【完結】えっ、ここからでも入れる保険があるんですか??? 作:らいらいてー
3/17追記 ちょっと描写が足りない所があったので追加しました、具体的に言えば戦後処理の所です。
操縦桿を握りしめて、ブースターを一気に点火し加速。宇宙を駆ける一筋の光となりながら目的地を目指す。
『すまないね、足の速い予備機が君の機体しか無くてこんな無茶ぶりしてしまって!』『カニンガン中将の元に居たら退屈せずに済みますよね、本当!』
通信機越しに俺の上司に皮肉を言いながら、頭の中で今回の作戦を反芻する。
ア・バオア・クーの奥深くに存在する核貯蔵庫にセイバーフィッシュで乗り込み、少なくともこの戦いの間は使用不能に出来るように天井に対艦ミサイルを叩き込んで崩落させて物理的に封印する。
滅茶苦茶な作戦だな本当!
要塞へと取り付いた連邦軍モビルスーツ部隊によって敵部隊は抑えられてはいるが、ア・バオア・クー内の物資搬入路を戦闘機で潜り抜けていって貯蔵庫に向かうなんて。
こんなのやれるの俺ぐらいしか居ないぞ!
スパイからの情報によれば、あの入口から突入すれば最短距離で貯蔵庫に向かえるらしいが、入口付近にリック・ドムが二機ほど待ち構えているな。
『隊長! 絶対に生きて帰ってきてくれよなっ! 私も、ララァも、フランも帰りを待ってるんだから! 帰ってきたらキスしてくれっ』
『ほっぺで良いならしてやるよっ』
ライラ機のジム・スナイパーⅡが構えたビームライフルによってこちらにジャイアント・バズを向けていたリック・ドムは胴体を貫かれて爆散。
爆風を突っ切るようにして入口へと向かう、だがこちらの意図を防衛部隊は察知したのか隔壁を閉じようとしている、これはまずいか!?
『約束だぞ! 絶対に守ってくれよっ』
残ったリック・ドムの頭を蹴って上方向へと飛び上がった僚機の機体がハイパーバズーカを構えたかと思うと、ムサイ級にさえ致命傷を与えるそれから砲弾が放たれていき、入口に着弾。
盛大な爆発音を響かせて強引に突破口がこじ開けられていき、そこへとセイバーフィッシュを飛びこませていく。
後は運次第だな、本当!
核貯蔵庫へと通じている通路の至る所に防衛用の対空砲やらミサイル発射装置やらが設置されているな、要塞防衛用の最終防衛ラインと言った所か。
モビルスーツ部隊の方は既に出払っているようで、配備されているのは通常兵器であるのが救いか、ならばやりようは幾らでもある!
『敵のモビルスーツか!?』『いや、違う! 連邦軍の宇宙戦闘機!?』『ここ通路だぞ!? 戦闘機で飛び込むか普通!』『多勢に無勢だぁ、いっけぇ!』
通路内に設置された対空砲めがけて機体を180度ロールさせて背面飛行状態となる、一瞬主翼の先が通路に当たりそうになった気がして冷や汗が流れたのは内緒だ。
背面飛行状態となりながら勇士を死へと誘う妖婦の眼差しを、戦闘機が突入してきたことで意表を突かれて一瞬だけ対応が遅れたミサイル発射管へと向け、光線を放つ。
放たれた光線によって発射管は撃ち抜かれ、盛大な爆発音が響く。一つ破壊。
対空砲の照準がこちらに向いてるのを確認、背面飛行状態のまま通路の床に機体が擦るギリギリまで降下してゆき、放たれた弾丸を避けてゆきながら機関砲を掃射。
二つ!
そのまま僅かに上昇、上昇しながら再度180度、主翼が擦るギリギリでロールし姿勢を戻した後に、通路の天井に設置された無人砲台めがけて【モルガン】を発射。
欠陥兵器と散々バカにしたものの、その威力は本物で頑強な砲台を貫いて爆散させていく。
三つ!
『なんだあの変態飛行!?』『デラーズ大佐に知らせろ! 核貯蔵庫に向かう敵影ありと!』『C型ザク十二機の出撃はまだか!? 作業を急がせろ!』
スラスターを吹かせて更に加速、曲がりくねった通路内を一気に駆け抜けていく。
こちらに対空砲を向けていた敵防空陣地の真上を最大戦速で通り抜け、相手の戦意を喪失させていきながら目的地を目指す。
見えてきた、目的地! スパイからの情報通り、開けた場所! 貯蔵庫だ!
貯蔵庫の入口を封鎖するかのように隔壁が閉じられようとするが、機体を90度ロールさせて挟み込まれる寸前で潜り抜ける。
挟まっちまったって事にならなくて済んだな、うん。
貯蔵庫内では封印が解かれた核バズーカを装備しようとしているC型のザク、十二機を確認。
ルウムで散々見た連中だからこいつらの事を忘れる訳がない、一年戦争最終局面でこいつらと遭遇するのは何の因果か。因縁を感じてしまうな。
『……連邦司令部の正気を疑うな』
隊長機、さっきの敵の通信の会話から察するにデラーズ機と思わしきザクがこちらにザクマシンガンを構えて来る。他のザクも少し対応が遅れながらもバズーカから武器に持ち替えようとするが、少し遅い!
『その意見は本当にご尤もだな、デラーズ大佐!』
彼の機体の足を機体上部に搭載されたビーム兵器で撃ち抜いていき、転倒させていく。足を撃ち抜かれてバランスが崩れたせいで放たれたザクマシンガンの照準はぶれてこちらを射止めることは無い。
同時に【モルガン】をパージ、身軽になりながら機首を上に向けて持ってきた対艦ミサイルを全て天井めがけて放つ。
マゼラン級にさえも当たり所が良ければ致命傷を与えるミサイルが次々と天井で炸裂していき、崩落が始まったようで天井が崩れ始めてC型ザクや封印が解かれたばかりの核兵器に次々と瓦礫が降り注ぐ。
瓦礫の合間をバレロールを左横方向に一度、右横方向に二度行って潜り抜けてゆく。地味に今まで生きてきた中で一番肝が冷えた場面かもしれない。
『くぅ……! ジオン勝利の切り札が、核兵器が……! 貴様ぁ……!』
『こんな状況で悪あがきなんてするんじゃねーよ! と言うか連邦も核兵器使い始めたら一番困るのはお前らだろ!』
瓦礫に埋もれてゆくC型ザクから怨嗟の声がミノフスキー粒子の混線によって聞こえてくる、が、これが多分一番双方にとっていい結末だろう。きっと。
崩落した天井によって完全に区画が埋め尽くされる寸前で貯蔵庫の出口から突破を図る。
あとコンマ一秒脱出が遅れてたら瓦礫で潰されたな、うん。
埋もれてしまったザクは頑丈だろうからパイロットは無事だとしても、セイバーフィッシュだと瓦礫に埋もれるようなことがあれば一瞬で即死だ。
赤いガンダムのように瓦礫で埋没させられて無事なのはモビルスーツだけなんだよ。
通路を潜り抜けていこうとする最中、今さらながら警報が鳴り始め隔壁が閉じ始めていく。
隔壁が閉じる寸前で何とか潜り抜けていくが、推進剤が尽きつつあることを知らせるアラートが鳴り始める。
あ、これ多分死んだわ。
要塞の外へとあと一歩だというのに、推進剤が完全に尽きた事を知らせるかのようにセイバーフィッシュの動きは止まってしまい、無情にも出口を塞ぐかのようにゆっくり、ゆっくりと隔壁が閉じ始める。
ついでに推進剤が尽きて要塞の引力に引っ張られるようにセイバーフィッシュも通路へと真っ逆さまに堕ちてゆく。
エースの死に様が推進剤切れによる墜落とはなんとまぁ、呆気ないものだな。
『隊長……! 本当に、無茶ばかり、して!』
ここまでか、と一瞬俺でも諦めそうになったが、閉じようとしていた隔壁が何処からか飛んできたハイパーバズーカによって破壊されて、そこから腕が伸びたかと思うと出口目前で動きが止まって墜落しようとしていた俺の機体を掴んだ。
そしてそのまま優しく引っ張り出されてゆくと、そこにはララァのジム・スナイパーⅡが立っていた。
『……ありがとう、助かった。ララァ。借りが一つできたな。でも、アムロは?』
『足の無い機体との決着を付けに行く、との事でしたので後の戦いはアムロに任せて、隊長が心配でここまで来たんです。……後少しで死ぬところだったんですよ? もう……』
『いや本当、仰る通りだわ。カニンガン中将には数か月ぐらい食事奢って貰わないとな』『ええ、本当に。それぐらいして貰わないと割が合いませんね』
ララァの機体に推進剤の尽きた俺の機体を引っ張って貰いながら、近づいてくる【ケストレル】へと視線を向ける。
さぁ、戻るとするか。俺達の家に。
◇◆◇◆◇◆
『カスペン大佐、学徒兵達を率いヨーツンヘイムと共にグラナダ方面へ後退するように。ひよっこ達を守ってやってくれ。国の宝だ』
『しかし、ガルマ様! Eフィールドに敵が殺到しております! 私もここに残らせてください!』
『ここは我々が食い止める! ザビ家としての責務を果たさせてくれ!』
状況は最悪と言って良かった。
ギレンから指揮系統を受け継いだはずのキシリアも戦死したという報告が入り、指揮系統は更に混乱。
最後に残ることになったガルマが敗残兵となった要塞守備隊を逃すためEフィールドに布陣し、少しでも味方を逃すために殿となろうとしていた。
『ガトー大尉、シーマ中佐! すまんが私に付き合ってくれ!』
『はっ! 味方の殿となるのは誉れです!』『誉れになんか興味は無いけど、まぁ、ガルマの坊ちゃんがそう言うなら付き合うさね!』
グラナダ方面へと退却を開始したジオン軍を追撃するべく、連邦軍が猛攻を仕掛けてくるものの、ガルマの巧みな指揮とエース達の奮戦によって何とかEフィールドの崩壊だけは阻止されていた。
だが、少しずつ、少しずつ、味方が後退してゆくにつれて殿となった【グワデン】を取り囲むように敵が展開していき、ついにはジム・コマンドに取り付かれてしまうことになった。
艦橋めがけてビームサーベルを振り下ろそうとしていく敵機を見て、ガルマは過去の出来事が走馬灯のように蘇る。
家族達と過ごした日々、観光用コロニーで姉にテニスを教えて貰った時の記憶。ドズルに乗馬を教えて貰った時の想い出。父とギレンを交えて政治論争をした際に言い負かされて泣いてしまった時の事。
そして、記憶に薄っすらと残ったサスロの手の感触も。
最期に思い出したのは、ザビ家の野望によって命を落とした数多の兵士達と同じように家族の事だった。
『――やらせるものかよ!』
艦橋へとサーベルを突き立てようとしていた連邦軍機が横から飛び込んできた赤い塗装のゲルググによって蹴り飛ばされた。
吹き飛ばされた所に追撃のビームライフルを受けて民主主義の守護者を自称する者達の命によって宇宙が彩られていく。
『色々と考えたが……今の状況だとガルマ、お前が死ねば私が全ての尻ぬぐいをせねばならなくなりそうだからな。長生きしてくれ』
『……ふふ、相変わらず素直じゃないな、シャア!』
赤い彗星のゲルググと、彼の僚機であるシャリアが駆るゲルググが【グワデン】へと取り付こうとしていた敵機を次々と撃墜していき、攻めあぐねた連邦軍が一時的に後退を開始する。
と同時に、【グワデン】艦橋に首相からの通信が入電。それはガルマが待ち望んでいた連絡であった。
――停戦交渉成功セリ。
既に首相とは要塞に向かう前に話を付けており、前々からガルマも力を貸していた停戦交渉がやっと纏まったのだ。
連邦軍も損害が嵩み、ついにジオン本国に侵攻する前に停戦する必要が出てきたのだろう。
『こちらマ。後詰を率いて参陣しました、が、少し遅かったですかな?』
『マ大佐か、いや、ある意味丁度いい場面だなア・バオア・クーから後退する戦力を収容するぞ。連邦軍の末端には停戦を無視して攻撃してくる連中が居るかもしれんが、後詰の艦隊も居たら躊躇するだろう』
キシリア様は? と聞いてきたマ大佐に、少しの逡巡を置いて戦死したと伝えると、暫し彼は無言になり。
少しの間をおいて、そうですか、と珍しく声を僅かに震わせながらそう返した。
『……むしろここからが本番だな、停戦と言えども一時的な物だ。本格的な終戦交渉をせねばな』
ガルマに、家族をミネバ以外亡くして、泣いてる暇もありはしなかった。彼の本当の戦いはここからなのだから。
◇◆◇◆◇◆
【ケストレル】へと戻って暫くするとジオン公国政府より停戦の打診を受け、連邦はそれを受け入れることによって戦闘は終わった。
ジオン本土を守る最終防衛ラインであるア・バオア・クーは陥落し、残っていた守備隊は指揮権を受け継いだガルマの指示に従い、本国に撤退。
要塞は我々の物となった。
瓦礫に埋もれていた核兵器とC型ザクは連邦によって確保され、パイロット達も逮捕される事になる。デラーズが逮捕されたのは後々の事を考えると大きいな。
最初は一週間の停戦から始まり、交渉は重ねられていく。ジオンの戦後処理についてかなり揉めることになったが、軍部の代表として終戦交渉に参加したマ大佐の強気な外交。
具体的に言えば、地球に残存しているジオン軍の残存全てに、連邦がある程度妥協しない限りは徹底抗戦命令を出し、ゲリラ化させて連邦を攻撃させ続ける。と言う脅しを行った。
その恫喝に、ザビ家で唯一残った跡取りであるガルマに責任を負わせようと画策していた政治家たちも妥協を余儀なくされた。
最終的に、戦争によって被害を受けたコロニーの復興費用の7割はジオンが負担。
ついでに今後、宇宙移民政策が再開されてコロニーが新造される事になった場合は出来る限りの協力を行うと確約を得る事となった。
ザビ家は戦後は国家の象徴として残る事が許され、数年以内に立憲君主制国家になると条約も結ばれることになった。ザビ家が保有していた資産の八割は連邦に引き渡されることになり、戦後復興の財源の一つとなる。
ジオン公国の占領地域及び海外領土は全て連邦に返還、もしくは割譲されることとなった。火星諸都市、グラナダ、ア・バオア・クー、ソロモン、アクシズなどなどだな。ジオンは国土がサイド3だけになった。
終戦交渉において一番特徴的なのは、ジオンが保有しているモビルスーツを連邦が今後二十年かけて買い取っていくと言うものだった。ただし、実際に金のやり取りは行わず、買い取った分だけサイド3の国民が宇宙に移民する際に課せられた借金と空気税などの今まで課せられていた税金も減額されるというものだ。
これによってジオンの軍事力は削減されると同時に、ジオン国民に課せられていた借金は減り、地球連邦も残党によるテロに脅かされずに済むという案であった。
その代わり、ジオニック社などジオンが保有しているモビルスーツ製造企業の株式は連邦に譲渡されることになり、ジオンに代わって筆頭株主となった連邦政府は各企業に監視団体を置き、首輪が付けられる事となる。
ジオン国の主権は認められ、政治的な干渉は行われない代わりに、一個大隊規模の連邦軍部隊がズム・シティに駐屯し、軍事交流を行うという事で決着が着くことになった。
実質的には監視部隊であるが、ジオン国民を威圧しないように最低限の部隊しか配備されない事となる。
他にも色々な条約が結ばれることになったが、概ねジオンの独立を認め主権も認めてその上借金や税金なども減額されてゆく代わりに牙を抜いてゆくという事で決着が着いた。
地球への被害を考えた場合はあまりにも甘すぎる対応と批判を受けることになったが、もはや連邦にもこれ以上戦争を続ける余力は無かった、との事だ。
俺達カニンガン艦隊は、損傷した艦をグラナダに残して終戦交渉が終わったばかりのサイド3へと向かう事となる。
名目は鹵獲した艦艇を返還するため、実際の所はサイド3に残されたモビルスーツに封印処理を行い、すぐに戦闘が行えない作業を行うためだ。
後は現地のジオン軍パイロット共に、連邦軍機とジオン軍機の性能比較を行うのが主な任務だな。
ジオン国民の感情を配慮し、最低限、それでいて精鋭しか派遣されない事となり、残りの艦隊はグラナダで待機する事となった。
戦争は終わったが、家に帰れるのはまだ暫く先になりそうだ。
◇◆◇◆◇◆
グラナダに駐留している艦隊の一つ。
サラミス級巡洋艦【ナミカゼ】の艦橋で、バスク・オム少佐はデスクを思いっきり叩きつけながらぎりっ、と奥歯を噛みしめていた。
あまりにもジオンに対する対応が甘すぎる、戦争に勝利したというのに、我々の恨みは殆ど晴らされていない。
ジオンによって家族を奪われた者たちも多い、故郷を失った者達も居る、大切な者が汚された挙句殺された者も居る、その恨みと憎悪をレビルと政府首脳は無視したのだ。
レビルのやり方は巧みだった、自分の要求を通すため、ジオンへの『正当』な戦時賠償を行わせようとしていた政治家達に将来的に自分が連邦の首相となった場合は『配慮』を行う事をチラつかせたのだ。
それを受けた政治家達は、過激な論調でジオンの徹底的な破壊を語っていた者達は手のひらを返し、平和万歳と叫んでいる。
ふざけるな、と忌々しくバスクはそう呟いてゆきながら、艦橋から近く停泊しているコロンブス級が曳航して来たものへと視線を向けた。
――核パルスエンジンが、視線の先には存在していた。
恨みと憎悪が、新たな戦乱を生み出そうとしていた。
もうちょっとだけ続くんじゃ。
因みに【ケストレル】へと戻った後にちゃんと、三人娘のほっぺたにキスして回ったそうですよ、少佐。
ピクトン君もう戦争が終わったと思っていて可愛いね♡ じゃあ地獄を見ようか(豹変)