【完結】えっ、ここからでも入れる保険があるんですか???   作:らいらいてー

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混迷の宇宙

 ――ア・バオア・クー。

 激戦の末、連邦の占領下に置かれ、急ピッチで復旧作業が行われることになった。

 

 工兵部隊の奮戦の活躍もあって、復旧されることになった宇宙港には万が一、ジオン軍が停戦を破った場合に備えて戦力が集結しつつあり、グラナダにも同様に戦力が集結していた。

 

 いくら停戦したと言えども、ジオンへの不信は根強いのだ。無いとは言えないが、過激派の決起があり得る以上、先の大戦の悲劇をもう一度起こさないように準備しておくに越したことは無い。

 

 ギレンが命を落とした司令室の椅子に座りながら、ふぅむ、とレビル将軍は顎を撫でた。

 

 グラナダに展開している筈のコリニー艦隊との定期連絡が途絶えている。彼は確かにジオンを徹底的に叩き潰すべし、と主張していた。が、彼も軍人だ。

 政治家達が決めた事には従うだろうし、コリニーの部下の中でも屈指の過激派であろうジャミトフも流石に独断で艦隊を動かしてジオンに攻め込むという事はしないだろう。

 

 となると何か良からぬことをやらかしてるとするのならば更にその下だろうか?

 

「レビル将軍、ホワイトディンゴ隊とモルモット隊、ヤザン隊、その他選抜部隊は既にズムシティに到着し、現地でモビルスーツの性能試験を行っているとの事です。……見事に精鋭ばかり、ジオンが動くと見てるのですか?」

 

 司令室でズムシティの駐屯部隊からの連絡を確認し、疑問を投げかけてきたワッケイン大佐の方へと視線を向ける。彼もまた、ジオンを警戒している者の一人だ。

 

「うむ、まぁそれもあるが、一番の理由は連邦軍過激派の暴発。それの保険だね」

 

「……率直に言って、小官も大多数の兵士達と同じ気持ちです」

 

 まぁ、彼の気持ちも痛いぐらい分かる。スペースノイド達も、アースノイド達も、ジオンのコロニー落としによって故郷、家族、財産、大切なものを失った人が多いのだ。

 

「しかし、アクシズ等のジオン海外領を切り取れただけマシだと思って欲しいのだがね。本土全土併合? 賠償金? コロニー落としによる犠牲者への補填? 彼等のどこにそれを捻出するだけの財源があるんだ」

 

 実際、レビル将軍も当初はジオン本土をすべて制圧下に置き、戦後賠償を課させるつもりであった、のだが。

 彼らに過酷な賠償を請求した場合、被害者意識に目覚めたジオン兵達による決起に今後は悩まされることになるだろう、終わりのない対テロ戦争が待ち受けている可能性は非常に高い。

 

 何なら五十年以上は残党は生まれ続けるだろうな、ともレビルは計算していた。

 

「しかし、このままでは連邦兵からの脱走兵によるテロが頻発しそうなのですが」

 

「上からの指示に従わない軍人は軍人ではない、野犬の類だ。始末した方が良いだろうな」

 

 これもまた頭の痛い問題ではあるが、もし連邦の決定に納得がいかない者達がテロリストになったとしても、まだ残党よりも与しやすいだろうとレビルは計算していた。

 

 ついでに言うならばレビルはもっと先の事を見据えていたのだ。ア・バオア・クーでの決戦において最前線でモビルスーツに乗って戦ったことは地球で大々的に報道させた。

 

 選挙に出馬すればほぼ勝てるだろう。民衆と言うのは分かりやすい英雄を求めるのだから。その点で言えば、最前線で戦う強い総大将と言うイメージはキャッチーさがある。

 

 連邦首相にまで上り詰めた後は、時を見て地球の人々をすべて宇宙に上げるという野望まで彼は考えているのだ。

 その先の事を考えたら、宇宙移民が再開された暁には出来る限りの支援を条約で確約させたジオンは残しておいた方が良い。

 

 そんなにアースノイドを地球から追い出したいのならジオンの連中が金と物を出すのが筋だろう。

 とは言え、先を見過ぎていてもそれはそれで足元が見えなくなっては意味のない話だ。まずは生き残らねばな。

 

 レビルの微弱ながらもニュータイプとしての直感が殺気を感じ取り、懐に忍ばせていた小型拳銃へとその手を伸ばさせた。

 

 同時に入口付近で爆発音、そして突入して来る兵士達の足音。突入して来た陸戦兵の銃撃が頭上を掠めていくものの、傍に立っていたワッケインの首元を掴んでデスクの影へと隠れさせてゆきながら拳銃を引き抜いて応射。

 一人が悲鳴を上げて倒れるものの、怯まずに後続が飛び込んできて銃を乱射。

 司令部要員の何人かが運悪く弾丸によって貫かれて血がぶちまけられる。皮肉なことに彼等の命は同じ連邦兵によって奪われることになった。

 

「レビル将軍を確保しろ!」「司令室を押さえればこちらのものだ!」「レビル将軍はジオンシンパだ! 捕まえてそう吐かせろ!」

 

 ぞろぞろとまぁ、こんなにも躾けのなってない犬共が集ったものだ。

 敵襲に気が付いたワッケインも拳銃を引き抜いていき、覚悟を決めた様子でデスク越しに突入して来た元連邦兵達へと視線を向ける。

 数は十数名、司令部要員達も銃を抜いて戦闘態勢を整えている。やれないことは無い。

 

「――野犬共がぞろぞろと、そんなに血が見たいなら血の海に溺れさせてやろう、自分達の血のな」

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 ズムシティ近郊、B7R宙域。

 連邦進駐部隊のモビルスーツ性能比較試験の為、借り上げられた宙域。

 

 そこを俺達の母艦である【ケストレル】、もとい【ラーズグリーズ】に名を戻したザンジバル級が航行していた。窓の外を眺めてみると、ララァが操るエルメスとシャアが操るG-3ガンダムが模擬戦を繰り広げている光景を眺めることが出来る。

 

 近いうちにこの艦もジオンに返却されると考えると、少し感慨深いものがあった。思えば長い付き合いになったからなぁ、この娘とも。

 

 性能試験と語ってはいるが、実際の所は万が一にもジオン軍の一部過激派が決起した際に叩き潰せるだけの戦力は配備されている。

 ルナツーから運び込まれた性能試験用と言う名目のガンダムが何よりの証拠だろう、まぁ今は灰色の塗装だったのがシャアカラーの赤にされているが。

 

 予想していたよりもスムーズにジオン軍の武装解除は進み、ジオン本土に残されていたモビルスーツの大半は封印処理が行われて、整備士達がしっかり設備が整った場所で数日かけて組み上げなければ使えない状態にさせている。

 すぐに使えるように残されている機体と言えば作業用ザクなどを除けばガルバルディやアクト・ザクなどの性能試験用のものばかりだ。

 ザクマシンガンなどの武装も同様だ。まぁ、この作業はジオン側の協力もあったとは言え手間がかかる作業だったんだが。特別手当ぐらい出して欲しいもんだね本当。

 

 他のザビ家の者達が死んだことによって公王に就任したガルマ公王が真っ先にやったのは会見でジオン公国の戦争責任を認め、先の大戦は過ちであったと語る事であった。その上で、これからは過ちを繰り返さないように心掛けようと言う旨の演説を国民に対して行った。

 ジオン国内の反応はまちまちであったものの、外国領の全てを失ったもののサイド3本国自体は無事である上に、一応は独立を保てた為、概ね市民からは戦争終結を喜ぶ声が上がっている。

 

 まぁ、過激派も勿論いて、その過激派によるテロ騒ぎが終戦から今日までの三週間で三回もあった。

 が、パイロットとして経験を積んだ上に接収したエルメスを操るララァ、そしてガルマ公王の意を汲んで連邦に協力する姿勢を見せた赤い彗星やソロモンの悪夢達の前には手も足も出なかった。

 公王の意向をガン無視して決起した連中のゲルググ一個中隊を蹂躙するエルメスとガンダム。そしてガトー大尉のゲルググJやシーマ中佐のゲルググM。

 そしてライラのジムスナイパーⅡ、後はカニンガン艦隊のボールやジム。

 結果? 接敵して一分も経たずに全滅したよ。

 

 俺が出るまでも無く全て片付いたんだよね、凄くない?

 

 ついさっき到着したホワイトディンゴ隊等の選抜部隊も進駐部隊に加わったし、これはもう俺の出る幕は無いだろうな、と言うか来ないで欲しい。

 

 ジオン軍も連邦と結ばれた条約によって五年後までには現在の十分の一まで規模を縮小すると確約しているしな。

 現在保有しているジオンのモビルスーツは連邦が買い取ると条約も結ばれてるんだし、残党も史実よりもはるかに少なくなるだろう。

 破壊されたコロニーの復旧作業の為に作業用に改造されたモビルスーツパイロットが必要だろうし、雇用問題もある程度は解決するはず、だと信じたいな、今の所は。

 

 ついでにグローブに駐屯している部隊も俺の進言で特殊作戦群が駐屯してる、その上オメガもいるから悲劇も起きないだろう。

 起こるであろう悲劇を減らす為に最大限の努力をしたんだ、もうそろそろ辺境の基地あたりで戦闘機を愛でる日々を過ごさせてくれ。

 

 ……とは言え落ち着いたら落ち着いたらでライラ大尉とララァとフランの対応をしないといけないのか、どうすっかな本当。

 

『む、シャア大佐は撃墜判定を貰ったようだな。ピクトン少佐、次は私達の番だ』

 

『了解した、ゲルググJの模擬戦形式の性能試験と行こうか。――今度は勝たせてもらうぞ、ガトー大尉』

 

 まぁ、それよりも前に今日こそはガトーと決着を付けてやる。ララァとシャアの模擬戦が終わったからには次は俺とガトーの番だ。

 

 因みに六回やった模擬戦の結果は三勝三敗だった、今日も勝ち越すことが出来なかったのは内緒だ。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

「ヤマザキ大尉、連邦の決定どう思います?」

 

「思う所はあるが、今はそんな事を考えずに手を動かせ、アリマ少尉」

 

 サイド3、グローブ。

 男手が殆ど出払ったコロニー内に駐屯している特殊作戦群の面々は土木作業に従事していた。

 電気駆動の重機を使い、古くなった建物を壊しつつ、瓦礫などを鍛え上げられた肉体を持つ歴戦の男たちが運び出していく。

 

 地域住民への敵ではないというアピールの為行っている活動ではあるのだが、未曽有の被害をニホンへもたらしたジオンへの悪感情を拭い去る事が出来てない兵士達も多数いた。

 瓦礫を一輪の手押し車に乗せて運んでいるアリマ少尉と呼ばれた者もその一人であるし、重機を操っているオメガもジオンに対する憎しみは心の奥底に泥のように溜まっていた。

 

「上の対応は甘すぎますよ、本当に。その上、ジオンの為に働かされてるなんて!」

 

「これはトレーニングだと思え、アリマ少尉。もしかしたらここで素敵な出会いの一つや二つぐらいはあるかもしれんぞ」「ジオンの女って気性荒そうな奴らばかりってイメージがあって怖いんですけど」「それはそう」

 

 ジオン女性への偏見に満ちた会話をしてる所で、血相を変えて飛び込んでくる兵士が一人。グラナダに駐留することになったコリニー艦隊との交渉役を務めていた者だ。

 

「た、大変だぁ! グラナダのバスク少佐が決起! コリニー提督と側近だったジャミトフ大佐を監禁し、艦隊の指揮権を掌握してサイド3に攻め込もうとしてるぞ!」

 

 一瞬オメガと呼ばれているヤマザキ大尉は我が耳を疑った。この局面で決起するのか? と。

 終戦交渉も纏まり、戦後復興に向けて歩みだそうとしたこのタイミングで事を起こすとは随分とバスクは急いでるとも感じた。

 だがこの局面での決起はある意味最適解かもしれない。

 ジオン本国に残された戦力は武装解除も相まってごく僅かで、連邦の駐留艦隊もジオンへの配慮の為、精鋭が配置されてはいるが規模は分艦隊程。

 

 サイド3を蹂躙するタイミングとしてはここが一番良いのかもしれない、やろうとしてる事は軍人失格の行為だが。

 

「こちらに近づいてくるコロンブス級の艦影を確認!」「おい、入港許可は出して無いぞ!」「陸戦隊を乗せた上陸艇がコロニーの外周に取り付きました! 中に入って来ます!」「まだまだ後続のコロンブス級もいるな、どれだけの戦力が集ってるんだ?」

 

 特殊作戦群司令の指示によって、万が一に備えて臨戦状態を整え、ズムシティ駐留艦隊司令部に報告を入れつつ住民の避難誘導を行いながらも状況は刻一刻と悪化していった。

 

 避難誘導は間に合い、正規の宇宙港に殆どの住民の誘導は完了した。後は司令部から派遣されてくる艦隊で市民を回収するだけだ。

 だが、味方艦隊が到着するよりも先に反乱軍の陸戦隊がグローブに上陸する方が早かった。規模としては一個連隊程だろうか? 後続もある事を考えると反乱軍の陸戦隊の規模は師団規模になっているだろう。

 

 住民達が避難した宇宙港へと続いてる道路に設置された机などを並べて作られた簡易陣地越しに進軍して来る敵部隊をオメガは眺める。

 停止を指示する信号弾は何度も打ち上げたが、無視して上陸部隊まで差し向けたからには相手は交戦の意思ありだろう、狙いは……グローブに残されたジオン国民だろうか?

 

 指揮官と思わしき士官が拡声器を使ってこちらに向けてこちらに語り掛けようとしているのを確認、一旦銃の引き金から指を離し、様子を伺う。

 

『歴戦の勇士である特殊作戦群の兵士達諸君! 諸君らはアースノイド達の誇りと言って良い! それなのになぜ、ジオンを庇おうとするのか! 頼む、降伏してくれ! 君達を撃ちたくない!』

 

『こちらも撃ちたくない。今ならばまだ軍法会議にかけられるだけで済むぞ、引き返せ』

 

『ジオンに正当な復讐を行う! 我々がされたのと同じように国土を蹂躙し、女子供は汚す! これは我々連邦兵の願いなのだよ! 殺す前に溜まった鬱憤を晴らそうとしてるのだ、君達も加わらないか?』

 

 何言ってんだこいつ。と、思わずオメガは呟いてしまった。勝手に代表者面してきたかと思えば好き放題言いやがって。

 連中がやらかそうとしてるのは集団強姦だろうか? もしそのようなことが起これば連邦軍の汚点として永遠に残り続ける事だろう。それだけは阻止せねばならない。

 

『戦争責任から逃れようとしているジオン国民には虐殺と陵辱でその責任を果たさねばならない! 男は殺し女は性奴隷に、子供は奴隷にしてサイド3を地図上から抹消する! そうする事で大戦で亡くなった者達の魂は報われるだろう! これは正当な復讐なのだ!』

 

 どうやら興が乗って来たらしく、声高に素晴らしい演説を行う陸戦隊の指揮官をスコープ越しに眺めていきながら、特戦司令の指示を待つ。

 はぁぁぁぁ、と司令は拡声器から口を離して大きな溜息を吐いて。

 

『思う所は私もあるが、だからと言って貴様らの意見を通すわけにはいかん。最後通牒だ、ここから出ていけ。可及的速やかにな』

 

『やっぱり極東の黄色い猿共には我々の高尚な理想は理解できんか』

 

『そんな理想を人になれば理解できるようになるというのならば一生猿でいいな。交戦を許可する。――大和魂を見せてやれ!』

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 グローブに急行し、宇宙港へと入った俺達が見たものは至る所から火の手が上がる地獄のような光景であった。

 

 特戦の活躍によって六度に渡って宇宙港を制圧するべく強襲を仕掛けてきた反乱軍陸戦隊は阻止され、グローブに住んでいた民間人達の中から負傷者は出たものの、死者を出すことなく守り切ることに成功した。

 しかしながらも、その犠牲は大きく、圧倒的な戦力差の前に歴戦の強者達は一人、また一人と倒れ伏すことになった。

 

 宇宙港内部にも先ほどまで白兵戦が行われたことを示すように特殊部隊の兵士達の死体が至る所に、そして反乱軍陸戦隊の死体が山のように積み重ねられている。血の海が広がってるようにも見えた。

 

「隊長、少し遅かったですね」

 

「オメガ、その傷は」「俺も人間という事です、ちょっとへましちゃいましてね」「住民の収容はこれで完了した。脱出するぞ」

 

 血で真っ赤に染まった腹部を手で押さえながら、オメガは親からはぐれて逃げ遅れたのだと思われる幼児の手を引いて【ラーズグリーズ】内へと入ってくるのを確認。と同時に崩れ落ちた。

 すぐに医療班がやってきて止血するが、あの傷では暫くは戦線に復帰するのは難しいだろうな。傷が完治するまでゆっくり休んでくれると良いのだが。

 

 グローブの戦いにおいて特殊作戦群はその戦力の8割を失いながらも住民の死守に成功、大惨事は未然に阻止された。

 

 住民のズムシティへの退避は完了したものの、制圧されたグローブを中心にバスク少佐を首魁とする反乱軍は集結。

 その数時間後には核パルスエンジンが装着されたグローブが反乱軍艦隊と共にズムシティへと向かってきているという報告が入った。コロニー落としの意趣返しをするつもりなのだろう。

 

 ……えっ、ここからでも入れる保険があるんですか?????




レビル将軍の思惑についてはギレンの野望を参考にしました。

本当は特戦が反乱軍陸戦隊をバッタバッタ薙ぎ倒す描写を入れたかったんですが、尺の都合でカットしました。

なお、オメガは次の決戦には間に合う模様。
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