無事なのは朗報であったが、状況は最悪に近かった。
『【ドロス】に損傷! なんだあの塗装の機体は……!』『あの機体にはレビルが乗ってるという話があるらしいが単なる噂だろう!? クソ、またあの機体に対空砲がやられたぞ!』『おい、こっちにもジムが取り付いてきたぞ! 早く救援を――』
【ドロス】は敵モビルスーツ部隊に取り付かれて、総攻撃を受けて宇宙を漂うデブリの一つとなってしまった。
「是非もなし……シーマ艦隊の半分がこちらに戻ってきてくれたのが不幸中の幸いだな。Eフィールドに海兵隊の一部を回しつつ、【グワデン】を中心に戦力をまとめる。勝敗は決しつつある、Sフィールドを放棄しEフィールドに戦力を再集結させるぞ」
ギレンの巧みな指揮があってこそ、なんとか戦線を食い止められていたのだ。この状況ではもはや戦線の崩壊は阻止できず、いかに消耗を減らし撤退するかが重要となる。
ガルマの判断は迅速であった、Sフィールドの指揮を引き継ぎ、防衛の要が失われたとなるとすぐに撤退の準備を開始したのだったから。
「……それと、泳がせていたスパイに情報は流したか?」「ええ、親衛隊の連中の暴挙を彼らが止めてくれると良いんですが」
もはやジオンは戦争に勝つことではなく、いかにこの戦争で被害を出さずに負けるかの段階にある。
その状況であるというのに、核兵器まで持ち出そうとした兄の采配にガルマは頭を抱えそうになってしまった。
もう後戻りが出来ない段階なのかもしれないが、それでもやり方と言うのがあるだろう。
◇◆◇◆◇◆
格納庫に戻ると同時に、俺の機体には消火剤がぶちまけられていって泡だらけにされてゆく、これで艦内で爆発するという事も無いだろうし安心だろう。見た目は無様だが。
『こちらフラン! すいません、隊長! 緊急事態なのですよー!』
『んん? フランか、どうした?』『すぐに出撃して欲しいのです! 敵が要塞の奥深くで保管している核兵器を持ち出そうとしている情報がスパイから届きました!』
えっ何それは。この状況で核兵器なんてぶっ放したら連邦の被害も甚大になるだろうけどルール無用の戦いになっちまうぞ? 南極条約ガン無視のこの世の終わりみたいな戦いになるぞ?
『フラン君、通信を変わってくれ。……カニンガンだ、すまないね。ピクトン少佐。君にしか頼めない事だ』
『しかし、俺の機体は破損していて、とても出撃できる状態じゃあないですよ?』
『君に、【ネレイド】を救ってもらった時と同じ奇跡を見せて貰いたい。……君の機体が格納庫にまだ残ってるだろう? 万が一に備えて整備士達もしっかり整備しておいたとの事だ』
格納庫の隅に追いやられ、今回の戦いも兵員の輸送にはコア・ブースターが選ばれたことによって埃を被ってしまっていたルウムから乗っていたソレへと視線を向ける。
セイバーフィッシュへと、視線を向ける。
えっ、ここからでも入れる保険があるんですか???
ガルマ君は戦闘中に家族が死んでも泣かない強い子です。
地味に群狼の脅威でサラっと描写したセイバーフィッシュ君の再登場です、ちゃんとモルガンも搭載してる子ですよ。
主人公の最初の相棒が終盤で再度乗機になって決戦へと赴くというシチュエーションでしか得られない栄養素はあると思います。